瀬川冬樹
ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より
音質に関しては本誌23号245ページの発言に尽きるが、要点をくり返せば、高域の滑らかさ、涼風の吹き抜けてゆくような耳障りなところのない爽やかな音質は素晴らしい。ただ、それを支える中域以下の土台が骨細で量感に乏しく、例えばヴァイオリンやチェロの胴に共鳴するふくらみが出にくく、ファンダメンタルの豊かな響きが出てこないという意味のことを発言した。これに対する日立製作所の回答が24号354ページに掲載されたが、それも要約すれば、テストグループの試聴の方法に難点があって、HS500自体には問題はないと受けとれる要旨だった。今回も別記のように各種の置き方を試みたが、やはり前記の指摘を修整する必要を認めなかった。私はエッチS500の何よりの長所を認めた上で、発売後六年を経た現時点では必ずしもこれが十全でないことを言っているので、一時期を画した立派な製品であることは世間が評価している。なお23号で、発売当初にくらべて最近の製品の音質が変わってきていることを何ら変わっていないと回答されたが(前記24号参照)材料その他に二~三の変更があったとすれば、それで音が変わらないというのは納得のゆかない答えだった。
周波数レンジ:☆☆☆
質感:☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆
解像力:☆☆☆☆
余韻:☆☆☆
プレゼンス:☆☆☆
魅力:☆☆☆
総合評価:☆☆★
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