Category Archives: AGI

AGI Model 511b + アキュフェーズ M-100

菅野沖彦

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
特集・「高級コントロールアンプVSパワーアンプ72通りの相性テスト」より

 この組合せにおけるオーケストラの音は、豊かさや重厚さに欠ける。その代り、透明な中高音域の質感は、特筆に値する美しさであった。マーラーのシンフォニーの響きとしては必ずしも私の好みとはいえないが、これが古典派の曲なら捨て難い魅力だろうと思う。フィッシャー=ディスカウも、少々細身の声で、テノールがかる。ピアノの明瞭な響きは美しい。ジャズは、明瞭だが、低域の押し出すような重量感が物足らなくもう一つの感じだ。

AGI Model 511b + スレッショルド S/300

菅野沖彦

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
特集・「高級コントロールアンプVSパワーアンプ72通りの相性テスト」より

 レンジの広いオーケストラを聴くと、この組合せはやや狭い帯域レンジのように聴こえてくる。それだけに、音楽の重要なスペクトラムが朗々と鳴り、明るい中音が魅力的だ。ハイエンドとローエンドが目立たない、落ち着いて聴ける音といえるだろう。男声の低音成分がもり上らないので、いわゆる胴間声にならない。ジャズのベースも締まって、よく弾み明快である。各レコードのもつ音の質感を、控え目だが、品のよい響きで伝える。

AGI Model 511b + マランツ Sm700

菅野沖彦

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
特集・「高級コントロールアンプVSパワーアンプ72通りの相性テスト」より

 パワーアンプの変化なのか、この組合せでのオーケストラは、より柔軟なテクスチュアが感じられ、艶もついてくる。総じて、瑞々しさが増して魅力的であった。フィッシャー=ディスカウの声の艶も、この組合せだと生きてくる。ピアノの立上り、粒立ちといった鋭さにやや不満が感じられ、低域の質的な響き分けも大まかになる傾向が感じられたのが惜しい。パワーアンプの持っている音がプラス側に大きく働いているようだ。

AGI Model 511b + ハーマンカードン Citation XI

菅野沖彦

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
特集・「高級コントロールアンプVSパワーアンプ72通りの相性テスト」より

 明解で、切れ込みの鋭い音という印象。特にオーケストラの多彩な各楽器の音色を、際立って聴かせる音色の響き分けに優れているようだ。中高音にめりはりのきいた、やや華麗な印象であるが、オーケストラのテクスチュアとしては、ややざらつき気味。フィッシャー=ディスカウの声のふくらみも、少々柔軟さに欠け、硬質だ。ジャズ系のソースでは効果的な音で、力強く迫ってくるが、中低域に独特のふくらみ、こもりがあった。

AGI Model 511b

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 AGI511コントロールアンプは、数年前の登場以来、シンプルで簡潔なデザイン、精密感があり加工精度が高い筐体構造、優れた性能が直接音質に結びついた印象のダイレクトでフレッシュなサウンドなどこの種の製品に要求される要素が巧みに盛り込まれているオーディオ製品としての完成度の高さにより、一躍注目され、多くのファンを獲得してきたが、今回ラインアンプのICを変更し、新しくbタイプに発展した。
 詳細は不明だが、511のラインアンプは、最初期のタイプが初段差動アンプがバイポーラトランジスター構成のIC、その後FET差動のICに変更されている様子であり、これがAGI511aとして知られているタイプである。今回新採用のICは、米国NASA系の技術を受け継いだ半導体メーカー、BURR−BROWN社製の最新型で、これの採用により特性面での改善は大変に大きい。
 新ICによりラインアンプのスルーレイトは、従来の50V/μsからフォノイコライザーと同じ250V/μsと高まり、THDは、20Hzから100kHzの超高城まで変化をしないといわれる。なお、bタイプのイニシアルは改良のプロセスを示すが、国内市場では、いわゆるaタイプはパネル面に表示されていなかったために、新採用のBURR−BROWN社製ICの頭文字Bの意味をとってbと名付けられたようである。また、bタイプになっての変更はICのみで、使用部品関係は従来どおりの高精度部品を採用している特長を受け継いでいる。なお、輸入元のRFエンタープライゼスでは、従来機のbタイプへの改良を実費(55、000円)で引受けるという。
 bタイプは、511初期のクッキリとコントラストをつけた音から、次第にワイドレンジ傾向をFET差動IC採用で強めてきた、従来の発展プロセスの延長線上の音である。聴感上の帯域が素直に伸びている点は従来機と大差はないが、内容的には一段と情報量が多くなり、分解能の高さは明瞭に聴きとれるだけの充分な変化がある。音色は明るく、のびやかな再生能力があり、大きなカラーレーションを持たないため、組み合わせるパワーアンプにはかなりフレキシブルに反応をする。内外を含め最近のコントロールアンプとしては最注目の製品だ。

AGI Model 511

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 いかにもアメリカのプリアンプらしい、マランツの伝統を踏襲したものだ。より簡略化し、フォノ1系統、ラインレベル入力4系統をプッシュボタンでまとめ、これとシンメトリックに配したダビング機能、モードセレクターのプッシュスイッチ類、大型のマランツ・ツマミの音量とバランスの2個を左右に配したデザインは秀逸。トーンコントロール類は一切ない。いいかえれば青臭いマニアライクな製品ともいえる。

音質の絶対評価:7

AGI Model 511

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

初期にくらべ格段に洗練度を増したこのクラスのトップモデルだ。

AGI Model 511

菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

鋭い立上りと豊かな余韻がバランスした表現力の強いプリアンプ。

AGI Model 511

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 初期のソリッドでタイトな音にくらべると、かなり音の粒子が細やかで、表情がナチュラルで、洗練された滑らかな音を持つようになった。聴感上での周波数レンジは、かなりワイドレンジ型で、バランス的には中域がやや薄く、音色は明るく滑らかなタイプである。
 ステレオフォニックな音場感は、左右方向・前後方向のパースペクティブともに充分に広がり、スッキリとした広い空間の再現性がある。音像はかなり小さくまとまり、輪郭は細くシャープである。音像はスピーカー間のやや奥に定位をする。表情はナチュラルで活き活きとし、オーケストラのトゥッティでの音の分離は素晴らしい。

AGI Model 511

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 入力信号に対する反応の速さあるいは音の明瞭度(ディテール)の高さを当初から謳い文句にしていただけあって、いかにも現代のソリッドステートの最尖端の技術はかくあるべしというよな、引締ったクールな音を聴かせる。ことにEMTのプレーヤーから入力をAUX(イコライザーアンプを通さずに)直接加えたときの、素晴らしく品位の高い、緻密でしかも音のひと粒ひと粒が生き生きと躍動するのがみえるような音質は、ちょっと類のないほど素晴らしかった。しかしフォノ・イコライザーからのトータルの音になると、ひと幕引いたようでどこか反応の遅い感じの、よく言えばおっとり型の音質で私にはおもしろくない。以前のサンプルよりもこの点がちょっぴり不満に感じた。

AGI Model 511

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカのAGIが作ったプリアンプで、動特性重視のハイ・スピード・アンプを標榜して登場した。つまり、過度特性を重視して設計されたスルーレイトにウェイトを置いた新しい回路の見つめ方であるが、外観からも、往年のマランツ7、7Tのトラディションが流れている。パネル・デザインからも解るように必要最低限にコントロール機能を整理している。生き生きとした音質の高級プリアンプ。

AGI Model 511

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 パネルフェイスは流行の薄型ではないが、機能は単純化され、トーンコントロール、フィルターはもたない。増幅系は整然としたプリントボード上に配置され、視覚的にも美しく、見るからに現代アンプらしい応答性の速い音がしそうな雰囲気が感じられる。ともかく、ダイレクトなサウンドは大変に快適である。

AGI Model 511

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 いかにも現代エレクトロニクスの最先端をゆくような、即物的でクールな、しかしいわゆる無機質とか無味乾燥というのではなく音楽の持つ表情に鋭敏に反応する生き生きとした鳴り方が魅力といえる。ただトーンコントロールはおろか、フィルターもラウドネスも何もついていないところが、実用上やや不満になる。

AGI Model 511

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 セパレート型アンプのジャンルは、プリメインアンプにくらべれば、制限や制約がない、いわば無差別級の分野であり、最近では、ことに多様化、多角化した製品が数多く登場している。
 AGI#511は、セパレート型アンプとしては、業務用アンプに採用されることが多い、いわゆるユニットアンプ形式のプリアンプで、多機能を誇る高級コントロールアンプから、最少必要限度の機能を残して単純化した、シンプルな構成が特長である。
 デザインは、現在のこの種のモデルの流行である薄型ではなく、標準的なコントロールアンプのパネルサイズの左右を短縮したタイプであり、コントローラーは、ボリュウム、バランス以外は、2系統のプッシュボタンスイッチだけというシンプルなものだ。構造は、増幅部分、電源部分を一枚の基板上に構成するタイプであるが、使用部品、材料は厳選された高度なものが採用され、外側の金属製ケースの板金加工の精度は、海外製品としては異例に高いものである。
 この#511は、米国系の最近のアンプの傾向であるスルーレイトを高める基本設計を採用しているが、音質は大変にクリアーで、力強く、音づくりというような虚飾がまったく感じられない。反応は非常に早く、思い切りの良い音を出すために、ディスク的な意味での良い音というよりは、テープでの38センチ・2トラックデッキの音に似た鮮度の高さが、他のアンプにない独得の魅力である。