Category Archives: 昇圧トランス/ヘッドアンプ

昇圧トランス/ヘッドアンプのベストバイ

井上卓也

ステレオサウンド 77号(1985年12月発行)
特集・「ジャンル別価格別ベストバイ・362選コンポーネント」より

 最近のプリメインアンプやコントロールアンプは、ダイレクトに低出力のMC型カートリッジが使用できることがスタンダードとなっているために、専用の昇圧トランスやヘッドアンプを使うというのは、かなり要求度が高い場合のスペシャリティ的な使い方与えてよいだろう。
 低出力のMC型カートリッジの出力電圧をMM型カートリッジ並みの2・5mV程度の電圧にまで高めることが、昇圧トランスやヘッドアンプの役目である。両者の使い分けは、基本的に、3Ω程度の低インピーダンス型MCカートリッジでは、低電圧・大電流の特徴を活して、昇圧トランスの使用が好ましく、30〜40Ω程度の高インピーダンス型MCカートリッジは、低電圧・低電流のため、電圧増幅をするヘッドアンプの使用が好ましいと考えてほしい。
●10万円未満の価格帯
 昇圧トランスでは、アモルファスコアを採用したSH305MCが、価格、性能、音質の内容を誇り、とくに、30〜40ΩクラスのインピーダンスのMC型の昇圧で好結果が得られるのが特徴である。個性派はTK2220、ひと味違ったサウンドは大変に魅力的だ。ユニークな存在がHA3だ。将来のフォノ用ブラックボックスとしては大きな可能性を秘めた製品だ。
●10万円以上の価格帯
 AU1000の超重量級設計が特筆もの。

昇圧トランス/ヘッドアンプのベストバイ

菅野沖彦

ステレオサウンド 77号(1985年12月発行)
特集・「ジャンル別価格別ベストバイ・362選コンポーネント」より

 当然のことながら、これはMCカートリッジと一体として考えるべきアクセサリーで、カートリッジ指定のもとに判定されるべき性格が強い。僕個人は、この分野ではトランスのほうに感心が強く、ヘッドアンプは、アンプの一つとして考えざるを得ないのである。例えば、アキュフェーズのC17ヘッドアンプなどのように、きわめて優れた製品だと思うのだが、同社のC280プリアンプ内蔵のヘッドアンプのクォリティを考えると、独立した製品の存在の必然性に、やや希薄なものを感じてしまうのである。ヘッドアンプとしては、マッキントッシュMCP1だけを上げたが、これは同社のプリアンプにはヘッドアンプが内蔵されていないため、あのまろやかなマッキントッシュ・サウンドを統一して獲得したい時にはぜひ一台欲しい製品だからであって、マッキントッシュ・ユーザー以外の人にとっては、やはり広くトランスを勧めたい気持ちが強い。
 10万円未満のオーディオテクニカAT700T、FRのXG7は、広く多くのMCカートリッジに適用性を認められる点で素晴らしいものだと思う。10万円以上ではデンオンAU1000も、ヴァーサタイルだが、オルトフォンT2000は、同社のカートリッジ、特にMC2000専用としての意味合いが強いように思う。それぞれのゾーンのベストワンは、以上のような意味合いで、いずれも万能型として優れているものとした。

カートリッジ、昇圧トランス/ヘッドアンプのベストバイ

井上卓也

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
特集・「ジャンル別価格別ベストバイ・435選コンポーネント」より

 2万円未満のカートリッジは、キャリアの充分なユーザーが、限定した条件下で選択し、使うべき製品であると考えるため、選択の対象外として除外した。
 2万〜4万円は、カートリッジを買ったという実感のある音の変化が確実に得られるだけの内容をもった製品があるゾーンだ。MM型を積極的に選びたい価格帯で、オーディオテクニカAT150E/Gは定評のある、明るく、音楽性が豊かな伝統的な音が聴ける製品であり、AT160MLは、滑らかで、解像力が優れた新世代のテクニカサウンドが魅力。優れた性能が素直に音に出るテクニクス250CMK4、表現力豊かなMC型ヤマハMC505も一聴に値する音だ。
 4万〜8万円では、MC型の魅力と海外製品独自な音が楽しめるゾーンだ。定評の高いデンオンDL305、DL303の後継モデルDL304は、リファレンス的意味を含め、信頼性、安定度は抜群であり、オーディオテクニカAT36EMC、37EMCの実感的な音の魅力は見事である。MM型の超高性能型テクニクス100CMK4、海外製品シュアーV15タイプVMR、オルトフォンMC20MKII、SPU−AEなどは、これぞカートリッジ的存在。
 8万円以上は、スペシャリティの世界だ。針先とコイルを直結したMC型第1号機ビクターMC−L1000。少なくとも異次元の世界の窓が開いた印象である。これと対照的存在が、軽量振動系MC型の代表作デンオンDL1000Aだ。これに続くのが、ハイフォニックMC−D15、ヤマハMC2000であり、聴感上のSN比が優れ、情報量の多さは、近代型MCならではの新しいアナログの世界を展開する。
 昇圧トランス/ヘッドアンプは、低インピーダンスMCには昇圧トランス、高インピーダンスMCにはヘッドアンプという組合せが選択の基準だ。
 10万円未満のトランスでは、トランス独特のエネルギー感と緻密な豊かさを聴かせるオーディオニクスTH7559、安定感があるオーディオテクニカAT700Tがベストバイ。ヤマハHA3のMC型用イコライザーという構成と音にも注目したい。
 10万円以上では、高インピーダンスMC型に見事な対応を示した昇庄トランス、デンオンAU1000がベストバイである。

デンオン AU-1000

井上卓也

ステレオサウンド 68号(1983年9月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 デンオンのDL1000Aは、振動系の軽量化を極限にまで追求して開発された現代的な空芯MC型の典型的な製品として既に高い評価を得ているが、今回、デンオンから発売された昇圧トランスAU1000は、DL1000Aの性能と音質をフルに発揮させるための専用トランスである。
 外観は、従来の昇圧トランスとは異なる剛体構造の筐体に特徴があり、その前半部分に、左右チャンネル独立のトランス本体が組込まれ、後半部分は、部厚いカバーをもった入出力端子部である。
 トランスのコア材は、特殊形状の大型パーマロイ鋼板を使用し、少ない巻線で低域特性を確保するために要求されるコアの透磁率は低域において従来の同社製品と比較して約1・5倍の値となっている。高域はオーソドックスに分割サンドイッチ巻線を採用して低域とのバランスをとったため周波数特性は、従来のAU310の、20Hz〜40kHzに対して5Hz〜200kHzと驚異的なワイドレンジ型になっている。
 また、左右独立型のトランス本体は、2重シールドおよび充てん材で固定され、砲金ケースに収納されており、重量級の筐体とあいまって振動防止は徹底して追求されている。なお、トランス巻線は、DL1000A専用設計のために、入力インピーダンスは固定、音質劣化の原因となるバイパススイッチなどは省略してある。
 入出力部のカバーは、太いネジで固定する振動防止を追求した設計である。付属の出力コードは、無酸素銅線採用の低容量・低雑音タイプのコードで、しっかりとした金メッキ処理が施されている。
 DL1000Aは、1g以下の針圧を標準とする超軽量級カートリッジであるために、併用するトーンアームの選択は、現状では困難といえよう。標準的な針圧で、しばらく、エージング的に音を出してから、細かい針圧調整、インサイドフォースのコントロールをしてから試聴をはじめる。
 従来の例では、適合性の良いトランスがなく、ヘッドアンプを使用する他はないため、その結果では、線が細く、音の細部を引出す特徴は認めながらも、やや、ダイナミックな表現を欠いていたのがDL1000Aの音である。AU1000との組合せでは、トランスにありがちなナローレンジ感が、皆無に近く、トランス独特の、いきいきとした音楽の躍動感が得られるのだ。
 表現を変えれば、この音は、鉄芯MC型の力強さと、空芯MC型の広帯域・高分解能を併せもつもので、まさに、MC型ならではの、非常に魅力的な音の世界である。なお、昇圧トランスの使用法として注意したいのは、剛性の高い、安定した台にのせて使うことが、優れたトランスの性能を引出す重要なポイントである。今回の試聴でも、ジュウタンの上にのせたり、机の端に置いたりした場合には、音は薄くなり、躍動感に欠け、大幅な質的低下が聴きとれた。

アントレー ET-100

井上卓也

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 高価格だが高性能とされていたMC型が、低価格化と超高級化という相反する方向に急激に展開し、カートリッジといえばMC型というほどにまで普及した最近の傾向は、オーディオ史上でも異例なことであろう。MC型の普及をここまで加速させた背景として、電子技術の急速な発達でもはやプリメインアンプでも、MC型ダイレクト使用可能は標準的機能になっていることがあげられるだろう。しかし一方では、独自のリッチな音と高SN比のメリットから、昇圧トランスの愛用者も多い。とくにキャリアの長いファンにこの傾向が強いようだ。
 ET100は、中級昇圧トランスとしてすでに定評が高く、安心して使え、推選できる数少ないロングセラーモデルである。発売後明らかに一〜二度は改良が加えられ、アップ・トゥー・デイトな性能と音質にリフレッシュされているが、今回さらに手が加えられて、一段と完成度が高まった。外観上は同一筐体ではあるが、パネルが限定仕様と同じブラックに変っている。
 音質面では、わずかに穏やかで安定感はあるが、鮮度感が今一歩、といった印象が解消された。みずみずしく、緻密で、適度に力強さと豊かな表現力をもつトランス独自の魅力が素直に出せるようになった。また、3Ωにくらべ弱かった40Ω入力時の音にシャープさが加ったことも見逃せない特徴といえる。

ヤマハ HA-3

井上卓也

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
「PickUp 注目の新製品ピックアップ」より

 MC型カートリッジの出力電圧は平均して約0・1mVほどの低さであるため、これを音質劣化させずにアンプのフォノ入力に送り込むことは非常に難しいものだ。
 昇圧手段にヘッドアンプを選ぶ場合、ヘッドシェルにヘッドアンプを内蔵させてカートリッジからの信号をダイレクトに受けて増幅することができれば、ほぼ理想に近いはずである。この方式を世界初に実用化した製品が既発売のHA2であり、今回のHA3は、その第2弾製品である。
 基本構成は、HA2と同様で、ヘッドシェル内にHA3ではサテライトアンプと呼ばれるようになったFET構成アンプを組み込み、これとHA3本体内のアンプでヤマハ独自のピュア・カレント増幅方式を構成させるタイプだ。本体内にはRIAAイコライザーをも備えているため、本機の出力はAUX入力に接続して使う。
 このHA3の方式は、MCカートリッジ出力を至近距離でアンプに入力し、信号電圧を電流に変換してHA3本体に送るため、トーンアーム内部の接続部分、接点や内部配線、さらにアームコードなどでのノンリニアの影響が極小となり、高純度の音が得られる特徴がある。
 HA3独特の改良点は、出力系に固定出力と可変出力の2系統があり、可変出力を使ってパワーアンプをダイレクトに駆動できるようになったことと、HA2ではヘッドシェル組み込みのアンプが本体と一対一でバランスが保たれ調整されているため、カートリッジ交換のたびに取付け直しが必要だったが、今回はヘッドシェル組込みアンプが1個と任意のヘッドシェルに組込み可能のサテライトアンプが2個、合計3個のサテライトアンプが付属し複数個のMC使用時の使いやすさが向上していることだ。なお、各サテライトアンプは、本体アンプとのマッチングが完全にとられ、誤接続での安全性を確保する保護回路付。
 HA3は、MCダイレクト使用可能のアンプと比較すると、非常にクリアーで抜けのよい音が得られる。アンプとしてのキャラクターは明快で、クッキリと音に輪郭をつけて聴かせるタイプだが、それにもまして音の鮮度感が高く、反応の速いことが、このタイプの優位性を物語る。なお、パワーアンプのダイレクト駆動は、これをさらに一段と際立たせた独特の世界である。

クライン SK-2

クラインのヘッドアンプSK2の広告(輸入元:インターソニックス)
(オーディオアクセサリー 27号掲載)

Klyne

ソニー HA-T1

井上卓也

ステレオサウンド 61号(1981年12月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 MC型カートリッジ本来の優れた音質を楽しむためには、ハイゲインイコライザーが標準的な装備となっているとはいえ、やはり、専用の昇圧トランスかヘッドアンプを使うのがオーソドックスな使用法だ。
 この2種類の昇圧手段のいずれを選ぶかについては、従来からも諸説があり、簡単には割切れない。個人的な考えとしては、数Ω以下の低インピーダンスMC型は昇圧トランスを、それ以上の中・高インピーダンスMC型についてはヘッドアンプの使用が好ましいと思う。低インピーダンス型独特の、低電圧・大電流で発電効率の高いタイプは、トランスのもつ電圧・電流の比を変えられるメリットを活かし、高電圧・小電流に変換する。つまり、電圧を高くし、その分だけ電流を減らしてMM型同等の出力電圧に昇圧して使うべきと思うわけだ。
 これに対して、インピーダンスの高いMC型は、出力電圧はやや高いが発電効率は低インピーダンス型より低く、小電流しか流れず、インピーダンスが上がるほど電流が減る。つまり、電圧型に移行するため、それならヘッドアンプで増幅したくもなる。
 今回、ソニーから発売されたHA−T1は、昇圧トランスの性能を支配するコア材に、理想の材料といわれるアモルファス(非晶質体)磁性材を採用した注目すべき新製品である。この新材料は、従来のパーマロイ系磁性材と比べ、低域での歪が少なく、高域での磁気損失が少なく、広帯域にわたりフラットな特性が得られる特長がある。
 今回採用された新材料は、ソニー・マグネプロダクツで開発、製造された35μmのハイファイ用アモルファス磁性材である。最近のディスクの大きなダイナミックレンジに対応するために大型のコアを使用し、入・出力特性のリニアリティを大きくとりダイナミックレンジを確保している。コイルは、コア材の優れた特性を十分に発揮させる目的で、無酸素銅線の多重分割巻き採用である。高・低インピーダンス切替スイッチは銀ムク密閉型。金メッキピンジャックなど信頼性の高い部品を採用している。
 HA−T1は、粒立ちが滑らかで、誇張感なく伸びた帯域バランスをもつ。いわば、トランス独特な緻密な力強さと、ヘッドアンプ特有の分解能が高く広帯域である利点を併せもつといった印象である。一聴に値する、新しい魅力を備えた注目製品だ。

オーディオテクニカ AT1000, AT1000T

井上卓也

ステレオサウンド 61号(1981年12月発行)
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」より

 現時点で最高のMC型カートリッジの座を狙って開発されたAT1000は、すべての基本性能をオーソドックスで妥協のない設計で追求し、最良の音を求めて完成された製品だ。特長といえるのは新素材でも新発電メカニズムでもなく、多年にわたる技術集積の粋と無形のノウハウ、さらに超精密加工精度を集大成したことにある。
 発電機構は、左右チャンネル用2個のバナジウム・パーメンダーコアに高純度銅線を巻いた左右独立型コイルを、軽量、高剛性のVCモールド材に埋め込んだ、独自のデュアルムービングコイル方式。カンチレバーは外形0・25mm角、全長4mmの天然ダイア製。上下左右を先端幅0・18mmに2面テーパードカットし、先端にAT33Eに採用した針先より1ランク軽量な0・06mm角楕円チップを剛体接合してある。この振動系と、サマリウムコバルト磁石とバナジウム・パーメンダーヨークの磁気回路により、3・5Ωの低インピーダンスで0・1mVの出力電圧を得ている。
 ダンパー構造は、水平方向を2層ダンパーで制御し、垂直方向にはバーチカルスタビライザーを採用して適切なコンプライアンスにコントロールする方式。垂直トラッキング角度は正確に23度にセットしてある。
 マウントベースは切削加工アルミ製で、要所に制動材を付加した無共振構造。しかも自重を7gに抑えた軽量設計で、振動系と磁気回路はベースに直接ネジ止のする単純で剛性の高い方法を採用している。金メッキの出力端子はボディ内部に延長した出力リード共用型で、伝送ロスが少ない。カートリッジボディ底面も金メッキ加工され、防振性とシールド効果をもつ。アルミ削り出し表面深層アルマイト処理の専用付属シェルは、セラミックに匹敵する高硬度が特長で左右傾きとオーバーハング調整機構付。
 AT1000と同時発売のAT1000Tは、3Ωと20Ω/40Ωピンプラグ差し換え式。切替スイッチレス設計の専用トロイダルトランスを左右各2個、合計4個使用した設計が特長で、外部ケースは8kgの自重からわかるように銅メッキ厚肉鋼板製だ。
 両者の組合せは、ダイアカンチレバー独特の固有音を抑え、ダイレクトでダイナミックな魅力だけを活かした、完成度の高い音を聴かせる。この正確で実体感のある表現力の高さは、MC型の最高峰を思わせる。

オーディオテクニカ AT1000, AT34EII, AT31E/G, AT33E, AT1000T

オーディオテクニカのカートリッジAT1000、AT34EII、AT31E/G、AT33E、昇圧トランスAT1000Tの広告
(別冊FM fan 33号掲載)

AT1000

フィデリティ・リサーチ FR-66fx, XF-1

フィデリティ・リサーチのトーンアームFR66fx、昇圧トランスXF1の広告
(別冊FM fan 33号掲載)

FR66fx

オルトフォン T-30

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 トップランクのMC型カートリッジMC30の高性能に対応するため、分割巻線のトロイダルコアを新採用しワイドレンジ化し、各種のインピーダンスのカートリッジにも使えるように3〜48Ωの5段切替のインピーダンスセレクターを備えた汎用型の製品である。
 帯域バランスは柔らかな低域ベースのワイドレンジ型で、音の粒子は細かく滑らかなタイプだ。質的には高い音だが、薄いベール感があるため出力コードを変更してみると、その変化は相当に大きい。デンオン、オーディオクラフト、マイクロなどのコードを組み合わせると、マイクロが最も音にエネルギー感があり、シャープで抜けの良い音である。MC20、FR7f、305ともに個性は抑えるが美しく聴きやすい音だ。

オルトフォン MCA-76

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 CD4方式の4チャンネルステレオに対応する広帯域特性を得る目的で開発されたオルトフォン初のヘッドアンプで、CD4用の高域カットフィルター付属。入力インピーダンスは75Ω、ゲインは34dBである。
 柔らかな低域、豊かで響きのタップリとした中低域と硬質さを感じる中高域が特徴の帯域バランスだ。音の表情は穏やかで安定感があり、音場感は前後方向のパースペクティブが少し狭い。ロッシーニは穏やかで聴きやすいが、高域のディフィニッションが不足気味で反応が遅く感じられる。
 ドボルザークは、DGG独特の高域の輝きが少なく、メタリックにならない特徴はあるが、まとまりに欠け、峰純子もダイレクトさが出ず、ボーカルの声量が落ちて聴こえる。

オルトフォン T-20

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 トロイダルコアを採用した低インピーダンス専用昇圧トランスで、バイパススイッチの付いたモデルだ。
 聴感上の帯域バランスはトランスとしてはワイドレンジ志向型で、豊かで適度に芯のある低域、クッキリと粒立つ硬質な中域とスッキリと伸びた高域に特徴があり、音にコントラストをつけ、リアルに音を聴かせるタイプだ。音場感はシャープに拡がり、音像定位もクリアーにまとまる。音の表情には少し固さがあるが、分解能はSTA6600Lよりも一段上で、低域の力強さでも優れる。
 試みにFR7fを使うと、トランスの性質が相当に強く、空芯MC型独特の鮮明さと反応の速さは抑えられ気味で、力強い低域とクッキリとコントラストのついた明快型のFR7fになる。

オルトフォン STA-6600L

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 トランス本体を筐体の上部に取付けた6600以来のロングセラーを誇る製品。
 帯域バランスはヘッドアンプに比べれば狭いとはいえ、ナチュラルに伸び、やや柔らかい低域と程よく硬めの高域がバランスを保ち、中域に量感があるのはトランスならではの独特の味だ。
 MC20は、豊かで柔らかな低域が安定感のあるファンダメンタルを作り、適度に密度感のある中域とスッキリと粒立つ高城は安心して聴けるオルトフォンらしい魅力だ。4種のプログラムソースを、それなりに見事にまとめて聴かせる性能は、長期にわたるロングセラーの実力を示すものだ。
 試みにFR7fと66Sの組合せを使ってみると、細やかさ分解能の高さ表情の豊かさといったカートリッジの特徴をよく出す。

オルトフォン MCA-10

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 MC10カートリッジの開発にあわせて登場したヘッドアンプで、電源はバッテリー動作。フロントパネルの小型メーターは、ヘッドアンプ出力とバッテリーチェック共用である。
 聴感上の帯域バランスは、ヘッドアンプとして無理にワイドレンジを狙わず、スムーズなレスポンスをもったトランス的なニュアンスをもつタイプだ。低域は柔らかく豊かだが、音の芯が弱くソフト。中域は程よい厚みがあり、中高域には少し硬質なところがあり、マスキングのせいか高域はゆるやかに下降して聴こえる。
 MC20はそれなりに特徴を出すが、独特の豊かさやしなやかさが今一歩の印象であり、バランスは良いが不満も残る。FR7fにすると低域の力強さはあるがソフトな雰囲気になる。

オルトフォン STM-72Q

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 低インピーダンス専用に、開発された小型昇圧トランスで、型番末尾のQはCD4システムに対応できるワイドレンジ型の設計であることを示している。
 昇圧比は1対60とオルトフォンのトランスでもっとも大きいが、帯域バランスはナチュラルで、さして狭い感じはない。音の傾向は過度にスムーズさを持ちながらスッキリとした伸びやかさがあり、全体にまとまりの良いタイプだ。ロッシーニの軽快さと華やかさ、ドボルザークのプレゼンス、峰純子のダイレクトらしい鮮度感、さらにカシオペアのパワー感などを完全にではないが、それなりに聴かせる性能は、価格から考えれば見事という他はない。
 試みにFR7fを使うと音の細部が見えず木炭画のような粗い音になった。

リン Pre PreAmp

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 ASAK・MC型カートリッジ専用のセパレート電源付ヘッドアンプである。
 低インピーダンス用のためMC20と組み合わせると、無理に帯域を伸ばした印象がないトランス的な性質と、中高域から高域での美しい輝きをもち、全体としては重く量感のある低域をベースとした独特の穏やかな安定感のある音が、このアンプの特徴であることがうかがわれる。
 試みにASAKとFR66Sを組み合わせると、適度にソリッドさがある低域をベースにクッキリと音像を立たせる中域、シャープで少し硬質な高域が巧みにバランスをした硬質な音ながら安定感があり、引締まった立派な音を聴かせる。音場は適度にクリアーで音像定位はシャープであ1り、反応はキビキビして速い。

ラックス 8025

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 無酸素銅線のコイルとトロイダルコアを採用し、独特なプラグイン方式の構造をもったステレオ昇庄トランスである。入力は切替なしに3〜40Ωをカバーするタイプで昇圧比は1対10・5、トランスとしては比較的類型の少ない、入出力が逆相の反転トランスである。
 帯域バランスは低域を抑えた細身のシャープなタイプで、高域は素直に伸びている。音に適度にコントラストをつけ引締まった明快なサウンドであり、分離はトランスとしては優れる。
 MC20は軽快でクッキリとコントラストをつけた音だが、少しスケールが小さく、305はよりナチュラルな帯域感をもち、適度に繊細でありながら音の芯がクッキリとし、楽器固有の音をそれらしく聴かせるが、やや小さくまとまる。

インプレスラボラトリー Model 999

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 3〜50Ωのユニバーサル型昇圧トランスだが切替スイッチはなく、接点を最少限に抑えた性能志向型。
 帯域バランスは、柔らかな低域をベースとしてナチュラルに伸びた、トランスとしては広帯域型だ。中高域に適度に輝くキャラクターがあって音を爽やかにスッキリと聴かせるが、逆に、中域は少し抑え気味に感じられ、全体に音を少し小さくまとめ、音場感もスピーカーの奥に拡がるタイプ。
 MC20は、爽やかで適度に反応が速くシャープな音だ。音色はニュートラルで軽く、滑らかさが特徴。
 305になるとMC20と異なり全体に音の輪郭をクッキリとつけるタイプとなり、305にしては線が太くメリハリ型で弦楽器は硬質さがあり、ボーカルの無声音を少し強調する。

長谷川工房 V-81G

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 非常に高価格な1・5Ωと40Ω切替型のトランスで、受注生産のいわば特注品のスペシャリティ製品だ。
 帯域バランスはナチュラルに伸び、トランスとしてはワイドレンジ型である。音の粒子は非常に細かく独特の抑えた艶があり、クォリティはトップクラスだ。
 音色は軽く、明るく、少し控えめの素直な表情と音場感をスピーカーの奥に拡げ、全体に音を整理して細く美しく聴かせる点はHTM60Eと共通だが、クォリティは比較にならない。
 MC20を軽快でスッキリと聴かせるし、305も爽やかで、いかにも現代型MCらしくワイドレンジで音場感の拡がりをきわだたせて見せる。とくにXSD15を艶やかに軽く聴かせるのは、本来と異なった音だが一種の不思議な魅力だ。

長谷川工房 HTM-60E

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 1・5Ωと40Ω切替型の昇圧トランスである。
 聴感上のバランスは低域を抑えた細身のスッキリと滑らかなタイプだ。音の粒子は細かく、独特の艶やかさがあり、リアルに音楽を聴かせるタイプではなく、美しくキレイに聴かせる典型的な製品だ。音場感はスピーカーの奥に距離をおいて拡がり、音像は比較的に小さくまとまるが、輪郭はソフトでスッと定位する感じで、聴きやすい独特の雰囲気がある。MC20は全体に薄化粧の印象となり、線が細く、MC30的なニュアンスとなる。
 305は、分離のよい滑らかでスムーズな音だが、
昇圧比が小さいようで、少しゲイン不足気味になる。両者の音の姜は少なく全体に美しい素直な音になり、スケールを小さくまとめる。

フィデリックス LN-2

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 006P電池を4個使う左右独立型電源採用のヘッドアンプで、シンプルな回路構成で高性能化するため、入力と出力が逆相の反転アンプを使用している。
 聴感上の帯域バランスは低域を抑え、高域に向ってフラットなレスポンスをもち、音色は寒色系で線が細く、クッキリと輪郭をつけるシャープな音が特徴。
 MC20はソリッドで締まった音となり音像を小さくシャープに定位させ、奥行きもスッキリと見通せるが、独特の中低域の豊かさは抑えられ、音が整理されて出るタイプだ。
 305では、一段と爽やかで分離が良くなる。カートリッジの分解能をダイレクトに聴かせる性能をもつが、少し表情は硬い。なお、電源投入時のポップ雑音は強大で、使用上注意が必要。

試聴を終えて

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 前号(No.59)と今号の2回にわたって掲載したMC型カートリッジ用の昇圧トランスとヘッドアンプのテストリポートは、MC型カートリッジが数多く華やかに登場し、プリメインアンプでも出力電圧の低いMC型カートリッジをダイレクトに使用可能になったという現状をふまえて企画された。そこで、MC型カートリッジ専用の昇圧手段である昇圧トランスとヘッドアンプが、どのような性能と魅力をもつのか。また、オプショナルなアクセサリーとして構入してまで使うべきだろうかを探ることを目的として、その概況をリポートすることにした。
 したがって、各昇圧トランスとヘッドアンプは、それぞれの試聴条件が比較的に同一になるように、最低限度の常識ともいえる注意をして実際の試聴にあたっている。
 試聴テストに使用した機器は別表の通りだ。カートリッジは、ローインピーダンス型としてオルトフォンMC20II、他にフィデリティリサーチFR7f、ハイインピーダンス型としてデンオDL305、他にEMT/XSD15を使用し、他にミディアムインピーダンス型のオーディオテクニカやヤマハの製品も使用した。また特定のカートリッジの専用モデルとして開発されたトランス/ヘッドアンプについては、専用カートリッジでの試聴はもちろん、インピーダンス的に問題のない(前号270頁参照)他のカートリッジでも試聴している。
 ターンテーブルはマイクロのエアーベアリング方式のSX8000を使用し、トーンアームを3本取付けた。オルトフォンMC20IIにはオーディオクラフトAC3000MC、デンオンDL305にはデンオンDA401を組合わせ、EMT/XSD15、フィデリティリサーチFR7fなど比較用にはフィデリティリサーチFR66Sを組み合わせたが、タイプによってはAC3000MCでもチェックしている。なお、ヤマハHA2は専用ヘッドシェルの使用が前提条件であるため、DL305はこの場合のみAC3000MCに組み合わせした。
 ヘッドアンプはAC/DCをとわず、試聴別に3時間以上通電してヒートアップをおこない、AC電源を使用するヘッドアンプの物理的なAC極性はすべてチェックしている。一方、昇圧トランスやヘッドアンプの出力をコントロールアンプに送るRCAピンコードは、各メーカーの付属品もしくは指定のタイプを使い、特に指定のない場合には、ステレオサウンド試聴室で常用しているピンコード(長さ50cm)を使った。このピンコードは、数多くの機器間の接続用としてひどい偏りのない、つまり、現状でやや高いレベルで平均的な性能の、特殊構造でない製品である。
 また、電流容量の十分に大きいテーブルタップを使用し、全国どこでも入手可能なやや太い平行線コードをスピーカーケーブルに使用するなど、特別な方法は一切とっていない。
 テストした昇圧トランス/ヘッドアンプと比較し、概略のグレードをチェックする目的で、MCポジションをもつブリメインアンプのビクターA-X5D、テクニクスSU-V7、サンスイAU-D907Fの3機種も用意した。この中でAU-D907Fだけは、このクラスのブリメインアンプに一般的なハイゲインイコライザーではなく、専用ヘッドアンプを内蔵してしいる。
 約60機種の昇圧トランス/ヘッドアンプをテストしての全般的な感想としては、進歩が著しいMC型カートリッジと比べ、昇圧トランス/ヘッドアンプともに、製品開発の目的が明確でない製品や、現状ではすでに旧態化した製品が存在することが第一にあげられる。やはり、昇圧トランス/ヘッドアンプは、コンポーネントシステムとしてはオプショナルな別売アクセサリーであるためか、進歩の激しい他の分野と比べ、やや陽のあたらぬ場所的な印象を受けるのかもしれない。
 それにしても、問題の多い製品が散見されるのは事実だ。今回のテストの対象からは除外したが、AC電源コードがアンプ内部で配線されてなく、バイパススイッチも動作しないといった極めてひどいキット製品があった。また、トランスでも、HIGH/LOWの表示が昇圧比の大小なのか、入力レベルの大小なのか、試用しないと不明の製品が散見された。
 現在の昇圧トランスとヘッドアンプは、価格的にも1万円未満から20万円を超す製品まで、非常に広範囲の価格に分布しているが、価格対性能・音質の比較は、カートリッジと似て、スピーカーシステムやアンプほど明確な差は感じられない。つまり、高価格だから性能・音質が優れるという結果は少なく、特に、5~10万円あたりの価格帯でこの傾向が強い。
 比較用プリメインアンプとの対比で昇圧トランスとヘッドアンプを考えると、昇圧トランスでは約3万円が、トランスとしての魅力を聴かせはじめる境界線であり、1万円程度の製品は、低インピーダンスのMC型用として、主にSN比を稼ぐための使用にメリットを見出すべきだ。
 また、ヘッドアンプは、技術進歩が激しい分野だけに、少し古い製品はアンプとして旧態化したことが聴感上で聴き取れ、比較的新しい製品でも、特別の目的以外は、アンプ側にMCポジションがあるのなら、わざわざ単体製品を購入してまで使用するメリットは少ないようだ。簡単にいえば、比較用プリメインアンプにみ組合わせて、さすがに専用ヘッドアンプと思わせるのは、プリメインアンプに匹敵した価格の製品で、実用上は、トータルのコンポーネントシステムとしてかなりアンバランスを生じる。
 おおよそに区別した価格帯別に、今回の試聴で好結果が得られた製品のリストを挙げておくが、これはあくまでも、ステレオサウンド試聴室で、別掲の試聴用コンポーネントシステムを使ったときの結果で、一応の参考としてお考えいただきたい。
 最後に、今回のテストを通じて浮びあがった、昇圧トランス/ヘッドアンプの問題点、注意点をまとめておきたい。
 従来は問題にされなかったことだが、昇圧トランス/ヘッドアンプの入出力の位相関係を等閑視してはいけない。今回の試聴では、入力と出力の位相の関係をチェックする初めての試みをおこない、発表することにした。
 カートリッジの位相の表示は、一般的に水平振幅にカッティングされたディスクを使い、中心方向から外周方向に針先が動いた場合に+側に発電する端子を+として表示する例が多い。しかし現状では、各メーカー間で完全な統一はなく、逆の場合もある。ステレオサウンドにある各種MC型カートリッジを、トーンバースト波のカッティングされたレコードを使いチェックした結果では、±表示が逆の、位相が反転している、いわば逆相カートリッジがいくつかあった。今回使用した製品では、EMT/XSD15、TSD15、フィリップスG925XSS、アントレーEC15の3種が逆相で、古い製品の中には、ソニーの〝プロ〟になる以前のXL55、初期のヤマハMC1なども反転型だ。
 一方、昇圧トランスとヘッドアンプでは、入力と出力の位相が反転する逆相タイプとして、次のような製品があった。
 昇圧トランスでは、オーディオニックスTH7559、ラックス8025、スペックスSDT77とSDT1000。
 ヘッドアンプではオーディオニックスADNIII、フィデリックスLN2、フィリップスEG1000、ヤマハHA1。
 入力系の正相と逆相の位相関係は、トータルなコンポーネントシステムの音質を変化させる大きな要素である。一部の製品に見受けられる、音質的な特徴を得るために反転型を採用するといった使い方は、たしかに効果的ではある。しかし、特に昇圧トランスの場合には、技術的アプローチから考えても、本質的には避けるべき手段である。
 また、昇圧トランス/ヘッドアンプともに、その出力をアンプに送る出力コードが必要だが、このコードの種類により、音が大幅に変化することにも気をつけていただきたい。これは、アームコード、機器間接続用のRCAピンコードも同様で、注意したい問題点だ。特定の音に焦点を合わせてチューニングをとる場合には、音を変える要素は大きなメリットとなる。しかし、今回のような比較試聴上では、この変化量がテスト結果を支配する要素となるだけに、たとえ専用コードを使用した場合でも、音質的にアンバランスを生じたときは、他のコードでもチェックしている。特別の場合には、かなりキャラクターの強い昇圧トランスが、一般的なRCAピンコードでナチュラルな音を聴かせた例もあり、特殊な構造や線材を使ったタイプは、いかに高性能であろうが、誤った使用法だけは避けたいものだ。

●テストに使用したレコード
ロッシーニ:《弦楽のためのソナタ集》アッカルド(v)他フィリップス25PC70-71
ドヴォルザーク:交響曲第九番《新世界より》ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー グラモフォンMG1199
峰純子《ジェシー》 ロブスターLDC1026
カシオペア《アイズ・オブ・マインド》 アルファALR28016
●テストに使用した機器
スピーカーシステム/JBL♯4343BWX
コントロールアンプ/マークレビンソンML7L
パワーアンプ/スレッショルドStasis3
ターンテーブル/マイクロSX8000十RY5500
トーンアーム/オーディオクラフトAC3000MC, デンオンDA401, フィデリティリサーチFR66S
カートリッジ/デンオンDL305, オルトフォンMC20MKII, フィデリティリサーチFR7f, EMT XSD/TSD15 他に各社代表的MC型多数
MCポジション比較用ブリメインアンプ
ビクターA-X5D, テクニクスSU-V7, サンスイAU-D907F

ヤマハ HA-2

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 ヘッドシェル内部に初段アンプを組込み、金属接点スイッチ、信号ケーブルなどに起因する歪を解消しょうという構想のアンプで、本体内部にRIAAイコライザーも備えたヘッドアンプイコライザーである。
 基本的にはフラットに伸びたレスポンスと、反応が速くダイレクトでシャープに粒立つ音で、一般のアンプと較べ、一段と鮮明で制約のない伸びやかさが特徴。
 MC20は芯の明解な低域とクッキリと緻密さのある中域、抜けの良い高域が特徴でコントラストの利いた音になり、305は全体に穏やかで、落着いた音だ。
 両者の音の傾向は相当に変わるが、原因の多くは組合わせたトーンアームの性質に関係がありそうだ。305はHA2用シェル付でアームはAC3000MC使用。