挑発するディスク(その17)
トーレンスの101limited(930st)には、TSD15以外のカートリッジもとりつけては、
しばらく聴いていたことがある。
ノイマンのDST、DST62がそうだし、トーレンスのMCHIも付属していたので使っていた。
その他にもフィデリティ・リサーチのFR7のEMT仕様モデルを一時期試したこともある。
それに当時オーディオテクニカから発売されていたEMT用のヘッドシェルに、
気になるいくつかのカートリッジをとりつけては試聴していた。
このときイケダのIkeda9も試している(ただしヘッドシェルを加工する必要がある)。
内蔵のイコライザーアンプ155stを通したり、
トーンアームから出力をとりだし別途コントロールアンプを用意して聴いたり、けっこうあれこれやっている。
部分的には、TSD15以上の音を出すカートリッジは少なくない。
それでも、レコードプレーヤーシステムとして、信頼できるかどうかとなると、話は違ってくる。
やってみればわかるのだが、930stで聴くかぎり、TSD15のとき、いちばん信頼できる音が出てくる。
だからTSD15、それも丸針ではなく、新しいディスクを聴くことが多かったこともあり、
SFL針のTSD15が常用カートリッジの座にあった。
一流のプロ用機器であれば、信用はできるだろう。
けれど、優れたプロ用機器のすべてが信頼できるかというと、かならずしもそうではないだろう。
結局、誠実であるからこそ信頼できる。信頼して使える。信頼して心をあずけられる。