トーキー用スピーカーとは(その4)
映画館のスクリーンには、俳優が大映しになるシーンがある。
大きなスクリーンいっぱいに、俳優の顔が映る。
それは人間の実際の大きさよりもずっと大きい。
にも関わらず、観客はそのことを不自然だとは思わない。
そういったシーンで、ささやき声でセリフが使われれば、
そのささやき声は、実際のささやき声よりも大きい。
スクリーンの前に俳優が登場して、ささやき声でセリフでいったところで、
映画館のすべての観客に、そのささやき声が聞こえるわけではない。
大きな音でのささやき声。
これも俳優の顔のアップと同じで、特に不自然だとは感じていない。
それはささやき声は、ちいさな音で再生されるからささやき声であるのではなく、
ささやき声は最初からささ譜やき声であり、そのささやき声の特質をスピーカーが鳴らしてくれれば、
観客(聴き手)は、音が大きかろうと、ささやき声だと認識できる。
このことは何もささやき声だけではない。
楽器も同じだ。たとえばピアノ。
単音でいい。ピアニッシモで弾かれた単音と、フォルティッシモで弾かれた単音とでは、
それを録音して、同じ音量になるように再生しても、聴き手は、どちらがピアニッシモで弾かれた単音なのか、
すぐに判別できる。