菅野沖彦
ステレオサウンド 124号(1997年9月発行)
特集・「オーディオの流儀──自分だけの『道』を探そう 流儀別システムプラン28選」より
GRFメモリーは、もっとも代表的な現代タンノイである。15インチ口径のデュアルコンセントリックユニットを、無理なく余裕ある変形バスレフ型エンクロージュアに納めていてユニットの音の特徴が素直に生きている。このモデルは現在の充実したプレスティッジ・シリーズの基礎を開拓した製品であることは、GRFメモリーの名称にも表れている。アンプは同じ英国の新進メーカー、アルケミストのプリアンプAPD21ASS、そしてパワーアンプも同社のAPD20ASSを使う。じつに魅力的なセパレートアンプのコンビネーションで、陰影と彫琢が深く音楽が躍動する。CDプレーヤーはクォード77CD。音色が人肌に温かい音だが、繊細感や精緻感にも優れている。トータルとして味わい深く雰囲気が豊かな音に大きな満足感が得られるはずである。レコード音楽が立派な音楽的実体験のできる世界であることの可能性を実感できるであろう。
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