Archive for category D44000 Paragon

Date: 5月 27th, 2009
Cate: D44000 Paragon, JBL, 岩崎千明

岩崎千明氏のこと(その11)

ステレオサウンド 38号の取材で、井上先生は、
岩崎千明、瀬川冬樹、菅野沖彦、柳沢巧力、上杉佳郎、長島達夫、山中敬三(掲載順)、
以上7氏のリスニングルームを訪ねられ、それぞれのお宅の「再生装置について」、囲み記事を書かれている。

タイトル通り、オーディオ機器の説明を、井上先生の視点でなされている。
音については、全体的にさらっと触れられている程度なのだが、
岩崎先生のところだけは、違う。
     ※
この部屋で聴くパラゴンは、聴き慣れたパラゴンとはまったく異なる音である。エネルギーが強烈であるだけに、使いこなしには苦労する375や075が、まろやかで艶めいて鳴り、洞窟のなかで轟くようにも思われる低音が、質感を明瞭に表現することに驚かされる。2、3種のカートリッジのなかでは、キース・ジャレットの「ケルン・コンサート」のレコードのときの、ノイマンDST62は、感銘の深い緻密な響きであった。パラゴン独得なステレオのエフェクトが、聴取位置が近いために効果的であったことも考えられるが、アンプの選択もかなり重要なファクターと思われる。やはり、このパラゴンの本質的な資質をいち早く感じとり、かつて本誌上でパラゴンを買う、と公表された岩崎氏ならではの見事な使いっぷりである。
     ※
井上先生に、もっと岩崎先生のことを訊いておけばよかった……、といま思っている。

Date: 9月 14th, 2008
Cate: D44000 Paragon, JBL

パラゴンの形態(その1)

パラゴンの形態は、当時のステレオ録音が左右チャンネルに音を振り分けすぎていたのを
再生側で融合させるため、という説明が昔からある。
けれども1957年に登場したパラゴンの開発には、10年以上の歳月が要した、とのこと。 
10年以上が、12年なのか、15年なのかは不明だが、なんにしても、1940年代はモノーラル。
モノーラルLPの登場が1948年だから。
となると、いったいなぜ、パラゴンの形態は生れたのか。 

パラゴンは、よく知られるようにJBLとリチャード・レンジャー大佐との共同開発。
レンジャー大佐はアカデミー賞受賞者でもある。 

たったこれだけのことから勝手に推測するに、
1940年にベル・ラボラトリーが公開した、ストコフスキー指揮フィラデルフィア管弦楽団による、
映画フィルムのサウンドトラックを利用した3チャンネルのステレオ録音・再生が、
パラゴンを生むことにつながっているのではないだろうか。 

レンジャー大佐は、このとき(もしくはその後)に、
アカデミー賞受賞者だけに、ステレオ録音・再生に触れていた可能性は高いと思う。
そして3チャンネル・ステレオを、ミニマムの2チャンネルで再生するにはどうしたらいいのか、
その解答が、パラゴンの形態だとしても不思議ではないような気がする。