Category Archives: ジョーダン・ワッツ

ジョーダン・ワッツ Module Unit, JH1000, JH200

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 英グッドマンのフルレンジユニットの名器AXIOM80や、超小型ブックシェルフ型2ウェイシステムとして世界的にショックを与えたマキシマなどの開発者E・J・ジョーダン氏と、同社の技術マネージャとして活躍していたレスリー・E・ワッツ氏の2人が理想の小型スピーカーの開発を目指し、1964年に創立したユニークなスピーカーメーカーが、ジョーダン・ワッツだ。
 同社の最大の傑作は、10cmアルミ合金コーン、ベリリウム銅線サスペンション、コーン径より大きい磁石を15cm角アルミダイキャストフレームに組み込み、フレームに音響負荷をかけたフルレンジ型のモジュール・ユニットだ。このユニットの全域型らしい、生き生きとした表現力豊かで反応のシャープな音は、非常に魅力的で、1個使用のA12、2個使用のA25、さらに4個使用のB50などで一躍注目を集めたことは記憶に新しく、その音が鮮明に想い出される。
 その後、超小型のジャンボ、一つのエンクロージュアでステレオ再生可能な8個使用のステレオラなどで一段と評価を高めながら、ユニークな陶器製花瓶型システムのフラゴンに至る。
 そして、トゥイーターを加えた2ウェイ型、ドロンコーン採用などのプロセスを経て、80年にはモジュール・ユニットMKIIIとなり現在に至っている。
 JH1000は、口径を12・5cmに拡大した、モジュール・ユニットと同構造の低域と、5・1cmメタルコーン型高域を、450Hz/6dB型で2ウェイ構成としたトールボーイのフロアー型で、現在の同社のトップモデルである。
 JH200は、新開発のダンパーレス特殊サスペンションの9cm全域型を、英国高級エンクロージュアメーカーとして定評の高いR・ホールダーが設計したエンクロージュアに収めた珠玉の小型システムともいえる新製品だ。本機は、全域型ならではの鮮度感が高く、爽やかで生き生きした音が印象的である。

ジョーダン・ワッツ Jumbo

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 高さ42cm、奥行約9cmと薄型コンパクトにまとめられたスピーカーで、同社のモジュールユニット一発のみというシンプルな構成になっている。キメの細かい輝かしい音が特徴で、見た目のようにカラリングが強いが、いかにも英国らしい粋なスピーカーだ。

ジョーダン・ワッツ Flagon

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

陶器の壺という外観の奇抜さからは意外なほどみごとな音が楽しめる。

ジョーダン・ワッツ Juno

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

全帯域ユニットらしい音色の統一と独特の軽やかさは他にない魅力。

ジョーダン・ワッツ Jumbo

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 小口径メタルコーンと独特なワイヤー支持による振動板をモジュールとしてまとめた全域型ユニットは、現在でもひときわ輝く存在である。システム中で最も小型のこのジャンボは、モジュールのシンプルでユニフォームな音の魅力を聴くのに最適であり、オーラトーン的にも使える十分な性能を備えている。

ジョーダン・ワッツ Jupiter TLS

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 抑制の利いた端正な鳴り方。低音から高音まで、でしゃばらず、しかし独特の魅力的な渋い光沢で聴かせる。周波数レインジも相当に広く、明らかにイギリスの新しい、フラットネスとワイドレンジを目ざした作り方だ。箱鳴りを完璧なまでに抑えてパワーを上げても低音をやや増強しても、低音楽器の音階が明瞭で、オルガンのペダルトーンも、ファンダメンタルが気持よく聴ける。あらゆる音に、イギリス紳士のような節度があって、しかしそこによく練り上げられた周到なバランスが作り上げられ、オーケストラからソロものまで、さらにジャズ系まで、ほどよい張りと明瞭度の高い自然な響きをともなって、こころよく聴き込むことができ、テストであることをつい忘れさせる。ハードな現代のプログラムもけっこうこなせるだけの力を持っているし、カートリッジやアンプもEMT、マークレビンソンといった緻密で新鮮な傾向がよく合う。壁にぴったりつける方がよさそうだ。バルバラのインティメイトな声が忘れがたい。

ジョーダン・ワッツ Jupiter TLS

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 有名なモジュールユニット2台をベースにした2ウェイの中型フロアータイプ。中低域が豊かで緻密。すばらしく安定な響きが実に心地よい。意外にパワーも入れられる。

ジョーダン・ワッツ Flagon

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 いわゆるハイファイ用の範疇で評価すべきでない、遊びの要素の強いおもしろいスピーカー。アンプ、プレーヤーを棚に隠してしまえば、純和室に置いてもおかしくない。

ジョーダン・ワッツ Module Unit

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 一体成型のメタルコーンを採用した個性的なユニットである。小粋で艶やかな音は非常に魅力的であり、クォリティも高い。エンクロージュアはバスレフ型がよいだろう。

ジョーダン・ワッツ Jumbo

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 背面を堅い壁につけたり、トーンコントロールでバランスを補正するなど使いこなしが必要だが、独特の渋く緻密な中音域の充実感が魅力。超小型にジャンボとは彼等の洒落か。

ジョーダン・ワッツ Jumbo

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 小柄ながら、滑らかで、粋な音を聴かせてくれるスピーカーである。エネルギッシュなサウンドを求めるむきには適さないが、小編成のクラシックからジャズまでは楽しい。

ジョーダン・ワッツ Module Unit

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 オリジナルエンクロージュアと共にでなくては特性を生かしにくいところがあるが、フルレインジよりもむしろ、マルチウェイの中低域用として貴重なユニットである。

ジョーダン・ワッツ Module Unit

井上卓也

ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)
特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より

 いまはなき、ローサーと並ぶフルレンジユニット、グッドマンAXIOM80の設計者であるEJジョーダンが自らの名を冠したユニークなフルレンジユニットである。10cm口径の一体成型軽合金コーンにベリリュウムカッパー線を3本使ったダンパーなど構造上でも異色の存在である。明るく滑らかで反応の早い音は小口径フルレンジユニットのファンの琴線に触れる魅力であろう。現在数少ない個性豊かなユニットの典型である。

ジョーダン・ワッツ GT

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 男声の音域、オーケストラの内声部の音域、つまり音楽の最も大切な支えになる中低音域が抜群に滑らかで豊かで、おっとりと穏やかな鳴り方をする。燻んだ渋い響きが実に快く上質で、聴けば聴くほどに、そしてこの独特の音質になじむにつれて、いつまでもこの音に身をまかせていたいような本当に心のなごむ雰囲気に包まれる。こういう音質こそ、近ごろめったに聴くことのできなくなったヨーロッパの上質のグラモフォンの伝統を汲むひとつの素晴らしい虚構の美学だという気持になってくる。言いかえればこの音には近ごろのハイファイ・スピーカーを評価する尺度があてはまらない。音域も決して広くない。背面を壁にぴったりつけて低音を補強してもいわゆる重低音は必ずしも充分出ないし、高域のレインジもそう広いようには思えないが、ガサついたりざわついたところのない安定な鳴り方。音の芯がほんとうにしっかりしているから、耳当りは柔らかくともごまかしがない。いわば力で支えるのでなく質の良さで音楽を確かに支える音質といえる。パワーはあまり入らない。特性も音色も個性が強いが、独特の魅力が欠点を上まわる。

周波数レンジ:☆☆☆
質感:☆☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆
解像力:☆☆☆
余韻:☆☆☆☆
プレゼンス:☆☆☆
魅力:☆☆☆☆

総合評価:☆☆☆☆