Category Archives: タンノイ

タンノイ Turnberry/HE

菅野沖彦

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

同社の高級クラシカル・シリーズであるプレスティッジ・シリーズのベーシックモデルである。25cm口径コアキシャル・ユニットは半世紀以上の伝統を持つ基本設計を踏襲するが、現代的な特性にリファインされている。同軸型らしい定位の明確さを持ち、ウェルバランスで重厚、しなやかな質感を併せ持つ。

タンノイ Turnberry/HE

井上卓也

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

音の密度の高さ、同社独自のセンシティヴな反応を示す音の魅力を求めると、設置場所の制約の少ないトールボーイ型の本機は、ディストリビューテッドポート採用の独自の調整箇所を含めて、使い易さという点でも格別の魅力がある。同社最新スーパートゥイーターST200を加えて使いたい実力派。

タンノイ Westminster Royal/HE

井上卓也

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

伝統的デュアルコンセントリック同軸2ウェイユニットLSU15の最新作を、前後2個のホーンをもつエンクロージュアに収納した、古典的ファンが「ラッパ」と呼ぶに相応しい構造、外観、仕上げ。大型スピーカーが過去に達成した偉大の成果を現時点で聴かれる、一種素朴な感銘を受ける金字塔的な大作である。

タンノイ Turnberry/HE

菅野沖彦

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

プレスティッジ・シリーズの中では手頃な価格の製品だが、100リッターの内容積を持つ。天然無垢材によるクラシックで上質のエンクロージュアはディストリビューテッドポート型である。25cmデュアル・コンセントリック内蔵の本機はスターリングの系譜である。

タンノイ Kingdom

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 タンノイ初の4ウェイ。中〜低域の振幅を抑えた波型エッジによる30cmデュアルコンセントリック+46cmウーファーという構成に注目。100Hzでクロスする最低域を肥大させないで駆動するのが、本機を活かす秘訣。結論的にうまく鳴らせるパワーアンプはかなり限定されると思う。タンノイらしい音の品格は健在。身震いするような凄い音が聴ける。

タンノイ Edinburgh/TWW

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 プレスティッジ・シリーズの中堅機で12インチ・デュアルコンセントリックによるシステム。バランスはスターリングと双璧で15インチより好ましいとさえ言える。改良を重ねるたびに、ユニットをはじめ細部がリファインされ、TWWでは重厚なタンノイ・サウンドを基本にしなやかで滑らかな高域が見事な質感を再現する。

タンノイ Stirling/TWW

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 イギリスの名門タンノイのプレスティッジ・シリーズ中で最も小型なモデル。とはいっても一般的には中型のフロアータイプである。10インチ口径デュアルコンセントリック・ユニットを質の高いクラシックな格調あるエンクロージュアに納めた傑作だ。シリーズ中最もバランスのよいシステムといっていいだろう。

タンノイ Canterbury 15

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 タンノイの15インチ口径デュアルコンセントリック・ユニットのよさが素直に生きたシステム。オーソドックスなバスレフタイプのエンクロージュアに納められてたもので、同社のプレスティッジ・シリーズのスタンダード的存在といっていいだろう。普遍性をベースに築かれた、風格と存在感の大きな名器である。

タンノイ Kingdom

菅野沖彦

ステレオサウンド 124号(1997年9月発行)
特集・「オーディオの流儀──自分だけの『道』を探そう 流儀別システムプラン28選」より

 私の好きなスピーカーひとつでありながら、いまだかつて、自分のものにしたことのない憧れの存在がタンノイのシステムである。その最高峰が昨年発売されたキングダムだ。その時々のメディアが持っている録音帯域特性を備えることが私の再生オーディオの理想的条件のひとつであるのだが、キングダムは、この要求にたいするタンノイの回答といっていい製品だろう。デュアルコンセントリックユニットを広帯域で使い、上下にスーパー・ユニットをプラスしたものであることがそれを明瞭に物語っている。タンノイのなかでもっとも広域なシステムであり、タンノイらしさと現代的なワイドレンジを見事に両立させた成功作であると思う。ステレオイメージは同軸型らしい明確さであり、自然な音色と音触に、長年のキャリアによる風格さえが溢れている。説得力のある楽音のリアリティだ。中低域から中域にかけての高密度で厚い質感は得難いものであり、音楽表現の豊かさに寄与していることを強く感じる。したがって高域と低域をここまでワイドに伸ばしても、しっかりとした音の造形感や表現の豊かさは微塵も損なわれていない。伝統的なダイナミック型ダイレクトラジエーターとして高い完成度を持ったシステムで、むかしのタンノイのようにジャズやピアノに不満が残るといったことはもはやない。しかし、音と形の持つ、この品位と堂々の威容は、古典から浪漫にかけての、もっとも実り多きヨーロッパ音楽芸術の再生機として理想的と感じられる気品と豊麗さに満ち溢れている。こういうシステムと共存して、居住まいを正して音楽を鑑賞するという真面目さこそが、いま、レコード音楽とオーディオ文化が失いかけているものだ。イギリスでも、いまや数少ない重厚長大なスピーカーシステムであろう。いま、私ももっとも気になっているシステムの一つであるプラチナム/エアーパルス3・1もイギリス人の作品だが……。軽薄短小オーディオとは別次元の世界である。

タンノイ GRF Memory/TWW(組合せ)

菅野沖彦

ステレオサウンド 124号(1997年9月発行)
特集・「オーディオの流儀──自分だけの『道』を探そう 流儀別システムプラン28選」より

 GRFメモリーは、もっとも代表的な現代タンノイである。15インチ口径のデュアルコンセントリックユニットを、無理なく余裕ある変形バスレフ型エンクロージュアに納めていてユニットの音の特徴が素直に生きている。このモデルは現在の充実したプレスティッジ・シリーズの基礎を開拓した製品であることは、GRFメモリーの名称にも表れている。アンプは同じ英国の新進メーカー、アルケミストのプリアンプAPD21ASS、そしてパワーアンプも同社のAPD20ASSを使う。じつに魅力的なセパレートアンプのコンビネーションで、陰影と彫琢が深く音楽が躍動する。CDプレーヤーはクォード77CD。音色が人肌に温かい音だが、繊細感や精緻感にも優れている。トータルとして味わい深く雰囲気が豊かな音に大きな満足感が得られるはずである。レコード音楽が立派な音楽的実体験のできる世界であることの可能性を実感できるであろう。

タンノイ Stirling/TWW(組合せ)

菅野沖彦

ステレオサウンド 124号(1997年9月発行)
特集・「オーディオの流儀──自分だけの『道』を探そう 流儀別システムプラン28選」より

 タンノイのプレスティッジ・シリーズの最下位を担い、きわめて好評なのがこのスターリングである。本誌でこれにサブウーファーとスーパートゥイーターを付加してキングダムに挑戦したことがあるが、勝るとも劣らぬ好結果を得たものであった。したがって、キングダムのミニマムコスト版として、これ以外にない。価格はキングダムの1/8である! 本当はアンプを驕りたいところだが、そこを抑えてプリメインアンプで鳴らそう。ラックスマンのL507sはよく練れた音であり、ドライブ能力も高い。スターリングの感度なら十分なパワーであるし、この艶のある音は美しく楽しい。CDプレーヤーもラックスの新製品D700sでデザインと音の統一感を求めたい。アンプとCDプレーヤーのトータルが43万円とスピーカーシステムの44万円にほぼ等しい理想的な価格配分となった。バランスのよい本格派の入門システムとして広くお勧めしたいシステムだ。

タンノイ System 215MKII(組合せ)

井上卓也

ステレオサウンド 124号(1997年9月発行)
特集・「オーディオの流儀──自分だけの『道』を探そう 流儀別システムプラン28選」より

 ホーン型ユニット採用のスタジオモニターのなかで、比較的にコンパクトで内容の充実した製品を探してみると、価格を含め、英タンノイのシステム215MKIIは、ぜひとも使ってみたいシステムである。専用スタンドが用意されていることも非常に魅力的だ。同軸2ウェイとウーファーの組合せで、2ウェイ/3ウェイ兼用設計が最大の特徴。今回の組合せは、バランス感覚を重視しているが、CDトランスポートは、世界最高のメカニズムに基づいた、超高SN比を誇るCDP−R10が必須条件。これに高SN比で音楽性豊かなXP−DA1000Aを組み合わせる。実際に使って大変に好ましいペアだ。アンプは高SN比が条件で必然的に国内製品を選ぶ。アキュフェーズ、マランツ、パイオニア、ラックスマンが候補になるが、SS試聴室のリファレンス機として責任を果してくれたアキュフェーズC290と、ソリッドで充実した音のA50に、DG28を加えれば万全だ。

タンノイ Stirling/TW

タンノイのスピーカーシステムStirling/TWの広告(輸入元:ティアック)
(サウンドレコパル 1994年夏号掲載)

タンノイ

タンノイ Canterbury 15

井上卓也

オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド別冊・1994年春発行)
「世界の一流品 スピーカーシステム篇」より

 基本的に1個の磁気回路の前後に低域用と高域用の2個のボイスコイルを備えた、同社独自のデュアルコンセントリック型と呼ばれる同軸2ウェイ型ユニットを、38cm、30sm、25cm型とラインナップしている。それぞれにグレードや目的により専用のエンクロージュアを開発し、システムアップするというタンノイならではの設計思想そのものが、世界的に類例のない見事な存在である。
 最高級家具にも匹敵する入念な工作と仕上げをもつエンクロージュアは、工芸製品のレベルにあり、最終の音の見事さを加えた三味一体のシステムアップによるすべてのモデルが、世界のトップランクにあるオーディオコンポーネントである。
 カンタベリー15は、現在の製品中ではもっとも伝統的な設計である、シルバー型、レッド型、HPD型と続く独自のデュアルコンセントリックエニットの流れを受け継いだ38cm型ユニットが採用されている。同じアルコマックスIII磁石採用でも、ウェストミンスター・ロイヤルのユニットは、センターキャップ状のダストカバーがなく、磁気回路内のホーンスロート部が金メッキ処理されている点が異なる。
 エンクロージュアは、伝統的に全体にほどよく鳴り響かせる方向の設計で、楽器のようにエンクロージュアを巧みにコントロールして美しく響かせる技術は、タンノイのコンシューマーシステムならではの魅力だ。また、ディストリビューテッドポートはエレクトロボイスが最初に製品化した方式だが、このスライドする板で開口部の面積を連続可変とした方式はタンノイ独自の改良によりスターリングで最初に採用されたシステムである。
使いこなしポイント
 2種のレベルコントロールはノーマルとし、ポートの開口部の開閉を組み合せて最適なサウンドバランスと音場感が得られるように微調整を行ない、じっくりと時間をかけてエージングを待つことが必要。

タンノイ Westminster Royal

菅野沖彦

オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド別冊・1994年春発行)
「世界の一流品 スピーカーシステム篇」より

 イギリス(スコットランドに工場がある)のタンノイといえば、オーディオに興味のある人で知らない人はいないであろう。特にわが国では、タンノイは神格化されているほど、絶大な存在感をもって信奉されている。それはこのメーカーの長い歴史と伝統、つまり、半世紀以上の社歴と、その間に一貫して守られてきた設計思想や製品作りの基本理念に対するもので、一朝一夕に築かれたものではない。長い歴史の中には、いろいろ困難な時代もあったし、製品にそれが反映したこともある。しかし、常に保ち続けてきた精神は、温故知新と自社の技術への信念に満ち溢れていた。そして、イギリスという国の持っている趣味性への価値観も見逃せない。イギリス趣味は基本的には合理的であり、貴族趣味と大衆性との間に明確なカーストのようなものが存在する。オーディオ趣味が大衆化するにつれ、イギリスのオーディオ製品にも、小さくて安価な大衆趣味製品が増えてきた。現代のイギリス製オーディオ機器の大半はそうした製品といってよい。しかし、その中にあって、この製品のような堂々たる風格をもつものを作り続けてきたからこそタンノイの存在は、ますます尊敬されることになる。
 内蔵するユニットは、有名なデュアル・コンセントリック・システムという15インチ口径の同軸2ウェイで、基本的に1940年代の設計から脈々と継承されてきたものだ。
 そして、そのエンクロージュアも、フロントロードのショートホーンとバックローデッドホーンのコンパウンドシステムという伝統的なもので、これはオートグラフと呼ばれた50年代のプレスティッジモデルで採用された方式。
 細部はその時代時代の技術でリファインされ続けているが、この製品は1989年に発売されたもの。そろそろ、新ユニットに代わるかもしれないが、そうなっても旧作としての価値が失われないのがタンノイの凄いところである。

タンノイ System 215

菅野沖彦

オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド創刊100号記念別冊・1991年秋発行)
「世界の一流品 スピーカーシステム篇」より

 タンノイのデュアルコンセントリックというユニットは、その同軸型2ウェイという構造のために、音像定位や位相再現の忠実度が高く、モニタースピーカーとして適している。一方において、イギリスらしい趣味性の発現性が強いタンノイ製品だが、同時にモニターシステムの開発も常に見られた姿勢である。1990年にはそのモニターシステム・シリーズを大々的にスタートし、デュアルコンセントリックユニットの基本構造を新しくリファインしてモニター用のユニットとしたことが注目される。
 最大の変更は、デュアルコンセントリックが一つの磁気回路をウーファーとトゥイーターに共有させていたものを、それぞれ独立した磁気回路としたことである。磁気回路としてより余裕のあるものになったといえるだろう。このシステム215は、そのモニター・シリーズ中のトップモデルであって、15インチ口径のコアキシャルユニットと、同口径のウーファーユニットを併せもっている。タンノイでは、このモニター・シリーズの登場を機会に、今までのクラシックな木工家具調のシリーズをプレスティージ・シリーズと呼び、二つのシリーズのコンセプトの違いを表明した。モニター・シリーズはよりシンプルなバスレフ型のエンクロージュアをもち、ノンカラレーション思想を前面に打ち出している。しかし、受取り側としては、やはりタンノイはタンノイであって、その音の充実感や造形感の確かさには共通性を感じることができる。エンクロージュアがホーンとなると、それに独特の雰囲気がついて響きに個性が出るわけだが、このシリーズではそれを意識的に避けている。デザインもより現代的にすっきりとしていて、どちらかというとドライでクールだが、さすがにタンノイらしく美しい。家庭でもモダンなインテリアとマッチするだろう。音と外観に共通性を感じさせるのはさすがに世界の一流品、タンノイのトップモデルだ。

タンノイ Westminster Royal

菅野沖彦

オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド創刊100号記念別冊・1991年秋発行)
「世界の一流品 スピーカーシステム篇」より

 イギリス(スコットランドに工場がある)のタンノイといえば、オーディオに興味のある人で知らない人はいないであろう。特にわが国では、タンノイは神格化されているほど、絶大な存在感をもって信奉されている。それはこのメーカーの長い歴史と伝統、つまり、半世紀以上の社歴と、その間に一貫して守られてきた設計思想や製品作りの基本理念に対するもので、一朝一夕に築かれたものではない。長い歴史の中には、いろいろ困難な時代もあったし、製品にそれが反映したこともある。しかし、常に保ち続けてきた精神は、温故知新と自社の技術への信念に満ち溢れていた。そして、イギリスという国の持っている趣味性への価値観も見逃せない。イギリス趣味は基本的には合理的であり、貴族趣味と大衆性との間に明確なカーストのようなものが存在する。オーディオ趣味が大衆化するにつれ、イギリスのオーディオ製品にも、小さくて安価な大衆趣味製品が増えてきた。現代のイギリス製オーディオ機器の大半はそうした製品といってよい。しかし、その中にあって、この製品のような堂々たる風格をもつものを作り続けてきたからこそタンノイの存在は、ますます尊敬されることになる。
 内蔵するユニットは、有名なデュアル・コンセントリック・システムという15インチ口径の同軸2ウェイで、基本的に1940年代の設計から脈々と継承されてきたものだ。
 そして、そのエンクロージュアも、フロントロードのショートホーンとバックローデッドホーンのコンパウンドシステムという伝統的なもので、これはオートグラフと呼ばれた50年代のプレスティッジモデルで採用された方式。
 細部はその時代時代の技術でリファインされ続けているが、この製品は1989年に発売されたもの。そろそろ、新ユニットに代わるかもしれないが、そうなっても旧作としての価値が失われないのがタンノイの凄いところである。

タンノイ Stirling/HW

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

伝統的という表現にふさわしい25cmウーファーと同軸にホーン型トゥイーターを組み合わせたユニットを、マルチポート型エンクロージュアにマウントモデルだ。低域は柔らかく、高域は硬質で、このバランスをどのようにコントロールするかが使いこなしの最大のポイントだ。今回の試聴には専用スタンドは用意されていない。

タンノイ Canterbury 15, Canterbery 12

井上卓也

’89NEWコンポーネント(ステレオサウンド別冊・1989年1月発行)
「’89注目新製品徹底解剖 Big Audio Compo」より

 タンノイから新しくCANTERBURY(カンタベリー)シリーズとして発表されたモデルは、個性的な魅力を誇るタンノイの製品の中でも異例ともいえる内容を備えたシステムである。
 カンタベリーの名称は、イングランドのケント州にある地名で、英国国教会の総本山がある由緒ある都市とのことで、英国の長い歴史の中でその流れを変えてきたその地と同じく、本機はタンノイの歴史に新しい一ページを飾るにふさわしいモデルとして誕生したものである。
 まず、このシリーズで最大のエボックメイキングなことは、使用ユニットの磁気回路にアルニコ系のマグネットが採用されていることである。
 ユニット構造の基本は伝統的なもので、タンノイ独自の磁気回路の前後に独立した低域用と高域用の2系統の磁気ギャップをもつデュアルコンセントリック型・同軸2ウェイ方式に変りはないが、磁気回路にALCOMAXIIIが新たに採用されている。
 英国系を代表するアルニコ系マグネットといわれるTICONALと比較して、ALCOMAXIIIは、約2倍の磁気エネルギーをもつ強力なマグネットであり、これによるドライバビリティやトランジェントの向上は、デジタルプログラムソース時代に対応した、新世代のタンノイの音とするための重要なベースとなっているようだ。
 フェライト系マグネット採用の磁気回路は、直径方向が大きく、軸方向の厚みが薄い偏平な形状を標準とするが、アルニコ系マグネットを採用するとなると、磁気特性の違いから、直径方向が小さく、軸方向の厚みが充分にある、いわば円筒状の形状となるために、低域用のポールピースを貫通する高域用のホーン全長が大きくなり、ホーンの特徴として、カットオフ周波数が下がり、より低域側の再生能力が向上することに注意したい。
 さらに、高音用ホーンを兼ねる低音用コーンは、かつてのモニターレッドや、モニターゴールドの時代とはカーブドコーンの形状が変っているために、結果として今回のカンタベリー・シリーズに採用された高音用ホーンの形状は、従来にない、まったく新しいタイプになっており、新同軸型ユニットの誕生と考えてもよいものだ。
 エンクロージュアは、タンノイの製品としては比較的コンパクトにまとめられており、ストレスなしに一般的なリスニング条件でも使いやすいというメリットがある。
 エンクロージュア型式は、スターリングで採用されたディストリビューテッドポート型に、メカニカルなスライドシャッターを組み合わせたタンノイ独自のVDPS(バリアブル・ディストリビューテッド・ポート・システム)であり、ある範囲内での低域コントロールが可能だ。
 ネットワークは、高域・低域独立型位相補償(タイムコンペンセイティヴ)型で、プリント基板を使わず、各構成部品間を直結するハードワイアリングを採用。内部配線用のワイア一には、高級オーディオケーブルをつくるメーカーとして評価の高いオランダのVAN DEN HUL社製シルバーコーティング線が使用され、高域レベルコントロールには、金メッキ処理のネジとプレートにより確実に接続できるハイカレントスイッチを採用。経年変化が少なく、初期特性の維持ができることは現在では当然のことであるが、タンノイに限らず、かつてのことを想い出せば、海外製品の内容の充実は大変にうれしいことだ。
 カンタベリー・シリーズは、15インチ同軸ユニットを使うカンタベリー15と、同じく12インチユニット採用のカンタベリー12の2モデルがあり、ALCOMAXIIIの数量確保に問題があるためか、ともに受注生産品であり、限定生産モデルと予測できるようだ。
 なお、受注にあたり、フロントパネル部のネットワークパネルには、オーナーのネームがエッチングで刻印されるとのことで、オーナーとしての満足感が充分に味わえるのは大変に楽しい。
 カンタベリー15は、タンノイのシステムとしては異例ともいえるしなやかさ、ニュートラルさをもったスピーカーらしいスピーカーである。
 全体に音色傾向も、独特の魅力といわれた渋さ、重厚さ、穏やかさ、などの特徴がかなり薄らぎ、明るさ、軽さ、反応の速さ、などを要求しても充分に満足の得られる内容を備えている。
 とくに、低域の素直な表情や質感の再生能力などを、モニターレッドあたりまでのタンノイファンが聴けば、まさに隔世の感のあるところであるが、全体の雰囲気は決してタンノイの枠を外れず、タンノイはタンノイであることの伝統を受け継ぎながらも、文字どおりのデジタルプログラムソース時代のタンノイの音が、抵抗感なしに楽しめる。
 VDPSの調整は、内側を閉めたほうが音場感的プレゼンスがノイズにマスクされず、自然に遠近感をもって聴かれるようである。
 一方、カンタベリー12は、重量感のある傾向の音を指向しない現代的な聴き方、楽しみ方をすれば、反応が速く、軽快に、ノリの良い音楽を聴かせる魅力があり、完成度も非常に高い製品。

タンノイ GRF Memory

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「最新パワーアンプはスピーカーの魅力をどう抽きだしたか 推奨パワーアンプ39×代表スピーカー16 80通りのサウンドリポート」より

 タンノイの上級システムはすべて、同社伝統のデュアルコンセントリックユニットを使用している。つまり、同軸型の2ウェイという構造のスピーカーの採用である。このGRFメモリーも38cm口径のユニットを内蔵したシステムで、代表的モデルといってよいだろう。この同軸型ユニットは、マルチウェイ、マルチユニットとは異なる放射特性をもち、タンノイの固有のサウンドを含めて、独自性をもった存在といえるものであろう。したがって、これを各種のアンプと組み合わせた場合、そのマッチングに違いが生まれることは当然であろうし、また同時に、すべてのタイプのスピーカーに対して優れた対応を示すアンプの存在の確認をする意味も大きいと考えられる。過去、本誌において、私はこのGRFメモリーというシステムについて多くのアンプを組み合わせる実験をおこなってきているので、その経験から、このスピーカーともっとも合いそうなアンプと、合いそうに思えない、あるいは、未知のものとの組合せという考えから5台のアンプを選んだ。ウェスギUTY5、マッキントッシュMC7270、QUAD510は前者にもとずくものであり、クレルKSA50MKII、ジャディスJA80は後者に属するアンプである。もちろん、選んだアンプは、あるレベル以上のものであり、中にはJBL4344で意外に成果の上がらなかったものの敗者復活の意味もあることは、他のスピーカーとの組合せと同じだ。

タンノイ Westminster

黒田恭一

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「2つの試聴テストで探る’83 “NEW” スピーカーの魅力」より
4枚のレコードでの20のチェック・ポイント・試聴テスト

19世紀のウィーンのダンス名曲集II
ディトリッヒ/ウィン・ベラ・ムジカ合奏団
このレコードのきこえ方としては最高のもの。❶の総奏のふっくらとした気配にはほれぼれとした。演奏している楽器の艶が目にみえるようであった。❸ではコントラバスのたっぷりとしたひびきが十全に示され、しかも音像的な面でのふくらみもなかった。❹のフォルテでもひびきが力ずくにならず、❺での音場感的なひろがりもすばらしかった。鮮明で上品なきこえ方は見事の一語につきる。すばらしい。

ギルティ
バーブラ・ストライザンド/バリー・ギブ
❶のエレクトリック・ピアノが優雅に感じられた。しかし、エレクトリック・ピアノがこのようにエレガントにきこえていいものかどうかとも思わなくはない。❷での声のなまなましさについてはあらためていうまでもない。❸でのギターのデリケートなひびきへの対応は絶品というべきであった。全体としてのひびきのバランスにはいささかの無理もなく、音場感的な面でもすばらしく、ききごたえがあった。

ショート・ストーリーズ
ヴァンゲリス/ジョン・アンダーソン
イギリスの貴族の屋敷でロックをきいているような気分になる。音質的な面でなんら問題とすべきことはないが、ひびきの性格で、このレコードできける音楽とこのスピーカーの音ではいくぶんずれがあり、したがってこのヴァンゲリスの音楽のうちの「新しさ」はここではかならずしもきわだたない。しかしながら、ここできける音はそれなりの説得力をそなえている。そこがこのスピーカーの強みであろう。

第三の扉
エバーハルト・ウェーバー/ライル・メイズ
このレコードの微妙に人工的な手の加えられた録音を大変自然にきかせる。❷でのピアノのきこえ方など、まとまりのよさということではとびぬけている。❶でのピアノの低い音に重ねられたベースの音は、ききてがきこうとすれば充分にききとれるように示されているものの、かならずしもことさら強調はしない。❸でのシンバルのひびきの輝きは、演奏者の意図を十全にあきらかにしたものといえよう。

タンノイ Westminster

黒田恭一

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「2つの試聴テストで探る’83 “NEW” スピーカーの魅力」より

 さまざまな傾向のスピーカーがあるが、これはそのうちのひとつを極めたものといえるであろう。ともかくここできける音は、いずれの音も磨くに磨かれた音である。その結果、ここできける音にはとびきりの品位がある。がさついた下品な音とか、刺激的な音とかは、決してださない。
 このスピーカーにもっとも合っているレコードは、やはり①である。これはすばらしいとしかいいようがない。
 ②、③、あるいは④のレコードも、それなりに美しくきかせるが、これらのレコードのうちの「今」をストレートに感じさせるかというと、かならずしもそうとはいえない。しかし美しさということでは無類である。ほかに例のみられないような美しさである。
 ただ、これだけ確固とした世界を高い水準できずきあげているスピーカーになると使い手の側にもそれなりの覚悟がないとつかいきれないのかもしれない。

タンノイ Edinburgh

黒田恭一

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「2つの試聴テストで探る’83 “NEW” スピーカーの魅力」より
4枚のレコードでの20のチェック・ポイント・試聴テスト

19世紀のウィーンのダンス名曲集II
ディトリッヒ/ウィン・ベラ・ムジカ合奏団
❶での総奏での円やかさは魅力がある。このふっくらとしたひびきはこのましい。❷のヴァイオリンもしなやかさを失っていない。さらにこのましいのは❸や❺でのコントラバスのひびきである。コントラバスならではのゆったりしたひびきをきかせながら、しかしぼってりしない。音場感的なことでは特にひろびろとしているとはいいがたいが、まとまりはいい。このレコードには適しているスピーカーといえる。

ギルティ
バーブラ・ストライザンド/バリー・ギブ
❶のエレクトリック・ピアノが音像的に大きい。❷での声の音像も大きめである。しかし、声のなまなましさはよく示す。このスピーカーがきめこまかな音にこのましく対応できるためと考えてよさそうである。❹でのストリングスもひびきに艶があって、充分にひろがる。❺でのはった声が硬くならないのはいいところであるが、バックコーラスとのかかわり方で、もう少しすっきりした感じがほしい。

ショート・ストーリーズ
ヴァンゲリス/ジョン・アンダーソン
このスピーカーには適していないレコードのようである。このレコードできけるような音楽はシャープにきこえてこないとたのしみにくいが、全体的にどろんとした感じになりがちである。それにさまざまな音の音像が大きめなのも災しているようである。❷でのティンパ二の音などにしてもひびきとしての力強さは感じられるが、鋭さということではいま一歩という印象である。ひびきが総じて重くなっている。

第三の扉
エバーハルト・ウェーバー/ライル・メイズ
❶でのピアノの音とベースの音のきこえ方のバランスは大変にこのましい。しかも音に暖かさのあるのがいい。❷での右と左の区分はかならずしも鮮明とはいえない。❸、❹でのシンバル等の打楽器のひびきの輝きが多少不足ぎみに感じられる。その辺のことが改善されると、このスピーカーの音はさらに鮮度をまし、いきいきとしたものになるであろう。❺の木管のひびきは特徴をほどほどに示すにとどまる。

タンノイ Edinburgh

黒田恭一

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「2つの試聴テストで探る’83 “NEW” スピーカーの魅力」より

 きわめてオーソドックスな性格をそなえたスピーカーとみるべきであろう。今回は意識的に新しい傾向の音をおさめたレコードを中心に試聴したので、このスピーカーにとってはつらいところがあったかもしれない。いわゆる「クラシック」のオーケストラによる演奏などをおさめたレコードをきけば、このスピーカーに対する印象はさらによくなるのであろう。
 このスピーカーのきかせるしなやかな中音域にはとびきりの魅力がある。ただ、これで音像がもう少し小さくなれば、その魅力はさらに一層ひきたつのかもしれない。②のレコードの❷での声のなまなましさなどに、そういうことがいえる。
 ③のようなレコードはこのスピーカーにとって最悪である。すべての音がどたっと重くなってしまっている。暖かい音色をいかしながら、もう少しすっきりした感じがあればと思わなくもない。

タンノイ Arundel, Balmoral

菅野沖彦

ステレオサウンド 61号(1981年12月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 タンノイが’81年暮に発表した新製品は、トッモデルのG・R・ファウンテン・メモリーと、このアランデル、バルモラルの合計3機種である。そして、このアランデル、バルモラルは、そのイニシャルがAとBであるように、かつてのアーデン、バークレイにとって代るモデルとして開発されたものなのだ。アーデン、バークレイは、オリジナルからMKIIとなって長い間ファンに親しまれてきたシステムであったが、それに代って登場した2機種も、当然のことながらデュアルコンセントリックユニットを使うことに変りはない。アランデルが38cm口径の3839ユニット、バルモラルは30cm口径の3128ユニットを内蔵する。3839は連続入力120W、ピークで500W、3128はそれぞれ100W、350Wというヘビーデューティ、そしてクロスオーバー周波数は1kHz、1・2kHzの同軸型2ウェイ、つまり、コアキシャルユニットである。エンクロージュアは、アーデン、バークレイからはプロポーションに大きな変革がある。従来よりも高さと奥行きが増し、幅が狭められた。タンノイによれば、これはエンクロージュア内部の反射音による干渉を弱め、音の濁りをなくすのに有効であるとされている。エンクロージュア自体の剛性や作りは、G・R・F・メモリーを見た眼にはそれほど印象は強くないが、ビチューメンパネルと呼ばれるタンノイ独自の共振防止材をエンクロージュア内部5面に多数取り付けることによってアコースティックコントロールが行なわれ、中域の明瞭度や、全帯域での音の鮮明さを得ているという。タンノイ独特のロールオフとエナジーの2種類の調整ができるネットワークもそのままである。このネットワークコントロールは大変有効なものだ。つまり、ロールオフによって5kHz以上を4段階に増減、エナジーによって1kHz〜20kHzにわたってトゥイーターレベル全体を±6dBに増減が可能である。多少異なる点もあるが、JBLの最新2ウェイシステムに採用されていを方法と似ている。2ウェイユニット・3ウェイコントロールとでもいえるものである。これは、音楽を鑑賞する現実の条件に対応したタンノイらしいコントロール機能であり、このあたりに、真の音楽ファンのためのタンノイの、タンノイらしさが感じられるのである。