Posts Tagged DDD型ユニット

Date: 9月 9th, 2008
Cate: 菅野沖彦

菅野沖彦氏のスピーカーについて(その1)

菅野先生がお使いのスピーカーは、 
JBLの375+537-500(蜂の巣)を中心としたシステム、 
マッキントッシュのXRT20、 
そして4年前に導入されたジャーマン・フィジックスのDDDユニットを中心としたシステムの3組である。

中高域以上は、JBLはホーン型、XRT20はドーム型の複数使用、 
ジャーマン・フィジックスはウォルッシュ・ドライバー。 
振動板の素材もまったく異る。

JBLはアルミ、ジャーマン・フィジックスはチタンで、同じ金属と言っても、
ジャーマン・フィジックスのチタンはひじょうに薄い膜であり、
指で軽く触ってみると、プニョプニョした感触で、剛性を高めるための金属の採用ではない。

まったく異る型式・方式・素材のスピーカーが三組と受けとめられがちだが、
「中高域の拡散」ということでは、三つとも共通していると、私は考えている。

なぜ菅野先生は、375と組み合せるホーンに、蜂の巣を選択されたのか。 
菅野先生のリスニングルームの壁の仕上げ、
JBLのシステムに数年前から導入さてれているリボン・トゥイーターの理由、 
そして音を聴かせていただくと納得できるのが、 中高域の拡散、ということ。 

なぜ菅野先生は、JBLのトゥイーター075だけでは満足されなかったのか。 
それは高域レンジの問題だけではなく、375と蜂の巣の組合せによる中域の拡散と比べると、 
高域の拡散が不十分と感じられたためではないかと思っている。

Date: 9月 5th, 2008
Cate: 五味康祐, 無形の空気, 菅野沖彦

いま、空気が無形のピアノを……(その1)

オーディオに関心をもつきっかけは、 五味康祐氏の「五味オーディオ教室」で、
多くのマニアの方のように、どこが素晴らしい音楽(音)に触れたのがきっかけというのではなく、
一冊の本との出会いが、私のオーディオの出発点になっている。 

「五味オーディオ教室」が、私にとって最初のオーディオの本であり、 
この本と最初に出合ったこと、原点となったことは、 とても幸運だったと、いまでも思っている。 

買ってきたその日から、毎日読んだ。 
学校に持っていては休み時間に読み、 帰宅してからも、ずーっと読む。 
何回も何回も頭から最後まで読み返して、 また興味深いところだけを、これまた何回も読み直して、 
何度読んだかは、もうわからないくらい読み返した。 
何度も読みながら、
「オーディオという趣味はなんと奥深いものなんだろう……、 
音楽を聴くという行為の難しさ、素晴らしさ──、これは一生続けられる趣味だ」と思うとともに、 
当時ステレオを持っていなかった私は、この本を読むことで、 
オーディオの本当の音は、こういうものなんだ、 と勝手に想像(妄想)したものである。 

いくつも強烈に印象にのこっている言葉がある。 

そのなかのひとつが、 
「いま、空気が無形のピアノを、ヴァイオリンを、フルートを鳴らす。 
これこそは真にレコード音楽というものであろう」のフレーズ。 

空気が無形のピアノを目の前に形作って、そのピアノから音(音楽)が響いてくる──、 
中学二年の私は、それがオーディオの在りかただと思い込む。
しかし、五味先生は、 
「実際に、空気全体が(キャビネットや、 ましてスピーカーが、ではない)楽器を鳴らすのを 
私はいまだかつて聴いたことがない」とも書かれている。 

2005年5月19日、菅野先生のリスニングルーム。 

菅野先生が「第三世代」と呼ばれている 
ジャーマン・フィジックスのDDDユニットを中心としたシステムで、 
プレトニョフのピアノ(シューマンの交響的練習曲)で、 
「五味オーディオ教室」を初めて読んだときから29年、
「空気が無形のピアノを鳴らす」のを、 はじめて耳にした。