Archive for 11月, 2014

Date: 11月 1st, 2014
Cate: BBCモニター

BBCモニター、復権か(その7)

ロジャースのPM510を聴いたのは、オーディオフェアでの輸入元であったオーデックスのブースだった。
1981年のオーディオフェアは私にとって初めてのオーディオフェアであったし、
オーデックスのブースでは予定では瀬川先生がPM510を鳴らされる、ということになっていた。

オーディオ雑誌に掲載されていたオーディオフェアの予定表を見ながら、
これだけは絶対に聴き逃せない、と思い楽しみにしていた。
けれど直前に出たオーディオ雑誌に載っていた予定表からは、瀬川冬樹の名前が消えていた。
えっ? と思いつつも、以前の予定表と同じように、その日、その時刻にはPM510のデモが行なわれる。

結局、瀬川先生は来られなかった。
あとで知ることになるのだが、このときすでに入院されていた。

よくインターナショナルオーディオショウの条件はひどい、という人がいる。
出展社のスタッフにも来場者にもいる。
けれど、晴海で行なわれていたころのオーディオフェアの条件は、もっと厳しいものだった。

そんなところで音を聴いて、何がわかるの? という人もけっこう多い。
それでもわかることは、はっきりとある。
1981年のオーディオフェアのオーデックスのブースで、私はPM510を初めて聴いた。

いま思えばさほどでもなかったけれど、それでもステレオサウンド 56号に瀬川先生が書かれた音が、
少なくとも私には聴き取ることができた。

どんな条件で聴いても、自分にとって運命のスピーカーといえるモノであれば、すぐにわかる。
そのことを瀬川先生から聞いたことがある。

そういう存在のスピーカーがあることを感じとれるのが、直感であり、
スピーカー選びで大事なことは、この直感だけでしかない。

どんなに試聴環境を整えようと、自宅でいま鳴らしているスピーカーと時間をたっぷりかけて比較試聴しようと、
それで自分にとって正しいスピーカーが選べるとは限らない。
むしろ誤ってしまう可能性を自分で高めているだけなのかもしれない。

そうやって私はPM510を選んだ。

Date: 11月 1st, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その5)

購入したターンテーブルシートは、アメリカのWATERLOOという会社のPLATTER PADだった。
ヤマハ(当時は日本楽器製造)が輸入販売していたものだった。

素材は、熱可塑ポリエーテル系ウレタンゴムと書いてあった。
厚みは6.5mm。当時使っていたアナログプレーヤーのゴムシートよりも若干厚い。
重量は470g。もった感じでは附属シートよりも重い程度だった。
価格は7500円だった。

色は茶色だったと記憶している。
硬めのシートだったはずだ。
附属シートと取り換える。
厚みが違うのでトーンアームの高さを調整し直して音を聴く。

30年以上前のことだから記憶もぼんやりとしているが、
少なくとも附属のシートよりもいい感じで鳴ってくれた。

それにターンテーブルシートがかわると、プレーヤーの雰囲気も変わる。
これに関しても附属のシートよりもいい感じになってくれたので、満足していた。

このときはジュエルトーンのGL602Jにしなくてよかった、と思っていた。
PLATTER PADは透明ではないから、ターンテーブルプラッターの、いわばボロを隠してくれる。
GL602Jはそうではないのだから。

でも30年くらい経ち、やっぱりGL602Jを買っておけばよかった、と思っている。
GL602Jは川崎先生が手がけられたモノであることを知ったからだ。

Date: 11月 1st, 2014
Cate: BBCモニター

BBCモニター、復権か(その6)

ロジャースのPM510は、ピーエム・ファイヴ・テンと読む。
ピーエム・ゴーイチマルでもピーエム・ゴヒャクジュウでもない。

PM510に惚れ込んだ人に対しては、510(ファイヴ・テン)で通じる。

書いていて思い出した。
以前、PM510をことを話していたら、「ほんとうにファイヴ・テンっていうんですか」と言ってきた人がいる。
揚げ足を取りたい感じだった。
惚れ込んで買ったスピーカーの正しい呼称を間違えるはずがないし、勝手に読み方を考えたわけでもない。

PM510がステレオサウンドに登場したのは56号。
瀬川先生の文章によってだった。

PM510の音を、こう書き出されている。
     *
 PM510は、本誌試聴室と自宅との2ヵ所で聴くことができた。
 全体の印象を大掴みにいうと、音の傾向はスペンドールBCIIのようなタイプ。それをグンと格上げして品位とスケールを増した音、と感じられる。BCIIというたとえでまず想像がつくように、このスピーカーは、音をあまり引緊めない。たとえばJBLのモニターや、国産一般の、概して音をピシッと引緊めて、音像をシャープに、音の輪郭誌を鮮明に、隅から隅まで明らかにしてゆく最近の多くの作り方に馴染んだ耳には、最初緊りがないように(とくに低音が)きこえるかもしれない。正直のところ、私自身もこのところずっと、JBL♯4343の系統の音、それもマーク・レヴィンソン等でドライヴして、DL303やMC30を組み合わせた、クリアーでシャープな音に少々馴染みすぎていて、しばらくのあいだ、この音にピントを合わせるのにとまどった。
     *
音の傾向がBCIIのようなタイプとあったのが、うれしかった。
しかも「グンと格上げして品位とスケールを増した音」である。
BCIIの音に惚れ込みながらも、オーディオマニアとしてモノとしてのBCIIにのめり込めるかというと、
どこが不満というわけではないけれど、もの足りなさをおぼえてしまう。

だからこそPM510の登場と、瀬川先生の文章のこの部分に、待望のスピーカーシステムの誕生(登場)だと思った。

これはもう早く聴きたかった。
実際に聴けたのは一年くらいしてからだった。

Date: 11月 1st, 2014
Cate: BBCモニター

BBCモニター、復権か(その5)

こういう音が好きなんだ、と実感した最初のスピーカーシステムは、スペンドールのBCIIだった。
瀬川先生が熊本のオーディオ販売店に定期的に来られていた時に聴くことができた。
そのとき、もうひとつスピーカーがあった。JBLの4341だった。

このころすでに4341は製造中止になっていて4343に切り替って二年くらい経っていたはずなのに、
なぜか4341だった。
4341はすごいスピーカーだ、と感じた。
けれどその後に鳴らされたBCIIの音に惹かれた。

スピーカーシステムとしての性能の高さは、はっきりと4341が格段にBCIIよりも高い。
けれどどちらの音に惹かれるのか、といえば、BCIIとはっきりといえた。

BCIIも、このスピーカーをつくっているスペンドールも、BBCモニターの流れを汲んでいる。
つまり、この時がBBCモニターの音との出会いだった。

それから一年くらい経って聴いたBBCモニターはLS3/5Aだった。
その前にKEFのModel 105を聴いている。
この時代のKEFのスピーカーシステムも、私にとってはBBCモニター系列に属する音である。
ややきまじめすぎる印象はあるけれど。

ハーベスのMonitor HLも、しばらくして聴いた。
それからロジャースのPM510を聴いた。

BCIIからPM510を聴くまでに、他のスピーカーシステムも聴いてきた。
その中にはイギリスのスピーカーを代表する存在であるタンノイも含まれる。

同じイギリスのスピーカーであっても、BBCモニター系列の音とは違う。
私が惹かれるのは、この時代はBBCモニターの音であった。
BCII、Model 105、LS3/5A、Monitor HL、PM510、
その音を思い出すと(美化されているのだろうが)、グッドリプロダクションとはまさにこういう音であり、
いまも惹かれていることを感じてしまう。

Date: 11月 1st, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その4)

EMTの927Dstはガラス製のターンテーブルシートである。
まだ927Dstの音は聴いていなかったけれど、927Dstがどんなにすごいプレーヤーであるのかは知っていた。

普及クラスのアナログプレーヤーのシートをガラス製にしたからといって、
927Dstに近づけるわけではないことはわかっている。
こんなことは高校生にだってわかる。
それでも気分だけでも927Dstに近づけたい。

だからジュエルトーンのGL603Jにしようと思ったのだった。
けれどガラスということは透明な素材である。
つまりターンテーブルプラッターの上に、GL602Jを置くと、
ターンテーブルプラッターの上面が丸見えになる。
そのことに気づいた。

普及クラスのアナログプレーヤーのターンテーブルプラッターはアルミ製。
仕上げはお世辞にもいいとはいえなかった。
たとえばマイクロのRC5000のようなプレーヤーであれば、
ターンテーブルプラッターに直接レコードを置くことを前提としているため、
プラッターの上面の仕上げも丁寧になされている。

RC5000の上にGL602Jを置くのであれば、何も問題とするところはない。
だが現実に、そのころの私が使っていたのRX5000のような仕上げのプラッターではない。

レコードをのせてしまえば気にならないだろうが、
レコードをかけ替えるごとに、ターンテーブルプラッターのあまりよくない仕上げを見ることになる。
これは気持ちのいいことではないし、GL602Jを買わなかったいちばんの理由である。