Daily Archives: 1979年12月10日

20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 二十万円コンポシリーズも、前号、前々号での総論を卒業し、いよいよ各論に移るが、今回トータル二十万円の予算でコンポーネントを組むのに適当であろう価格帯のプリメインアンプを一同に集めてテストしてみた。テストの対象にしたアンプは四万五千円から十万円迄のアンプで、まず市販品の中で比較的人気の高い製品、そして新しい製品を中心に集めた。人気という点からいうと、決して新製品とはいえないアンプも何台かまじっている。そのことは逆にの一年ないし二年の間でのアンプの性能がどれだけ進歩したか、しなかったか、ということを知るものさしともなるわけで、これだけアンプがそろうと、二十万円コンポ族にとっていろいろおもしろいことがわかってくるだろう。
 試聴アンプは一応編集部からメーカーに試聴テストするという話をしたうえで、貸してもらった。メーカーから辞退してきたもの、あるいは諸般の事情でテストの対象にならなかったものもあり、このクラスの市販品全部を網羅するというわけにはいかなかったことをあらかじめお断りしておく。

アンプは3時間以上エージングした
 さてテストの方法だが、まずテストに先立ち、アンプを十分にエージングするということを心がけた。すでに一、二年前からよく知られた始めたことだが、アンプに電源スイッチを入れ、音を鳴らし始めると、スイッチを入れた直後よりも一時間、二時間後にだんだんと音が柔らかくこなれてくるアンプが近ごろ増えている。いまとなってみるとすべてのアンプがそういう性質をもっていたのだが、そういう違いが聴き分けられるほど、最近のアンプ自体の基本性能あるいは周辺の機材というものが向上してしまったということにもなる。そこでテストに当たってはそういうハンデを避けるためにすべてのアンプを少なくとも三時間以上十分に鳴らし込んだ状態でテストすることにした。写真にもあるようにテストするプレイヤー以外に三台のプレイヤーを用意し、常にその次にテストするアンプを鳴らし込んでおくような配慮をした。
なぜJBL4343BにエクスクルーシヴP3なのか
 アンプのテストをする場合にはスピーカー、プレイヤー、カートリッジあるいはテストソースとしてのレコードといったものの選び方については多くの意見が出るところだが、今回のテストに関しては、アンプの持っている性質そのものをできるだけ十分に聴きとろうということで、アンプの価格帯にふさわしい機器を選ぶのではなく、むしろ現在市販されている中から得られる最高水準のスピーカー、レコードプレイヤー、カートリッジというものを用意し、アンプをベストの状態で聴き取るようにした。したがって、これから後の試聴記に出てくるアンプの音質というのは、このアンプのもっているほぼ基本的な性質と考えていただいて差し支えない。それを後でどんなスピーカーやどんなカートリッジと組み合わせると一層生きるかということは、試聴記の中に二、三ヒントを述べてはあるが、また改めて別の機会にこれらのアンプを中心とした組合せとしてさらに詳しく取り上げてみたいと思う。
 そういうわけでスピーカーにはJBLの4343の新しいBタイプ、レコードプレイヤーにはエクスクルーシヴのP3という、ともに市販されている中でも最高のグレードのものを組み合わせた。
カートリッジはMMとMCを用意
 次にカートリッジだが、大きく分けてMM系のカートリッジとMC系のカートリッジ、これを両方用意した。というのは、現在四万五千円あたりから上のアンプになると、大半のアンプがMCヘッドアンプを内蔵しており、そのMCヘッドアンプのテストをするためには、ぜひともMCカートリッジが必要だからだ。さらにMCカートリッジについてはオルトフォンのMC20MKIIとデンオンのDL103Dという二つのタイプを用意した。その理由というのはMCカートリッジにも大きく分けるとインピーダンスの高いMC型と、比較的インピーダンスの低いMC型の両極端があり、出力が低いタイプと出力が高いタイプの両方あるということから、どうしても二つのタイプが必要となる。オルトフォンのMC20MKIIはインピーダンスが3Ωであるのに対して、デンオンDL103Dは33Ωとほぼ十一倍のインピーダンスの差がある。また出力電圧もこれはカタログデータの公称だから、そのまま比較にはならないが、オルトフォンが0・09mVに対してデンオン103Dが0・3mVというように、これも三倍以上の差がある。こういう違いがMCヘッドアンプの性能に大きく響いてくる。特にオルトフォンの3Ωという低いインピーダンス、そして0・09mVという非常に低い出力電圧は、MCヘッドアンプに対しては非常にきびしい条件なので、これが十分に鳴らせるMCヘッドアンプは相当なものであることがいえるわけだ。半面、デンオンの33ΩというようにMCとしては比較的高めのインピーダンスと0・3mVという、これもMCとしては大きめの出力というのは、大方のMCヘッドアンプに対しては十分であろうということがいえる。そしてまた出力とインピーダンスの違いだけでなく、MC20MK20IIとデンオン103Dとは音質もだいぶ違い、これを含めてアンプのテストに利用した。
 さてMM型のカートリッジだが、これは西ドイツのエラックの新シリーズ794Eと、アメリカのスタントン881Sという、西ドイツとアメリカという全く違った国の、違ったキャラクターをもったMMカートリッジを用意した。というのは、エラックの方は非常に繊細で切れ込みがよく、多少ウェットな面ももっており、どちらかといえばクラシックのプログラムソースを非常に美しく、ハーモニー豊かに聴かせてくれるカートリッジであるのに対して、スタントン881Sはどちらかといえば現在の新しいポピュラー・ミュージックに本領を発揮する音の厚み、力強さ、そして音の明快さをもったカートリッジであるということだ。さらに比較参考用としてもっとローコストなカートリッジということで私がよく性質をしっている同じエラックの793Eも併用し、随時それを比較の参考にした。
 次に試聴レコードだが、なるべく広い範囲のレコードから選択した。新旧の録音あるいは非常に大きな編成からデリケートな編成のものまで、そしても内容も弦あり、管あり、ボーカルあり、パーカッションあり、また編成の大きなものでもクラシックの場合とポピュラーの場合と、できる限り多彩なソースを用意したつもりだ。ただテストに要する時間を考えるとできるだけレコードは少数に絞りたいということもあり、私がここ数年来テストに使っているレコードに最近の新しいレコードを何枚か加えた。このレコードの中のそれぞれたいてい三分以内の部分がテストに使われている。
八畳間の感じにセッティング
 試聴の場所は本誌で使っているかなり床面積の比類試聴室を使わせてもらった。アンプのテストをする場合、あまり広くていい音のする試聴室だと、アンプの隠れた欠点を全部覆い隠してしまうという恐れがあるので、私の主義だがなるべくスピーカーに近づいて聴くようにした。もう少し具体的にいうと、和室で六畳ないし八畳ぐらいの広さの部屋でスピーカーとリスナーの関係位置が保てる程度に近づいて聴くということが必要だと思うわけだ。二つのスピーカーの中心から中心の間隔を約3m弱、スピーカーから聴き手の位置もそのくらい。八畳の中でこの程度のセッティングができるだろうというような関係位置をこしらえて、試聴にのぞんだ。
 アンプのテストにあたって切り替えスイッチを一切用いていない。というのは現在の最新アンプをテストする時に、切り替えボックスを通してしまうと、どうしても接点の抵抗、あるいはそこに要するコードの余分な長さなどで、アンプの本当の性能が発揮できないということがいわれており、アンプはすべてプレイヤーから直接コードをつなぎ、スピーカーに直接つなぐということで確実な接続をし、一台一台入念なテストをした。
 また、何台か聴いた後でもう一度前のアンプに戻るといういわゆるクロステストを行い、十分に念を入れて聴き落しのないようにしたつもりだ。MCヘッドアンプのテストをするアンプ以外の電源をすべて切って、周囲の漏えいなどの影響を受けないようにしたことはもちろんのことだ。
試聴を終わって
 結果をちょっと大ざっぱにいうと、大半のアンプにMCヘッドアンプが組み込まれていた。もうひとつは、アンプの音質をできるだけぎりぎりのところまで追求しようということで、多くのアンプに、メーカーによって違いはあるが、各種のスイッチでアンプのトーン・コントロールその他の付属回路を飛ばして、イコライザーとパワーアンプを直結するという、非常にシンプルな構成にするという考え方が取り入れられていた。これは確かに現在の時点でアンプをより一層ピュアーに改善するための手段であることは認める。音質を劣化させる回路を飛ばしてしまって、できるだけアンプの構成を簡潔、シンプルにして音質を改善しようという純粋な発想であるということはわかるが、半面それはトーン・コントロールその他の回路の音質向上に対する技術的努力を怠っているという見方ができなくはないと思う。少なくともそうした回路を積極的に音楽を聴くときに生かしたいという人にとっては、アンプの音質を犠牲にせざるを得ないわけで、そこのところは次の段階ではぜひともトーン・コントロール回路を入れて、なおかつ音質が劣化しないような方向で、さらに技術的な追求をしていくのが本筋ではないかと思う。付属回路を飛ばしてしまうということは極端ないい方をすれば、アンプの回路を片輪にしてしまうことだ。言いすぎといわれそうだが、私はそう考える。
 MCヘッドアンプもテストした結果からいうと、少なくとも半数以上がただカタログの上にMCヘッドアンプ内蔵と書きたいためのつけ足しにすぎないのではないかという印象をもたざるを得ないようなアンプが少なからず合った。こういうものが無理してカタログ・データを充実させるために組み込まれるのであったら、MCヘッドアンプなど入れないで、そのぶんだけ音質向上に振り替えるか、あるいはそのぶんだけコストダウンするか、という方がユーザーにとっての本当の親切になるのではないかと思う。もし付けるのならばもっと本当の意味で実用に耐えるものを付けてほしい。少なくともMCヘッドアンプ以外のアンプの性能のよさと見合うだけのものが組み込まれなければ、これは片手落ちではないかというように思う。
 それからもうひとつ、今回はヘッドホン端子での音の出方、音質ということについてもテスト項目に入れている。というのはやはりわれわれはこの狭い、住宅事情の悪い日本に住んでいる限り、どうしても深夜など音楽を十分に楽しむためにはヘッドホンのお世話にならざるを得ないわけで、ヘッドホン端子はやはりアンプそれぞれのもっている音質の傾向をはっきり出し、同時に、ヘッドホン端子で十分に音量が楽しめるだけの出力が出てくれないと困るわけだ。これもテストした結果からいうと、概してヘッドホン端子での出力を少し抑えすぎているように思う。それからすべてのアンプではないが、何台かのアンプがヘッドホン端子ではずいぶん音質が劣化するものがある。ヘッドホン端子での音の出方というものをもう少し真剣に検討する必要があるのではないだろうか。その点をメーカーへ要望したい。
 細かくはこれ以後の試聴記をみていただくことになるが、試聴したアンプの出来栄えについて星が付いている。これは星の数が一つ、二つ、三つ、それから星印なしというように分かれており、星印がないからといって決して悪いアンプということではない。少なくとも星が一つ付いたということはその価格帯で印象に残ったアンプであり、二つ付いたアンプというのは、その価格帯の中で大変出来栄えのいいアンプであり、三つ付いたアンプは文句なく大変いい、音楽を実に音楽らしく聴かせてくれるという意味で、テストをし終わった後々まで、いいアンプだなという印象を残した優れたアンプだというような意味に受けとっていただきたい。

テクニクス SU-V8

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 テクニクスのこの新しいSU-Vシリーズには6、8、10とある。V6が五万九千八百円というかなり安い価格であるにもかかわらず、この前後の価格帯の中でも際立った出来栄えを示していた。それだけにその後に発売され、なおかつパワーも110Wとほぼ倍近くまでグレードアップされたこのV8には、こちらが過大な期待をもって臨むのはこれは当然のことだと思う。
音質 さすがに110Wというパワーと、ほとんど十万円に手の届くの価格ということからか、音を支える力というのは、これは実に大したものだ。これ以前の十七台のアンプに比べて聴取レベルを一ランク上げ、相当大きな音量で聴いてみたが、音が崩れるようなところがなく、大太鼓、いろいろなパーカッションなど、どんな音にも全く危なげなく、本当の力を出してくれた。さすがにハイ・パワーアンプだ。そして音の一つひとつが大変くっきりと出てくる。裏返していえば少しコントラストがきついということがいえるかもしれないが、とにかく一つひとつの音をとてもわかりやすくきちんと出してくれる。半面、その音の質ということになると、例えば音透明度という面からみると、オンキョーのA817、ラックスL48Aあたりに比べると若干物足りない感じがする。
 一言でいえば音の力強さというところにピントを合わせて作ったアンプではないかなと思う。
MCヘッドアンプ MCヘッドアンプはさすがにこのくらいの高価格帯になると、ゲイン、SN比とも大変練り上げられている。ゲインも十分、ノイズもかなり少なくなっている。しかし、この一つ前のパイオニアA700のMCヘッドアンプが大変よくできていて、オルトフォンのMC20MKIIでも実用的に全く問題なく使えたということからみると、V8のヘッドアンプはオルトフォンMC20MKIIでは少しノイズの点で聴き劣りする。A700を除けば、テストしたアンプの中でも別格のいいできだとは思う。デンオン103D、これはもちろんゲイン、SN比とも全く問題なく、十分に聴ける。音質の点ではMC20MKIIを付けたときの音はまあまあで、もう少しMC20MKII的なよさが出てほしい。一方、デンオンに関しては大変音質がいい。やはりこのアンプのMCヘッドアンプの基本設計目標がデンオン系に合わせているのだと思う。
トーン&ラウドネス トーン・コントロールには大きな特徴がある。普通の低音、高音のトーン・コントロールのほかに、スーパーバスというのがあり、ターンオーバー75Hzまたは150Hzから下を非常に急激なカーブでブーストできる。これらをつかうにはオペレーション・スイッチをストレートDCからビアトーンという方向に倒して使う。そしてスーパーバスのつまみをグッと上げていくと、普通のスピーカーではなかなか再生することのできにくい超低音を非常に確かな手ごたえで増強してくれる。音全体の厚み、あるいは深みといった感じが増してくるので、これはうまく使いこなすとなかなか面白い。
 スピーカーが多少小さいものであっても、これをうまく使いこなすと大変広がりのある豊かな音が得られる。これはこのアンプがもっているほかのアンプにないファンクションだ。
 スーパーバスを除いたトーン・コントロールの効き方はごく軽く、標準的。ラウドネス・スイッチを押したときも比較的抑え目の妥当な効き方をする。
ヘッドホン ヘッドホン端子での出力はスピーカーで聴く音よりも少し抑えかげんだが、これは一般的な水準からいって標準的。
 ヘッドホン端子での音質はこのアンプ自体のもっている基本的な音に比べると少し力が減るような感じがした。

パイオニア A-700

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 パイオニアのA700はA500と並べてみても重ねてみても、奥行きまで含めた外観は見分けがつかないほどよく似ている。細かい比較をすると、ボリューム・コントロール周りにA500の方はパネルを切り替えてリングが入っているが、A700の方はそういうことをしていない。
 またボリュームの左にあるレバースイッチの数がA700の方が一つ多い。それからMMカートリッジの負荷抵抗あるいは負荷容量切り替えも多少細かくなっている。また、A500ではサブソニック・フィルターのところのボタンが、A700ではMCカートリッジのハイ・ロー切り替えになっていたりというように多少細かなニュアンスの違いはある。しかし、少なくとも見た限りでは大変よく似た兄弟のアンプだといえる。
音質 このアンプの音質だが、まず大づかみにいって基本的に持っている性質というのはA500と同じ。パイオニアというメーカーの昔からの大変手慣れたバランスの取り方、過不足のなさ、そして聴きづらい刺激的な音を一切出さないようにきちんとコントロールされているところ、クラシック、ポピュラーという区別なしにそれぞれほどよい感じで鳴らしてくれるところなど、その印象は全く一貫している。しかし、その音の中身はA500に比べてだいぶ濃くなっている感じがする。A500のところでは多少とも薄くなるという印象があったが、A700になると、そういうことはあまり感じられない。音の質がグンと上がる。価格差よりは中身の充実の方が上回っていると思う。
MCヘッドアンプ MCヘッドアンプは大変よくできている。テストしたアンプの中でSN比ということではこれが最もいい出来栄えを示した。つまりオルトフォンのMC20MKIIでは他のアンプすべてがゲイン不足あるいはノイズが増えるという傾向があったのに対して、このアンプはSN比がよくとれており、ゲインも十分だ。ボリュームをいっぱいにあげなくても実用になるし、しかもMCヘッドアンプとしての音も必ずしも悪くない。ましてそれがデンオン103Dになればボリュームを相当絞った状態でも十分なゲインが取れるので完璧に実用になる。内蔵MCヘッドアンプに関していえば、テストしたアンプの中で一番だった。裏返していうと、この価格差というのがかなりMCヘッドアンプに投入されたのかなという感じをもった。
トーン&ラウドネス ライン・ストレートとノーマルの音の差がA500に比べて少し大きい気がする。
 この700の方が高級アンプだということで、こちらの聴き方がわずかに厳しくなっていることもいえるかもしれない。しかし、そういうことを考えに入れてもやはりもう少し音の差が少なくなってほしい。言い換えればライン・ストレートの音がそれだけよくみがかれていて細かな回路を通らないでストレートに出てくる音がいいということの裏付けにもなるわけだが……。
 半面トーン・コントロールその他を使おうとすると、わずかながら700の場合、音の広がり感、あるいは音の伸びといった面でちょっと物足りなさを感じる。しかしバス、トレブルともトーン・コントロールの効き方はやはり手慣れた感じで効きすぎず、とてもバランスのいい効き方をする。もちろんラウドネス・コントロールも同じだ。
ヘッドホン ヘッドホン端子に出てくる音、これはスピーカーを聴いた場合とレベル的な印象がよく合う。ヘッドホン端子の方がやや低めだが、これはごく標準的なことで出てきた音も大変いい。そういう点を含めて、トータル・バランスは大変よく、まとめ方も手慣れており、安心して使うことができるアンプには違いない。

★★

ラックス L-48A

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 ラックスの新しいシリーズがL58Aという、いわゆる高級プリメインアンプで、このアンプによってラックスの新しい側面が発揮された。そのL58Aを聴いた印象は、おそろしく音が滑らかで、透明で、上質で、聴き手を幸せな気分で満たしてくれる。それがこのL48Aにそっくり受け継がれているということを聴くことができて、私は聴き終わって非常に満足している。
音質 総合的に言って、これは質の高いアンプだと言っていいと思う。このアンプの音というのは、いまいったように滑らかさ、美しさということがまず第一だが、音にじめじめしたところがなく、とても明るく、クリアーで、すべての音が見事にハモってくれる。音楽を聴いていてすべて納得ができる。耳あたりは決して荒くない。そのくらい美しく磨かれている。アラを探してやろうというような意地の悪い聴き方を何度してみても、けってはなかなか見つからない。決してやせたり、細くギスギスしたりということがなく、量感はたっぷりしていながら、美しく、そして充実した音を聴かせてくれる。それから音はしっとりしているが、それが変に湿ったり、暗くなったりしない。明るさを保ったままで、しっとりしている。ベタぼめのようだが、このアンプの音というのは、この値段を考えると信じられないぐらい質の高い、本当の高級アンプで聴くことのできる音に近いものだと思う。
 もう一つ、このアンプまできて、初めてブルックナーのシンフォニーの第一楽章から本気で聴いてみようという気になった。実はこれは大切なことで、この一つ前のマランツPm4というのは、大変いい面を持ったアンプだが、そのマランツではブルックナーを聴こうという気には、ちょっとなれなかった。つまり、ラックスもマランツも両方とも大変優れたアンプだが、マランツはポピュラー志向であるのに対して、ラックスはクラシック志向ではないかという気がする。
 それではポップスはまるでだめかというというと、そんなことは全然ない。例えばマランツなどよりも少し甘口、ソフトタッチになるという違いはあっても、しかし決して露骨に柔らかくなったり、ふやけたりするわけではない。力は十分持ちながら柔らかく、滑らかに表現してくれるわけで、ポピュラーでも十分楽しめる。何しろ音質がずば抜けていいアンプだったという印象だ。
MCヘッドアンプ MCヘッドアンプはオルトフォンMC20MKIIではちょっとかわいそうという気がした。ノイズの質は悪くないけれども、ノイズの量が決して少なくないので、MC20MKIIで十分な音量で聴こうとすると、ノイズがかなり耳につく。デンオンの103D、これは十分使用できる。MCヘッドアンプ自体の音質はよかった。
トーン&ラウドネス トーン・コントロールはターンオーバー切り替えのついている本格的なもので、問題なくよく効く。特にトレブルの方をターンオーバー4kHzにして強調したときの音の上がり具合というのは、音を強調してみてなおさらこのアンプが基本的に持っている質がすばらしくいいものだったということを感じさせた。高音を上げても鋭くならないで、量だけがきちんと上がってくる。ターンオーバー切り替えのスイッチをうんとゆっくり切り替えようとすると、途中で途切れる部分があって、そこに妙なハムが出る。これは回路構成上仕方がないのだが、あるいは改善できるのかメーカーにただしてみたい。
ヘッドホン ヘッドホン端子は、スピーカーで聴いた時に比べるとちょっと音の出方が低い。音は決して悪くはないが、もう少し鳴りっぷりがよくてもいいのではないかと思う。ラックスのアンプは従来から、ヘッドホン端子の出力を少し低く取りすぎる傾向がある。その点、このアンプはかなり改善されてはいるが……。

★★★

マランツ Pm-4

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 このアンプからまた一段ランクが上がる。七万四千八百円だから、この前のグループから約五千円上がるわけだ。それがどういうようなメリットとして出てくるかということが興味の中心になる。このマランツのPm4は全くの新製品で、白紙の状態で試聴したが、まず音の点でいうと大変いいアンプということが言える。
音質 アンプの音をソフト派とハード派に分けると、このアンプはハード派、男性的な女性的かというと、男性的な方だ。とても明るいし、妙に湿ったり、暗くなったりするところがない。非常にさっぱりとふんぎりよく音を出してくれるのは聴いていて非常に心地よい。心地よさというのは単に気持ちのよさを通り越して本当に聴きごたえのある、充実感のある音だからだ。このアンプは実に音楽が楽しく聴こえてくる。
 その特徴は強いて言うと、クラシック、ポピュラーに分けた場合には、むしろポピュラー系に最大限良さを発揮するということが言える。音が充実しており、本当の意味で力がある。
 このアンプはAクラス・オペレーションにできるが、その場合の出力は15Wで非常に減るが、ほんのわずか音にやさしさが加わる。Aクラス・オペレーションにしたからといって、いわゆる歪とか透明感が改善されるという感じはしない。言い換えると、Aクラスではない方も相当練り上げられているということだ。
 しかし、フォーレのヴァイオリン・ソナタのような曲をAクラスで聴くと、いくらかフォーレにしては明るくなりすぎる。そしてヴァイオリンの音としては少し冷たい、あるいはメタリックと言いたい傾向の音になるので、フォーレの世界とは少し違うな、という違和感を感じさせる。しかし、もちろん音の質がいいので、そこを承知で聴けばなかなかいい気持ちで聴いていられるわけで、やはり音のかんどころは外していない。
 もう一つ、例えばカートリッジをエラックのような少し線の細いものよりも、スタントン881Sのようなものにすると、音の充実感、厚み、力といったものをさらに増やしてくれるので『サンチェスの子供たち』あるいはアース・ウインド&ファイアなどにしても、一層このアンプの特徴を生かす。
MCヘッドアンプ MC20MKII、103DでもMCヘッドアンプ自体の音はとてもいい。音質という面で言えば、さすが値段が高いだけのことはある。しかし、ノイズの点ではMC20MKIIはゲインいっぱいになるので、かなり耳につく。これは実用すれすれのところだろうと思う。一方、103Dの方はもちろん十分だが、このアンプは必ずしもSN比がよくないので、大きなパワーを出した、そのボリュームの位置で針を上げてみると、ややノイズが耳につく。ノイズがもう少しなくなれば、さらにこのアンプの音のよさが生きてくると思う。
トーン&ラウドネス トーン・コントロール、ラウドネス・コントロールの効き。これはもしかすると、このアンプが輸出などを意識しているのかもしれないが、効き方がかなりはっきりしており、ちょっとビギナーふうにわかりやすくしたという感じがする。これはこの
アンプの持っている質感のよさと比べて、もう少し効きを滑らかにしてもいいのではないか。
ヘッドホン ヘッドホン端子での音はなかなかよくできている。出力はやや低いが、ボリュームを上げればいくらでも音が出てくるし、ヘッドホン端子での音質もいい。
 それからデザインは、前例のないユニークな形で、好ききらいがあるかもしれないが、むしろ往年のマランツ・ファンを泣かせるようなかんどころを押えている。個性的なデザインを含め、総合的には非常に良くできたアンプだと思う。

★★★

パイオニア A-500

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 これはパイオニアの新シリーズの中の一機種。パイオニアのアンプが昔から受け継いできた音のバランスのよさ、まとめ方のうまさがうかがえる。しかし、いろいろなプログラム・ソースを聴いて、特にこの曲に向くというようなところはない。言い換えれば、この曲に向かないといったような強い個性を持っていないところがパイオニアのアンプの特徴であり、それはこの新シリーズでもそのまま受け継がれている。
音質 バランスの取り方は実に手慣れているな、という感じを思わせる。耳あたりはどちらかといえば柔らかい。刺激的な音をきちんと取り除いた、うまい音作りをしている。
 また、細かいことをいうと、レコードの無音の部分で聴こえてくるスクラッチノイズは軽く非常にきめ細かく聴こえてきて、アンプの持っている質そのものは、なかなかいいということを感じさせる。ただ、音が薄味というか音の充実感というものをもう少し望みたい。いわゆる、聴きごたえのする音ではない。例えば、しみじみと歌いかけるようなヴォーカルの場合でも、そのしみじみとした感じがもう少し出てほしいし、あるいは非常に迫力を要求するパーカッションの部分なども、本当の意味での力を出してほしい。何かバランスはとれて円満だが、もうひとつ踏み込みが足りない。そこがパイオニアという会社の性格と言えないこともないが……。
MCヘッドアンプ 次にMCヘッドアンプだが、オルトフォンのMC20MKIIの場合にはやはりゲインが低い。それからボリュームを上げて出てくるノイズが少し高調波の混じったハムが出てくるので、割合に耳につきやすいということで、ちょっとMC20MKIIは苦しい感じだ。デンオン103Dの場合は全く十分。デンオンを使ったときのヘッドアンプ自体の音質はなかなか優れており、どうもデンオン系でこのMCヘッドアンプはチューニングされたらしい。
トーン&ラウドネス ところでこのアンプは、パネルの中央、ボリュームの左端の二つ目のつまみのレバーに、ライン・ストレート、ノーマル・ポジションがあり、ライン・ストレートというところにくると、いわゆるストレート・アンプになって、トーン・コントロール、その他のファンクションを全部飛び越して非常にシンプルな構成のアンプになる。実はその状態でいま言ったような音が聴こえたわけで、さてトーン・コントロールを使うと言うことになると、そのレバーを下に押してノーマルにしなくては鳴らない。ノーマルにすると、多少音がくもってくる。しかし、これはごく注意深く聴かないと差がわからない程度だが……。トーン・コントロールはさすがに手慣れた設計で低音、高音ともに妥当な、非常に自然な効き方をする。
 ラウドネス・コントロールも、あまり強調された効き方はしない。トーンと同じくごく自然な効き方をする。このへんはうまい作り方だ。
ヘッドホン ヘッドホン端子での音はなかなかうまく出てくる。レベルの設定もいいし、ヘッドホン端子での音質もアンプの基本的な音質をそのままそっくり素直に出してくる。
 トータルしてみると、フロントのパネルファンクションの並べ方、整理の仕方、あるいは背面の端子など、さすがに手慣れたそつのない作り方で、そのへんでユーザーを遊ばせる術を心得たアンプということが言える。ライン・ストレートとノーマルを切り替えた時に、グリーンのきれいなランプがパッとついて一目でファンクションのある場所を表示したり、あるいはパイロットランプが電源スイッチを入れて待機の状態では赤、それが動作状態になるとパッとグリーンに変わるなど、なかなかきめが細く、手元に置いて楽しいアンプではないかと思う。

ビクター A-X5

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 ビクター独自のスーパーAを組み込んだアンプの中の中クラスの製品。同価格帯のアンプと聴き比べてみると、このアンプはなかなか個性的な音を聴かせてくれる。
音質 まず音に適度の厚みがある。同じ価格帯にあるLo-Dあるいはオンキョーの音というのは、どちらかといえば中域から高域の方に個性があるのに対して、ビクターはそれよりも中低域に厚みのあるようなものを感じさせる。音に重量感があり、一種ぶ厚い響きを聴かせる。言い換えれば、音がうわずる傾向が比較的少ないので、その意味ではかなり音量を上げてもカン高さ、あるいは金属質の音がしない。その点では聴きやすい音といってもいいと思う。それから、音が大変元気だ。抑えつけられた感じがしない。音全体の感じはそういうところだが、すべてのプログラム・ソースを聴いてみると、最近の新しいアンプ、例えばこの同価格帯でいうとオンキョーのA817などに代表されるような音の透明感、歪みの少なさ、ということを念頭において聴くと、透明感の点で、いささか物足りなさを感じさせる。あるいは逆に、そういうことを意識的に感じさせないようにコントロールした音なのかというように思う。つまり高域をスッと伸ばしたという音ではなくて、ほどよくまるめて聴きやすく作ったという印象がなくはない。
 特にそれは、テスト・ソースとして使った『サンチェスの子供たち』のオーバーチュアの部分にいえる。なにかもうひとつスカッとヌケきれないようなところがあり、爽快感に乏しい。そこがこのアンプの性格であり、何かを望みたくなる部分でもある。
 それからもう一つ、『春の祭典』のフォルティッシモの部分などでどことなくつかみが荒いというか、非常にかすかではあるが、音のなめらかさを欠く。いったんそこに気づいてしまうと、すべてのプログラム・ソースに何となくそういう印象を持つ。そこがちょっと首をひねったところだ。
MCヘッドアンプ オルトフォンのMC20MKIIの場合ゲインはかろうじていっぱい、ノイズは割合に少ない方なので、いっぱいにして使えなくはない。デンオン103Dの場合はもちろん十分。特にMMの標準的なカートリッジをつないだ場合と、デンオン103DでMCポジションにした場合と、ボリュームの位置が大変近い。これは大変いいことだ。MCヘッドアンプはデンオンあたりを基準にしてゲイン設定がなされているということがわかる。ただ、このMCヘッドアンプ自体の音というのは少し抜けがよくないというか、ちょっとこもるという感じがして、MC自体の持っているすっきりした切れ込みの良さというのを、必ずしも生かしているとはいいがたい。もっと気持よく抜けてほしいと思う。
トーン&ラウドネス トーン・コントロールはオン、オフしても、基本的に持っている音質はほとんど変わらない。極めてわずかに変わるとは言えるが、これはごく音のマニア的な聴き方で、普通に聴いているぶんには、変わらないといっていいと思う。トーン・コントロールの効き方はごく普通で、やや抑え気味だが、とてもきれいな効き方をする。
 それに対してラウドネス・コントロールはやや強調気味。かなり音がふくらむ感じで効く。
ヘッドホン ヘッドホン端子での出力はスピーカーをつないだ時よりも、ややレベル的に落ちる感じ。これは一般的傾向だが、ほかのアンプと比べると、ヘッドホン端子で聴いた時の音が、ことアンプ基本的に持っている音よりも、音の鮮度あるいは迫力、繊細感など、いろいろな意味で、音質が落ちるような気がする。
 もう少しヘッドホン端子にきちんとした音が出てきてもいいのではないかという印象を持った。

サンスイ AU-D607

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 いわゆる六万九千八百円のグループの中では発売時期の最も古いアンプで、データによると七八年十月ということだから、もう一年半近くも売られているアンプだ。しかし、このアンプの音というのは最新の開発機種の中に混ぜて聴いても、少しも古さを感じさせない。それどころか、結論を先に言ってしまうみたいだが、六万九千八百円のなかでは、私はこれがベスト・アンプだと思った。
 持ってみた感じも、高価格帯のアンプよりも重いくらいだ。重ければいいというものではないが、そのくらい一切手抜きをしていない正攻法で、きちんと作られたアンプではかいなと思う。ほかのところで何度テストしても、このアンプは常にいい面を見せてくれるので、間違いのないアンプと言い切ってしまってもかまわないと思う。
音質 音のバランスが大変良く、鳴ってくる音の一つ一つに何とも言えない、音楽を聴かせる魅力があり、それが聴き手を音楽にどんどん引きつけていくような、いい方向に働いてくれる。
 パワーは70W+70Wと公表されているから、このクラスとしては比較的大きい方だが、実際それ以上の力を感じさせてくれる。もっと値段の高いアンプも聴いたけれど、六万九千八百円というグループの中では、これはむしろその価格を上回る出来栄えではないかと思う。
 特筆すべきことは、テスト・ソースの中に入れておいたフォーレの『ヴァイオリン・ソナタ』のように、非常に音のニュアンス、あるいは色合い、というものう大切にするプログラム・ソースの場合でも、このアンプはこの価格帯としてはずば抜けており、いい雰囲気を出してくれた。フォーレ一曲聴いただけで、六万九千八百円としては別格扱いしたいと思ったくらいよかった。
MCヘッドアンプ MCヘッドアンプだが、やはりMC20MKIIまではちょっとこなせない。ゲインは音量をいっぱいにすればかなりの音量は出せるが、その部分では、ハム、その他のノイズがあるので、オルトフォンのような出力の低いカートリッジにはきつい。ただし、MC20MKIIの持っている音の良さというのを意外に出してくれた。ヘッドアンプの音質としてはなかなかいい。もちろんデンオン103Dの場合は問題なく、MCの魅力を十分引き出してくれた。
トーン&ラウドネス 次にトーン・コントロールだが、このトーンのディフィート・スイッチをオン、オフしてみると、トーン・コントロールを入れた状態では、注意深く聴くと、多少音質が損なわれる感じがある。トーン・コントロールは、ごく中庸な効き方で、なかなかうまい効き方をする。ラウドネス・スイッチも割に軽い、妥当な効き方をする。
ヘッドホン ヘッドホン端子の出力というのは、スピーカーを聴いた時と比べて、やや低い感じがするが、ほどほどの出力で音質も大変優れている。
 このランクの中では、このアンプはシャシー背面で、プリとメインを切り離すスイッチがついている。つまり、このアンプを買った後でプリアンプだけ、または、メインアンプだけをグレードアップしよう、あるいはマルチチャンネル・ドライブしようという時には、このアンプは大変メリットを持っている。これは一つの特徴である。
 もう一つ、発売時期が古いせいか、スピーカー端子が比較的簡単な、ボタンを押してコードを差し込む方式になっているが、アンプがこれだけの内容を持っている場合には、もっとコードをきちんと締めつけるターミナル式にした方がいいのではないか。この製品の途中からでもいいから、スピーカー・ターミナルはもっと信頼性の高いものに変えた方がいいのではないかと思う。これはアンプの基本的な性能がいいからそういうことを望みたくなるのだ。

★★★

Lo-D HA-5700

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 この機種から六万九千八百円に価格が一万円ほど上がるわけだが、これまでの五万九千八百円の中で比較的成績のよかった、例えばヤマハのA3、サンスイのAU-D7、テクニクスのSU-V6といったアンプに比べて、一万円上がっただけのメリットがあるかどうかというところが、ヒアリングの主なポイントになる。そこでこのLo-D HA5700だが、まず表示出力は50Wということで、この面では五万九千八百円のグループの中にも、50Wあるいはそれ以上のパワーがあるものもあるので、パワーの面でのメリットはまだ出てきてない。パネル上から見たファンクションだが、これも特にこのアンプならではという独特のファンクションはない。しかしパネル面は大変美しく整理されており、とてもスマートなデザインだ。ボリュームつまみの周りの表示もなかなか手が込んでいて凝っている。
音質 一言でいって、なかなかクリアーで、いい音だと思う。プログラム・ソースをいろいろ変えて聴いてみると、全体としては少し軽い感じの音がする。暗いとか重いとかの感じはない。そこはいいところだと思うが、例えば『春の祭典』でのフォルティッシモ、ポップスでは『サンチェスの子供たち』のオーバーチュアの部分、本当の意味での力を要求される、そしてまた非常に低音から高音までの周波数範囲の広いプログラム・ソースを鳴らした場合には、クラシック、ポップスどちらのプログラム・ソースでも、いくらか音のはランスが中域から高域による傾向が聴き取れる。言い換えれば、その中域、高域のクリアーな感じ、あるいは軽やかな感じというものをしっかりと支える、いい意味での重量感、あるいは重低音の支えというものが少し足りないのではないかと思う。五万九千八百円のグループから一万円上がったということを考えると、このへんからややアンプに対して、音についての本格的な期待をしたくなるわけだ。
 それから音全体の鳴り方だが、大変慎重というか、非常に注意深く、きめ細かく作られたということはわかるが、半面、音楽として内からわき上がってくるような、そういう面白さには欠けるような気がする。
MCヘッドアンプ 例によって、オルトフォンのMC20MKIIとデンオンの103Dという、二つの違ったタイプをつないでみたが、このMCヘッドアンプは多少内容が伴っていないのではないかという気がした。オルトフォンが実用にならないことはほかのンアプでも同様だったが、デンオンの103Dのようなインピーダンスの高い、比較的出力の大きいMCカートリッジでも実用範囲の音量にした場合、ボリュームの位置そのままでレコードから針を上げてみても、やや耳につくノイズがまだ残っている。いわゆるSN比があまりよくないということだ。このMCヘッドアンプは、よほど出力の大きなMC型でないと使いものにならないという気がした。
 したがって、このアンプでMCカートリッジを使う場合、専用のヘッドアンプ、またはトランスを別に用意する必要がありそうだ。
トーン&ラウドネス 次にトーン・コントロールの効きだが、トーン・スイッチをオンにして、それでトーン・コントロールが働くわけだが、低音の効き方はまあまあ。しかし、高音の効き方は少し強調し過ぎのようで、低音と高音の変化の具合が少しアンバランスな感じを受けた。ラウドネス・コントロールは比較的軽く、心地よい効き方をする。
ヘッドホン スピーカーに比べて、だいぶ音量が低く抑えられており、もう少しヘッドホン端子に音量が出てきてもいいのではないかと思う。
 ただし、ヘッドホン端子での音質はスピーカーで聴いた時と似ており、大変いい。

オンキョー Integra A-717

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 このアンプは今回のテストにすべり込みで間に合ったというオンキョーの新製品。オンキョーのアンプというのは、数年前から一つの音の方向付けを探り当てたようで、大変透明度の高い、そして雰囲気のある半面、多少、女性的あるいはウェットという表現を使いたいようなアンプを送り出している。この新製品にもその特徴はいい意味で受け継がれている。
音質 いろいろなプログラム・ソースをかけていくと、大変雰囲気がいい、音楽を聴く気にさせてくれるいいアンプだ。さすがに新しいだけあって、音の透明度が大変高い。澄んだ音がする。そういう透明度の高さ、雰囲気描写のよさということが相乗効果になって、レコードを聴いても、聴き手がスッとそこに引き込まれるようなよさを持っている。一言でいえば、大変グレードの高い、クォリティの高い音だといっていいと思う。
 細かいことをいうと、このアンプばかりではなく、オンキョーの今までのアンプに共通する性格のようだが、プログラム・ソースすべてを通して、音のバランスが中~高域に引きつけられる感じがある。しかし、このアンプには、もう一つの面として、それを支える低音のファンダメンタルがなかなかしっかりしており、そういう点で決して上ずった音にはならない。そこがこのアンプの長所であり、大事な部分だと思う。
MCヘッドアンプ オルトフォンのMC20MKIIの場合には、やはりゲインがいっぱいで、ボリュームを相当上げないと十分な音量が得られない。しかも、そのボリュームを上げたところでは、ハム、その他の雑音が耳障りで、結局オルトフォンではあまり大きな音量は出せないということだ。実はこのMCヘッドアンプには、ハイMCと何もないただのMCというポジションがあり、オルトフォンの場合にはやはりハイMCにしないと当然音量が不足するわけだが、それでも雑音の点でちょっと不利になる。ところがデンオン103DでもただのMCポジションでは少しゲインが不足し、ハイMCの方で聴きたくなる。ハイMCの方にすると、ボリュームを目盛り6以上まで上げると、相当ノイズが耳障りになるが、そこのところでも中以上ぐらいの音量が出る程度だから、103Dの場合でも少しゲインが足りない。もう少しSN比をかせいでほしいと思う。付け加えておくと、このアンプは試聴に間に合わせた試作最後のサンプルということなので、あるいは量産品に移る場合、そこが改善されるかもしれないし、できればそこを改善してもらうことを期待したい。
トーン&ラウドネス 次にトーン・コントロールの効き方だが、これはオンキョーのアンプが他の機種でもやっている独特のトーン・コントロールで、ボリューム・コントロールの位置によって、トーンの効き方が変わるというタイプ。ボリュームをいっぱい近くまであげた時にはトーンはほとんど効かなくなる。真ん中以下に絞った時に、普通の効き方をする。それも比較的軽い効き方で、いっぱいに回し切っても、そう不愉快な音はしない。ごく自然に低音、高音が増減できる。
 それからもう一つは、トレブルのトーン・コントロールを絞り切ったところで、ハイカット・フィルターを兼ねている。これもオンキョー独特の方式である。ディフィート・スイッチはもちろんない。それからラウドネス・スイッチの効き方もごく普通で、軽く効くという感じ。サブソニック・フィルターは20Hzと15Hzと二点ある。
ヘッドホン スピーカー・スイッチはロータリー式だ。A+Bのポジションはない。A、Bどちらかしか選べない形になっている。ヘッドホンはスピーカーから出てくるレベルよりもやや低いが、標準的。音質もスピーカー端子からじかに聴いた印象とほとんど変わらない、大変いい音で聴けた。

★★

ソニー TA-F55

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 このソニーのF55は、見た目にも大変独特のデザインで、内容的にもいろいろな工夫がしてある。ユニークなアンプだ。
 まず電源回路がパルス電源ということ。これは従来の電源より、非常にスペースが小さく、実効消費電力も少なく、しかも大きなエネルギー供給ができるということで、未来の電源といわれている。
 それからボリューム・コントロールが大変ユニークで、普通の回転ツマミでもレバーツマミでもなく、パネルのほぼ中央に位置した割に大きめのボタンに右向きと左向きの矢印が付いており、そのボタンを押すことによって音量の造言をする、と同士にパネルの左手の細長い窓に、そのボリューム・レンジが光で表示される。これは大変楽しい。しかもなかなか手がこんでいて、そのボリュームの上げ下げのボタンを軽く押すと、ゆっくりボリュームが上下し、強く押すとそのスピードが倍速になる。これは大変にエレクトロニクス的に凝っていて面白い。一種の遊びには違いないがなかなか便利なフィーチャーだ。その他、外からは見えないが、トランジスタの放熱にソニーが最初に開発したヒートパイプを使っている。これもスペースの節約になっている。このアンプは見た目には大変薄形で、しかもローコストにもかかわらず、このクラスでは抜群の70W+70Wというパワーを得ているというところが、このアンプの大きな特徴だ。
音質 音質はこのクラス全部をトータルして聴いた中では、やや異色の部分がある。一つ一つの音がどっしりと出てくる。そういう意味で線の弱いというような音が少しもなく、全部音がしっかりしている。例えば、『サンチェスの子供たち』のオーバーチュアにしても、あるいはクラシックの『春の祭典』のフォルティッシモの部分でも、非常に迫力のある音がする。
 そういう点で大変聴きごたえがするといえるが、ただしその迫力といのと裏腹に、何かひとつ透明感、あるいは透明感と結びつく音の美しさといったところで、個人的には物足りなさを感じる。それに、どちらかといえば音場が狭い、広がりにくいという印象もある。
 もっとスーッとどこまでも伸びる透明な美しさ、あるいはたとえばキングス・シンガーズのしっとりしたコーラスなどは、もっとなにかしみじみとハモってほしいと思うところがある。
 それに二つのスピーカーの間に音像がフワッと広がる、いわゆるステレオ・イフェクトも、もう少し広がりと明るさがほしいと思った。
MCヘッドアンプ MCヘッドアンプはなかなか性能がいい。3Ωと40Ωとの切り替えが付いていることをみても、きめ細かく設計されたものであることが、うかがえる。オルトフォンのMC20MKIIの3Ωの方で、ボリュームをいっぱいに上げてみても、このクラスとしては抜群のSNの良さだ。もちろんボリュームをいっぱいに上げれば、ノイズが聴こえるが、ノイズは割合に低い。
 ボリュームはかなりいっぱい近くまで使えるので、MC20MKIIでも音量としては十分に出せるということがいえる。
 DL103Dは40Ωの方で使えるが、ゲインとしては十分だ。
トーン&ラウドネス トーン・コントロールの効き方は、はっきりと効く。ラウドネスも同様で、これはやはり、ビギナー向きに、はっきりわからせるというような効き方をするように思う。ところでこのアンプの一番の特徴のボリューム・コントロールだが、人間の心理としてはダウンのスピードはもっと早い方がいいのではないかと思う。
ヘッドホン ヘッドホン端子での音の出方は、スピーカーをつないで聴いた時の音量感よりも、やや抑えめだが標準的な音の出方といえる。

テクニクス SU-V6

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 前号での試聴記で、とてもいいアンプだと思ったが、今回、ローコストのアンプを並べて聴いてみても、相変らずいいアンプの一つだという印象を持った。
音質 いいアンプという表現はかなり抽象的だが、とにかくクラシック、ポップス、そのほかいろいろなソースを随時、任意に片っ端からかけて音を聴いてみる。どこか薄手なアンプでは、プログラム・ソースによっては、いいところと悪いところが目立ってきて、何となく聴いていることがつまらなくなってくる。ところが、このテクニクスのV6はいつまででも音を聴いていられる。どんなプログラム・ソースでも、すべての音がきちんと聴こえるということが大変すばらしい点で、一言でいうと、比較的ローコストのアンプにもかかわらず、いわゆるコストダウンの手抜きをほとんどしていないのではないかと思う。
 例えばストラヴィンスキーの『春の祭典』のティンパニーとバスドラムが活躍するフォルティッシモの連続の部分でも、このアンプは少しも混濁しない。すべてのおとがきちんと分離し、よく調和しながら聴こえてくる。それからキングス・シンガーズのように、それと正反対の大変柔らかい美しいエレガントなハーモニーを要求するようなコーラスでも、その魅力が十分伝わってくる。とにかく一つ一つの曲について言い出せばきりがないが、すべてのプログラム・ソースがきちんと聴こえてくるということが言える。
 特にこの五万九千八百円という価格帯の一つ下のグループ、例えばビクターのA-X3、トリオのKA80、それぞれにいいアンプだが、それがここにくるとグンとランクが上がる、つまり音の品位が上がったという感じがする。
 このクラスではヤマハのA3も大変いい音を聴かせてくれたが、このV6とA3を比較すると、なかなか対照的な音を持っている。ヤマハのA3は比較的明るい、よく乾いた、応答の早い音がするのに対して、V六は少しウェットだ。それとヤマハの明るさに対して、少し音に暗さがある。
 それからもう一つ、ヤマハに比べると高域が少し線が細い気がする。しかし、それは音の繊細感、きめ細かさという印象を助ける部分なので、そのことは決してネガティブな意味で言っているわけではない。
MCヘッドアンプ このアンプもMCヘッドアンプが内蔵されている。オルトやぉんのMC20MKIIのようなローインピーダンス(低出力)のカートリッジでは、このアンプではさすがに能力いっぱい。ボリュームをかなり上げなくては無理だし、そこのところではかなりノイズに邪魔される。
 やはりデンオン103Dのようなハイインピーダンス(高出力)のカートリッジがMCヘッドアンプの設計の基準になっているように思う。デンオンの場合にはもちろん十分にMCのよさが味わえる。
トーン&ラウドネス このアンプにもオペレーションというボタンがあり、ストレートDCとリアトーンというポジションがある。ストレートDCではトーン・コントロールは効かない。トーンを使う時にはリアトーン側に倒すが、その場合にごく注意深くきかなければわからないわずかな差だが、このアンプの持つ基本的な音のよさから比べると、ほんの少し音が曇るような気がする。
 トーン・コントロールは大変軽い効き方をして、あまり低音、高音を強調しないタイプだ。
ヘッドホン ヘッドホン端子での音の出方だが、これは同じボリュームの位置でスピーカーからの音量とヘッドホンをかけての音量感とが、割合近いところまで、うまくコントロールされている。ヘッドホン端子での音の出方は大変よい部類に属する。

★★

デンオン PMA-530

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 デンオンのアンプはセパレートアンプの2000、3000というシリーズで、独特のAクラス・オペレーションを打ち出しているが、この530という新しいプリメインアンプにも、基本的には同じ考えが取り入れられているようで、ボンネットの上にダイレクトAというシールが貼ってある。価格の割に見た目が薄形にできており、外観からは、ローコストで手抜きをしたアンプかなという印象を受けかねないが、実際に持ってみると、このアンプは意外にずっしりと重い。かなり中身の濃さそうなアンプという気がする。
 比較的ファンクションも充実している。MシートMMの切り替えも付いており、スピーカーもA、Bが使える。そしてもう一つ、ダイレクト・カップルのボタンが付いている。これはヤマハのA3や、トリオのKA80と同じようにトーン・コントロール、その他のファンクションを飛び越してダイレクトで使えるという機能だ。
音質 このアンプの音質だが、一つ一つの音が、大変コントラストを強く、力を持って出てくる割には、全体の音域を通してのバランスというものが、どうもこの値段にしては、物足りないという気がした(理由はあとでわかった)。
 例えば『サンチマスの子供たち』のオーバーチュアの部分。この部分は非常に音域が広く、音の強弱も激しいところだが、ドラムスの低音の音がかなり力と重量感を持って聴こえてくるのに加えて、シンバルの音は、割合に鋭くシャープに出てくる。にもかかわらずいわゆる中低域のところのエネルギーがちょっと薄くなるような感じだ。
 少し細かい物の言い方をしすぎるかもしれないが、強いて説明しようとするとそういうことになる。
MCヘッドアンプ オルトフォンおよびデンオン、両方のタイプのカートリッジをつないでみたところが、やっぱりオルトフォンでは、少しゲインが足りない。音質が割合にいいから、比較的激しい曲ではオルトフォンでもSNが比較的いいのでフルボリューム近くでも、使えなくない。デンオン103Dの方は、これはもうデンオンのアンプだから当然とはいうものの、実に103Dをよく生かす音がする。ゲインも非常にうまく配分されており、手ごろなボリュームできちんとした音がする。最初のうちあまり音質についていいことを言わなかったのは、エラックの794Eをつないだ時の話で、実はこの103Dを、このMCヘッドアンプを通して鳴らした時の、このアンプの音というのは、最初に言ったような、気になる部分がかなりうまく抑えられて快適な音がした。ということは、当然のことかもしれないが、このアンプは、デンオンのカートリッジで相当音が練り上げられているという感じだ。
トーン&ラウドネス ダイレクト・カップルのボタンをオフにして、トーン・コントロールを動作させると、注意深く聴かなくてはわからない程度だが、音質はほんのわずか変化する。
 心もち音の伸びが損なわれるかな、という感じだ。トーン・コントロールを動作させた時の効き方というのは、ごく普通だ。ラウドネス・コントロールはトーンと無関係に動作させるものだが、これはごく軽く効くというタイプ。
ヘッドホン ヘッドホン端子での出力は、ごく標準的でヘッドホンで聴いた音量感と、スピーカーを鳴らした時の音量感がだいたい同じボリュームの位置で聴ける。ヘッドホン端子がやや低いかなという程度。このアンプはヘッドホン・ジャックを差し込んだ時にスピーカーが切れるタイプで、スピーカーのオフがない。スピーカーのAB切り替えがボタンのオン、オフで行われているので、このアンプに関しては、スピーカーのA+ビートいう使い方はできない。

サンスイ AU-D7

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 サンスイの全く新しいシリーズ。今までわれわれは、サンスイのアンプを、もう十数年来、黒いパネルで見慣れてきたが、突然、白いパネルの全く新しいデザインが出てきて、ながめてテストして聴いていても、まだサンスイのアンプだという実感がわかない。そういう個人的な感想は別として、これもこの価格としては、良くできたアンプの一つだという印象を持った。
音質 聴いた感じは、音が大変華やかで、明るい感じがする。そして、反応が軽い。これは最近の新しい設計のアンプに共通の特徴かもしれないが、大変透明感のある美しい、そして鮮度の高い、いかにも音楽に対する反応が早い、新しい音という気がする。強いていえば、少し軽すぎ、明るすぎ、あるいは華やかすぎ、という、表現を使いたくなる部分もあるが、それは決して音楽を殺す方向ではなく、このアンプの一つの性格、あるいは特徴という方向で、このアンプの音を生かしていると思う。
 アンプの音が華やかであろうが、鈍かろうが、そのアンプを通してレコードを聴いていて、なにか音楽を聴くことを、楽しくさせるアンプ。あるいは何となくその聴いていること自体がだんだんと楽しくなってきて、魅力を感じさせるアンプというのは、ある水準を越えたアンプだと思う。
 おそらくこのアンプの作り方、デザインを見てもクラシックの愛好家よりも、むしろポピュラー・ファンを楽しませるために作ったアンプではないかという気がする。しかし、これは決してクラシックが聴けないという意味ではない。テストでは、JBL4343とエラックの794Eという相当シャープな音の組合せで聴いたが、普通にこのアンプ相応の組合せをした場合でも、このアンプの音を一つ一つ大変弾ませて、美しく、フレッシュに生かすという特徴は十分に発揮されるだろうと思う。
MCヘッドアンプ MCヘッドアンプの性能は、これは後で出てくるAU-D607と大体性能的には近いと思う。つまり、オルトフォンMC20MKIIの場合は、ゲインはもうほとんど目いっぱいという感じ。ノイズもそう少ないとはいえない。
 ただし、大変クリアーな音がするので、ボリュームを絞りかげんならば、MC20MKIIの良さも結構楽しめるのではないかと思う。デンオン103Dに関しては、ゲイン、音質とも十分楽しめるところまでいっている。
トーン&ラウドネス このアンプは、トーン・コントロールに大変特徴がある。トーン・コントロールは普段はプッシュボタンでディフィート、つまり、はずされている。オンにすると、トーン・コントロールのツマミが全部で四つ、二個ずつ二段になっている。下の方は普通の低音と高音のコントロールだが、その上の左側はスーパーバス、超低音。それから右の方はプレゼンス、つまり中央のコントロールで、これをうまく効かすことによって、プログラム・ソースの面白さをかなりのところまで引き出すことができる。
 スーパーバスとプレゼンスに関しては、非常に微妙な効き方をするので、これをいわば味の素をきかせるような形で、うまくコントロールすることに成功すれば、大変面白いと思う。
 ラウドネスの効き方は普通という感じ。もう一つこのアンプは、今回テストした七、八万円までのアンプを含めて、数少ないアウトプット・インジケーターの付いたアンプで、パワーの数値が空色の窓に出ており、その内側を赤いバーが上に登っていくということで、パワーが読みとりやすい。
 これはこのアンプを使ってみて楽しいところだ。
ヘッドホン このアンプのヘッドホンは出力、音質ともにごく標準的なもの。

★★

ヤマハ A-3

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 A3は型番からもわかる通り、A5の上級機種ということだが、今回テストしたアンプの中では発売時期が一番古く、七八年の四月。この本が出るころにはそろそろ二年目を迎える。
 まず結論を一言でいうと、これは大変に良くできたアンプの一つだという印象を持った。ヤマハのアンプには、A5のところでも言ったように共通の明るさ、清潔感といったものがある。どこかさっぱりしており、変にベトベトしない、いい意味での乾いた一種の透明感を感じさせる。このA3は一番そこのところをよく受け継いでいる、いいアンプだと思う。
音質 耳当たりがさっぱりしているから、どこか物足りなさを覚えるかと思って、いろいろ聴いてみたが、音の一つ一つがよく練り上げられており、いわゆるごまかしのない大変オーソドックスな音がする。いくら聴いても、聴きあきない、聴きごたえがする。五万九千円という価格、しかも開発年代がそろそろ二年目を迎えるということを、頭に置いて聴いても、なお良くできたアンプだという印象を持った。
 一つ一つの曲について、これは細かく言うと、いくらでも言える、また言いたいアンプだが、ちょっと紙面が足りないので、要約して言うと、例えばピアノの強打音、あるいはパーカッションの強打音のように、本当の意味で音の力、内容の濃さを要求されるような音の場合でも、このアンプがそこで音がつぶれたりせず、大変気持ちがいい。
 そしていろいろなプログラム・ソースを通して、音のバランスが大変いい。音域によって、音色や質感、あるいはバランスといったものを、時々変えるようなアンプがあるが、このA3に関してはそういう点が全くない。それだけでも大したものだと思う。
 ただ一つお断りしておくと、このアンプはヤマハの上級機種にも共通した一つの作り方の特徴だが、パネル上半分のボリュームの隣のディスクという大きな、押すと薄いグリーンの色がつくボタンを押すと、トーン・コントロールその他を全部パスしてしまい、ダイレクトなアンプになる。その状態で、いま言ったようないい音が聴こえるわけだ。
 ダイレクトにしないで、トーン・コントロールを使おうとすると、いま言った特徴は、注意深く聴かなくては、という前提をつけなくてはならないが、ごくわずかながら、いまの良さは後退するという点を一つお断りしておく。
MCヘッドアンプ このアンプもMCのヘッドアンプが付いている。例によってオルトフォンMC20MKIIとデンオン103Dと両方テストした。
 MC20MKIIの方はボリュームをかなり上げないと十分な音量が出ない。しかし、ボリュームをいっぱいに上げてもノイズが比較的少なく、ノイズの質がいい。MC20MKIIが一応使えるということ、これにはむしろびっくりした。
 五万九千円というこのクラスの中では、なかなか良くできたMCヘッドアンプではないかと思う。もちろんデンオン103Dに関しては、問題なく、十分力もあるし、音質もいい。
トーン&ラウドネス トーン・コントロールの効きは比較的さっぱりした効き方だが、もちろんその効き方は耳で聴いてはっきりと聴き分けられる。トーン・コントロールのターンオーバー切り替えが付いているということも、さらに一層きめの細かい調整ができるわけで、非常に便利だと思う。ファンクションは充実しており、スピーカー切り替えもA、B、A+Bとある。いろいろ機能も充実しているということを考えると、これは総合的になかなか良くできた、買って大変気持ちのいい思いのできるアンプではないかと思う。
ヘッドホン ヘッドホンについては紙数が尽きてしまい残念。特に問題はなかった。

★★

ビクター A-X3

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 このビクターA-X3も前号の試聴の中に入っており、これも価格の割にはなかなかいい音だという印象を持っていたアンプだが、今回のテストでも、やはり大づかみの印象は変らなかった。
音質 このアンプはビクターの新しいアンプのセールス・ポイントであるスーパーA、つまりAクラスの新しい動作方式を回路に取り入れたアンプの中での一番下のランク。そのAクラスという謳い文句に対する期待を裏切らないような、とてもみずみずしいフレッシュな音が聴ける。チャック・マンジョーネの「サンチェスの子供たち」のオーバーチュアの部分は、かなりパーカッションの力強さを要求されるところだが、このアンプはローコストとしては、かなり聴きごたえのある音を聴かせてくれた。これはおそらく、前回の試聴記の時にも書いたことだと思うが、このアンプは低域が少し重量感を持って聴こえてくる。これがこのアンプの持っているひとつの性格かな、という気がする。
 言い換えれば、このアンプがそういう期待を抱かせるような、まず大づかみにいっていい音がするから、ついこちらが五万三千円という比較的安い価格を忘れて過大な期待を持ってしまうわけで、五万三千円という価格を考えると、むしろこれはよく出来たアンプといって差し支えないと思う。
MCヘッドアンプ このアンプもMCヘッドアンプが内蔵されているが、オルトフォンMC20MKIIとデンオンDL103D両方試してみると、これはやはり……と言わざるを得ない。オルトフォンの場合には、多少ゲインが不足する。ボリュームをよほど上げないと、十分な音量が楽しめない。しかも当然のことだが、そこまでボリュームを上げると、ややヘッドアンプのノイズが耳障りになる。結果からいうと、オルトフォンはつないで聴けなくはないという程度だ。これは仕方がないことだと思う。
 ただオルトフォンをつないだ時のMCヘッドアンプの音質は、こういう価格帯としては意外に悪くない。それからDL103Dの方は、もちろんこれはゲインも十分だし、大体MMのカートリッジの平均的なものをつないだ時のボリュームの位置が同じなので、このアンプは、デンオンの103Dあたりを想定して、MCヘッドアンプのゲインを設定しているのだろうな、というように思う。
 ところでMMカートリッジの方は、他のアンプのところと同じように、エラックの794Eを一番多く使った。このアンプはエラックの持っている中域から高域のシャープな音の部分が、プログラム・ソースによっては多少きついという表現の方に近くなるようなところがある。それはこのアンプが持っている性格かもしれない。割合に細かいところにこだわらないで、大づかみにポンと勘どころをつかんで出してくれるという点で、作り方がうまいなという印象がした。
トーン&ラウドネス そのほかのファンクションだが、トーン・コントロールの効き方は割合に抑え気味。あまり極端に効かないという感じだ。ただ、トーン・コントロールのトーンオフが付いている。トーンオフしても、トーン・コントロールのフラットの状態での音があまり変わらないので、これはなかなか設計がよくできていると思う。
 ラウドネス・コントロールの方は、トーン・コントロールと同様に、軽く効き、あまり音を強調しないタイプだ。
 このアンプで一つ感心したのは、ボリュームの・コントロールのツマミを回した時の感触の良さだ。いくらか重く、粘りがあり、しかも精密感のある動きをする。よくこういう感触が出せたなと思う。
ヘッドホン ヘッドホン端子での音、これはなかなかうまいバランスだ。スピーカーで聴いた時とヘッドホンで聴いた時の音量感が割合に合っており、そのへんはよく検討されている。

トリオ KA-80

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 このトリオのKA80も、前号の組合せの時に試聴したアンプの一つで、その時なかなか好感をもったアンプだ。
 これは四万八千円という価格をかなり意識した上で、いわゆる内容本位、実質本位というか、細かなファンクションをできる限り整理して、必要最小限のファンクションでまとめて、そのぶんをおそらく音質向上に回したのではないかと思われる。例えば、このアンプにはフォノもスピーカーも一系統しかないし、MCヘッドアンプも入っていないし、ヤマハのA5などのようにMCヘッドアンプを内蔵していたものから見ると、いわゆるカタログ上のメリットは薄いが、それだけ割り切って中身を濃くしたアンプではないかということがうかがわれる。 もちろんそれはこのアンプを見た上での先入観ではなく、むしろ音を聴いた後に感じたことだ。
音質 このアンプの音というのはローコスト・アンプにありがちな、音の芯が弱くなったり、音の味わいが薄くなったりということが、比較的少ない。あくまでも四万八千円という価格を頭に置いた上での話だが、これは相当聴きごたえのある音を聴かせてくれたと思う。
 例えば、キングス・シンガーズのポピュラー・ヴォーカルのような場合でも、しみじみと心にしみ込むようないいムードを出してくるし、美しくハモる。そういうところが聴きとれて、ローコスト・アンプにしては、かなり音楽を楽しめる音のアンプだというように思う。このアンプは、他のトリオの上級機種とも多少共通点のあるところだが、いくらか音のコントラストを強くつけるというか、音が割に一つ一つはっきりと出てくる傾向がある。そこのところは多少好き嫌いがあるかと思う。
 たとえばストラヴィンスキーの「春の祭典」のフォルティッシモの連続のような部分では多少派手気味になり、金管もきつくなるように聴きとれる場合もあった。しかしそれが手放しの派手な方向へ走っていかないのはさすが。
 フォーレのヴァイオリン・ソナタの第二楽章なども、ヴァイオリンの音が若干細くなるが、フォーレ的ムードをきちんと出すというところもある。
 ただしやはりクラシックでもポピュラーでも、編成の大きなスケール感を要求するものになると、さすがにこのアンプでは、そこまではきちんと出してくれない。これは価格を考えれば、ある程度仕方のないことではないかというように思う。あくまでもこの価格としては、非常によくできたアンプだということが言える。
トーン&ラウドネス このアンプはフタを閉めると、ボリュームとインプット・セレクターだけ。フタを開けるとトーン・コントロールが現れる。トーン・コントロール、ラウドネス・コントロールともに、ビギナー向きというか、わかりやすいというか、つまりよく効くというタイプ。
 トーン・コントロールを操作する時には、そのわきにあるストレートDC、およびトーンという切り替えスイッチをトーンの方向に押すわけだが、トーン・コントロールを使った場合には、いま言った音の魅力がごくわずかに減るという感じ。ストレートDC、つまりトーン・コントロールが働かないようにストレート・アンプにしておいた方が、音が一層クリアーのように思う。
ヘッドホン それからヘッドホン端子の出力。これはかなり抑えめになっており、ヘッドホンで腹いっぱいの音量を楽しみたいという場合には、相当ボリュームを上げなくてはならない。
 言い替えればパワーアンプの飽和ギリギリの方向に持っていくことになるので、ヘッドホン端子にはもう少しタップリとした出力を出してくれた方がいいように思う。

★★

ダイヤトーン M-U07

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 このアンプは一見してわかる通り、いわゆるミニアンプの系統に属する。今回のテストのように、ごくスタンダードのプリメインアンプをテストの対象としている中に、ミニアンプを混ぜるということは、テストとしてはあまりフェアーではない。これを承知のうえで取り上げた理由というのは、現在ダイヤトーンのアンプのカタログの中に、この価格ランクのものがほかにあまり見当たらない、ということと、これが比較的新しい製品であるということなので、あえて取り上げてみた。そのミニであることのハンデというのは、何かというと、当然同じ価格で極力小型化するためには使うパーツ、あるいはそれに付随する回路設計にいろいろ制約が出てくる。同じ価格でより小型化した場合に、無理に小型化しないで普通にゆったり作ったアンプに比べてどこか性能が劣るということは、これはやむを得ないことだ。したがって、ミニアンプは、ミニアンプの仲間の中に混ぜて、ミニアンプ同士のテストというのをすべきで、このアンプに関しては多少そういう点、ハンデをあげた採点をしようと思う。
音質 まず音全体の印象だが、割合に柔らかい、フワッとした、どちらかといえば甘口とも言えるような聴きやすい音が第一印象だ。これは実はダイヤトーンのアンプということをわれわれが頭に置いて聴くと、意外な感じを覚える。ダイヤトーンのアンプというのは、比較的カチッと硬めの音を出す。これがダイヤトーンのスピーカーにも共通する一つのトーン・ポリシーだと思っていたが、このミニアンプでは反対に割合に柔らかい音が聴こえてきた。
 柔らかい音というのは、また別な言い方をすると、少し音の芯が弱いという感じがする。これは繰り返すようだが、ミニアンプだからそう高望みをしても仕方がないことだと思う。この価格、そしてこの大きさ、それから公称出力が25Wということを頭に置いて聴くと、意外にボリュームを上げても音がしっかりと出てくる。これはミニとしてはむしろよくできた方のアンプだという印象を持った。
トーン&ラウドネス このアンプにはMCヘッドアンプは入っていない。そういう点は非常に作り方としては、割り切っている。スピーカーもA、B切り替えというものはなく、一本きり。その割にはテープが二系統あるというようにテープ機能を、かなり優先させている。また、トーン・コントロールの効きは、比較的大きい方で、ラウドネスも割合にはっきりと効く。ということはこういうミニサイズのアンプにはミニサイズのスピーカー組み合わされるというケースが多いだろうということを考えると、特に低音の方で効きを大きくしたという作り方は妥当だと思う。
ヘッドホン ヘッドホン端子での音の出方というのは、ヤマハA5のところでも言ったように、ボリュームの同じ位置で、スピーカーを鳴らしていると同じような音量感で、ヘッドホンが鳴ってくれるのが理想だが、このアンプもヘッドホン端子での出力をやや抑えぎみにしてある。
 テストには主にエラックのカートリッジ794Eを使った。多少シャープな感じのするカートリッジだ。それよりはスタントンの881S、比較的音の線が細くない厚味を持った音のカートリッジだが、その方がこのアンプの弱点を補うような気がする。つまりカートリッジには線の細いものよりは、密度のある線の太い音のカートリッジ、スピーカーも含めてそういう組合せをすると、このアンプはなかなか魅力を発揮する音が出せると思う。
 最後に、このアンプのマイクロホンの機能が充実しており、レベル設定やミキシング、それにリバーブが付けられるなど、カラオケを意識したようなファンクションもあり、楽しめる。

ヤマハ A-5

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 このヤマハのA5は、四万五千円というプリメインとしてはかなりローコストの部類だが、この製品をいろいろな角度からながめてみると、高級プリメインが備えている機能を最小限に集約して、できるだけ安い価格で提供しようという作り方がうかがえる。
 例えばMCのヘッドアンプを内蔵しているということも一つ。それからインプット系統がなかなか充実しており、テレビの音声チューナーを接続できるようにもなっている、といったことだ。見た目は一連のヤマハのアンプのデザインの系統で、大変さっぱりして清潔感のある印象を与える。
音質 この製品は前号でも試聴した製品なので、音は前にも聴いていた。今回改めて同じような価格ランクのアンプの中に混ぜてみて、どういう位置づけになるかというところが大変興味があったわけだが、この価格の中で、もしヘッドアンプまで入れて機能を充実させようと考えて作ると、やはりどこかうまく合理化し、あるいは省略しなくてはならない部分が出てくるということは、常識的に考えて当然だと思う。実際に音を聴いてみた結果、大づかみに言えば、これはヤマハの一連のアンプに共通の明るさ、軽やかさ、それから音が妙にじめじめしたり、ウェットになったりしない一種渇いた気持ちの良さ、そういった点を共通点として持ってはいる。
 ただ、いろいろなレコードを通して聴いてみて、一言で印象を言うと少し薄味だということだ。それからの音の重量感のようなもの、あるいはスケール感のようなものが十分に再現されるとは言いにくい。
 前号でプレイヤーのテストをした時に、レコード・プレイヤーが三万九千八百円というような価格でまとめたものから四万円台に入るとグーンと性能が上がるという例があったように、アンプでもやはり中身を充実させながら、コストダウンさせるためには、どこか思い切りのいい省略が必要ではないかということは当然考えられる。
 そういう見方からすると、このA5はいろいろな面からかなり高望みをして、本質の方はほどほどでまとめたアンプという印象がぬぐえない。トータルとしての音のまとめ方としては、さすがに経験の深いヤマハだけに大変手慣れたものだが、そのまとめ方の中身の濃さが伴っていないという感じだ。
トーン&ラウドネス ところでこのアンプをいろいろ操作してみての感じだが、トーン・コントロールの効き方は、低音、高音ともいわゆる普通の効き方をする。ラウドネス・コントロールは割合にはっきりと効く感じで、わかりやすい効き方をする。
MCヘッドアンプ MCヘッドアンプだが、MC20MKIIはボリュームをあまり上げたところでは使えない。つまりあまり大きな音量が出せない。ゲインも足りないし、ボリュームを上げていくと、ヘッドアンプのノイズのほうが、かなり耳障りになってくる。これはかろうじて使うに耐えるという感じ。しかし、デンオンの103Dの方は十分に使える。ゲインもたっぷりしているし、ヘッドアンプとしての音質も、四万五千円ということを考えれば、まあまあのところへいっているだろうと思う。
ヘッドホン ヘッドホンの端子での音の出方の理想というのは、ごく標準的な能率のスピーカーをつないで、ボリュームを上げて、適当な音量を出しておく。その音量感とそのボリュームの位置で、ヘッドホンに切り替えた時の音量感が、大体等しくなることが理想だ。その点、このアンプのヘッドホン端子で出てくる音量が、スピーカー端子よりもやや低めという印象がした。
 ヘッドホン端子での音質は、スピーカー端子で聴く音とほぼ同じで統一がとれている。