Archive for category JBL

Date: 9月 8th, 2008
Cate: 4343, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その6)

JBLの4341(4343)について考えてみる。 
JBLのモニターシリーズには、4333が同時期にあった。 
ユニット構成は、4341(4343)に搭載されたミッドバス2121を除けば、
ウーファーは2231A、ドライバーは2420、トゥイーターは2405と同じ。 
スピーカーの周波数特性としては、エンクロージュアのプロポーション、内容積は異るが、
上限と下限はほぼ同じである。 

4333のウーファーとミッドレンジのクロスオーバーは800Hz。
4341(4343)のウーファーとミッドバスのクロスオーバーは300Hz。 
周波数特性的には4333も4341(4343)も、2231の良好なところで使っているが、
指向性に関しては、4333は多少狭まっている帯域まで使用している。 

スピーカーの指向性は狭い方がいい、という意見もある。
部屋の影響をうけにくいから、ということで。 
けれど、再生周波数帯域内で、指向性が広いところもあれば極端に狭いところもあり、
スコーカーの帯域に行くと、また広がる、そんな不連続な指向性がいいとは思えない。 
狭くても広くても、再生帯域内では、ほぼ同じ指向性であるのが本来だろう。 

4341(4343)から、JBLの真のワイドレンジがはじまった、と言える理由が、ここにある。

Date: 9月 7th, 2008
Cate: JBL

マテリアル2ウェイ

JBLのD130、LE8Tのようにセンターキャップがアルミのものを、
一般的にはメカニカル2ウェイのフルレンジと呼ぶ。 
でも、ほんとうにメカニカル2ウェイなのか。 

アルテックのフルレンジユニット420−8Bのように、
コーン紙の中間あたりにコンプライアンスをもたせたコルゲーションを設け、そこを境に高域と低域を分割する。
しかもコーン紙の頂角も高域のコーン(内側)は浅くて、
ウーファー(外側)のコーンの頂角は深いという工夫がこらされおり、
こういう設計思想によるものなら、メカニカル2ウェイと納得できる。 

けれどセンターキャップだけアルミ(金属製)で、
メカニカル2ウェイといえる動作をしているのか。 
420-8Bのセンターキャップとコーン紙のつなぎ目と同じように、コンプライアンスをもたせていれば、わかる。 

D130は38cm口径、センターキャップは10cm、
材質も紙とアルミ(内部音速もかなり違う)だけに、
センターキャップにアルミを採用した良さは、音を聴いても、出ていると感じる。 
大口径のフルレンジ(振動板は紙のもの)は、
真正面で聴けば、それなりに高域は出ているように感じるが、
軸をずらすと、高域が明らかに落ちている印象になったように記憶している。 

だからといってメカニカル2ウェイとは呼びたくない。マテリアル2ウェイと呼びたい。

Date: 9月 3rd, 2008
Cate: 4343, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(その1)

トーレンスのアナログ・プレーヤー 〝リファレンス〟の実物をはじめて見て、 
その音を聴いたのは、もうずいぶん前のこと。 
まだ熊本にいたころ、高校3年生の時だから、27年前になる。 

熊本市内のオーディオ店(寿屋本庄店)で、 
(たしか)三カ月に1度、土日の二日連続で開催されていた 
瀬川先生の「オーディオ・ティーチイン」というイベントにおいて、である。 

そのときのラインナップは、 
トーレンスのリファレンス、 
マークレビンソンのLNP2L とSUMOのTHE GOLDの組合せで、 
スピーカーは、もちろんJBLの4343。

この時、正直にいえば、パワーアンプはTHE GOLDではなく、
LNP2LとペアになるML2L で聴きたいのに……と思っていた。

いろんなレコードの後、 
最後に、当時、優秀録音と言われていて、 
瀬川先生もステレオサウンドの試聴テストでよく使われていた 
コリン・デイヴィス指揮の ストラヴィンスキーの「火の鳥」をかけられた。 

もうイベントの終了時間はとっくに過ぎていたにもかかわらず、 
なぜか、レコードの片面を、最後まで鳴らされた。 

そのときの音は、いま聴くと、 
いわゆる「整った」音ではなかっただろう。
けれど、その凄まじさは、いまでもはっきりと憶えているほど、つよく刻まれている。

レコードによる音楽鑑賞、ではなくて、音楽体験、 
それも強烈な体験として、残っている。

聴き終わって、瀬川先生の方を見ると、 
ものすごくぐったりされていて、顔色もひどく悪い。 

いつもなら、イベント終了後、しばらく会場におられて、 
質問やリクエストを受けつけられるのに、その日は、すぐに引っ込まれた。 

「体の調子が悪いんだ。 なのに『火の鳥』、なぜ最後まで鳴らされたのかなぁ
途中で針をあげられればよかったのに……」と、 
そんなことを考えながら、店の外に出ると、
駐車場から出てきた車のうしろで、さらにぐったりされている瀬川先生の姿が見えた。