Category Archives: メリディアン

メリディアン 206

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「最新CDプレーヤー14機種の徹底試聴」より

 全体に各種プログラムソースを、ややクラシカルな個性的な自分の音として消化して聴かせる独特のキャラクターに注目したい製品。ロッシーニは、全体にナローレンジで硬質な音にまとまり、情報量は少ないが、古いアナログディスク的な一面のある音とでも表現したい印象がある。ピアノトリオは、206の硬質な個性がよく出た明快なピアノとチェロがオーディオ的にわかりやすいコントラストを聴かせる。音場感は少し狭いタイプだ。ブルックナーは、音の輪郭をクッキリと聴かせる、かなり個性的なまとまりとなるが、一種の思い切りの良さが感じられるポイントを押えた音楽の聴かせ方は、再生音楽としてオーディオ的にこれならではの魅力を感じる向きもありそうだ。ジャズは、明快なクッキリとした音を描くまとまりである。聴き込めばブラスは薄く、ベースが小さく硬調となるが、余分な音を整理し、分離よく聴かせどころを巧みに残したような独特の個性は興味深い。

メリディアン MPA

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)
特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 第一印象として感じられるのは、質感の木目の細かさである。帯域が広くてもそれを感じさせないのか、逆に狭くても、ワイドレンジに感じさせるのか? つまり、人為的な物理特性を感じさせない自然な音をもったアンプだと思う。粒子の細かさは印象的だが、しかし、滑らかで粒子を感じさせないほどには細かくないとも言える。個性のある魅力的な音ということになるだろう。なにを聴いても、この質感で聴かせながら、嫌味として気にならないという個性派アンプといえるだろう。

音質:8.5
価格を考慮した魅力度:8.5

メリディアン MPA

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)
特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 個性的な音を特徴とするヨーロッパ系のアンプのなかでは、キャラクターが少なく、現代のオーディオシステムのなかでのアンプの占める位置付けを心得たような雰囲気のあるサウンドが、このアンプの進んでいる点である。ナチュラルな帯域バランスと中庸を心得た素直な音場感の再現性、音像定位感など、基本特性を押えたアンプらしい音を聴かせるあたりは、欧州系アンプのなかで、新鮮ささえ感じさせる魅力だ。音色に少し暗い面があり、低域が少しゴリッとするのは、試聴条件ゆえか。

音質:8.1
価格を考慮した魅力度:8.8

メリディアン MLP

菅野沖彦

ステレオサウンド 76号(1985年9月発行)
特集・「CD/AD 104通りの試聴テストで探る最新プリアンプの実力」より

 いかにも外観にふさわしい、よく整理された音のプリアンプである。特にワイドレンジとも感じられないし、ひときわ抜きんでた物理特性の冴えによる目を見張らされるような音でもないが、楽器の質感を自然なタッチで聴かせ、音色バランス・帯域バランスが実に巧みにまとめられている。だから何を聴いても、快く、美しく、安心して音楽に溶け込むことができるのだろう。解像力もほどほどによく、鋭過ぎることも、鈍くもない。好印象だ。
[AD試聴]オーケストラの各楽器の濃やかな質感の違いや動きが緻密に再生されて快い。特に弦と木管のニュアンスが、やさしく、しなやかで魅力的である。「蝙蝠」のステージを彷彿とさせる空間感も透明で、ライブネスの再現も豊かである。セリフの子音も極度に強調されることはなく、バリトンやバスの声域も、重くなり過ぎることなく幅が出る。ジャズのベースの弾みもよく、音程も明解に識別できた。スイングするアンプ。ロージーはやや若々し過ぎるが。
[CD試聴]CDモジュールを通してのCDの書はMLP流の整理がなされて大変聴きよい耳当りのよい音となる。ワーグナーのイントロでの管の音色の分離と溶け合いが程よくコントロールされ、低弦楽器の擦過音もちょっぴりスパイシーでリアリティを演出する。トゥッティにおける安定したバランスも音楽的に美しい。ヴォーカルも中庸をいく自然さで、毅然さと艶っぽさをどちらもよく出す。ジャズもよくスイングするし、個々の楽器の実感も生き生きと聴かせる。

メリディアン M1

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 英国製の3ウェイ・3ユニット構成のフロアー型で、ドロンコーン付のエンクロージュアをもつ。そして、3ウェイの各帯域を独立して駆動する3台のパワーアンプと、帯域分割のためのエレクトロニック・クロスオーバーアンプを持ったマルチアンプシステムである。内蔵アンプの低域が80Wと少々パワー不足の感じがあるが、なかなか味わいのある雰囲気で音楽を聴かせてくれる。

メリディアン M1

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 まとまりのいい音をきかせるスピーカーだ。JBL4343BWXなどとはあきらかに性格がちがう。JBL4343BWXのようなスピーカーは、レコードに入っている音のすべてをあきらかにしようとする。したがって、そこで、検聴=モニターも、可能になる。それはそれですばらしいことだが、このスピーカーは、本来、そういうことを目的としてはつくられていないようだ。つかわれる場所を家庭の中と限定して、もともとつくりだされたのではなかったろうか。ほどほどのスケール感、ほどほどの迫力、ほどほどのなまなましさを示す。それをむしろこのスピーカーの美点と考えるべきなのだろうが、やはり、この価格帯のスピーカーとしては、いくぶんものたりないといわなければならないのが、残念だ。個々の音のクォリティは決して低くないが、ききてをうきうきさせるとはいいがたい。

総合採点:7

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(ほどほど)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(ほどほど)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(ほどほど)

メリディアン M1

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 AR9あたりから4343Bまで、ずっとスケールの大きな音が続いたあとでいきなりM1を鳴らすと、ずいぶん小造りでひっそりした世界に聴こえる。エンクロージュアの実効容積やユニットの使い方は、高級ブックシェルフ的なのだから、それはとうぜんかもしれない。それでいて、内蔵のマルチチャンネルのパワーアンプと各ユニットとの音色のマッチングは、おそらく慎重に練り上げられているのだろう。低音から高音にかけての音色のつながりのよさ、そしてソフトドームらしからぬ密度の高い、クリアーでしかもしっとりとした味わいはなかなかの魅力で、バランスの良さも相当なものだ。3チャンネルのマルチアンプを内蔵しているため、パワーアンプを替えてテストするわけにはゆかないが、しいていえば音にもっと自在性というか、のびびとした豊かさが加わるとなお楽しめそうだ。やや潔癖型といえようか。プリアンプやカートリッジをわりあい選り好みする。置き方はそう気難しくない。

総合採点:8

●9項目採点表
音域の広さ:9
バランス:9
質感:9
スケール感:8
ステレオエフェクト:9
耐入力・ダイナミックレンジ:7
音の魅力度:8
組合せ:やや選ぶ
設置・調整:普通

メリディアン M1

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 イギリスのブースロイド・スチュアート社の、モダンなデザインのフロアー型スピーカーシステムで、内容はこっている。3ウェイ3スピーカー構成だが、各ユニットは3台の内蔵パワーアンプで直接駆動される、いわゆるマルチアンプ方式で(デバイダー内蔵)、ウーファー、スコーカー、トゥイーターには、それぞれ80W、40W、40Wのアンプが直結し、エンクロージュア底面には30cm径のドロンコーンがつく。たいへんマニアックなシステムといえるが、製品の仕上げや音の雰囲気は決してメカニカルでも、技術屋肌が直接感じられるものではなく、むしろ、デザインはインテリア指向だし、音も音楽の雰囲気を重視しているように思われる。瑞々しいヴァイオリンの音色や、ピアノの丸い粒立ちは美しいソノリティで、かなりムーディな響きでありながら、格調の高いものだ。難は音の立体的な奥行きが不足することと、力の不足だ。もう一つ低域の馬力がないと、ジャズやロックをクラシックと同じレベルの質で聴けない。

総合採点:8

ヴァイタヴォックス CN191 CN191 Corner Horn, スペンドール BCII, メリディアン M1

ヴァイタヴォックスのスピーカーシステムCN191 CN191 Corner Horn、スペンドールのスピーカーシステムBCII、メリディアンのスピーカーシステムM1の広告(輸入元:今井商事)
(モダン・ジャズ読本 ’80掲載)

Vitavox

Speaker System (Powered type)

瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第34項・市販品をタイプ別に分類しながら(7) パワーアンプを内蔵したスピーカー、マルチアンプ用スピーカー」より

 前項で例にあげたメリディアンM1は、スピーカーエンクロージュアの内部に、トランジスターのパワーアンプを内蔵している。それも、低音・中音・高音とそれぞれに専用に分けたいわゆるマルチチャンネルアンプになっている。したがって、ここにプリアンプを接ぐだけで、そのまま鳴らすことができる。
 パワーアンプをスピーカーのエンクロージュアに内蔵させてしまうというのは、二つの意味がある。ひとつは、右の例のようにスピーカーとアンプを一体に設計して、音質をいっそう向上させようとする場合。もうひとつは、プロフェッショナル用のモニタースピーカーの一部にみられるように、録音スタジオのミキシングコンソールの出力をそのまま接続できる用にという、便宜上から(パワーアンプを)内蔵させるタイプ。この工社の代表例は、たとえばNHKでのモニター用として設計されたダイヤトーンのAS3002Pなどだ。
 どちらの考え方にせよ、このパワーアンプ内蔵型は、そこにプリアンプの出力を接ぐだけでよいという点で、他のスピーカーシステムとは、使い方の面で勝手が違う。少し前まではこのタイプはほとんど例外的な存在だったが、最近になってスピーカーシステムの性能が一段と向上してきたために、これ以上の音質を追求するには、いわゆるマルチアンプ方式で専用アンプを内蔵することが有利ではないかという考え方が、いわゆるコンシュマー用の製品にも少しずつ広まってゆく兆しがみえはじめている。そのひとつが、たびたび例にあげたメリディアンM1だ。
 メリディアンと同じく、マルチチャンネルアンプを内蔵した(そして音質の良い)スピーカーとして、西独K+H(クライン・ウント・フンメル)のOL10もあげておきたい。エンクロージュアの両側面に把手がついていたり、ほんらいスタジオモニターとして徹した作り方だが、このバランスのよい音は一聴の価値がある。
 パワーアンプ内蔵という形をいっそう煮つめてゆくと、オランダ・フィリップスの一連の新型のように、MFBという一種のサーボコントロールアンプで、スピーカーの動作を電子制御して、いっそうの音質の向上を計るという製品ができあがる。この一連のシリーズは、エンクロージュアが非常に小さいにもかかわらず、大型スピーカーなみの低音が再生されて驚かされる。また内蔵の電子回路を応用して、コントロールアンプからの入力が加わった瞬間に電源が入り、入力が2分以上途絶えると自動的に電源が切れるという、おもしろい機能を持たせている。これも、もともとはプロ用として開発された製品だが、価格も大きさも、一般の愛好家が使うに手頃なスピーカーだ。
 パワーアンプを内蔵はしていないが、はじめから高・低各音域を分割して2台のパワーアンプでマルチドライブすることを指定しているのが、JBLの4350Aだ。言うまでもなく名作4343のもう1ランク上に位置するスタジオモニターの最高峰だが、ウォルナット仕上げのWXAなら、家庭用としても十分に美しい。使いこなしは難しいが、うまく鳴らしこんだ音は、アキュレイトサウンドのまさにひとつの極を聴かせてくれる凄みを持っている。