菅野沖彦
ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より
B&Oの高級ミュージックシステムで、美しい綜合ステレオセンターに、これまた素敵なペンシル型アクティヴ・スピーカーシステムを組み合わせたものである。現代最高の洗練されたセンサブルなミュージックシステムと言って異論はあるまい。音も耳あたりの良さとハイファイの解像度の絶妙なバランスを持っている。
菅野沖彦
ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より
B&Oの高級ミュージックシステムで、美しい綜合ステレオセンターに、これまた素敵なペンシル型アクティヴ・スピーカーシステムを組み合わせたものである。現代最高の洗練されたセンサブルなミュージックシステムと言って異論はあるまい。音も耳あたりの良さとハイファイの解像度の絶妙なバランスを持っている。
菅野沖彦
ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より
B&Oのミュージックシステムとしては中級の組合せと言ってよいものである。ウーヴェルチュール・ステレオセンターは縦型のAM/FMチューナー付きCDプレーヤーである。これにBeoLab8000のジュニアモデルであるアクティヴ・スピーカーシステムBeoLab6000を組み合わせたもの。
菅野沖彦
オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド創刊100号記念別冊・1991年秋発行)
「世界の一流品 スピーカーシステム篇」より
デンマークのB&Oはユニークなオーディオシステムを作るメーカーだ。まず、その斬新なデザインのオリジナリティが一貫してB&Oのフィロソフィとなっていることが特徴だが、一流品とはこういうものだろう。B&Oのデザインは、デニッシュ・デザインの個性が横溢していて明確なアイデンティティとなっている。次に、機能の充実に先端技術が生かされていることだ。ホームエンターテインメントシステムとしての集中的なリモートコントロール機能と、インストレーションとしてのスペース・ユーティリティを製品設計のプライオリティに置いている。とかくこうした製品は、内容が適当に妥協されたものが多いのだが、同社のオーディオ開発陣の音質へのこだわりは相当なものである。大艦巨砲型のコンポーネントではないから、音質重視設計としては限定されている。小さく薄く作らなければならない……といった枠はあるだろう。しかし、そうした条件をマイナスとして良い加減の妥協をしないところがB&Oの特質である。むしろ、それをテンションとプレッシャーとして技術的な努力をするのである。その好例がこのスピーカーシステムだ。3ウェイ9ユニットの仮想同軸型システムで、五角形の柱型である。底部に175Wのパワーアンプが内蔵される。ソフトクリッピング回路つきのこのアンプで駆動される音質は実に耳当りのよいもので、仮想同軸効果で床や天井の影響が少なく、設置の自由度が大きい。そして水平方向のディスパージョンが拡がり、ステレオフォニックな空間感が豊かである。ウーファーが13cm口径という小口径であるため、弾みのよい音が得られるし、正五角柱のエンクロージュアは定在波が立ちにくく素直で豊かな響きである。パワーアンプなしがベオヴォックス・ペンタだが、ベオラブ・ペンタの方が完成度としては高いし、製品として魅力的だ。センスのよいホーム・スピーカーシステムの一級品だ。
井上卓也
ステレオサウンド 84号(1987年9月発行)
特集・「50万円未満の価格帯のパワーアンプ26機種のパーソナルテスト」より
やや、ナローレンジ型の帯域バランスとマクロ的な音のまとまりが特徴のアンプだ。ヴォーカルでは、音色も乾き気味だ。カンターテ・ドミノは、教会の空間の拡がりが狭くなり、テープヒスが少し耳ざわりになる。アンプの基本設計は、筐体面で、下側に基部をつけ、上側にスピーカーを載せて、ベストになる構成であるだけに、今回のように単体の試聴ではリスクが大きいのは仕方ない。
音質:70
魅力度:75
菅野沖彦
ステレオサウンド 75号(1985年6月発行)
特集・「CDで聴く海外小型スピーカー中心の組合せに挑戦」より
B&Oは、ホームエンターテインメントという主張の中でオーディオ製品をつくっていくという会社ですから、機械が圧倒的に存在を主張するというような、マニアックなオーディオ機器は決してつくらない。こういういき方は、ともするとイージーな安物というふうに受け取られがちですが、B&Oの製品はそんな感じをまったく与えない。家庭で使われることを充分考慮した上でクォリティを追求していこうというメーカーですから、カートリッジ、スピーカーに関しては、超一級の物理的特性を持ち、かつ、すばらしい洗練された感覚を聴かせてくれるものがあります。
CX100は、そのB&Oのスピーカーシステムの中で、壁かけ用としても使える、もっとも小型のスピーカーシステムで、10cm口径のウーファーを二発と、ドームトゥイーターを、アルミ製のエンクロージュアに収めた2ウェイシステムです。形は、同社の高級スピーカーと同じ湾曲型のバッフルを使った、本格的な同社の主張の見られる仕上げになっています。ユニットも、相当質の高いものでしょう。
今回、ぼくが聴いたスピーカーの中ではいちばん小型ですが、音の質感はすばらしいものを持っています。先ほど、BOSEの301MMIIを、デニーズとか、マクドナルドに例えた例でいけば、こちらは小じんまりとした、しかし、非常にいい味を食べさせるビストロだという感じがします。ヨーロッパの味わいを、質で追求したいという人にとって、このスピーカーはすばらしいものだと思います。非常に小さいスピーカーですから、量は大型スピーカーのようには望めませんが、聴き手であるこちら側が頭の切りかえされすれば、十分な量感も味わえるスピーカーです。量より質というものを追求する、これは音のグルメの、いわゆるコニサーのためのスピーカーだという感じがするんです。
このCX100で、ハイティンクのマーラー、あるいはルドルフ・フィルクスニーのピアノなどを聴きますと、本当に、ヨーロッパの文化の薫りが馥郁として薫ってくる。特に、フィルクスニーは、ヨーロッパのよき時代の薫りを待った、数少ないピアニストの一人なわけです。彼のそういう薫りが、大型スピーカーでもめったに聴けないんではないかと思うくらい、すばらしいニュアンス、雰囲気で聴けるんです。フィルクスニーのピアノの特徴が、最も生きるスピーカーという感じを持つくらい、よく鳴ってくれました。
小型スピーカーであるだけに、ディスパージョンが非常によく、空間の再現がものすごくいい。位相差、時間差をきちんととった、オーソドックスな空間収録をした録音ならば、オーケストラを聴いても、量感を持った雰囲気を十分に伝えてくれる。ぼくはこの音に身震いするぐらい、ほれぼれとしてしまった。CX100が聴かせてくれたような音の質感を知り、その質感そのままで、リアリティとスケールの大きさを追求していくという方向でいってくれたら、オーディオは非常にすばらしい方向にいくだろうと思います。そういうことを感じさせるほど、B&OのCX100というスピーカーは、すばらしいと思います。
CX100が持つヨーロッパの薫りを生かすには、CDプレーヤーに同じヨーロッパの雰囲気を伝えてくれる、マランツのCD34を使うことに決め、組合せを考えてみました。
アンプは、本当は、このスピーカーのたたずまいにふさわしいセンサブルな製品が欲しいところなんですけど、いまの日本のプリメインアンプから、それを探すのは困難ですので、せめて、音だけでも、CX100にふさわしいアンプというような考えで、アルパイン・ラックスマンのLV105を選んでみました。このアンプの持っている音のニュアンスは、独特でコニサー的と言え、非常に音が軽やかに浮遊し、漂うような感じなんです。決して、音がへばりついたり、押しつけがましくなったりしない。このアンプを組み合わせてCX100から聴こえてきた音も、非常に豊かなふわっとした奥行きのある、空間の厚みまでをよく出してくれるものでした。CD34という、いい雰囲気を出してくれるCDプレーヤーと、このスピーカーとの間にあって、立派に間をつなぐ役目を果たしてくれた感じです。この組合せは、本当に音楽を非常にいいセンスで、もとの音楽の持っている薫りを楽しみたいという方に勧めたい。
二番目の組合せは、CX100の、性能的な優秀さを引き出してみようという考えで、マランツPM84とソニーのCDP302ESとを組み合わせてみました。LV105は、他のアンプではちょっと聴けない内声部の美しさがある反面、ちょっと上と下の帯域が弱い。他のアンプにないよさを持っていますが、他のアンプにない弱点もある、という微妙なアンプなんです。それに対してマランツのPPM84は非常に中庸を得た音のバランスを持つアンプなのです。
CDP302ESは、CD34と比べると雰囲気ではやや劣るところがありますが、情報量の豊かさ、音の伝送の正確さという面では優れており、使ってみたということです。
この組合せで聴きますと、このスピーカーではちょっと無理だろうなと思われるような、音源主義の録音、例えば先ほどから言っている、ショルティのマーラーのような録音が意外に生きてくる。この組合せは、このスピーカーが、ただ雰囲気だけで聴くためだけのものではないことを証明できたように思います。最新録音のものにも、細部にわたり充分対応してくれるだけの能力を持っています。ですから、ショルティのような録音の好きな方、またヨーロピアンじゃなくて、少しアメリカン、あるいは最近の日本の傾向の音を、このスピーカーから聴きたいというような向きには、この組合せが合うんではないかと思います。
そこで、第三例は、もう少しお金を出して、いま手に入るものの中で、音、アピアランスも含めて、このスピーカーを生かし切る組合せを考えてみました。頭に浮かんでくるアンプは、メリディアンのMCA1です。今回は、プログラムソースにCDしか使っていませんから、予算を少しでも下げる意味もあって、モジュールはCD用一つというシンプルな形をとりました。アンプに、MCA1を使いますと、CDプレーヤーも、やはり同じメリディアンのMCDを持ってきたいところですが、約20万円とかなり値段が高くなるので、あきらめざるをえない。そうなると、CX100の持ち味を生かすCDプレーヤーとなると、やはりマランツのCD34にどうしてもなってしまうのです。予算の関係もあって、第一例と同じものになってしまいましたが、このスピーカーの再現するヨーロッパ音楽の豊かな薫りを再現できるCDプレーヤーとしては、現状では、このCD34がベストといわざると得ませんね。
トータル金額がかなり高いものになりましたが、出てきた音は、本当にほれぼれとするほどのものです。もう本当に、美味ですな、これは。本当にグルメの音だと思いますね。こんなにすばらしいセンスの音は、ちょっとほかではなかなか得がたいんではないでしょうか。リアリズムを追求するとか、大きな音でガーンと音を体感するとかいうようなことではなく、インテリジェンスとセンスで趣味のいい音楽を聴こうと思ったら、この組合せは、大変ハイクラスなものだと思います。
井上卓也
ステレオサウンド 75号(1985年6月発行)
特集・「いま話題のカートリッジ30機種のベストチューニングを探る徹底試聴」より
●本質を見きわめる使いこなし試聴
標準針圧からスタートする。素直に伸びた帯域感と、適度にしなやかで伸びやかさのある表情が好ましい音だが、全体に少し抑えられた印象があり、低域の質感も今一歩、軟調気味であり、中高域も少し華やかである。針圧1・1gに増してみる。低域のクォリティが高まり、安定度が増し、中高域とのバランスもナチュラルになる。IFC量を1・0とすると、音場感がスッと拡がり、見通しの良さが出てくる。
ここで、ヘッドシェルの指かけの共振が気になり、少量のガムテープで制動してみる。中高域のキャラクターが少し抑えられる。安定度を重視したバランスを狙えば、針圧1・2g、IFC量1・1あたりが広範囲なプログラムソースに対応できる音。
B&Oらしいイメージを追い、再び針圧を調整する。当然、軽い方を狙い、再び標準の1gにもどす。中高域の附帯音が減ったため、全体にスッキリとしたサウンドになるが、低域の質感は相変わらず軟調傾向で、悪くいえばモゴモゴとしたイメージがあり、オーケストラのスケール感やホールの残響の豊かさの点では問題が残る。
低域を少し引締め、MMC1独特の中高域のキャラクターとバランスさせれば、一応の水準で、この問題はクリアーできるだろう。それには、スピーカーのセッティングを変えるのがベターである。JBL4344を3点支持しているキューブの中で後側の1個を半分内側に入れた状態から3/4入れた位置に変えて低域をコントロールする。低域の質感が向上し問題は解消する。
●照準を一枚に絞ったチュンアップ
[モーツァルト:ピアノソナタ/内田光子]
大村 MMC1の、細身の音はいいんですが、ややヒステリックなところは、このレコードには合わない気がします。モーツァルトらしく、柔らかで透明に鳴ってほしい。
井上 この録音は、ちょっと距離をとることでホール感を出し、モーツァルトらしい透明なイメージをつくっていますので、スタビライザーで附帯音をのせることはやらないほうがいい。そこで、プレーヤーのつぼと言えるアームの根元にスタビライザーを置いてみたわけです。
大村 かなり音が変わります。マイクロのように重たいものは、音がしっかりして、力強くなる。見通しもよくなりますし、輪郭がはっきりしてくる。オーディオ的には非常にいい音だと思いますが、内田光子のモーツァルトのイメージとは違う。女性らしさから遠ざかります。そこでデンオンを試したところ、ほどよい柔らかさと女性ピアニストらしい感じはそのままに、ヒステリックなところがなくなり、ゆったりと音楽が響いてくれます。もし、レコードがグールドだったら、迷うことなくマイクロにしますが、内田光子の場合は、デンオンのカです。このクラスのカートリッジになってくるとプレーヤー自体の透明度を要求したくなります。
井上卓也
ステレオサウンド 75号(1985年6月発行)
特集・「いま話題のカートリッジ30機種のベストチューニングを探る徹底試聴」より
標準針圧では、ナチュラルに伸びた帯域バランスと、雰囲気のあるスムーズな音が特徴。音色は適度に明るく、伸びやかさもあり、とくに分解能の高さは感じられないが、クリアーさもあり、長時間にわたり聴いても疲れない音。
針圧上限では質感が向上し、平均的なMC型に準じた分解能、クリアーさがあり、低域は少し軟調で、柔らかいが、音場感的な情報量もナチュラルで、トータルバランスの高さがこの製品の特徴。
針圧下限では、スクラッチノイズが少し浮き気味となるが、軽く、爽やかで、程よく鮮度感と感じられる、スッキリとした、軽針圧時独特の魅力がある音が好ましい。ただし、1g以下の軽針圧動作では、ここで使ったアームでは慣性モーメントが大きく、いま一歩、音場感的な安定感、見通しの良さが得られないのが残念な点だ。
ファンタジアは雰囲気重視の音となり、アル・ジャロウは、やはり、力感不足だ。
黒田恭一
サウンドボーイ 10月号(1981年9月発行)
特集・「世界一周スピーカー・サウンドの旅」より
青い音とでもいうべきであろうか、すっきりした、透明度の高い音である。ほかの国のスピーカーからは感じとれない、独自の、しかし耳に心地よい音である。
レコードは、いくぶんこじつけめくが、アバの『スーパー・トゥルーパー』とパット・メセニーの『アメリカン・ドリーム』をきいてみた。そしてここでもやはり、なるほどと納得する結果になった。アバの歌は、いずれも、巧みなサウンド設計に支えられていると思うが、そのことがよくわかるきこえ方をした。それに、アバの歌では、歌い手たちの声がいくぶん楽器的にあつかわれていて、声そのものが。情感を背負うことはあまりないことも、ここでは幸いしていたようである。
たとえばヴェロニク・サンソンの唱などをきくと、エリプソンの1303Xできいた場合とまるでちがって、肌ざわりのつめたいものになる。その辺にこのスピーカーの特徴があるといえよう。ハーブ・アルバートのトランペットの音は、本来のあじわいとはすくなからずちがうが、あたかも涼風が頬をなでていったように感じられ、これはこれでわるくないと思わせた。
パット・メセニーのレコードでは、キーボードによる低い音が過度にふくらむことなく、このましかった。サウンドのフィーリングが音楽のフィーリングとぴったりあっていたようである。
菅野沖彦
別冊FM fan 30号(1981年6月発行)
「最新プレイヤー41機種フルテスト」より
概要 これは完全なプレイヤーシステム。このプレイヤーは全く観点を変えてつかまないと見当違いなことになる。特に今回聴いた十六機種中、設計のコンセプトから、あるいは使われる目的が全然違うものだ。これを同列でもって比較するということは見当違いの評価になってしまう。
つまりこのプレイヤーは最高級のシステムコンポーネントのプレイヤーである。B&Oのカセットデッキ、プレイヤー、レシーバー、それにスピーカーを一つのシステムとして構成した時に真価を発揮する。エレクトロニクスコントロールでは最も早く先鞭を切ったプレイヤーで、これはその最新モデルだ。そして各コンポーネントをシステム化することによって全部自由にリモートコントロールできるという、大変すばらしいものだ。デザインの斬新さと美しさ、これはもう比類のないものでデンマークのモダンデザインの極といってもいいほどすばらしい。
内容的にも相当高度な内容を持ってはいる。まず、同社が随分前から採用していたリニアトラッキング・インテグラルアームで、しかもカートリッジと一体型である。ただ一体型にしてはプラグインというのがちょっと気になる。
音質 この中で同列に評価すると非常に気の毒なことになる。こういう複雑な構造を持って、しかも非常に薄型の形になっていて各部が大変デリケートであると同時に、そんなに重量のあるものではないので、これをこのクラスの重量級のターンテーブルシステムと比較するとやはり音ではかなわない。まず低音がこの二十万、三十万円というターンテーブルの中で比較したら全然比較にならない。低音は出ない。無理やり出せばメカのノイズが出てくる。従ってこれに見合ったシステムで再生した時にすばらしい音楽的な音を聴かせる。超ド級のもの、例えばマッキントッシュの2500にJBLの4343Bなんかでグァーンとやることは、まさにベオブラム8000を顕微鏡で拡大したようなことになる。だから、根本的に考え方を変えてかからなければならないので、音に関してはあまり詳しく触れるのはやめておく。
ただこのシステムの魅力、こういうデザイン感覚は絶対にオーディオ製品には必要だと思う。これは飛び抜けている。今回出てきた半分ぐらいは多少なりともこのデザイン感覚を見習って欲しいと思う。とにかく美しいすばらしいプレイヤーシステムだ。特に最近はエレクトロニクス・コントロールのターンテーブルシステムがたくさん出てきているが、その範とするに足るものではないか。
オーディオというのは音そのものをよくするだけでは片手落ちで、結果的にはまず気分よくならなければならない。だからゴチャゴチャ配線を引き回して、すごい重量級の道具を置いて気分のいい人はそれでいい。しかし世の中はそういう人だけではない。部屋をきれいに掃除してすばらしいインテリアでもって気分よく音楽が楽しめる。そういうことを優先する人にとってはこのプレイヤーはすばらしいものだと思う。
オーディオは、どんなメカ派でも音質派でも音楽を聴く。音楽を聴くことということだったら、やはりその範囲の中でセンスというものに関心を持たなければおかしい。
井上卓也
ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より
光学センサーによる電子制御フルオートプレーヤーの、世界最初の製品4002の改良モデル。リニアトラッキングアームにはMMC20EN付、ターンテーブルはベルトドライブ型、操作軽の変更の他に、リモートコントロールが可能になったことが、このモデルの特長。
井上卓也
ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より
いずれもダイレクト結合型の専用シェル付MMC20シリーズ4機種中のトップモデル。カンチレバーにサファイアを採用したのが特長。
菅野沖彦
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「デンマークB&O社を訪ねて」より
デンマークという国は、実に密度の高い小国である。小国というと、デンマークに失礼かもしれないが、総人口が500万人余りという事実は、そう呼ばざるを得ないであろう。しかし、この国の実体を知れば知るほど、まるで、現代文明国の縮図とでもいうべき緻密な内答をそこに発見する。
酪農を中心とした農業国としてのデンマークであるが、たしかに、大小無数の島々のほとんどは、フラットな畠であり、牧場であるし、農家は、この国の社会的階層の中で、高い地位を占めている。ファームとファーマーという言葉は、我国における、農業、農民という言葉の持つ意味やニュアンスとは大いに異り、より誇り高い意味と響きをもっている。背のびをすれば、ずっと遙か彼方まで見通せるほどの起伏しかもたない平らな広野と、視界全体の3/4以上を占める、大きな大きな空、これがデンマークで最も多く見られる風景だ。この国一の大都会、コペンハーゲンでさえ、その中心部から、車で10分も走れば、こうした景色の中に吸い込まれてしまうだろう。そしてどっちへ走ってもすぐ海に出る。こうした環境の中から、ここでは、現代機械文明の頭脳が生れ、最も先鋭なデザイン感覚が育ち、社会福祉制度は極度に発達した。私が関心をもっているものだけを拾って見ても、磁気録音の発明、トーキー映画のメカニズムなどの歴史的な実績の他に、この国の小規模ながら、注目すべき、エレクトロニクス関連産業は決して無視出来ないものなのである。オーディオ・ファンにとっても、オルトフォンのレコード関連機器、ピアレスやスキャン・ダイナのスピーカー、ブルュエル・アンド・ケアーの測定器など、馴染みの深い名前がすぐ、思い浮ぶことだろう。ジョージ・イエンセンの銀製品、ロイヤル・コペンハーゲンやビング・クロンディルの陶器、そして、イヴァルソン父子、ミッケ、アンネ・ユリエなどの手造りパイプなどは、コペンハーゲン中心にあるナポリ公園と同じぐらい有名だ。
そして、ここにご紹介するB&O社こそデンマークを代表する電気機器メーカーである。バング・アンド・オルフセンの名前が示す通り、この会社は、二人の創設者によって一九二五年に創立された伝統ある企業である。オルトフォン杜の創立が一九一八年であるから、この二社共に、まさに、この道でのパイオニアといえるであろう。技術の誕生と共に企業が誕生したという、オリジナリティに、その社歴の重みが感じられる。
B&O社は、家庭電気製品の総合メーカーとしての体質をもっているように思われているし、事実、デンマークの家庭を訪問すると必ずといってよいほど、同社のテレビが置かれるいる。しかし、このメーカーのオーディオへの力の入れ方は大変なもので、同社独自の強い主張を持った優れたオーディオ製品の開発に長年努力を続けて来ているのだ。このことは、今年、初めて同社を訪れてみて、一層強く感じられた実感であった。
コペンハーゲン・カストラップ空港から、SASの国内便で30分ほど飛び、カラップ空港という田舎の小さな飛行場に下りる。ここはヨーロッパ大陸と地続きの、その最果ともいえるユランド半島である。ここから車で、30分ほどのストルーアという町に、B&Oの本社がある。ストルーアの町全体は、何らかの形でB&O関係の人々であるといってよいほどだ。例によって、空の大きな、なだらかな起伏をもった美しい田園風景が、空港からストルーアの町までの車窓に展開する。コペンハーゲンのある島、シュランドのファームと比較すると、この辺は、牛が多く見られる。私がよく滞在するシエランドのファームは豚が多いのに……。ストルーアのホテルのレストランで初めて会った人は、ヤコブ・イエンセン氏であった。この人が、B&Oの、あの美しいオーディオ機器のデザインの一切を自分一人でやっているという話しを聞いた。イエンセン氏は世界的に有名なインダストリアル・デザイナーだ。その斬新な感覚に溢れたモダン・ビューティともいえる美しい製品の数々が、この緑に囲まれたデンマークの田舎から生れるというのは一種の驚きであった。イエンセン氏も、他のデンマークの多くの芸術家達のように自然を愛し、自らファームに住んでいるという。共に昼食をとりながら、インダストリアル・デザインはいかにあるべきかといった興味深い話を聞くことができた。ここで、その詳細をご報告する余裕はないが、論より証拠、彼のデザインによる、あの美しいベオグラムの4000番シリーズのプレイヤー・システムやステレオ・レシーバーを一見することを、おすすめしたい。そして、それを実際に使ってみると、イエンセン氏のいう「モダン・テクノロジーは、人間の幸せのために奉仕すべきものだ」ということと、「オーディオ機器は、トータル・ライフの中で、音楽を楽しむという目的で存在しているはずだ」という主張が明解に理解できるであろう。これらの製品は、最新のエレクトロニクス・テクノロジーを駆使していながら、それを表面に押し出すことなく、全てを、音楽を楽しむための人間の便宜に謙虚に役立てた完壁な道具であるからだ。ベオグラム4004と、ベオマスター2400の組合せによって、レコードをかけ、FMラジオやカセット・テープを聴いてみるがいい。ここには、完全にラボラトリー・イメージを脱した洗練されきったオーディオの世界を発見する。リモート・コントロールによって全て自動的におこなえる操作の便利さと愉しさを。レコードからFMへのプログラムの変更も、音量の調節も自由自在である。しかも、そのプレーヤー・システムは、リニアー・トラッキング・アームに、高度なMMCカートリッジという、高級なコンポーネント・マニアの欲求を満たすに足るハイ・グレイドなものだし、アンプも、ステレオ・レシーバーはこうあるべきだという納得をせざるを得ないバランスのよさをもち、豊富なファンクションをもっているのである。見ているだけでも美しく魅力的な──本来、レコード音楽を楽しむ時に、重要な要素──この機器のデザインと仕上げの高さは、他に類例を見ない見事なものというほかはない。四角く重い箱を積み上げて、汗を流して緊張し、耳掃除をするような神経を使いながら、巨大なスピーカーと対峙して音楽を聴く……コンポーネントの世界とは、また、なんと違った次元の楽しみと喜びであることか。こういうシステムでレコードを楽しみたい人は多勢いるにちがいない。また、明けても暮れてもオーディオで、オーディオと心中することを無上の喜びとしているかの如く、アンバランスで極端な情熱をオーディオにもっている人にさえ、このシステムは、ふっと我に帰らざるを得ないような示唆を与える魔力さえ持っているようだ。そして、私のように欲張りな人間にとっては、機械の山の中に埋れるようなラボラトリーまがいのリスニング・ルームの他に、オーディオ機器は、このシステム以外に置かないで、すっきりと、気に入ったアクセサリーや絵を飾り、ゆったりパイプでもくゆらせながら憩える部屋がほしい……憩える部屋がほしい……ということになる。
B&Oのオーディオ機器は、イエンセン氏のデザイン・ポリシーに代表されるように、真の意味でのコンシュマー・プロダクツなのである。
スキーヴにあるアンプの組立工場、ストルーアの研究開発部門などを二日にわたって見学し、この会社が、理想的な環境の下に、仕事をしていることが理解できた。最近発表された、サファイア・カンティレバー採用のカートリッジMMC20CLを見てもわかるように、こうした細かい基本的なパーツ開発にかける情熱も、一般に考えられるような、コンシュマー・プロダクツの量産企業とは全く異なる体質をもっている。このカートリッジなどは、専門メーカー以上のキメの細かさをと、長年の蓄積が、高度な解析システムで裏付けをしながら生み出されたもので、プレーヤー・システム付属のカートリッジとしての常識を、はるかに超えたものといえるだろう。事実、このMMC20CLをEIAタイプのシェルにクランパーを介して取付け、単体カートリッジとして使っても、最高水準のプレイバック・パーフォマンスを示すものだ。もっともカートリッジに関しては、従来から、B&O製品はオルトフォンやエラックそしてフィリップスなどと並んでヨーロッパの代表的な製品として知られていたが、こうしたオーディオ専門メーカーの体質に、ますます磨きがかけられているのを見て大変嬉しかった。
製品のアッセンブリーは、機械的にラインで流れていくのではなく、一人の人間が全部を仕上げるというシステムが導入されていた。その意味でも、ここの製品は、いわゆる量産製品とは質を異にしているというべきであろう。
社長のオラフ・グルー氏をはじめ、技術担当役員のベント・メラー・ベデルセン氏、国際部の役員、K・E・ハーダー氏など、経営陣も、真剣にB&O製品と、その主張が、日本で理解されるべく努力したいと語っていたが、私もオーディオが、生活の豊かな精神的糧として存在する意味において、こうした道具が正しく認められるべきだと思う。現在のオーディオ事情は、あまりにも片寄っていることを改めて痛感したのである。
エンジニアのプラマニック氏が今年のオーディオ・フェアに来日し、その折、MMC20CLを持参され試聴したが、その明晰な音質は、純粋技術的に追求された特性のよさを実感するだけではなく、夏のデンマークの空気のように透明で、すがすがしく、さわやかな雰囲気を感じたのであった。B&Oは、世界中の数あるオーディオ・メーカーの中で、そのオリジナリティと高度なテクノロジーで一際、輝やきを放った存在なのである。それは、あたかも、デンマークという国のもつ特質に似て、緻密なテクノロジーと、斬新な感覚が、豊かな自然とバランスして存在しているからであり、エキセントリックに走らないからである。社会保障の完備は、この国の人達を悩ませてもいる。優秀な人材はよく働き、高い税金を納め、怠け者はそれによりかかって生きるからだ。しかし、この国の人達は、知恵と心のバランスをもって豊かな生活を作り上げていく努力をし続けることだろう。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
製品の魅力とは特性ばかりでなくデザインの洗練が必要という見本。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
眺めただけでそのまま抱き込みたくなるほどのエレガントの極み。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
一度は使ってみたくなるエレガントなデザイン。憎いほど巧みな意匠。
菅野沖彦
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
プレーヤーデザインの常識を破る前衛的美しさに溢れた個性的製品。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より
ひとつ前のSP15の方が、クセもあったかわりに、あの高域の冷たい艶はゾクッとくるほどの魅力だった。MMCシリーズになってからは、周波数特性をフラットにつくるテクニックを確立したらしく、却って凡庸な印象になっているが、しかし渋いながら良い味わいを持っているところがさすが。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より
これも本来は4ch用とうたっているが、ふつうのステレオ再生に使ってもかえって良い結果の得られるカートリッジ。概して4ch用というのは、高域の特性を延ばす必要もあるかわりにその特性をよくコントロールしなくてはならないために、高域の音に繊細なキメの細かさが加わって、好ましいケースが多い。
菅野沖彦
ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より
デンマークのバンク・アンド・オルフセン社は、家庭用のミュージックシステムからテレビに至る、普及品から高級品までの非常に製品バリエーションの豊かな、いわゆる総合電機メーカーである。一九二五年にピーター・バンクとシュベント・オルフセンという二人のニンジニアによって屋根裏部屋の一室からスタートしたこの会社は、その後次々に斬新なアイデアに満ち、二人の卓越した技術の結晶ともいえる魅力ある製品が、今日もなお生まれ統けているのである。
およそデンマークという国柄は、クラフツマンシップを伝統的に持っているが、いわずもがな、私の好きなデンマークのパイプには、世界のファンシーパイプとして、クラフツマンシップの粋が見られる。またデンマークは、ファニチュア、モダンアート、インテリアデザインの面でも世界の最高水準を確保している国でもあるのだ。そういう国柄のバックグラウンドをも感じさせるオーディオ製品として、私はこのベオグラム・プレーヤーシステムを一流品として挙げたわけである。このプレーヤーシステムが持っている一流品としての所以は、私はデンマークという国が持っているセンスとテクノロジーの風格だとあえていいたい。
一九七二年に発表されたベオグラム4000、その改良型の4002、6000は、必ずしも現代のプレーヤーの中で、最高の性能をそなえているというわけではない。しかし、ユニークなエレクトロニクスコントロールのフルオートプレーヤーを、これだけ美しいデザインで、しかもリニアトラッキングという理想的なトーンアームのムーブメントを備えたプレーヤーを、かくもフラットな、誰が見ても素敵というデザインでまとめたことは、一つの驚異的な仕事であると同時に、ずば抜けたセンスの良さを感じないわけにはいかない。実際に使ってみても、カートリッジを自由に交換ができないというハンディもあるが、操作性がスムーズであり、素晴らしいプレーヤーのひとつに数えられるものだと思う。
ベオグラム6000は、同社のベオシステム6000用として特別に設計されたプレーヤーシステムで、このスリムなプレーヤーべースの中にCD-4用のディモデュレーターが内蔵され、2チャンネル再生時と切り替えて楽しむことが可能だ。カートリッジには、同社のムービング・マイクロクロス型という独特の発電方式によるトップランクの製品MMC6000が専用としてビルトインされている。
ベオグラム4002は、前記のベオグラム6000からCD-4ディモデュレーターを省略したモデルと考えてよい。両者は外観からはほとんど区別がつけにくく、わずかにエレクトロニクスコントロール・パネル上部の型名表示と、ペオグラム6000の右サイドに付けられている2チャンネル/CD-4切替スイッチの有難を調べる以外にない。外形寸法は全く同じである。
いまやダイレクトドライブ全盛といえるプレーヤーシステム部門において、この2モデルはベルトドライブ方式だが、そのメリットを巧みにいかした美しい薄型のデザインは、まさに一流品としての品位を備えている。
井上卓也
ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より
MMC6000は、5000とともに、CD−4システムにも使用可能なモデルである。低域のダンプは甘いタイプで、音の粒立ちはかなり細かい。低域は甘口で重いが、中低域はかなり厚味があり、中域はやや薄く、高域は素直に伸びているようだ。
ヴォーカルは、オンマイク的だが、あまりカッチリとした感じとはならず、ピアノは滑らかさがあるスッキリとした音で、暖かみもある鳴り方である。全体に、ウォームトーン系のソフトな音で、明るさもあり、伸びやかさもあるが、音の密度が薄い傾向があり、リアルさが不足するようだ。
MMC5000は、音の粒子はMMC6000よりは粗くなるが、SN比は充分にある。全体に、MMC6000にくらべると、タップリと感じられた間接音成分が抑えられ、クリアーで音の鮮度が高くなり、音の輪郭が明瞭で正確な感じとなった。ただ、比較上では、やや線が太くなり、帯域の広さは減っているが、トータルのバランスはむしろMMC5000が上である。低域はソリッドな締まりがあり、中低域のエネルギーが充分にあり、質感がよい。
MMC4000は、軽く爽やかで、粒立ちが細かくクールな魅力をもった音である。
低域のダンピングは適度であり、重量感があるタイプではないが、弾力的であり、姿・形がクリアーに再現できる良さがある。中域は、どちらかといえば僅かに薄いと思われるが、ナチュラルであり、高域も滑らかでよく伸びている。ヴォーカルはやや小柄になるが、細やかなニュアンスが感じられ、ピアノは軽くキラメキ、独得な音色が感じられる。音をリアルに表現するタイプではないが、クォリティが充分に高く洗練されたソフィスティケートな雰囲気は、他のカートリッジでは得られない小イキな魅力である。
MMC3000は、粒立ちが少し粗く、聴感上のSN比が悪くなることもある。全体に音が明快で腰の強い音をもつが、表情が固く表面的な表現に留まる印象がある。
岩崎千明
ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より
デンマークといえばオルトフォンで他の名のイメージはどうも影がうすれてしまう。B&Oの場合、決してただカートリッジのみを作るメーカーではなくて総合的なオーディオメーカーであり、特にこの数年来、B&Oのオートマチック・プレーヤーで日本でもすっかり注目株になってしまった。当然、そのカートリッジに対しての関心が高くなり、これがまた意外にいい。オルトフォンと同じ国だからサウンドイメージとしては似ていたところで不思議はなく、オルトフォン本来のサウンドとは同じ源から端を発しているのではなかろうか。つまり、決して広帯域ではなくかなりはっきりした低音と高音での強調が、全体のサウンドの基礎をなしている。B&Oではオルトフォンよりそれが一段と強く、B&O独特といわれる鮮烈なサウンドを形成してきたようだ。新型ではそれを脱しつつあるとはいえ基本的にはそうした路線は今も続いているといってよかろう。高級品ほどそれは大幅に改められて今日的な広帯域フラットを求める方向にある。
MMC3000は、昔ながらの低音強調的、力強いサウンド。中域は厚く、中味の濃いという感じで、ちょっと聴くと粒立ちは良いが、実際に永く聴くと地が出てしまう感じ。しかし安定した再現性と高音の輝きもあるバランスの良さで、初級ファンには推められる。
MMC4000は、格段と本格派で、広帯域感もずっとそなわり、高域のスッキリした延びが、これ以上の上級機の共通的特長だ。中域での充実感も一段と増し、それもはるかにち密になって細やかな表情の再現性が、歌などによく表れる。低音の力強さも、一段と引締った充実感として感じられる。高音域の輝きは意識的な面がなく品位も高い。概して、3000の高級化というより別種の感じだ。
MMC5000は中域の充実感がますます加わり、ぐっとクリアーだ。低域の力強さも中味のずっしりつまった厚さとして感じられる。高域の輝かしさを加え、全体にバランスのとれた高品位の鮮明で的確な音。
MMC6000は、MMC4000に一段と品の良さを加えたイメージで受けとれる。こまかい表現力の拡大とより広帯域化を図りゆったりした低音と、刺戟的でない中音を与え、大人の音楽ファンに向けたものだろう。
菅野沖彦
ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より
デンマークのB&Oならではのオリジナリティに溢れた内容と外観は、モダニズムの極といってよい魅力に富んだ製品だ。エレクトロニックコントロールの玩具である。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より
SP15の高域の冷気を感じさせる味わいも捨て難いが、総合的な音のバランスで、やはり新型のMMC4000の方が優れている。実に自然でくせのない音質。
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