Category Archives: オーレックス/東芝

オーレックス FM-2000

岩崎千明

週刊FM No.8(1976年発行)
「私の手にした新製品」より

 アンテナなんていうものは特殊なんで今まで専門も専門、アンテナだけ作ってるメーカーの独占商品だと思ってたらなんと東芝が出したってわけ。なんでまた、というなかれキミ。オーレックスのチューナーは、国内製品はおろか世界中を見渡してもちょっと例の少ないシンセサイザー・チューナー。それも周波数デジタル標示だよ。スゴイネ。これだけのチューナーを出してりゃどんなアンテナをつけたとき本領を発揮してくれるんだい、とユーザーからいわれるにきまってる。だからFM2000なのだ。つまり、このアンテナをつけさえすれば、スゴイチューナーが一層スゴイ性能を出せるっていうものさ。
 しかし、FM2000、いままでのがらばかり馬鹿でかいFMアンテナとは違って、キミの手を拡げた時よりもひとまわり小さいくらいだ。だからといって、テレビ用を代用してるのと違って、ちゃんとしたFM専用なのである。つまりFMバンドの全域に対してほぼ同じような感度を得られるように作られている。確実にひとまわりは小さくまとめてあって、全体がすごく軽い。だから今までのように大げさにならず、どんな場所にも取り付けられるっていうわけだ。ちょっとやってみたけど、天井近くブームの一方を片持ち式に取り付けても軽いからビクともしない。チューナー付属のフィーダー・アンテナの時に苦労するステレオ放送でのノイズっぽさが驚くほど直る。

オーレックス PC-3060

岩崎千明

週刊FM No.19(1976年発行)
「私の手にした新製品」より

 オーレックスの新しいパネル・タイプのカセット・デッキPC−3060は、みるからに現代の若者のセンスをいっぱいに感じさせる。これは、モダンなフィーリングの中に、扱いやすそうな機能性を満たして、しかも、全体はとても親しみやすいのだ。まるで親しい友達みたいに。それがなぜなのか製品を前にして考えてみたが、おそらくこうだろう。どこといって難かしそうな所がないのに、いかにも高級製品らしい雰囲気が溢れていて、実際に使ってみると、まさに信頼できる高級品に匹敵するのだ。
 外観の上で大きな特長は、マガジンの中に斜めに倒れたままで蓋がされるアクリルのカヴァーは、使ってみると、なかなか扱いやすく便利なのはびっくりするほど。そのカヴァー以外に、どこといって特長らしい点はないが、しかし、全体の品のよい作り、仕上げのうまさは、最近のオーレックスのアンプなどと同じだ。まああげ足をとれば、レヴェル・メーターの上の、長々とした、ドルビー方式の説明の横文字は、ちょうとギザったらしいが、これも若いファンの眼をとらえるには違いない。うまいセールス・テクニックでもある。
 ところでこの5万円そこそこのデッキのクォリティは、まったく驚くほどで、このデッキの内側が、価格からは思いもよらぬ高レヴェルであることを知ろう。自然な感じの、いかにも歪みの少ないソフトで素直な音は、カセットの達するひとつのリミットにごく近い。

オーレックス XD-80, XD-60, V-101C

オーレックスのデジタルプロセッサーXD80、XD60、ビデオデッキV101Cの広告
(オーディオアクセサリー 27号掲載)

Aurex

オーレックス XR-Z90

オーレックスのCDプレーヤーXR-Z90の広告
(オーディオアクセサリー 27号掲載)

XR-Z90

オーレックス SY-Λ88II + SC-Λ99

黒田恭一

ステレオサウンド 64号(1982年9月発行)
特集・「スピーカーとの相性テストで探る最新セパレートアンプ44機種の実力」より

ヤマハ・NS1000Mへの対応度:★★
 大変にクォリティの高い音である。音ばなれがいいためか、独特のなまなましさがある。力のある音への対応はすぐれている。問題はやわらかい音である。⑤のレコードでのフラウト・トラヴェルソの音がまるでモダーン・フルートの音のような感じであった。音場的にはある程度のひろがりを示した。
タンノイ・Arden MKIIへの対応度:★★
 ①のレコードでのきこえ方が思いのほか平面的であった。とるべきは④、ないしは⑤のレコードでのきこえ方であった。ひびきのきめこまかさがそこではいきていた。③のレコードではベースの音がふくらみ、総じて浅いひびきになっていた。ダイナミックな音には不向きな組合せというべきであろう。
JBL・4343Bへの対応度:★★★
 もう少しパワフルであってもいいようにも思うが、ここにはモデラートの美徳があるといえなくもない。ただ、④と⑤のレコードではひびきが硬くなりすぎる。⑤のレコードでのチェロなどは太くひびく。③のレコードでのひびきのバランスはこのましい。①のレコードでは画期の音色が鮮明に示される。

試聴レコード
①「マーラー/交響曲第6番」
レーグナー/ベルリン放送管弦楽団[ドイツ・シャルプラッテンET4017-18]
第1楽章を使用
②「ザ・ダイアローグ」
猪俣猛 (ds)、荒川康男(b)[オーディオラボALJ3359]
「ザ・ダイアローグ・ウィズ・ベース」を使用
③ジミー・ロウルズ/オン・ツアー」
ジミー・ロウルズ(P)、ウォルター・パーキンス(ds)、ジョージ・デュビビエ(b)[ポリドール28MJ3116]
A面1曲目「愛さずにはいられぬこの思い」を使用
④「キングズ・シンガーズ/フレンチ・コレクション」
キングズ・シンガーズ[ビクターVIC2164]
A面2曲目使用
⑤「ハイドン/6つの三重奏曲Op.38」
B.クイケン(fl)、S.クイケン(vn)、W.クイケン(vc)[コロムビア-アクサンOX1213]
第1番二長調の第1楽章を使用

オーレックス SB-Λ77C

黒田恭一

ステレオサウンド 64号(1982年9月発行)
特集・「スピーカーとの相性テストで探る最新プリメインアンプ11機種の実力」より

ヤマハ・NS1000Mへの対応度:★★
 Bのレコードのきこえ方がもっともこのましい。ピアノにしてもベースにしてもきりりとひきしまったひびきが特徴的である。輪郭の提示にすぐれ、ぼやけたところのないのがいい。Cのレコードにしてもひびきのにじみの提示はかならずしも十全とはいえないが、すっきりしたきこえ方はこのましい。
タンノイ・Arden MKIIへの対応度:★★
 Bのレコードで音像がふくらみすぎた。Aのレコードではパヴァロッティの声に硬さが感じられたものの、直進してくる声の力の提示はすぐれていた。Cのレコードではひびきのまろやかさによく対応できていた。ただ、チェロのひびきがいくぶん強調されぎみではあった。
JBL・4343Bへの対応度:★★
 総じて力感にみちた音に特徴があった。Aのレコードでのひびきはスケール感にみちていて、奥行きも感じられたが、しなやかさの点でいくぶんものたりない。Bのレコードでの力にみたち音のきこえ方から、エネルギー感のある音の提示にすぐれたアンプといえるのかもしれない。

試聴レコード
Ⓐ「パヴァロッティ/オペラ・アリア・リサイタル」
パヴァロッティ(T)、シャイー/ナショナルPO[ロンドンL25C8042]
Ⓑ「ジミー・ロウルズ/オン・ツアー」
A面1曲目「愛さずにはいられぬこの思い」を使用
ジミー・ロウルズ(P)、ウォルター・パーキンス(ds)、ジョージ・デュビビエ(b)[ポリドール28MJ3116]
B面1曲目「ラヴ・ミー・オア・リーヴ・ミー」を使用
Ⓒ「ハイドン/6つの三重奏曲Op.38」
B.クイケン(fl)、S.クイケン(vn)、W.クイケン(vc)[コロムビア-アクサンOX1213]
第1番二長調の第1楽章を使用

オーレックス SB-Λ70C

オーレックスのプリメインアンプSB-Λ70Cの広告
(モダン・ジャズ読本 ’83掲載)

Aurex

オーレックス SC-88

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 非常に剛性の高いコンストラクションで、左右一対のヒートシンクをシンメトリックにつかったどっしりした風格をもつ。いかにもパワーアンプらしい重量感が好ましい。240W+240W(8Ω)のパワーをもち、スピーカー切替などファンクションはもたない。純血派のコンセプトでまとめられた、作り手の力の入れ方がよくわかる製品だ。パーツも、作りも、仕上げも入念で、妥協のないものだ。

音質の絶対評価:7

オーレックス PC-X25AD, PC-X45AD, PC-X46AD, PC-X66AD, PC-X88AD, AD-4MKII

オーレックスのカセットデッキPC-X25AD、PC-X45AD、PC-X46AD、PC-X66AD、PC-X88AD、ノイズリダクションAD-4MKIIの広告
(オーディオアクセサリー 21号掲載)

PC-X66AD

オーレックス SB-Λ77

瀬川冬樹

ステレオサウンド 57号(1980年12月発行)
特集・「いまいちばんいいアンプを選ぶ 最新34機種のプリメインアンプ・テスト」より

●総合的な音質 大掴みには、SB-Λ70と共通の、たいそうクリアーな印象の音。いくぶんウェットで、中~高域にエネルギー感を感じさせる細みの音だが、細部はいっそう磨きあげられ、音の透明感が増していることが聴きとれる。こう書くと、オンキョー系の音と似ているように思われそうだが、オンキョーは左右のスピーカーの間に音が空間的にきれいに定位するのに対し、こちらは音像がスピーカーの前面にやや一列横隊的に並ぶ傾向があり、やや奥行き感が出にくい。
●カートリッジへの適応性 オルトフォンVMS30/IIのように、ソフトかつ奥行きの表現力が豊かなカートリッジを使っても、たとえばベートーヴェン第九(ヨッフム)のトゥッティで、音が中域に集中し、軽微ながらカン高く、本来このレコードの録音からいって、音像が奥深くなるところが、むしろ前にせり出す感じで、いくぶん平面的になる傾向が聴きとれる。エムパイア4000DIIIを使っての「ニュー・ベイビィ」のプレイバックでも、本質的に乾いた音になりにくく、音全体がどことなく湿り気をおびた、いくぶん暗調のトーンに聴こえがちだ。エラック794Eでは、レコードの傷み、あるいは音の汚れを、実際の周波数成分よりも低いところでまつわりつく、ビリつき的な感じで鳴らすところがやや奇妙であった。
 MCポジションの音は、オルトフォンMC30では中域がやや抑えられておとなしく、音源を遠ざける方向で鳴らし、本来の特徴を生かしきれない。外附のトランスを併用すると、ノイズはみごとに抑えられて、ほとんど耳につかず゛中域から高域にかけての音が張り出し充実感が増す反面、音量を上げると多少聴き疲れする傾向になる。デンオンDL303の場合、オルトフォンに比べて、ノイズは目立って減少するとはいえないが、基本的なノイズがひじょうに少なく、十分実用になる。音質は、303の基本的性格を生かす表現をするとはいうものの、303自身のもっているいくぶん細みの音のバランスとΛ77の性格とが相乗的に働く結果、全体にやや支えの弱い、細い傾向の音になり、トーンコントロールで中低域を少し補いたくなる。
●スピーカーへの適応性 本来力強さ、音の暖かさ、乾いた明るさを特徴とするアルテック620Bのようなスピーカーと、このアンプの性格はあまりにも対照的であるためか、アルテックの個性を抑え、特徴を生かしにくい方向で鳴る傾向がある。アンプの性格・個性がひじょうに強いために、スピーカーをかなり選ぶという感じを抱いた。
●ファンクションおよび操作性 クリーンドライブとそうでない時の音の差はきわめてわずか。この差のために1本のよけいな配線の必然性については、やや首をかしげたくなる。MM/MCの切替え時にミューティングの働くのはよいが、約5秒のタイムラグは長すぎ。チューナーの音洩れは、右チャンネルだけ気になる。
●総合的に かなり主張と個性の強い音なので、この点で好き嫌いがわかれるだろう。

チェックリスト
1. MMポジションでのノイズ:小
2. MCポジションでのノイズ:小
3. MCポジションでのノイズでの音質(DL-303の場合):2
4. MCポジションでのノイズでの音質(MC30の場合):1+
5. TUNERの音洩れ:ややあり(右chのみ)
6. ヘッドフォン端子での音質:2
7. スピーカーの特性を生かすか:1
8. ファンクションスイッチのフィーリング:2
9. ACプラグの極性による音の差:小

オーレックス SB-Λ70

瀬川冬樹

ステレオサウンド 57号(1980年12月発行)
特集・「いまいちばんいいアンプを選ぶ 最新34機種のプリメインアンプ・テスト」より

●総合的な音質 クリーンドライブというキャッチフレーズ通り、たいへんきれいな音。トータルバランスはいくぶん細みで、ややウェットなタイプということができる。低域や高域を特に強調するというタイプではなく、その点いくぶん、中域の張った音と聴こえなくもないが、全帯域にわたって特に出しゃばったり引っこんだりというところはなく、バランスは整っている。
 このアンプの特徴であるクリーンドライブには、ON-OFFスイッチがついているが、いろいろなレコードを通じて切替えてみても、私の耳には気のせいかという程度にしかわからなかった。
●カートリッジへの適応性 基本的な音の性質が細いタイプであるためか、オルトフォンVMS30/IIを組合わせても、VMS本来のもち味からすれば、やや細みに表現する。その点はエムパイア4000DIIIに替えても同じことで、「ニュー・ベイビィ」など、打音はピシッとクリアーに決まるが、音自体の性質としてはやはり細みでいく分ウェットな感じを与え、乾いた力強い快さを表現してくれるところまではゆかない。エラック794Eで傷んだレコードをプレイバックしてのテストでは、基本的な音の質は美しいものの、レコード傷みや歪はむしろ露呈し、目立たせる方向にあるため、古い録音、傷んだレコードでも楽しませるというタイプではないように思う。
 MCポジションでのノイズは比較的少なく、オルトフォンMC30でも、音があまりボケないという点、音質はかなり優れている。このクラスとして、オルトフォンを実用的に使える点は、特筆に値する。デンオンDL303では、ノイズはMC30と比べてそれほど低くなるというわけではないが、音の質はいくぶん軽く、中域にスペクトラムが集まる傾向になり、曲によってはいくぶんカン高いというイメージを与える。外附のトランスにしてもノイズは思ったほど減らないが、これはMCポジションの音質がかなり磨かれているため、効果があまり顕著でないのだろう。
●スピーカーへの適応性 アルテックをあんがいよく鳴らしたことから、スピーカーの選り好みはわりあい少ないタイプということができる。
●ファンクションおよび操作性 各ファンクションはひと通り揃っているが、ボリュウムを上げたままで操作すると、たとえばテープモニターやラウドネスなどを切替えると、最初の数回だけ軽いクリックノイズができることがある。フォノ聴取時のチューナーからの音洩れは全くなく、良好。
●総合的に オーレックス独特のクリーンドライブをキャッチフレーズにする、スピーカーのマイナス端子からアンプにフィードバック・コードをつなぐ、3本接続の特殊な使いこなしを要求するアンプだが、私のテストに関する限り、クリーンドライブ接続の効果はあまり認められず、このためにスピーカーコードを3本にする必要があるかどうか、むずかしいところ。

チェックリスト
1. MMポジションでのノイズ:小
2. MCポジションでのノイズ:小
3. MCポジションでのノイズでの音質(DL-303の場合):2
4. MCポジションでのノイズでの音質(MC30の場合):1
5. TUNERの音洩れ:なし
6. ヘッドフォン端子での音質:2+
7. スピーカーの特性を生かすか:2
8. ファンクションスイッチのフィーリング:2
9. ACプラグの極性による音の差:中

オーレックス SS-L8S

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 フロアー型の作り方(エンクロージュアの床に接する面にいわゆる台座──又は台輪がついている)なので、はじめ床の上に直接置いて、背面(壁面)との距離と、ペアの左右の間隔、向き、等をいろいろ調整してみたが、中〜高域のレベルをいっぱいに上げてもまだ、ウーファーレベルが強く、音がこもって暗い感じが抜けきらない。いろいろ試みた結果、結局、コンクリートブロック一個分だけ箱を持ち上げるほうがいいように思えた。それもタテにして。そんな調整を加えているうちに、次第に音の曇りが晴れて調子が出てきた。全域に亘って、耳につくようなピーク性の、あるいは歪ぽい音の成分が極めて慎重に取り除かれているらしく、バランスはよく整っている。とはいうものの、あくまでも減点法で欠点を注意ぶかくおさえた感じで、何となく生気に欠けている。つまり、音楽の生き生きとした弾みや音の艶や、響きの美しさがそれぞれ物足りない。どことなく音が曇っていて、新鮮さや魅力を感じとりにくい。

総合採点:

●9項目採点表
音域の広さ:8
バランス:8
質感:5
スケール感:8
ステレオエフェクト:7
耐入力・ダイナミックレンジ:7
音の魅力度:5
組合せ:普通
設置・調整:普通

オーレックス SS-L8S

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 かなりコストのかかった入念な作りで、内外ともに充実した製品だ。バスレフのフロアー型に30cmウーファーをベースにコーン型スコーカーとドーム型トゥイーターを組み合わせた3ウェイシステムである。ところで、肝心の音の方だが、音質の品位はかなり高く、各ユニットのクォリティのよさが感じられる。しかし、全体の音の印象としては少々抑圧がききすぎて、柔軟さが足りないように感じられる。どこか抑え込まれてきゅうくつなのである。音が重い印象で、圧迫感がある。余韻や、空間のライブネスなどのデリケートな再生が不十分で、雰囲気があまりよく出てこない。ピアノの歌うべきパッセージも、おとが 一つ一つ途切れ気味で、音が高揚しない傾向を持っている。パワーハンドリングには余裕があって、少々のハイパワードライブにもびくともしないから、ジャズやロックの大音量再生は安心して楽しむことができる。ただ、バスドラムのチューニングがやや高くなる傾向が気になったし、リズムも楽しく弾んでくれない。

総合採点:7

オーレックス SS-L8S

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 すべての面でほどほどの──といったら、否定的にうけとられかねない。たしかに、このスピーカーに、きわだった魅力があるかといえば、ノーといわざるをえない。しかし、このスピーカーのきかせる、おさえるべきところをきちんとおさえた音は、ききてを安心させるものだ。背のびをしたり、身のほどしらずの表現をしようとしたりしないところがあるので、このスピーカーのあぶなげのなさをうみだしていると考えるべきだろう。こまかいあじわいの提示より輪郭をあいまいにしない音のきかせ方にひいでている。ひびきは、どちらかといえば重めだが、音像がふくらむようなこともなく、さして気にならない。これでもうひとつ高い方の音にきらりと光る輝きがでれば、さらに魅力をましたのだろう。❸のレコードでの迫力、ひろがりの提示などは、この価格帯のスピーカーとしては、なかなかすぐれている。

総合採点:8

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(ほどほど)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(好ましい)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(好ましい)

オーレックス SR-M99

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 外観から受ける印象は比較的にコンパクトにまとまったマニュアルプレーヤーであるが、非常に高度に凝縮された徹底的な無共振構造に基づいたオーレックス初の高級プレーヤーシステムである。
 まず、最初に驚かされることは、小型でもあるために気軽に持上げようとしたときのことだ。指をプレーヤーベースに掛けたとたんに、強固な金属のみがもつ独特の感触があり、重いなと予想しながら持上げてもビクともしない、42kgの超重量級である。
 ベース部分は、アルミダイキャストの約3倍の比重をもつ銅合金製で、巨大なマスと小さな外形寸法のため耐ハウリング性が非常に高く、優れたシステムの土台となっている。駆動モーターは、ローター磁石を上下のステーターコイルでサンドイッチ構造とし、上下方向の振動を2個のステーターコイルの逆相振動でキャンセルする独自のダイレクト・ダブルドライブ型で、起動トルクが従来の約2倍あり、シャフト径は15mmと太い。ターンテーブルは重量7・5kg、裏面に2種のダンプ層をもつ3層構造。マットもブチルゴム・鋼板・ブチルゴムの3層構造だ。アームは強いS字型カーブのスタティックバランス型。軸受はジンバル方式、独自のダイナミックダンピング機構付ウェイト使用。土台の安定した高品位の音は高級機の世界。

オーレックス SY-Λ88

菅野沖彦

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか(下)最新セパレートアンプ25機種のテストリポート」より

 オーレックスはSY88でコントロールアンプの評価を確立したが、その後、SY99という、こりにこった製品を発売し話題となった。そして、今度、SY88のニューモデルとしてSY−Λ88を発売したのだが、このコントロールアンプは、デザインこそ、SY88を受け継ぐものといえるが、中味は全く新しい、別機種と見るべき製品だと思う。パネルデザインや、モデル名からは、つい、SY88のマークII的存在として受け取られてしまうだろうが、オーレックスの意図がどういうものか? SY88の好評の上に展開したかったのだろうが、私には少々納得しかねる部分もある開発姿勢である。それはともかく、この新しいSY−Λ88は、コントロールアンプとしての追求の一つの徹底した姿を具現化した製品として注目に価する内容をもっている。現在のDCアンプの隆盛は、DCアンプなるが故の諸々の不安定要素を、電子的なサーボコントロールによって高い安定性をもつように補正しているのに対し、このΛ88は、その複雑さを嫌いサーボレスのDCアンプとしたのが特色である。信号系や接点を極力減らすことにより、よりピュアーな伝送増幅をおこなおうという思想が、この製品のバックボーンなのである。そのため、アンプ段数も、3段直結とし、レコード再生系の接点もMMイコライザーアンプの入出力部に並列接続された2接点の切替スイッチだけとなっている。こうした考え方は、全体の構成、パーツにも及び、出来る限りストレートに信号がアンプ内を通過するよう配慮がゆき届いている。Λの名称が示す通り、回路の要所にはふんだんにラムダコンデンサーが使われるなど、使用パーツにも細心の注意をはらって完成されたアンプといえるだろう。コンストラクションとしては左右チャンネルの干渉を嫌ったモノーラルアンプ構成をとり、電源トランスも左右独立させ、同社の発表によれば、10kHzで90dBという値で、これはSY88より10dB以上の改善であるという。ファンクションとしてはフォノ2系統で、うち一つはMCヘッドアンプとなっている。シンプルにまとめられているが、コントロールアンプとしての機能にも不足はない。価格ほどの高級感溢れる魅力的なデザインかどうかは疑問だが、仕上げはていねいだ。地味ながら、充実した内容をもったコントロールアンプといえるだろう。
音質について
 ところで音のほうだが、一口でいえば、素直でおとなしいよさはあるが、特に魅力的なフレーバーも感じられない。歪の少ない、きれいな音がする。しかし反面、もっとカラッと明るく抜けた鳴り方をすべきレコードにも、どこか内省的で、豊饒さの足りない響きに止ってしまうところがある。中低音の厚味や、朗々とした響きに欠けるのである。そのために、ヴァイオリンなどはしなやかで繊細な美しさがよく再現されるが、ピアノの左手になると物足りない。特に試聴したモーツァルトのソナタのように、左手が中低音から中音の音域を奏でるものではこれが目立つ。ジャズ系のソースでは鮮烈な響きがもう一歩満足させるまで出てこないので、一層、物足りなさを感じる。トーンコントロールがないのでこうした傾向を簡単に補正して聴けなかった。MCヘッドアンプは、少々神経質な高音が気になった。SN比は大変いいし、明快なオーケストラの分解能も聴かせる優れたアンプだと思うのだが、もう一つ、強く印象づけられるものがなかったのはSY99と好対照的だ。あの力強さと艶のある音が、このアンプからも聴けることを期待したのだが……。しかし、刺激的な音が絶対に出てこないし、かなりのハイクォリティ・アンプにはちがいない。弦楽器の好きなクラシックファンには受け入れられる製品だろう。

オーレックス SY-Λ88

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 従来のSY88をベースに一段とグレイドアップを図ったリフレッシュ製品だ。
 基本的な構想は、トーンコントロールなどの機能を排したシンプルな構成を採用し、音質を向上しようとするもので、信号経路に使用されるトランジスターなどの能動素子、コンデンサーや抵抗などの受動素子、さらにスイッチ顆の接点数を減らす目的で、アンプ段数をMCヘッドアンプ、イコライザーアンプ、フラットアンプの3ブロック構成とし、さらにデュアルFET、デュアルトランジスター採用で、初段及び二段目の自己発熱を抑えたカスコード接続としてDCドリフトを抑える。余分な信号経路となるサーボ回路付のDCアンプではなく、サーボレスDCアンプとしている。
 レコード再生時の信号経路で接点数は、イコライザー入力部とフラットアンプ入力部の2ヵ所だけという、SY99同様の構成である。
 使用部品は、オーレックスが従来からも重視している部分で、振動モードの単純化と低インピーダンス化した音質重視型電解コンデンサー、抵抗体と端子と接触面の摺動子を改良したボリュウムとバランス可変抵抗、高速型整流ダイオード、高域周波数特性が優れたトランジスターの採用をはじめ、型番にも表示されているとおりΛコンデンサーが多量に使用されている。

オーレックス SS-L50S

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ユニークな形状のエンクロージュアを採用し、その優れた性能と音質で注目されたSS−L8Sでのノウハウを導入し、各部分の低損失化と新処理方法による新振動板の採用をテーマとして開発された3ウェイ・ブックシェルフ型システム。
 30cmウーファーは、コーン紙表面層に特殊樹脂を含浸しておき、これを蒸し焼きにしてカーボン層とするカーボネートコーンを採用。6cmリング型中音は、40μ厚のチタンリング振動板をマイクロ波プラズマでチッ化処理し、ピストン領域を拡大したタンジェンシャルエッジ採用のユニット。3cmリング型高音は、中音同様の振動板にリング状ホーンを取付けたユニット採用。エンクロージュアは、モーダル解析法による共振防止構造のバスレフ型。ネットワークは、HiΛとΛコンデンサーと新しくUΣコンデンサー、低抵抗無共振型コイルを採用している。
 このシステムは穏やかな表情の低音をベースとし、細身で粒子が細かく、シャープで分離のよい音だ。音を整然と聴かせ、クォリティも高い。

オーレックス SS-L8S

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 同社の最近の代表作ともいえる意欲的な製品で、ユニットやエンクロージュアにも技術レベルの高さがうかがえる。堂々たる再生音が聴かれる。

オーレックス ST-550

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 AM6局、FM4局のプリセット機構、同調点で停止するオートチューニングとマニュアルのステップチューニングを備えたFM多局化対応機である。周波数シンセサイザーではキャリアを誇るオーレックスの製品だけに操作性が優れ、受信周波数表示、信号強度表示、ステレオ表示が少しのタイムラグを置いて表示されるマニュアルチューナー的感覚は使って楽しい。

オーレックス SS-L8S

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 エンクロージュアの回折効果を避けるためにバッフル面全体を550Rmmの曲面としたユニークな外観をもつフロアー型システムである。バッフルを曲面としたためにエンクロージュア内部の定在波の影響を抑えることができるのも副次的なこのシステムの特長である。曲面バッフルの効果はf特上で500Hz〜2kHzの間のレスポンスの凹凸を大幅に改善できるとのことだ。
 ウーファーは30cm口径で曲面バッフルにあわせた重量が非常に大きなダイキャストフレームとアルニコ系磁石の磁気回路をもち、コーンはカナダ産針葉樹パルプを組み合わせたエアドライ法による腰の強いタイプである。スコーカーは12cmフリーエッジコーン型でサマリュウムコバルト磁石の磁気回路とエッジワイズ巻ボイスコイルを使用。2・5cmドーム型トゥイーターは、厚さ20μのタンジェンシャルエッジ一体成形のチタンダイアフラム使用で、各ユニットは垂直面から1・5度後方に傾斜したラウンドバッフルに取り付けてある。エンクロージュアはバスレフ型で、ナチュラルに伸びたfレンジと、粒子の細かい練り込まれた美しいバランスの音をもつ。

オーレックス ST-F15

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 同調操作がマニュアル、オート、10局のプリセットの3種類が選択できるデジタル・シンセサイザーチューナーである。同調用回路素子には、1チップに1、700素子を納めたPLLシンセサイザー用LSIを開発し、オートチューニングを可能とし、チューナー制御用には記憶機能をもつ専用LSIを開発してFM局10局のプリセットができるようになった。中間周波増幅段には、波形伝送、群遅延特性の優れた新開発セラミックフィルターを採用している。

オーレックス SY-C15, SC-M15

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近のオーディオの話題となる新しいジャンルの製品に、超小型のコントロールアンプ、パワーアンプ、それに、チューナーをベースとした、いわゆるマイクロコンポーネントシステムがある。すでに、このクォータリー欄でも、テクニクス、ダイヤトーンの超小型コンポーネントを取上げたが、今回紹介するオーレックスの製品は、この種のものではもっとも早く発表された製品である。
 オーレックスのマイクロコンポーネントは、ステレオシステムにその名称をもつように、超小型で横幅が257mmに統一されたコントロールアンプSY−C15、パワーアンプSC−M15、AM・FMステレオチューナーST−F15を中心として、カセットデッキPC−D15、小型スピーカーシステムSS−S12W、さらに、スーパーウーファーで45Wパワーアンプを内蔵のSS−W51Sでシリーズを構成する、独立したコンポーネントシステムである。このなかで今回試聴できたのは、ベースとなるアンプとチューナーである。
 SY−C15は、超小型ながらコントロールアンプと呼ぶにふさわしい機能をもった製品である。機能面では、2系統のフォノ入力とコントロールアンプ出力を備え、高音と低音のトーンコントロール、サブソニックフィルター、ミューティング時にはイコライザー出力が直接コントロールアンプ出力となる特殊なミューティングスイッチをもつ。各ユニットアンプは、すべてA級動作の全段直結DC構成で、イコライザー許容入力は300mVである。
 SC−M15は、定格出力が45W+45Wで、BTL接続により90Wのモノーラルパワーアンプとしても使用できるDC構成のパワーアンプである。超小型パワーアンプのポイントである放熱効果を解決する目的で、いわゆるケース部分にアルミ合金を一体成型した接合部分のないアルミダイキャスト・モノコックボディを採用し、両側には羽根型の放熱フィンを一体化している。このボディのスペースファクターの良さを活かし、大型の電源用電解コンデンサーや増幅段用のタテ型フィルムコンデンサー、さらに厚さ70ミクロンのプリント基板などの大型部品の高密度実装を実現している。
 SY−C15、SC−M15のペアは、平均的な聴取レベルではまったく不満のないパワー感をもち、一連のオーレックスコンポーネントシリーズに共通する細やかさと滑らかさがあり、ニュートラルな色付けの少ない音をもっている。

オーレックス SY-C15, SC-M15, ST-F15

オーレックスのコントロールアンプSY-C15、パワーアンプSC-M15、チューナーST-F15の広告
(スイングジャーナル 1978年8月号掲載)

Aurex-M15

オーレックス HR-X1

オーレックスのヘッドフォンHR-X1の広告
(スイングジャーナル 1978年8月号掲載)

HR-X1