Category Archives: アナログプレーヤー関係

ソニー PS-4300

岩崎千明

週刊FM No.10(1976年発行)
「私の手にした新製品」より

 かつてサーボモーターで圧倒的勝利を収めたソニーがクオーツロック以来、昔の実績をとり戻さんと強力なプレイヤーをデビューさせた。PS4300はDDモーターをベースにしたフルオートマチック・プレイヤーだ。現代的な高級プレイヤーの条件ともいえる軽針圧はもはや平均的な人間の指先の感覚では扱い切れずこの数年、各社からの新型の中心はフルオート全盛となった。ソニーお得意のエレクトロニクスによるサーボがゆきとどいていて、操作ボタンさえ触れるだけのワンタッチ・エレクトロ・スウィッチ。もっともこの羽根タッチそのものが必ずしも良いことばかりではなくて、かえって動作の不確実さを招きかねないのは皮肉。ボード上面でなくケースの前に位置させて誤タッチを避けているのだが、馴れないうちはそれでも操作させる意志がなくても触れてしまうのは赤い小さなランプがちらちらとつくせいかしら。この辺が狙ってるはずのイメージをぶちこわしてるのでは……。動作はまず満点に近い正確さ。ストップさせてから実際動作にちょっと間がありすぎる気がするが、手で直接アームを動かしてもメカとしては何ら差支えない点はいい。できれば5万台ともなったら、4万円と違い実用性能本位1点ばりでなく明らかな高級感が欲しいけど無理かな。アームはまあまあ、カートリッジは使いやすいがこれも価格帯相応の程度。

サテン M-18BX

岩崎千明

週刊FM No.10(1976年発行)
「私の手にした新製品」より

 今まで、何回となく、こんなによくなった、というメーカーの言葉ほどには変わりばえのなかったサテンのMC型。扱いやすさの点で確かに11型になったとき格段の向上をみせて以来、もっとも大きく音の良さを獲得したのがこのM18ではないだろうか。
 少なくとも、豊かさという点で、どうしても突破れなかったサウンドはM17あたりから、かなりはっきりした変わり方で、今までにない「大らかさ」を音楽の中に加えてきている。そして、サテンでは初めてベリリウム・カンチレバーを作ったのがこのM18BX。もともと、くっきりした繊細感という点では、ひ弱な繊細感の多い国産品の中で目立った存在だったサテンだが、中域から低域にかけての力強さが、はっきりと感じられるようになったのははじめてだ。特にBXはその力強さの点では、かつてないほどの迫力を発揮してくれるのがいい。サテンの場合、針圧の許容範囲の点でクリティカルなのが弱点ともいえるが、それも次第に確実に改良されて向上を重ねてきたのも見逃せない。
 カートリッジ自体の重量の重いのは相変わらずだが、あまり極端な軽針圧用アームさえ避ければ十分に使える。ただこれに変えると必ずアームの水平バランスをとり直さねばならない手間が加わる。しかしMC型としては驚くほど出力が大きく、トランスやヘッド・アンプは不要なので手軽だ。

マイクロ MA-505

岩崎千明

週刊FM No.12(1976年発行)
「私の手にした新製品」より

 アームは、理屈からいってもスプリングで針圧を加えるダイナミック・バランスが絶対良い。針圧にカウンター・ウェイトをずらして重力を利用したスタティック・バランス型の場合、アームは必ずアンバランス状態にある、ということになる。だから、ちょっとレコードのソリや偏心、あるいはプレーヤーの傾きは針圧に比例してアンバランス状態を招き、実際の使用状態で理論通りの働きをしてくれない。理想とはほど遠い状態にさらされているのがディスク再生の現実なのである。ところがダイナミック型は、かんじんの針圧加圧用のバネ自体を均一に作るのが難しい。だからダイナミック・バランス型アームはスタティック型にくらべて製品が格段に厄介だ。だから国産品は最近まではなかったし、海外製でもまれだ。軽針圧用にも使えるマイクロのMA−505がなぜ良いか、その基本的理由は以上のようだ。
 さらに中でも、この針圧を自由に変えられるのもダイナミックならではだがMA−505の場合「インサイドフォース・キャンセラー」から「高さ調節」まで演奏中に調節できるというのは驚きだ。超低域の響きがどっしり、スッキりするだけでなく、音楽の音全体が安定して、それは同じカートリッジと思えぬくらいの変わり方だ。トレースの安定向上という点だけにとどまらない飛躍ぶりは一度使えば誰もが痛烈に思い知らされるはずだ。ただし、この構造では止むを得ぬとはいうものの、デザインがあまりに武骨なのが残念だ。

オルトフォン MC20

岩崎千明 

週刊FM No.19(1976年発行)
「私の手にした新製品」より

 オルトフォンが、久方ぶりにMC型カートリッジの製品を出した。SL−15という傑作をデヴューさせてから何年になるだろうかその名もずぱり、「MC−20」と新しいネーミングで、いかにも自信のほどを、その名前からもうかがえる。MC−20は、まるでラピラズリーのような濃いブルーのボディで、よく見る今までのSL−15と外形は寸法までもまったく同じのようだ。しかし、その針先のカンチレバーは、今でより一段と細く小さい。
 MC−20は、まさに現代の技術によって、現代の音を背景として「オルトフォン」によって作られたムーヴィングコイル型カートリッジだ。その音の力強さの中に、オルトフォン直系の姿勢を感じとる事ができる。でも、この驚くほどの広帯域、分解能力は、まさに今日のハイファイの技術と、それによって来たるサウンドとを知らされるだろう。
 確かに、MC型は、MM型とは本質的な音の中味の違いを持っていることを、つくづく知らせてくれる。MC−20は、こうした点でもっともMC型らしさを持っているカートリッジだが、これは、もっとも老練なMC型メーカー、オルトフォンが作る製品であることを知れば当然だ。世界に、これ程MC型のノウハウを、長年蓄積してきたメーカーはないのだから。といっても、いまやMC型を作るメーカーは、はたして世界に何社あるだろうか。そこまで考えれば、MC−20の存在価値と、高価格の意義もおのずから定まるといえよう。

ミクロ・アコースティック QDC-1e

岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 想像し難い一風変った発電メカニズムでこれを技術的オリジナリティとしているこのミクロアコースティックQDC1eは、今日的な標準からいかにしても長いカンチレバーに前時代的な印象を受けてしまうが、その割には針鳴きも大したことなく、大へん不思議な振動系だ。どういう振動工学上の根拠にあるのか定かではないが、出てきた音を聴く限り新鮮でかなり強いイメージを受ける。つまり、ストレートにパンチをくらったような直接的なサウンドで明快な鮮かさと、クリアーな分解能とで音像の確かなところも好印象。低域は力強く、迫力も量感も十分あり、それもシャープなアタックの感じは、ホーン型低音のようなイメージで、しかもこれがローエンドまで延びているのもすばらしい。低域から中域での鮮明でち密な粒立ち、さらに高域へかけて引きしまっている。ただこの辺は少々うるさくなる感じがなきにしもあらずだが、高音の輝きに耳を奪われてしまうのは惜しい。

オルトフォン Kontrapunkt-a

菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
「TEST REPORT 2001WINTER 話題の新製品を聴く」より

 デンマークのオルトフォンは元気である。カートリッジの新製品を2000年にも発売した。アナログファンにとって同社の健在ぶりは嬉しい。
 新しいカートリッジの名前はコントラプンクト(KONTRAPUNKT)と呼ばれる。英語ではカウンターポイント(COUNTERPOINT)つまり対位法の意味である。J.S.バッハの没後250周年を記念して命名されたものだそうである。
 1999年1月に発売されたMCジュビリー(JUBILEE)で開発された空芯リングマグネットによるクローズド・マグネティック・サーキットや6N銀線コイルを移植してはいるが、この製品では大幅なコストダウンが実現し、価格は約三分の一にも下がった。カンチレバーはアルミで針先形状はファインライン・スタイラスだが、音はMCジュビリーに比べて、さほど聴き劣りはしない。それどころか、音楽によってはこちらの方が、メリハリがあって力のある表現で好まれると思われるほどである。たしかにMCジュビリーの持つ品のいいしなやかさや空間の漂いの微妙なニュアンスは聴けないから、クラシックの弦楽合奏などでは一歩譲らざるを得ないところもあるが……、ジャズは100%この方がいいと思う。メリハリがあって力感もあるからだ。低音もこの方が張りと弾力性に富んでいる。
 筐体は材料に違いがあるのかもしれないが、見た目にはMCジュビリーと同じ型である。色には違いがあって、かたや黒なのにたいし、こちらはチタンカラーの渋いメタリックカラーである。針圧は2・5グラムで聴いたがトレースは安定していてトラッカビリティは大変に高い。45/45の溝の左右の壁面に刻まれた位相が不揃いな大振幅でも難なくトレースしてのけた。この辺りのトラッカビリティとS/Nの良さは、MCジュビリーでも感じたことではあるが、明らかに1980年代初頭のアナログ末期のカートリッジの物理特性を上回っていて、この20年近い間技術進歩がわかる現代カートリッジだという実感がある。あのままアナログ時代が続いたらカッティングもまだまだ進歩したと思われるし、総合的な音の良さや文化レベルは、今より向上したのではないか……などと考えさせられたものである。こういう製品が出るたびに棚のLPを引っ張り出して聴き直したくなるのは筆者だけではないであろう。

ノッティンガム・アナログ・スタジオ The Mentor

菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

アナログディスク・ファンには垂涎のプレーヤーであろう。少々モデルが多すぎて混乱するが、一台一台が手作りであるから、いろいろ作ってみたくなるのもわかるような気がする。なかでは、これはスタンダード・カタログ・モデルといんよいもので、カーボン製のワンポイント支持のロングアーム付きだが音も充分よい。

テクニクス SL-1200MK3D Black

井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

世界最大の製造台数を誇る超ベストセラー・アナログプレーヤー。小型軽量ながら要所を押えたメカニズムと、TV、パソコン等の外乱のイズに非常に強い設計により聴かれる、予想以上に優れたアナログディスクの音に驚かされる。高級機でもノイズ対策が不完全なら、本機の再生音を超える音はまず不可能であろう。信頼性、安定度は抜群。

オルトフォン MC Jubilee

菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

80年代前半のCD登場以降、アナログディスクの生産規模縮小にあわせ、多くのカートリッジメーカーも開発をやめてしまったのが、デンマークのオルトフォン社は、その後も連綿と開発を続けてきた。その成果が確実に現われたのがこのモデルで、最新カートリッジとして素晴らしいトラッカビリティと素直な音を聴かせてくれる。

ジェフ・ロゥランドDG Cadence

菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

実に独特な洗練された音を持つイコライザーである。カートリッジの音を素直に聴かせるというよりも、このアンプの音で美化して聴かせるという趣である。平衡入出力端子のみを持つが、アダプターで不平衡にも対応する。同社共通の極めて個性的なアルミ削り出しのユニークなパネルと筐体は美しい。同社のアンプ・ファン向き。

リン Linto

井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

比較的に手頃な価格のフォノEQだが、さすがにアナログプレーヤーLP12で有名になった同社ならではの独自のレコードの味を聴かせる異例の存在である。TV、パソコンが同じ部屋にある場合は、電源の取り方、設置場所の選択が、本機で良い音を楽しむためのポイント。ISDNターミナルボックスも要注意。

イケダ Ikeda 9 Supremo

井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

フォノカートリッジの理想をMC型に集大成した世界に誇れる逸品カンチレバーレスで針先自体が発電コイルを動かす基本構造を熟成し、磁気回路を強化して発電効率と聴感上での高SN比を図ったアプローチは、オーソドックスな手法だ。魅力を引き出すためには、昇圧トランスの選択が重要。昇圧比には要注意である。

マイクロ SX-8000II System

井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

超重量級ステンレス・ターンテーブルを中心に、アナログプレーヤーの理想形を集大成したピラミッド的存在。エアフロート軸受とディスクのエアー吸着を中心としたベルト駆動方式の成果は、まさに地に足が着いた音が聴かれる。重量級だけに設置場所の選択と設置方式で、音はいかようにも変る点に注意。

トーレンス Reference

菅野沖彦

音[オーディオ]の世紀(ステレオサウンド別冊・2000年秋発行)
「心に残るオーディオコンポーネント」より

 トーレンスの「リファレンス」を僕が買ったのは、1980年の暮れのことである。その半年ほど前に、マッキントッシュXRT20を入れて、これとの蜜月に夢中になっていたころのことだ。CDの登場間近で、LPが終焉を迎えるかもしれないなどと言われ始めたころでもある。連日、XRT20でLP鑑賞に耽っていたのだが、プレーヤーをもっとよくしたら、さらにいい音になるはずだ……と想うと、居ても立ってもいられない気持ちになったのであった。
 じつはその十数年来、アナログプレーヤーには悩んでおり、なかなか気に入ったものがなかったのである。EMTはアームとカートリッジの制約が気に入らなかったし、あのいかにもスタジオ機器然とした雰囲気も仕事の気分から解放されないようで嫌だった。DDはどうも音が悪いし、リムドライブももうひとつ……不満があった。糸ドライブでもやろうか? とも考えたが年中不安定で、いつもテンションに気を使わなければならないという煩わしさも音楽鑑賞上邪魔になりそうで嫌だった。結局、落ち着くところはベルトドライブで、慣性モーメントの大きいターンテーブルを小トルクの小型モーターで回すものがいいと考えていた。そしてまた、重量とソリッド剛性一点張りの偏った設計思想によるものは真っ平ごめんで、曖昧さを否定するという青臭い理屈を掲げて、あんなにロッキーなマニアックなサウンドに熱中する餓鬼には成り下がれなかった。かといってフラフラ軽量ターンテーブルもお呼びでない。つまり、当時僕が思い描いていたプレーヤーは、豊富な物量投入による重量級で、適度な剛性とダンピング、Qの分散をはかった、トータルバランスに優れたものだったのである。さらに、できれば、トーンアームは自由に交換できて、同時に数本取り付け可能なものが望ましい……などと欲張っていたから、そんなプレーヤーが簡単に見つかるわけはないだろう。しかし、CD時代も間近だし、そろそろアナログプレーヤーを決めなければ……とも考えていた矢先の、トーレンスの「リファレンス」の発売だったのである。縁というものはこういうものであろう。僕が頭に描いたものにもっとも近いプレーヤーシステムがついに現われたのだから……。当然これを見たときには「おお、これ! これこそ望みうる最高のプレーヤーだ!」と実感したのであった。
 こんなに、ぴったり自分の要望に叶う製品に出会うことは、滅多にあることではない。『ステレオサウンド』誌に書いた「リファレンス」の紹介記事(64号)はつねにも増して熱が入ったことは言うまでもない。そこでも書いたが、ターンテーブルに使う色として、ゴールドとモスグリーンを選んだことにも意表をつかれた思いで新鮮だった。当時、妙に強く印象に残っていた、真冬のアルスター湖畔で会った美女が着ていたモスグリーンのコートの色、そして彼女が肩からかけていた大きなゴールドの金具がついたタンのショルダーバッグと、このプレーヤーの色とのダブル・エクスポージュアが、鮮やかな記憶として残っている。
 わが愛機「リファレンス」は、いまもアナログディスクを聴くたびに満足感を与えてくれる。あの時期によくぞ出してくれた! とトーレンスに感謝しているのである。

ユニゾンリサーチ Simply Phono

井上卓也

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

ユニゾンリサーチのシンプリー・シリーズと組み合わせる目的で開発された電源部レスのフォノEQ。基本的にはMMカートリッジ対応型ではあるが、利得は52dBと高めの設定で、負荷抵抗も47kΩから22Ωまで4段切替可能なため、高出力MC型も使用できる。管球フォノEQとカートリッジの相性は魅力的で、気軽に使える利点は大きい。

リン Linto

井上卓也

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

アナログプレーヤーLP12で注目を集めたリンのフォノEQだけに、各種カートリッジの音を趣味性の高いレコードの音として聴かせる能力の高さは素晴らしく、遥かに高価格かつ高性能を誇る高級フォノEQでも、本機の音の佇まいに匹敵する製品は少ない。TV放送のない深夜に落ち着いて聴きたい、味わい深い音なのである。

イケダ Ikeda 9C V

井上卓也

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

基本的な発電機構は同社トップモデルIkeda9 Supremoと変らない、ダイレクトカップリング方式の魅力を味わうための注目モデルである。組み合わせるトーンアームはダイナミックバランス型がマストな条件ではあるが、初期の調整をオーソドックスに行なえば、予想以上に安定度は高く、この音の魅力は大きい。

イケダ Ikeda 9 Supremo

井上卓也

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

世界的に類例のない、針先が発電コイルをダイレクトに駆動する独自の発電構造を誇る同社のトップモデルだ。パーメンダー採用の磁気回路は効率が高く、磁気制動のバックアップで音溝の情報を確度高くピックアップしているような独自の音は、コンプライアンスのあるカンチレバー型と別次元の唯我独尊の世界である。

オルトフォン SPU Classic GE

井上卓也

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

第1世代のオリジナルSPUを現代に蘇らせた復刻版と考えられるモデル。現代的な非磁性体巻枠を採用する、軽量振動系の同社純MC型も大変に魅力的ではあるが、ステレオ初期からのアナログファンに、ステレオLPを初めて聴いた当時の感激を蘇らすキッカケとして所有したいと思わせる、本機の原点復帰的意義は大きい。

デンオン DP-900M2

井上卓也

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

塗装仕上げが美しいランバーコア材のプレーヤーベース部と、ソリッドな感じのターンテーブルが醸し出す、アナログ時代の旧き良きプレーヤーらしい印象は、旧いファンにとっては、ノスタルジックな感銘さえ受ける雰囲気がある。トーンアームは少し華奢ではあるが、トレース能力は高く、ハウリングマージンも十分。内容の濃さが魅力。

テクニクス SL-1200MK4

井上卓也

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

実質的に世界最高の生産量を誇る超ロングセラーモデル。キャビネットとモーターを一体化したアナログプレーヤーとしては、華奢な印象を受けるが、適度な柔軟構造による制振効果もあるようで高周波妨害にも強く、かなり条件の悪い場所で予想以上のアナログディスクの音が楽しめるのは立派。

マイクロ SX-8000II System

井上卓也

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

超重量級のステンレス製ターンテーブルはエアフロートベアリングで支持され、ディスクは空気吸引でターンテーブルに吸着される方式。音溝に刻まれた信号のみを何物にも妨げられずに拾い出そうとする設計方針の確かさは、常識を超えた確度の高い音で実証されている。少々、テンションの高い傾向はあるが、実に濃い音だ。

ノッティンガム・アナログ・スタジオ Anna Log

井上卓也

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
「注目の新着コンポーネントを徹底的に掘り下げる EXCITING COMPONENTS」より

 英国ノッティンガム・アナログ・スタジオの製品は、ヨーロッパでは、ハイエンドのADプレーヤー工房として定評があるようであるが、国内市場では『ザ・スペースデッキ』が最初に登場して一躍注目をあつめ、続く『ザ・メントール』でハイエンド・ADプレーヤーメーカーとしての実力が認められるようになった。今回新製品として開発された『アンナ・ログ』は、同社のモデル中の最高峰に位置づけられるADプレーヤーである。
 現在における理想のADプレーヤーを目指して作られた『アンナ・ログ』は、ノッティンガム・アナログ・スタジオ社が、5年間の歳月をかけて開発したモデルで、従来からの同社独自のユニークな技術にさらなる試みが加えられて完成されたという。
 同社の主宰者トム・フレッチャーが、英国の産業革命時代の、なんと1740年頃にカナダから輸入された樹齢200年を超える古い樺の巨木に出会ったことから、この『アンナ・ログ』の開発がはじまったという。樺は原木のまま保管されていたわけではなく、何らかの建築物や建造物に使用されていた木材だと推測されるが、とにかく古い巨木に出会ってインスピレーションがわいたことが『アンナ・ログ』開発の契機となったことは事実のようだ。
 外観からもわかるように、『アンナ・ログ』は、同社のADプレーヤーづくりの独特な考え方に基づいている。各種構成部品がネジ止めにより構造体が作られる一般的な方法ではなく、「ベース材料の上に各種構成部品を積み重ねて置く」という非常にシンプルで、わかりやすい方法を採用している。
 システムの基礎となる厚い平板上の部分は、MDFより一段と高密度なHDFと呼ばれるブナ集積材で作られている。
 重量級の超弩級ターンテーブルが取り付けてあるターンテーブルベースが、開発のポイントになった、カナダ産の古巨木の樺材を使ったブロックである。この樺材は、25mm厚の正方形にカットされ、19個をスパイラル(らせん状)に角度をずらして重ね合わせ、巨大な圧力をかけて特殊接着される。さらにブロックの中心を少しオフセットして、軸受けベアリングがマウントされる。トム・フレッチャーによれば、このブロックは、「貴方が指の爪で引っ掻いてみても、何ら固有音は聞えず、貴方の爪の音しか聞こえません」という。
 ターンテーブルベース両側は、長さが違うスタビライザーが置かれており、ターンテーブル中心からターンテーブル両端に向かって伝わる振動を抑制している。
 ターンテーブルは、二重構造で自社内の専用工場で作られ、材料は3年間エージングしたものを加工している。合金材料は公表されず、たんに重量25kgと発表されている。ターンテーブル上部には、カーボングラファイトの重量3kgのターンテーブルマットと呼ぶには抵抗を感じる円盤と組み合わせて、異種材料の構造体を形成している。軸受けは、さまざまな材料を組み合わせたスペシャルベアリングである。
 駆動は、円断面ゴムベルトを使うベルトドライブ方式で、駆動モーターは精密24極超低トルク・シンクロモーターが採用される。ターンテーブル起動時には、ターンテーブルを直接指で回すという、単純明解な方法が採用されている。駆動モーターは、HDFベース下に単純に置くだけの別置き型設計である。
 カートリッジの針先が、ディスクの音溝の振動をピックアップして電気信号に変換するアナログディスク再生においては、ターンテーブルおよびモーターの振動を無視できるような低レベルに抑えることが重要である。このため同社では、慣性モーメントの巨大なターンテーブルと、定速回転を保つだけの最小限の駆動力を与える超低トルクモーターを組み合わせる方法がベストと考えている。
 トーンアームは、単純に『アンナ・アーム』と名付けられたモデルだ。長さ30cmのこのトーンアームは、手加工で作られたアルミブロック削り出し一体型ヘッドシェルをもつ。アーム部分はカーボンファイバー製で、軸受け部は一点支持型かつ無制動としてユニークな設計で、無共振・無振動のパイプ中には7本の純銀単線が通っている。内容は不明だが、左右信号系4本と、他は独立したアース系のリードであろう。適応カートリッジの重量は、6〜20gと発表されている。
 このトーンアームで特徴的なことは、アームリフター優先設計でヘッドシェルには指かけがなく、現実的にはマニュアル操作は不可能に近い。したがってアームリフターの差同範囲は非常に広く、リフターが上がっているときには、まずディスク上に針先を落とすことが不可能な安全設計となっている。また、アーム操作はかなり慣れが必要なタイプで、特に針圧操作は、スケールをもたないスライド式の針圧調整ウェイトを指先で調整する方法のため、別に針圧計が必要となろう。
 試聴にはオルトフォンの最新型MCジュビリーを組み合わせて使った。自重10・5g、針圧2〜2・5gの規格で、好適なペアだ。
 カートリッジが現在の最先端技術を組み合わせたモデルであるだけに、スクラッチノイズの質はよく、量も低く抑えられ、伸びやかに広帯域型の音を聴かせる。しっとりした、ほどよくしなやかで潤いのある音は非常にナチュラルで、SN比の高さは格別の印象である。確実に音溝を拾いながらも、エッジの張った音とならず、情報量豊かに静かに内容の濃い音を聴かせるパフォーマンスは見事である。
 簡単に聴くと、穏やかな音と感じられるが、他の100万円旧のADプレーヤーと比較試聴すると、予想以上の格差があり、あらためて『アンナ・ログ』の実力の高さに感銘を受ける。従来の針先が音溝を拾う感じのあるリアリティの高さもアナログの楽しさだが、この静かなストレスフリーの音も新世代のアナログの音である。

ジェフ・ロゥランドDG Cadence

菅野沖彦

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

同社のプリ、コヒレンスやシナジー用のフォノイコライザーであり、汎用製品とは言えないかもしれない。デザインもアルミ削りだしの筐体も共通だ。入力はバランスが本来であるが、アンバランス変換アダプターも付属している。その透徹な音はプリアンプと同質の音触で、アナログディスクとは思えない透明感さえある。

オルトフォン SPU-Royal N

菅野沖彦

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

伝統的なSPUを最新の素材と設計でリファインしたカートリッジ。金と銀の混じった自然金にヒントを得たエレクトラム合金を採用し、これをコイルに使ったもの。柔軟なしなやかさと繊細感を持つSPUである。インテグラル・トーンアームでも使えるSPUで、その顔とも言える例のシェルには取り付けられていない。