Category Archives: エレクトロボイス

エレクトロボイス Patrician 600

井上卓也

音[オーディオ]の世紀(ステレオサウンド別冊・2000年秋発行)
「心に残るオーディオコンポーネント」より

 米国のスピーカーシステムには、感覚的なサウンド傾向と音楽的な表現力から考えると、対比的なサウンドを持った、いわゆる西海岸タイプと東海岸タイプが、かつては明確に存在していたように思われる。
 西海岸タイプはウェスタン・エレクトリックの流れを汲んだ、例えばプレッシャー(コンプレッション)ドライバーユニットの振動板材料でいえばアルミ軽金属ダイアフラムを採用したものが多いのにたいし、東海岸タイプは、エレクトロボイス(EV)、クリプシュ、かつてのユニヴァーシティなど、フェノール系のしっかりと焼いた黒茶色のダイアフラムを採用しており、この両者の音質、音色、さらに、エネルギーバランスやトランジェントレスポンスの違いは、しっかりと聴きこめば誰にでも簡単にわかるものであった。こうした好き嫌いを越えた、地域的、文化的な大きな違いが確実に存在することは、簡易単に否定できない現実であろう。
 近代におよび、ブックシェルフ型が台頭してくると、低感度ながら驚異的な低音再生能力をもつようになり、メカニズムそのものの姿・形がストレートに音質、音色、表現力に表われる新世代スピーカーシステムが、沈静した新しい音の世界を展開するようになる。しかし、そのひとつ以前の世代では、JBL、アルテックといった西海岸タイプと、EV(地域的には中西部になるが)、クリプシュの東海岸タイプの音の対比が大変に興味深い話題であった。
 EVはいまはプロ用システムのイメージが強いが、かつてはステレオ時代以前から、ホームユース主体のハイエンドブランドとして、わが国でも揺るぎない地位を得ていた。
 EVの製品もステレオ時代を迎えて全体に小型傾向が進展したようではあるが、ここで取り上げるパトリシアン600は、EVならではの、スピーカーづくりの真髄を製品化したモノーラル時代のオールホーン型コーナーシステムである。
 低域はP・クリプシュが発明した独得な構造のコーナーホーン型エンクロージュアによるもので、部屋のコーナーに設置することで、その能力から考えると非常にコンパクトにまとめられた構造に驚かされる。このエンクロージュアには、当時16Ωが標準的だったインピーダンスを、約4Ωという非常に低いものとした18インチ(46cm)後継の18WKが組み合わされた。
 とくに注目したいのは828HFプレッシャーユニットと折り返し型ホーンを組み合わせたミッドバスで、大型化して実用不可能といわれた中低域ホーンを見事にコンパクトにまとめていることだ。詳細な部分は覚えていないがこの中低域部は、前面と背面双方にホーンが取り付けてあり、これひとつで2ウェイ的な働きをしていたようだ。つまりパトリシアン600は、4ウェイ構成プラスαの5ウェイシステムであったのかもしれない。なお、中高域にはT25系ユニットを、高域にはT35系ユニットを搭載している。
 コーナー型エンクロージュアのメリットで非常にコンパクトな外形寸法で優れた低域再生能力を実現した、とはいうものの現実のパトリシアン600は、じつに巨大なシステムである(実測で高さは150cmを超え、幅は約90cm)。しかしそのサイズを意識させぬ軽妙な表現能力の素晴らしさは譬えようのない、オーディオのロマンそのものである。とくに、忘れてならないことは、旧世代超大型スピーカーシステムのなかでも、ホーン型エンクロージュアと軽量高能率ダイアフラム型振動板ならではの、かけがえのない魅力を本機は色濃く備えている。
 スピーカーシステムの夢と理想に、経費、人材、時間という現代の3悪を無視し挑戦し到達しえた、この壮大なプロジェクトの成果は現代の欠陥の裏返しである。

エレクトロボイス DIAMANT, SAPHIR

井上卓也

ステレオサウンド 74号(1985年3月発行)
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」より

 超弩級フロアー型システムである、パトリシアンIIをトップモデルとするエレクトロボイス社から、新しく、コンシュマーユースのラインナップとして、ジュエリー・シリーズが登場することになった。
 このシリーズは、スイスEVにより開発されたシステムであり、ヨーロピアンサウンドとヨーロッパ調デザインに特徴がある。シリーズの名称が示すように、CRISTAL、OPAL、SAPHIRとDIAMANTの、それぞれ、宝石の名がつけられた4モデルシリーズを構成している。
 今回試聴をしたのは、SAPHIRとDIAMANTの上位2モデルであるが、他の2モデルも簡単に招介しておこう。まず、CRYSTALは、もっとも小型なモデルで、20cmウーファーと25mmドーム型トゥイーターを2500Hzでクロスオーバーした2ウェイ方式のシステムである。このモデルのみ、エンクロージュア仕上げがウォルナットレザーとブラックオークレザーの2種類が用意されている。
 OPALは、CRYSTALよりひとまわり大きなバスレフ型エンクロージュアに、20cmウーファーと38mmスーパードームトゥイーターを1500Hzでクロスオーバーした2ウェイシステムである。この2モデルは、ユニット配置が、バッフルボード中心に置かれたインラインタイプで、トゥイーターユニットの上部に、EVでいう、ヴェンテッドボックスという、バスレフ型のポートがある、というユニークな点が特徴であろう。
 まず、今回の試聴で最初に聴いたSAPHIRは、20cmウーファーをベースに、38mmスーパードーム・ミッドレンジと25mm口径CDホーントゥイーターを、1500Hzと7000Hzでクロスオーバーした3ウェイシステムである。
 新シリーズをユニット構成から眺めてみると、CRYSTAL、OPAL、SAPHIRの3モデルが、20cmウーファーを採用したモデルで、CRYSTALをジュニアタイプとすれば、OPALが標準型、SAPHIRは、そのグレイドアップ型とすることができるだろう。つまり、この3モデルは、シリーズ製品というに相応しい内容をもっているといえるだろう。
 SAPHIRは、とくにワイドレンジを意識させないスムーズなレスポンスをもつシステムである。低域は、20cmウーファーらしい、軽やかで、適度な反応の早さが特徴であり、滑らかでサラッとした中域と程よくクリアーな高域が、巧みにバランスする。
 使いこなしのポイントは、気持ちよく、軽快に弾んだ音を楽しむといった方向へのチューニングが好ましいであろう。
 まず、スピーカーの置台は、構造的に充分に剛性があり、音質に注意を払った材料を使った木製のスタンドあたりが好ましい。もしも、平均的にコンクリートブロックを使うとすれば、その表面は薄いフェルトなどでカバーし、ブロック固有の乾いた響きは抑えたいものだ。そして、その上に、木のブロックや角棒などを置いてから、システムをセットするとよいだろう。
 またスピーカーコードも、情報量が多いOFCやLC−OFCを使い、トータルバランスは細かにスピーカーのセッティングを変えて修整することがポイントだ。
 DIAMANTは、新シリーズのトップモデルであるが、内容的には、上級機種のBARON・CD35iのジュニアタイプとも考えられる。しかし、両者を比較すると、新製品らしく音響的には、DIAMANTのほうが基本設計が一段と進んでいるように見受けられる。
 その、第1は、新シリーズ共通の特徴であるが、バッフルにネックステル材料が採用され、バッフル面の不要輻射を抑えていること。第2に、中音と高音用のアッテネーターが、バッフル面から除かれ、この部分でのノイズ発生を防いでいることだ。
 このシステムは、新シリーズのトップモデルだけに、かなり本格派の音をもっている。さすがに、30cmポリプロピレン・ウーファーをベースとするだけに、SAPHIRと異なり、スケール感が格段に豊かになり、柔らかく余裕のあるベーシックトーンをもっている。中域以上も、適度にクリアーで抜けがよく、帯域感は充分に伸び、音場感もナチュラルに拡がり音像も比較的クリアーに立つ。使いこなしの基本は、SAPHIRと共通であるが、チューニングをした結果として得られる音は、明らかに1〜2ランク異なったものである。
 平均的な国内製品の高級システムよりは使いこなしは難しいが、期待に応えられるだけの内容を備えた製品と思われる。

エレクトロボイス baron CD35i

菅野沖彦

ステレオサウンド 71号(1984年6月発行)
特集・「クォリティオーディオの新世代を築くニューウェイヴスピーカー」より

 エレクトロボイスのニュージェネレーションを代表するバロンCD35iは、これからのオーディオ産業そのものの国際化を考えるうえで、非常に重要な位置にあるスピーカーです。つまり、企業が国際化してゆくということと、音の個性の国際化というレベルの問題を、これほど鮮明に打ち出した製品はかつてなかった。
 まずこれはとても美しいデザインとフィニッシュワークが、大きな魅力のひとつになっているわけで、本当のヨーロッパ製スピーカーでもなかなかこれだけのセンスのあるまとめ方というのは少ない。
 音のうえからも、男性的な、どちらかと言えば骨太のしっかりとしたエレクトロボイス伝統のサウンドをちゃんと継承し、そのうえさらにニュージェネレーションのスピーカーと呼ぶにふさわしいプレゼンスの豊かさを持っています。指向性の改善というのは、このスピーカーのひとつのポイントだけれども、いわゆる音場型スピーカーと呼ばれるスピーカーにややもすると感じられるひ弱なところがまったくない。これは、70年代にアメリカで登場した新世代スピーカーとまったく異なるところで、先のJBL/L250同様に、しっかりと伝統を踏まえた音作りがされています。
 とてもおもしろいことだと思うのは、今、オーディオ製品というのはエレクトロボイスに限らず、どんどん国際的な作られ方がされるようになっていて、パーツや素材供給のレベルでは、様々な国籍のものが使用されています。アメリカ製のアンプの中をのぞいて、日本製のパーツがあったり、北欧製のパーツが入っていたりというのは日常化している。これも、ニュージェネレーションのひとつの特徴でしょうね。
 なにも、オーディオに限ったことではなく、すでにカメラやクルマ、およそすべての工業生産品は現地生産あるいは協同開発という国際的な展開が日常化しつつあるわけです。あの頑固なポルシェをして三菱のパーツが使われるという時代なんですね。
 少し話が飛躍するかもしれないけれど、世界には様々な国があって、今後は、産業分担主義で行かないことには成り立たないんじゃないかと、ぼくは考えているんです。日本は日本が一番得意とする産業で世界中を賄う、アメリカはアメリカで、という具合にね。
 たとえば、現在の飛行機の開発というのは、最終的な仕上げ、アッセンブルはアメリカがやるけれど、ある部分はフランス、ある部分は日本という形で分担することが可能になっている。このバロンというスピーカーは、エンクロージュアデザインをスイスのE−Vが担当し、サウンドのコンセプトはアメリカのE−Vが担当するという形で、商品の完成度はとても高い。
 ところが、世の中には、まったくそれとは逆の意味での国際化、というよりも国籍不明の均一化という現象もある。ヨーロッパのものがアメリカナイズされたり、最近では外国製品と言えどもジャパンナイズされてゆく傾向があるんです。文化の独自性が生きるような国際社会を目指さないと、音のアイデンティティ、個性が失われてゆくことになりますからね。デラシネ・オーディオじゃ駄目なんだ。
 今、日本だけではなく、ヨーロッパでもPAシステムにエレクトロボイスやJBLが使われるというのは極く当然なこととしてあるわけです。つまり、サウンドの輸出という意味で、明らかに文化交流的なレベルで音の国際化は進行している。で、文化交流というのは、文化ごちゃ混ぜ、均一化ということではなく、自分たちの音に対する感覚、嗜好とは異質な音をより広く、深く知ろうということにあるわけでしょう。つまり、自分とは異質なもの、他国の音を聴くことで、さらに自分たちの音の文化を高めようということになるんですね。
 オーディオというのは、科学技術ですから、その面での国際化、均一化は急速に進みます。しかし、それは、産業レベルの話であって、音の個性、それを育んだ地域性の根は、洗練されながらも国際舞台に乗ることで、より広いファンを得てゆく。音の国際化、普遍化というのは、そういう意味でなければならないんです。
 エレクトロボイスのバロンというスピーカーが、ニュージェネレーションのスピーカーの中で果している役割は、ですから非常に重いと言えます。インターナショナルサウンドというのは、音の無国籍化であってはならない。
 個性というと癖のように、個人の勝手気ままな性格のように思われるけれども、じゃベートーヴェンが、マーケットリサーチをして音楽を作ったのか、受けようと思って作曲したのかといえば、そうじゃない。あれほど強烈に自己主張を主観的に押し出した音楽が、これほど普遍性をもっているという事実が、なによりも音の普遍化を説明しているでしょう。
 たとえば、国際化、普遍化がもっと進めば、現在のように特に日本向けに作る、あるいはアメリカ向けに作るということのナンセンスさが問われてくるでしょう。オーディオはたしかに音楽を伝達する道具には違いないけれども、オーディオを楽しむということは、オーディオ機器に個性を求める、選択するということに意味があるわけで、何でもいいやということにはならない。国籍不明のオーディオや、日本向けオーディオという発想は、非常に危険なことであるということを、このスイスメイドのエレクトロボイスが警告しているといっていい。

エレクトロボイス Interface:AIV

黒田恭一

サウンドボーイ 10月号(1981年9月発行)
特集・「世界一周スピーカー・サウンドの旅」より

 これもまたアメリカのスピーカーであるが、エレクトロボイスは、アメリカのミッド・イーストを代表するメーカーである。このスピーカーのだす音を、ほんの1分もきけば、そのことは、誰にでもわかるはずである。ひとことでいうと、都会の音──とでもいうことになるであろうか。辛口の音である。ウェストコーストを出身地とするスピーカーの、あのあかるく解放感にみちみちた音とは、ひとあじもふたあじもちがう音である。同じアメリカのスピーカーでも出身地がちがうのであるから、JBLやアルテックをきいたレコードとはちがうレコード、つまりビリー・ジョエルやトーキング・ヘッズのレコードを、かけてみた。
 ビリー・ジョエルやトーキング・ヘッズのレコードをきいてみて、なるほどと納得のいくことが多々あった。トーキング・ヘッズの音楽のうちの棘というべきか、鋭くとがったサウンドを、このエレクトロボイスのスピーカーは、もののみごとに示した。もし、時代の影といえるようなものがあるとすれば、そのうちひとつがトーキング・ヘッズの『リメイン・イン・ライト』できける音楽のうちにあるのかもしれない。そういうことを感じさせる、このエレクトロボイスのきこえか方であったということになる。
 ビリー・ジョエルの『ニューヨーク52番街』は、音楽の質からいっても、性格からいっても、トーキング・ヘッズのレコードできけるものとずいぶんちがうが、きこえた音から、結果的にいえば、似たところがあるといえなくもない。つまり、リズムの示し方の、切れの鋭さである。いや、もう少し正確にいえば、リズムの切れが鋭く示されているというより、リズムの切れが鋭く示されているように感じられるということのようである。
 そのように感じられるのは、おそらく、このスピーカーの音が、ウェストコースト出身のスピーカーのそれに較べて、いくぶん暗いからである。
 しかし、音が暗いといっても、このスピーカーの示す音には湿り気は感じられない。音は充分な力に支えられて、しゃきっとしている。ひびきの輪郭がくっきり示されるは、そのためである。
 ハーブ・アルバートの『マジック・マン』のきこえ方などは、まことに印象的であった。アルバートによるトランペットの音がいつになくパワフルに感じられた。トランペットの音の直進する性格も充分に示されていたし、リズムの切れもよかった。音場感的にもひろがりがあってこのましかった。ただ、ひびきが、からりと晴れあがった空のようとはいいがたく、いくぶんかげりぎみであった。そういうことがあるので、ウェストコースト出身のスピーカーできいたときの印象と、すくなからずちがったものになった。
 こうやって考えてくると、このスピーカーの魅力を最大限ひきだしたのは、どうやら、トーキング・ヘッズのレコードといえそうである。そこで示された鋭さと影は、まことに見事なものであった。

エレクトロボイス Sentry100

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 このシステムは、エレクトロボイス社が放送局及びスタジオモニターシステムとして小型、高能率それに周波数特性が軸上で3dBダウンのポイントが低域で45Hz、高域で18kHzを目標に開発した新製品。
 ユニット構成は、20cm口径ウーファーとスーパードーム型と名付けられたトゥイーターの2ウェイ型で、クロスオーバー周波数は2kHzにとられている。ユニット関係では、放送局用コンソールのあまりハイパワーでないパワーアンプでも、例えばロックンロールのディスクジョッキーが要求するパワーを得るために高能率が要求され、300〜2000Hzで91dBが得られているが、この値は米国では高能率の部類に入るようすである。また、テープデッキの早送り、巻戻し時のキューイングでトゥイーターを破損しないように、ドーム型トゥイーターの許容入力は、通常のタイプの約5倍の25Wに耐える設計である。
 システムとしての許容入力は、長時間の使用では30W、10ミリセコンドの短時間なら300Wと発表されている。インピーダンスは6Ωとあるから、全般に能率を上げるためにインピーダンスをかなり下げる設計が広く採用されている昨今では、むしろ平均的な値といえよう。ちなみに、5万円以下の国内製品ブックシェルフ型では公称インピーダンスが8Ωで、実際の最低インピーダンスが4Ω以下というシステムも存在している。最低インピーダンスを知らぬユーザーが8Ωと信じて比較試聴をすれば、このようなシステムは見掛け上で高能率と思いやすいことに注意すべきである。
 このセントリー100で注目したいのは、場所的にモニタースピーカーを任意の位置にセットし難い放送局などのスタジオ使用状態に合わせるために、別売のSRB7ラックマウント兼ウォールマウントキットがある。これを使えば、19サイズのラックに前面から取付け可能だということだ。
 エンクロージュアも業務用を考慮して外装はマットブラックのビニール仕上げだ。
 セントリー100の豊かでやや制動の効いた低域をベースに、少し薄い中域、スムーズな高域という典型的2ウェイバランスの音だ。音色は低域が重く粘りがあり、高域は適度に明るい。モニターとしては穏やかな音で長時間の試聴でも疲れないタイプ。

エレクトロボイス Interface:DII

エレクトロボイスのスピーカーシステムInterface:DIIの広告(輸入元:テクニカエンタープライズ)
(スイングジャーナル 1980年7月号掲載)

E-V

エレクトロボイス Interface:CII

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 エレクトロボイス・インターフェイスCIIは、アメリカのスピーカーらしい迫力ある音が魅力。名門エレクトロボイスのスピーカーらしい豊かな個性を持っている。25cm口径ウーファー、16cm口径スコーカー、ドーム・トゥイーターの3ウェイ。

エレクトロボイス Interface:AIII

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 このスピーカーのきかせる音をひとことでいうとすれば、生気にとんだサウンドということになるのではないか。まことに積極的な表現力をそなえたスピーカーだ。ただ、誤解のないようにつけ加えておけば、このスピーカーは、たしかに積極的な性格はそなえているが、だからといって音のきかせ方が、ごりおしで、おしつけがましいということではない。あかるく、ヴィヴィッドな音であるために、あくまでもすっきりした印象を与える。音像もふくらまず、くっきりと提示されるが、たとえば❸のレコードできかれるバルツァのはった声などは、いくぶん金属質なものになる。もう少し音にきめこまかさがあれば、このスピーカーの音の魅力は倍加されたのだろうが、その点では多少ものたりない。音量をあげてもすっきりしたところが失われないのは、このスピーカーにたくましいところがあるからだ。

総合採点:9

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(好ましい)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(好ましい)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(好ましい)

エレクトロボイス Interface:AIII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 奥行きの浅い、壁かけ型的作り方に見みえるが、実際、鳴らしてもみても背面は硬い壁にぴったりつける必要がありそうで、そうしないと低音の量感が不足する。台の高さは、部屋の特性と床面の材質や表面処理に応じて調整するべきだが、試聴室では約20センチの高さにした。専用のアクティヴ・イコライザーをアンプのテープモニター端子に挿入する指定がある。高域を0、−3、−6……とスイッチ切替で絞れるが、それとは別に低域をやや補正してあるように聴きとれる。相対にからっと乾いた硬質な音がする。輪郭はしっかりしているが、しかしときとして骨張る傾向もあり、必ずしも質の良い音とはいいにくい。MCカートリッジ(DL303、MC20II)があまりよく鳴らない。というよりスピーカーがMCの情報量をこなしきれない印象で、MM系のエラックは中〜高域の張りが少々やかましく、結局エンパイア4000DIII/LACあたりでまあまあのまとまりになる。

総合採点:8

●9項目採点表
音域の広さ:7
バランス:7
質感:6
スケール感:7
ステレオエフェクト:8
耐入力・ダイナミックレンジ:7
音の魅力度:6
組合せ:やや選ぶ
設置・調整:やや難し

エレクトロボイス Interface:AIII

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 30cmドロンコーン付エンクロージュアに20cmウーファーとドーム型トゥイーターがつき、さらに専用イコライザーが付属するという独特な設計のブックシェルフが+ヒーカーである。最大入力がピークで250Wというヘビーデューティ仕様をみても、このスピーカーのたくましさがそうぞうできる。再生音はかなり特長のあるもので、密度の高い充実した音の触感は魅力的だ。しかし、全体のバランスは決して端正とはいえず、かなり個性的といわざるを得ない。オーケストラの分厚いハーモニーの再生は見事なものだが、人によってはこのアクの強さについていけないかもしれない。私にとってはそれほど違和感のあるものではないのだが、音楽によってはもっと繊細で端然とした響きも欲しくなる。音楽が無機的に白けることはないが、とくに押しつけがましい印象になるようだ。好き嫌いのはっきりわかれるスピーカーだと思うが、それにしてもスピーカーというものは程度の差こそあれ、嗜好の対象とならざるを得ないものなのである。

総合採点:8

エレクトロボイス Interface:DII

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 このスピーカーに関しては、設置のしかたで、あれこれ工夫をしてみた。台にのせたりおろしたり、台を高くしたり低くしたり、さまざま試みてみたが、なっとくいくような音をきくことができなかった。一種独特のたくましさをそなえた音ということができよう。ひびきの表情より力を強調する傾向がある。エリプソンの対極にある音ということもできるにちがいない。低い方の音の力強さは、なかなかすばらしい。いかなるひびきもあいまいにせず、くっきりと示す。その思いきりのよさは、それなりに魅力だ。ただ、いかにも、インティメイトな表情に不足する。批判的ないい方になってしまうが、この音のおしだし方のたくましさは、上質のPAをきいているような気持にさせる。高い方の音に、もうひとつ輝きがあり、すっきりとぬけた感じがあれば、このスピーカーの力強さに対する反応もいきるのだろうが。

総合採点:7

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(ほどほど)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(ほどほど)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(ほどほど)

エレクトロボイス Interface:DII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 かなり寝起きのよくないスピーカーらしい。というのは、鳴らしはじめの頃は、中域だけで高・低両端の極度に不足した硬い音で、これはひどい、と思ったのだが、鳴らしこむにつれて、少しずつバランスが整ってきて、中域の力は快い充実感を助け、音量を上げても危ない音のしない、安定化つ明快な音が楽しめはじめた。血も肉もいっぱい詰まった血色のいいアメリカ人、という感じで、さすがインターフェイスのシリーズもここまでくると、質も向上し、本当の力に支えられた気持の良い音になってくる。低音の量感のコントロールが使いこなしのひとつの鍵のようで、背面からの離しかたと、独特の低域のアッテネーター、そして付属のイコライザーアンプの併用とで、低音がこもらず、しかし十分の量感をもって鳴るポイントを探し、調整しなくてはならない。調整がうまくゆけば、やや中域の張った独特のバランスを好むなら、明るい、力のある音で、プログラムソースを選ばず楽しめる。

総合採点:9

●9項目採点表
音域の広さ:9
バランス:8
質感:8
スケール感:9
ステレオエフェクト:9
耐入力・ダイナミックレンジ:9
音の魅力度:8
組合せ:やや選ぶ
設置・調整:かなり難し

エレクトロボイス Interface:DII

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 アメリカの名門エレクトロボイス社のユニークなシリーズ、インターフェイス7機種中の最高モデルが、このDIIである。きわめて独創的な3ウェイのスピーカーシステムで、30cmウーファーはエンクロージュア底面に収納され、ユニークな16cmミッドレンジとのクロスオーバーに工夫がされている。トゥイーターはホーン型。イコライザーアンプが付属しているのも特長である。こうしたオリジナリティに溢れたシステムにふさわしく、音もおそろしく個性的である。そして、その個性波決して音楽を疎外するものではないところが、さすがにEVなのだ。中音域が張り出し、実に圧倒的なグラマラスな響きである。これを非常識なバランスの音とするか、強烈な個性として熱烈に愛すか、大きく分れるところだろう。大音量再生はこのシステムの得意とするところで、ちょっと他では得られないコクのある響きが楽しめる。繊細さとは縁遠いスピーカーといってよいが、うまく手なづけると、いろいろな可能性を秘めているようにも思える。

総合採点:8

エレクトロボイス Interface:CII

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

多彩な製品構成を展開するインターフェースシリーズ中で第2位にランクされるフロアー型3ウェイ。中音ユニットは独自の最適位相反転の理論を中域に導入したVMRIIユニット採用、イコライザー付属。

エレクトロボイス Interface:D

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 同社のスピーカーの特徴は、明快さ繊細さよりも粘りのある重厚さ、たくましさにある。その点、好みのわかれるところかもしれないが、同社を代表する本機の力強い音は魅力だ。

エレクトロボイス T350

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 T35のデラックスモデルである。ホーンはT35よりひとまわり大型化されたエレクトロボイス独自のディフラクション型である。また、イコライザーにユニークな構造のソノフェイズ型を採用しスムーズな高域特性を得ているのも同社のトゥイーターの特長である。ダイアフラムはフェノリックダイアフラムで、ボイスコイルはボビンを使わず直接ダイアフラムにエポキシ系接着剤で固定してある。磁気回路の磁石は重量453gのアルニコV型で、T35より3dB高能率である。

エレクトロボイス T35

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 トゥイーターユニットとしてはロングセラーを誇り、JBLの製品とともに米国を代表する専用トゥイーターユニットである。エレクトロボイスのドライバーユニットの特長は、ダイアフラム材料に軽合金を採用せず、ベークライト状の薄いフェノリックダイアフラムを使っていることで、これは、音色面でもかなりの違いとして感じられる。クロスオーバー周波数は3・5kHz以上で使えるのも特長で、フルレンジユニットとの2ウェイ、マルチシステムの高音用と幅広く使える。

エレクトロボイス Interface:AII

菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

独創的主張をもった存在価値のある製品。音はしたたか。

エレクトロボイス Sentry V

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

伝統的なEVサウンドをもっとも正統に伝えたセミモニターシステム。

既製スピーカーシステムにユニットを加えてマルチアンプでドライブする(その3)

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-1 マルチスピーカー・マルチアンプのすすめ(ステレオサウンド別冊・1977年秋発行)
「内外代表パーツ200機種によるマルチウェイ・システムプラン」より

 第2の中音用ユニットを加えるプランは、ベースとなるシステムが2ウェイ構成であるときに使いやすい。実際に、現在シリーズ製品としてメーカーから発売されているブックシェルフ型システムのなかには、同じウーファーとトゥイーターを使用し、上級モデルにはコーン型スコーカーを加えて3ウェイ構成としている例が多い。エンクロージュアの外形寸法では、2ウェイにくらべて3ウェイ構成のほうが、コーン型スコーカーのバックキャビティを必要とするために1サイズ大きくなるが、ウーファー用としてのエンクロージュア内容積では変わらず、低音の性能はほぼ同じと考えてよい。
 かつて、JBLのシステムにあったL88PAには、中音用のコーン型ユニットとLCネットワークが、M12ステップアップキットとして用意され、これを追加して88+12とすれば、現在も発売されている上級モデルのL100センチュリーにグレイドアップできる。実用的でユーモアのある方法が採用されていたことがある。
 ブックシェルフ型をベースとして、スコーカーを加えるプランには、JBLの例のように、むしろLCネットワークを使いたい。マルチアンプ方式を採用するためには、もう少し基本性能が高い2ウェイシステムが必要である。例えば、同軸2ウェイシステムとして定評が高いアルテック620Aモニターや、専用ユニットを使う2ウェイシステムであるエレクトロボイス セントリーVなどが、マルチアンプ方式で3ウェイ化したい既製スピーカーシステムである。この2機種は、前者には中音用として802−8Dドライバーユニットと511B、811Bの2種類のホーンがあり、後者には1823Mドライバーユニットと8HDホーンがあり、このプランには好適である。
 また、アルテックの場合には、511BホーンならN501−8A、811BならN801−8AというLCネットワークが低音と中音の間に使用可能であり、中音と高音の間も他社のLC型ネットワークを使用できる可能性がある。エレクトロボイスの場合には、X36とX8、2種類のネットワークとAT38アッテネーターで使えそうだ。
 マルチアンプ方式では、クロスオーバー周波数の選択、ユニットの出力音圧レベルやボイスコイルインピーダンスの制約がないために、スコーカーユニットの追加は大変に容易である。つまり音色の傾向さえ選択を誤らねば、他社のユニットホーンの採用も可能であり、実は、このように他社のユニットが自由に選べるのがマルチアンプ方式の本当の魅力だ。中音ユニットの音色傾向は、構造にも関係するが、ドライバーユニットなら主に振動板であるダイアフラム材質により左右される。アルテックが現在の主流である軽金属のダイアフラムであることにくらべて、エレクトロボイスは伝統的に硬質フェノール樹脂製のダイアフラムを採用している特長があり、これが、エレクトロボイスのサウンドの特徴になっている。このタイプのダイアフラムは、よくPA用と誤解されやすいが誤りであり、ナチュラルで軽金属ダイアフラムの苦手な弦やボーカルに優れた再生能力をもつ。
 その他のバリエーションには、3ウェイ構成のシステムの低音と中音の間に、主にコーン型の中低音ユニとを加える方法がある。この場合には、追加したユニットを置く位置がポイントになる。この方法は、クロスオーバー周波数が低くなるため、マルチアンプ方式のほうにメリットは大きいものがある。

●スピーカーシステム
 アルテック 620A Monitor
 エレクトロボイス SentryV
●ドライバー
 アルテック 802-8D
 エレクトロボイス 1823M
●ホーン
 アルテック 511B
 エレクトロボイス 8HD
●コントロールアンプ
 GAS Thoebe
●エレクトロニック・クロスオーバー・ネットワーク
 サンスイ CD-10
●パワーアンプ
 低音域:GAS Son of Ampzilla
 中音域:GAS Grandson
 高音域:GAS Grandson

エレクトロボイス Sentry V

黒田恭一

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイントの試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶弦をはじいた強さがききとれる。幾分遠くにひびいてはいるが。
❷スタッカートに力があって、ひろがりを示し、好ましい。
❸さまざまなひびきのとけあい方がいい。
❹主旋律がたっぷりひびいて、しかも重くならないのがいい。
❺クライマックスでひびきに無理がなく、たくましくきかせる。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像は大きい。ひびきのゆたかさが特徴的だ。
❷音色的な対比はついているものの、こまやかな味わいにとぼしい。
❸たっぷりひびくが、大味とはいえない。
❹この第1ヴァイオリンのフレーズとしては肉がつきすぎている。
❺各楽器の音色を幾分誇張ぎみに示す傾向がある。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶セリフの声が太く感じられ、表情を拡大する傾向がある。
❷接近感を誇張ぎみに示し、わざとらしい。
❸オーケストラと声のとけあいは多少ものたりない。
❹ロザリンデのはった声がかたくなる。
❺各々のひびきがもう少し鮮明に分離してもいい。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶音像はかなり大きく、声も太く感じられる。
❷言葉は、いずれにしろ、鮮明とはいいがたい。
❸残響を少なからず拡大している傾向がある。
❹バリトン、バスがせりだしぎみで、バランスはよくない。
❺たっぷりひびいて、堂々と終る。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的、音場的な対比は、力のあるひびきで示される。
❷後へのひきはたっぷりとれている。
❸ひびきに軽さが不足しているので、浮遊感はない。
❹前後のへだたりはとれているが、ひろがりは感じとりにくい。
❺ピークでの迫力は、圧倒的で、すばらしい。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶後方でのひびきに力がつきすぎている。
❷ギターの音像は、大きく、しかも力がある。
❸かなりせりだしてきこえるものの、効果的とはいえない。
❹きこえて、アクセントをつけているが、ひびきに輝きがない。
❺ききとれないことはないが、効果的とはいえない。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶くっきりきかせるが、ここでのサウンドの特徴を示さない。
❷ひびきはきわめて重厚であり、積極的だ。
❸ひびきの乾きも軽やかさもともにたりない。
❹重く大きなドラムスが、力感ゆたかにつっこんでくる。
❺声もまた、力にみちてひびいている。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像は大きいが、力強く、筋肉質のひびきとでもいうべきか。
❷指の動きをとびきりなまなましくきかせる。
❸消えていく音にも力強さが感じられる。
❹力強く、こまかい音の動きにも対応できている。
❺音像的な対比の上で、サム・ジョーンズが小さい。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶力にみたちドラムスがつっこんでくる。
❷ブラスのひびきの押しだしもすごい。
❸きわめて積極的に、前方に力をもって押しだされている。
❹音の見通しがよくないので、トランペットはいきない。
❺重いリズムだが、力があるので、効果を上げる。

座鬼太鼓座
❶前の方できこえて、ほとんど距離を感じとれない。
❷尺八のひびきは脂っぽく、和楽器とは思えないほどだ。
❸かすかにではなく、かなりしっかりきこえる。
❹力強くきこえる。消え方も充分に伝わる。
❺きこえる。大太鼓は西洋の楽器のようなひびきがする。

エレクトロボイス Sentry V

瀬川冬樹

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より

 脚がないのでブックシェルフのようでもあるし、大きさからいえばフロアータイプのようでもあり、どういう置き方が最良なのか、かなり大幅に試みてみた。まず20cmねどの台でインシュレーターを介してみる。低域がやや軽く、中~高域が少々硬い。次にブロックを寝かしてインシュレーターを介してみるが、あまりしっくりこない。そこで台をやめてインシュレーターのみ介して置いてみる。背面をかなり壁につけた方が低音がしっかりする。結局、インシュレーターも何もなしで床の上にそのまま、背面を壁にぴったり密着させたときが、最も落着いてバランスがよかった。E-Vの作る音は昔からわりあいに穏便で、とりたてて誇張というものがない。クラシックのオーケストラも十分に納得のゆくバランスで鳴らす点はさすがだ。しかしヨーロッパの音のようなしっとりした、ウエットで艶のある味わいとは違って、本質的にアメリカの乾いた風土を思わせる。こういう音の場合、カートリッジやアンプも、4000DIIIやCA2000のように、ウエットさのない音で徹底させる方が、明るさ、分離のよさ、アタックのよく伸びる気持良さが生かされる。シェフィールドのレコードでパワーを思い切り放りこむと、ヨーロッパや日本のスピーカーの決して鳴らすことのできない、危なげのなく音離れのよい、炸裂するような快適な音が聴こえてくる。大づかみだがカンどころをとらえた鳴り方だ。

エレクトロボイス Interface:A

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカのエレクトロボイス社は、スピーカー、マイクロフォンの専門メーカーで、長い歴史と高度なテクノロジーを持つ名門である。インターフェイスAは、ユニークな構成のシステムで、ウーファー20cmに25cmパッシヴラジエイター、そしてフロントにメタルドーム付の5cm径のトゥイーター、そして背面にも同サイズのトゥイーターを備える。専用イコライザーが用意され、ルーム・アコースティックに対処する。ペアで売られる。

エレクトロボイス Interface:A

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 部屋のアコースティック特性の補正をするイコライザーがつき、後面にもユニットをもったユニークな製品で、左右一組として売られるのもリーゾナブルだ。堅実な重厚さをもった響きは、品位が高いし、やや重く、暗いサウンドのイメージはあるが、その落着きがむしろこのシステムの魅力だと思う。安っぽい華美な響きがなく、しっかりした音像が頼もしい。ワイドレンジながら、いたずらにそれを誇張することがない。

エレクトロボイス Sentry IVA

菅野沖彦

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 エレクトロボイスは、名実ともに一流メーカーと呼ぶにふさわしいアメリカの名門である。本社はミシガン州ブキャナンにあり、一九二七年創立以来、数々の高級スピーカーユニットおよびPAシステムを世に送り出してきた。同時に、量高級スピーカーシステム、パトリシアンに代表される家庭用の大型フロアータイプや、近年ではブックシェルフ型まで幅を広げ、製品化してきたのである。
 現在では、残念ながらパトリシアンは製造中止になってしまったが、今日発売されているスピーカーシステム中、最も高級なモデルがこのセントリーIVAである。外観は、明らかにプロフェッショナル・ユースであり、かつてのパトリシアンに見られたような、ファニチュアライクなフィニッシュは見られない。この点では、一流品として登場する他のスピーカーに比べて、少し味けなさすぎるという印象を持たれるかもしれないが、しかし、現在のエレクトロボイスからすれば、やはりこの機種を挙げるべきだろう。
 アルテックのA7に一脈通じるシステムだが、同社のドライバーユニット、あるいはスピーカーエンクロージュアづくりの、長年のノウハウの蓄積が凝縮した高級スピーカーシステムといえるだろう。
 エレクトロボイスとしては、私はやはり一時代前につくっていた、きわめて緻密な木工技術をいかした家具調の大型スピーカーシステムの再現を、いま希望したいところだが、同社の歴史、実力からこのシステムを一流品として挙げておきたい。