Category Archives: パワーアンプ

ダイヤトーン DA-P7, DA-A7

岩崎千明

週刊FM No.17(1976年発行)
「私の手にした新製品」より

 ダイヤトーンの新シリーズ・セパレート型の一番安い、といっても、プリとパワー合わせて10万円の組合わせだ。70W+70Wだから、プリ・メイン一体型と価格的には相等しい。プリ・アンブが分離している構造がお徳用となるわけだ。その構造によって、SN比はよくなることは間違いなく、それが音質上にもはっきりとプラスをもたらして、クリアーな音の粒立ちと、ロー・レヴェルでのリニアリティの良さかがデリケートな音の違いの上にくっきりと出ている。プリ・アンブはデザインはまったく違うこの上のP10とは構造も違うが、伝統的に歪みの低さ、クロストークの少なさは、10万円台のアンブを越えているようで、それが音の上にも感じられるのだろう。プリとメインを分けるこの構造は、P7+A7では一体構造で用いる場合も少なくないと思われるが、実に堅固で、4本の取付けボルトさえ確実にしめつけてあれば絶対に安全、かつ確かだ。端子の位置も使いやすく、そうした意味での操作性は理想に近い。
 70W十70Wのパワー感も、セパレート型として、あるいは物足りないのでは、と不安もあろうが、実際に使ってみると、どうしてどうして、100W+100Wクラスにさえひけをとるものではない。使用中にあまり低音のブーストをやりすぎなければ充分なるパワーといってよい。この、いかにも中味の充実した中域から低音にかけての力強さは、高音の輝かしいクール・トーンと共にダイヤトーンの大きな魅力だろう。

NIRO 1000 Power Engine

井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

大変に奇異に受け取れるデザインに目を奪われるが、信号経路最短とした構想がもたらした結果だ。筐体構造は、各ブロックを分割しフローティングをする世界初の構想が実に壮快で純A級動作8Ω/150W自然空冷の機構設計は見事だ。固有音が非常に少なく、高SN比を活かした独自の駆動力は異次元の音に聴きとれる。

パイオニア M-AX10

井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

基本的には、4chパワーアンプではあるが、BTL接続の2ch高出力アンプ、各種デバイダーと組み合わせた2chマルチアンプ再生、さらに4ch使用と、大変に多機能を特徴としながら、基本性能を高次元で保っているのは見事。最大に魅力を引き出して楽しむためには、C−AX10は必要不可欠のペアで、マルチアンプ再生も容易だ。

マッキントッシュ MC202

菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

MC162に始まったマッキントッシュのパワーアンプのニューシリーズでトランスレスの普及型である。その型番が200Wのステレオアンプであることを示している。トランス付きの高級シリーズほどの高い価値観には欠けるが、ピラミッド型のエネルギーバランスは同社のサウンドで、より現代的と言える音。

ゴールドムンド Mimesis SR Power

菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

SRはゴールドムンドのエントリー・ラインと呼ばれるアンプのシリーズにつけられるイニシアル。50W×2の上質なパワーアンプでドライブ能力が高い。ハイエンドのマルチアンプやマルチチャンネル再生用のアンプとして何かと利用度の高い優秀なアンプである。すっきりとした硬質な質感だが、冷たくも無機質でもない。

マッキントッシュ MC352

菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

300W×2のマッキントッシュ・ステレオパワーアンプの標準的な製品である。同社製品の例に漏れずコストパフォーマンスは抜群。もちろん、あのブルーメーター付きグラスパネルで、そのアイデンティティが持つ誇りと喜びを感じさせてくれるであろう。現代的重厚さは、透明で鮮度が高い見事な音である。

ボルダー 102M

菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

ボルダーのアンプとしては旧世代の製品ではあるが、現在も、まったく色褪せるものではない。シンプルでさりげない作りだから地味な存在だが、大変安定していて、音も陰影のある濃厚な描写を聴かせる。独特のウェットで温度感の高い暖かい音である。型名の末尾にMがつくが、ステレオ・パワーアンプである。

マッキントッシュ MC602

菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

マッキントッシュのステレオ・パワーアンプの現役の代表機種である。600W×2のパワーと発表されているが、電源の余裕は1kWの出力をクリアーするほどで、同社のよき伝統にしたがって常に控えめなスペックである。信頼性の高い製品としての完成度は無類と言ってよく、美しいが無駄な贅のない傑作である。

マッキントッシュ MC1201

菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

負荷に無関係に1,200Wを出力するモノーラルアンプ。同社のフラッグシップである。巨大なメーターがこのアンプの実力を象徴しているかのようだ。この大出力でありながら、鮮鋭でデリカシーをも感じさせるサウンドが素晴らしいパワーアンプで、見ても美しく圧倒的で、真に高い価値を持つアンプの最高峰である。

アキュフェーズ M-2000

菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

アキュフェーズのモノーラルパワーアンプで、2Ω負荷で1,000Wの実力を誇る。4Ωで500W、8Ωで250Wである。現在、同社のフラッグシップであるだけではなく、国産パワーアンプの最高峰に位置する製品である。木理の細かいすっきりした音触は、いかにも国産の製品らしい緻密さを持っている。

ボルダー 1060

菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

1000シリーズは上位の2000シリーズに始まったボルダーの新世代ステレオ・パワーアンプで、8Ω時300W×2の出力を持つ。デザインも現代的でかつ重厚な風格に一新され、音も変った。旧シリーズの粘りと艶も捨てがたいものだったが、本機はより透明度の高いもので、すっきりした音触である。

NIRO 1000 Power Engine st

菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

新しい国産メーカーの力作である。設計者が機械機構の専門家であるため、アンプを機構的に見つめ直し、徹底的に追求したこだわりの製品である。見るからにユニークな外観であり、メカニカル・ビューティを感じさせるもの。音も研ぎ澄まされた品位の高いもので、パワーエンジンと呼ぶにふさわしい力感がある。

クレル 600c

井上卓也

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

クレルのパワーアンプ群中では、ステレオ板のトップモデルである。前作では少し大味な傾向があり、安定かつ強力な100V電源が不可欠な条件であったが、CAST化により高SN比、高分解能化が達成され、いちだんと使いやすく見事な音のアンプに発展進化を遂げた。本機が一般の家庭用電源で辛うじて使える限度の製品。

ジェフ・ロゥランドDG Model 8Ti HC

井上卓也

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

Model8をオリジナルとする、同社を代表する典型的なステレオパワーアンプ。高剛性ブリッジ構造の筐体はメカニズムの音質への寄与を如実に示した成果であり、型番末尾のTは入力トランス内蔵を示し、HCはハイカレント動作を意味する。見事な力感に支えられた正統派で高SN比の音は、基本性能の高さを示す証しだ。

セータ Dreadnaught (2ch)

井上卓也

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

純2チャンネル再生用パワーアンプとしての評価が基準であるが、最大5チャンネルパワーアンプに発展可能な並外れた開発方針は、パワーアンプらしい豪放磊落さがあり、それをデザイン、仕上げ、型番がバックアップする。さらに、この音の爽快感に浸ると、ひと味違ったオーディオの楽しみが如実に感じられるだろう。

ユニゾンリサーチ Smart 300B

井上卓也

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

究極の3極管として憧れの存在である300Bを採用したユニゾンリサーチの最新製品である。古くからオーディオ製品では、視覚的なデザイン、仕上げ、加工精度から醸し出されるイメージと、音のイメージの相関性を重んじる考え方があるが、木材と金属などを絶妙に組み合わせた本機の筐体構造は、真空管の灯りとの相乗効果で美しい。

パイオニア M-AX10

井上卓也

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

C−AX10とペアとなる4ch構成のパワーアンプで、かつてのM70の系統を受け継ぐ製品。高出力が得られる2ch(ブリッジ)使用が基本だが、C−AX10との組合せで4chアンプ(セパレート)によるバイアンプ駆動も楽しめる。入力系に入力切替と音量調整を備えるので、単独使用も可能。積極的な音が加われば文句なしに見事。

ゴールドムンド Mimesis 29.4

菅野沖彦

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

ゴールドムンドのパワーアンプ群の中のトップモデルがこれである。モノーラル仕様で出力は300W(2〜8Ω)である。音はまさに透徹と表現するのが相応しいと思う。しかし、それでいて決して冷たくないのがゴールドムンドの稀有な特徴である。解像力と透明感が高くても、つくべき肉はちゃんとついているからだろう。

マッキントッシュ MC1000

菅野沖彦

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

マッキントッシュのパワーアンプの中で最大の出力を持つモノーラル仕様のパワーアンプである。絶対の信頼感は他に変えられないものだろう。ブラック・グラスパネルにブルーの大型メーター、グリーンのイルミネーションが、この大型重量級のアンプで実現したことは素晴らしい。これがあれば鉄壁の構えという安心感がある。

ボルダー 1060

菅野沖彦

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

ペアで800万円のモノーラルパワーアンプ2050以来、ボルダーは豹変した。その2050やステレオ機2060の経験を生かした、現実的な価格のステレオパワーアンプがこれである。2000シリーズの廉価版という性格は音にもでていて、音触がさらっとしている。昔のボルダーはもう少しコクがあったのだが。だが、品位は高い。

マッキントッシュ MC602

菅野沖彦

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

マッキントッシュの最新ステレオパワーアンプ。MC500に代わるモデルだが、極めてスケールの大きな大電流増幅器で、余裕のあるパワーは上級機種のモノーラルパワーアンプMC1000並みである。その艶やかな音はマッキントッシュならではの迫力と繊細感を併せ持つ実力機だ。

ラックス B-10II

菅野沖彦

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

ラックスのパワーアンプ最上級機B10のアップグレードモデルで、1999年の新製品である。大電流、ローインピーダンス負荷に対し、いちだんと安定度を増した。惜しみなく物量を投入した音は、B10と同系の重厚でグラマラス、かつ艶と輝きに満ちた、ラックス独特の充実感に溢れたものである。

ボルダー 102M

菅野沖彦

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

もう、さんざんこの欄でも書いたように思うアンプである。100W+100Wの実用的な実力機で、私が毎日愛用しているものだが、肌合いのよい温かな音で力もある。油が適度に乗った旬の味だ。なんの変哲のないデザインは旧ボルダーの特質で、使っていて飽きがこないのがいい。最近の洗練ぶりは見違えるようだが……。

マッキントッシュ MC352

菅野沖彦

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

かつてのMC300のリプレイス製品だが、アンプの格は格段に上がった。MC500級と言ってよいだろう。音も力強くなったと同時に切れ込みのよい解像度が加わりリフレッシュされた。どこが変ったかは知らないが、鮮度が上がったようだ。見てよし、使ってよし。顧客にこれほど大きな満足感を与える製品も少ないだろう。

ゴールドムンド Mimesis SR Power

菅野沖彦

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

30cm幅のパネル筐体を持つSR PowerシリーズはゴールドムンドのENTRY LINEという廉価版だが、音は以下にもゴールドムンドらしい透徹さが感じられる。造りはさすがに少々寂しいが、これは50W+50Wのステレオ仕様で、私としては感度の高いスピーカーシステムか、マルチアンプの高音域に使うという条件付である。