ダイレクトドライヴへの疑問(その15)
ステレオサウンド 48号、146ページのグラフは、
フォルテシモからピアニシモに変化していく様を描いている。
フォルテシモからピアニシモへの移る途中で、いくつかの小さな山が発生しているのだが、
この部分がEMT・930stとローコストのダイレクトドライヴ型プレーヤーとでは顕著に違っている。
山の数がまず違う。930stの方が多い。
ローコストのダイレクトドライヴ型プレーヤーが何なのかはわからない。
そのプレーヤーの音を聴いたことがあるのかどうかもわからないから、
音の比較ではなにもいいようがないけれど、
これだけ山の数がローコストのダイレクトドライヴ型プレーヤーで減っている(消失している)のをみると、
音楽のディテールの再現においては、930stの方が優れている、といってよいだろう。
それに山の形も同じとはいえない。
930stでは小さな山となっているのに、
ローコストのダイレクトドライヴ型では山になりきれずに平坦に近かったりする。
どちらのプレーヤーで聴いても、同じ「熱情」であることには違いない。
けれど、これほど異る形を描くグラフを見比べていると、
実際の音は、視覚の差以上に大きいものとしてあらわれるように思えてくる。
長島先生も指摘されているように、
これらのグラフはペンレコーダーによるもので、
ペンの自重の影響その他に若干の問題が残っている。
そのためあくまでも参考データとして掲載されていて、
48号で測定した全機種についての発表は控えられている。
けれど「レコードの音楽波形レベル記録」として5分ちょっとグラフを圧縮した形で掲載されている。
146ページのグラフのように拡大されていないから、
ぱっと見た感じではどれも同じレベル記録のように見えなくもないが、
細かく見ていけば、それぞれのプレーヤーによって違いが出ていることがわかる。