Date: 11月 2nd, 2015
Cate: 「スピーカー」論
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トーキー用スピーカーとは(その14)

ウェスターン・エレクトリックのスピーカーユニットやアンプ、それに真空管は中古で流通している。
法外な値段を支払えるのであれば、そして納期を決めなければ、
未使用のユニットの入手も決して不可能なわけではない。

けれどこれらはウェスターン・エレクトリックが販売してきたモノではない。
ウェスターン・エレクトリックは劇場に、スピーカーやアンプを売っていたわけではない。
あくまでもレンタルしていた会社である。

日本の劇場でもウェスターン・エレクトリックの音が聴けていた時代、
ウェスターン・エレクトリックのユニットや真空管が稀に入手できていたそうだが、
それらは補修部品がなんらかの理由で流出したものだときいている。

ここが、いわゆるオーディオメーカーとは、根本的に違う点である。
世の中のすべてのオーディオメーカーは、なんらかの製品を売っている。
アンプであったりスピーカーであったり、カートリッジであったりする。

けれどウェスターン・エレクトリックが売っていたのは、その音である。
アンプやスピーカーといったモノを売っていた会社ではなく、
その「音」を売るために、劇場にアンプやスピーカーをレンタルしていた。

音を売るのか、モノを売るのか。
その違いを、我々は忘却しているのではないだろうか。

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