Category Archives: ボリバー

ボルダー Ultimate 3, L3AE, L3AES

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 プリアンプでは、業務用的構想で入力セレクター部、アンプ部、電源部など各ブロックを独立した筐体に収めた ULTIMATE3、コンシューマー用に新設計されたL3AE、フォノEQを除いたL3AESがある。2番と3番ピンの極性切替付のバランス入力とバランス出力を備え、多彩な暗譜と組合せ使用が可能なことは使いやすく、またナチュラルで色づけのない音は、信頼感があり好ましい。

ボリバー Model 18

瀬川冬樹

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

 試聴に入る前にそのスピーカーを最も良く生かす設置条件を探すために、テストをくりかえしながらいろいろ動かしてみる。そのことはすべてのスピーカーに共通しているが、その調整のプロセスから、すでに、おや、これは相当に素性の良い製品だな、と思わせる。たいていの国産スピーカーは低音の鳴り方が粘ったり重くなったりして、そこをおさえるために置き方に苦労するが、ボリヴァーの場合はむしろ低域がとても軽く、そのためにやや低め(約20cm)の台にして背面をほとんど壁につけるくらいにしてみたが、こうするとファンダメンタルがとても充実してきて、しかも低音楽器の動きがよく聴き分けられる。全域に亘ってやや軽い傾向だが、誇張感のないバランスの良さで楽しめる。好みによってハイエンドをわずかに強調してもよく、そうしてもユニット自体の共振が目立つようなことがなかった。総体にべとついたところがなく、さらりと明るく鳴るが、反面、弦や女性ヴォーカルなどで、もうひとつしっとりした潤いがあってもいいかな、と思わせる。ただそれは悪い意味でのドライではなく、質感も緻密だしザラついたり粒の粗くなったりするようなこともない。組合せは、ポップス系には4000DIIIとCA2000の傾向で徹してしまうのもよいが、455E+7300Dの方が音に潤いが出てきて楽しめる。これはダークホースだ。

ボリバー Model 18

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶あかるくすっきりきこえるピッチカート。
❷奥の方でくっきりと示される。力強いとはいえないが。
❸個々のひびきに一応対応するが、積極的とはいいがたい。
❹低音弦のピッチカートはふくらみすぎる。
❺クライマックスでは、ひびきが空虚になり、刺激的になる。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶音像が大きめで、響きにまろやかさがたりない。
❷ファゴットが、どういうわけか、ひっこみがちである。
❸響きが、ふくらみずき、重くなる傾向がある。
❹ひっこんで、はえない。さわやかさがほしい。
❺音色的な対比が、さらにすっきりついてもいいだろう。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶声の自然なのびは示す。表情は幾分濃くなる。
❷接近感は示すが、音像が大きいので、充分な効果をあげるとはいえない。
❸声がひっこみ、クラリネットがふくらんで、バランスに問題がある。
❹はった声が硬くならないのはいいが、艶をなくす傾向がある。
❺響きはよくブレンドしているが、効果的とはいえない。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶低い方のパートが、きわだつ傾向がある。
❷声量をおとしたことが、強調されるように感じる。
❸残響がまといついているとでもいうべきか。
❹鮮明さが不足するために、響きの綾がはっきりしない。
❺のびてはいるが、必ずしも効果的とはいえない。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的な対比はついているが、音場的にいかにも狭い。
❷後へのひきが充分でないために、効果があがらない。
❸ひびきが充分に浮いているとはいいがたい。
❹横へのひろがりは示すが、前後のへだたりはつまりぎみである。
❺ひびきの力のないことが、マイナスに働いている。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶ここでのひびきにしては湿度は高すぎるようだ。
❷ギターの音像は大きめなために、せりだしの効果がいきない。
❸もう少しくっきり示されないと、あいまいになる。
❹きこえるものの、ひびきに輝きがたりない。
❺一応きこえはするが、うめこまれがちで、はえない。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶ベースの響きが強調されて、12弦ギターの響きの特徴がいきない。
❷響きの重心が低い方にかかりがちで、さわやかさにかける。
❸響きの乾き方が不足だ。全体に重くひきずりがちである。
❹ベース・ドラムは重くひびいて、充分な効果をあげえない。
❺言葉のたち方が、不充分である。バック・コーラスの効果は稀薄だ。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶入れものの中でのように響いて、力感が感じられない。
❷もうひとつ鮮明に、くっきり示してもいいだろう。
❸音の消える尻尾は、不鮮明で、はっきりしない。
❹鋭く反応できているとはいいがたい。下にいくほどひきずりがちだ。
❺音像的に差がありすぎるので、不自然である。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶響きは、切れが鈍く、重い。もっとシャープでもいいだろう。
❷どういうわけか、細く、弱々しくなる。
❸響きに本来の力が不足しているので、効果がいきない。
❹さまざまな響きがいりまじって、音の見通しがつきにくい。
❺もう少しめりはりがくっきりついてもいいだろう。

座鬼太鼓座
❶奥へのひきがとれないためか、かなり前の方にでてくる。
❷尺八の音は、もう少し乾いて、脂っ気のない方が望ましい。
❸きこえることはきこえるが、くっきりととはいいがたい。
❹一応の響きの広がりは示すが、スケールゆたかにとはいいがたい。
❺この響きの特徴である硬質さが充分に示せているとはいえない。