Category Archives: ルボックス

ルボックス B242

井上卓也

ステレオサウンド 84号(1987年9月発行)
特集・「50万円未満の価格帯のパワーアンプ26機種のパーソナルテスト」より

充分にコントロールされたスムーズなレスポンスと、柔らかい雰囲気、適度にエッジの張った硬質な魅力が巧みにバランスした、いわは、人工的な独特の雰囲気が味わいになっている音だ。カンターテ・ドミノでのホールの響き、消えていく音がキレイであり、楽器の音に輪郭を程よくつけて聴かせるエンハンサー的な効果は面白い。ウォームアップは穏やかで、やや硬質な音から余裕の或る安定した音に滑らかに移行する。

音質:81
魅力度:84

ルボックス A740

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 スチューダーのA68の相当品的存在。ただしこちらの方が価格は高い。たしかに、メーターなどがついている分、お金はかかっているはずだ。それとも、輸入元による値づけのためか……。いかにもヨーロッパのプロ機のムードからきたアンプで、決して、ファミリーユースのデザインイメージではない。100W+100Wのステレオアンプである。その生れ血筋からすると、もう一つ欲をいいたいアンプだ。

音質の絶対評価:7.5

ルボックス B710

瀬川冬樹

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」より

 たとえば、カートリッジを比較の例にあげてみると、一方にオルトフォンMC30又はMC20MKII、他方にデンオンDL303又はテクニクス100CMK3を対比させてみると、オルトフォンをしばらく聴いたあとで国産に切換えると、肉食が菜食になったような、油絵が水彩になったような、そういう何か根元的な違いを誰もが感じる。もう少し具体的にいえば、同じ一枚のレコードの音が、オルトフォンではこってりと肉付きあるいは厚みを感じさせる。色彩があざやかになる。音が立体的になる。あるいは西欧人の身体つきのように、起伏がはっきりしていて、一見やせているようにみえても厚みがある、というような。
 反面、西欧人の肌が日本人のキメ細かい肌にかなわないように、滑らかな肌ざわり、キメの細かさ、という点では絶対に国産が強い。日本人の細やかな神経を反映して、音がどこまでも細かく分解されてゆく。歪が少ない。一旦それを聴くと、オルトフォンはいかにも大掴みに聴こえる。しかし大掴みに全体のバランスを整える。国産品は、概して部分の細やかさに気をとられて、全体としてみると、どうも細い。弱々しい。本当のエネルギーが弱い。
 B710とナカミチ1000ZXLとの比較で、まさにそういう差を感じた。そしてここでテープまで変えると、その差はいっそう大きく開き、ナカミチにはTDKのSA又はマクセルのXLIIを、そしてB710には、今回小西六がアンペックスと提携して新発売するマグナックスのGMIIを、それぞれ組み合わせると、国産はハイ上がりのロー抑え、いわゆる右上り特性の、ややキャンつきぎみの細身の音に聴こえるし、ルボックスはその正反対に、中〜低域に厚みのたっぷりある、土台のしっかりした、ボディの豊かな音に仕上る。そしてとうぜんのことに、こういう音はクラシックの音楽を極上のバランスで楽しませる。総体に、派手さをおさえて音を渋く、落ち着きのある色合いを聴かせるのだが、こういう音は、残念ながらこれまで国産のどのデッキからも聴くことができなかった。
 試聴はほとんどドルビーONの状態。そしてメカニズムその他の詳細については、残念ながら紙数の制約のため割愛せざるを得なかった。

ルボックス A740, BX350, B750

ルボックスのパワーアンプA740、スピーカーシステムBX350、プリメインアンプB750の広告(輸入元:シュリロトレーディング)
(スイングジャーナル 1978年8月号掲載)

A740

ルボックス BX350

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

スケールの大きさは望めないが、思わず聴き惚れるしっとりした響き。

2トラック19cm/secテープデッキのベストバイ

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「読者の質問に沿って目的別のベストバイを選ぶ」より

 オープンリールのテープデッキを概念的に考えると、10号メタルリールを装着し、38cm/secで廻す2トラ38は、やはりテープデッキを入手しようとすれば、それ自体にこだわりたくなる存在である。
 たしかに、2トラック38cm/secの魅力は、業務用機器ではディスク制作用のマスターテープに使用される例に代表されるように、その情報量の大きいことはカセットデッキの約32倍であり、ディスクとはまったく異なった次元の音そのものにある。しかし、業務用機とコンシュマー用機との格差は非常に大きく、当然の結果として、それだけの価格差があるわけだ。これが2トラック38cm/secのデッキを考える場合の前提条件である。
 また、コンシュマー用機であったとしても、2トラック38cm/secの、これならではの世界を実感として味わうためには、特別の例でもないかぎり、マイク録音をしないかぎり鮮度の高いエネルギー感にあふれた音は得られない。平均的なFM放送のエアチェック用としては、送り出し側が19cm/secのことが多く、FM放送という電波の介在したプロセスを経れば、2トラック38cm/secでの録音は完全に録音側がオーバークォリティとなり、一般的には無意味といってもよい。
 さらに、テープのランニングコストを考えれば、コンシュマー用機には2トラック38cm/secは荷が重すぎ、現実の使用側をみても10号リールのテープは最初の1〜2本で、以後は7号が中心となるのが一般的な傾向である。
 最近の新しいデッキでは、2トラック19cm/secに焦点をあわせた製品が数を増す傾向が見受けられる。ルボックスB77がそれであり、デンオンDH510も38cm/secで使用できるが、基本的には19cm/sec指向型である。また、ポータブル機ではあるが、ウーヘル4200REPORT・ICやソニーTC5550−2も、このタイプの製品として貴重な存在である。
 2トラック19cm/secのデッキでの良い音を望む場合に必要なことは、そのデッキにピッタリとマッチしたテープの選択が重要である。ウーヘルとBASF・DP26HS、ソニーとDUADの組合せは定評があり、独特のテープオーディオの魅力をもった音を聴かせる。最近のテープには、従来の38cm/secを対象とした製品ではなく、19cm/sec専用のスコッチ♯1500/2000のようなユニークな製品が出ていることも19cm/secの魅力を一段と高めている。各社からこのタイプの製品が発売され、5号から10号にいたる選択の自由が得られれば、2トラック19cm/secは、コンシュマー用の主流となるはずだ。

ルボックス A740

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

音のひと粒ひと粒が磨き上げられたような品位の高さが素晴らしい。

ルボックス B790

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

類例を脱したユニークな発想をもつ趣味性の豊かさが独特の個性だ。

ルボックス A77MKIV

菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

高度なメカニズムを表に出さず、コンシュマー機器化した高性能機。

ルボックス A700

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

滑らかに動く完成度の高いトランスポート。眺めているだけで楽しい。

ルボックス HS77MKIV

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

38/2トラのものものしさがなく、しかも満足感の得られる素敵な音質。

ルボックス A77MKIV

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

高級ディスクファンの長期間にわたる熱い注目を集めた傑作モデルだ。

ルボックス HS77MKIV

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

小型軽量で長期間トップモデルの座を維持する実力は驚きである。

ルボックス B77

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

2トラック19cmの高クォリティを提示する老舗らしい自信作である。

ルボックス A740

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

ヨーロッパ系アンプ独特の魅力を聴かせる数少ない貴重な存在。

ルボックス A740

ルボックスのパワーアンプA740のサービスマニュアル
Revox_A740_Serv

ルボックス B740

ルボックスのパワーアンプB740のサービスマニュアル
Revox_B740_Serv

ルボックス A740

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 たとえば「オテロ」の冒頭のトゥッティを相当な音量で鳴らしても、それぞれのパートのあるべき姿で展開しながら決してわめいたり騒々しくなったりせず、一瞬のピアニシモではどこかひっそりした感じさえ与える。少しもギラつかないでしっとりと、どちらかといえば渋い感じのするところはヨーロッパ製品でなくては決して聴くことのできない音色で、そうした性格はことに弦やヴォーカルに長所を発揮してとても滑らかで品位の高い自然な音が楽しめる。といって、シェフィールドのパーカッシヴなエネルギー感や、テルマ・ヒューストンの黒人特有の声の艶とバックのコーラスを含めて聴きごたえのある音を出す。これはとても素晴らしいパワーアンプだ。

ルボックス A740

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 オーバーオールのまとまりがよく、滑らかで適度のしなやかさのある音を聴かせる。
 聴感上では、ナチュラルに伸びた周波数レンジをもち、ローエンドとハイエンドを巧みにコントロールして抑えている。バランス的には、低域は柔らかく落着き、中域は音の粒子の滑らかさ、細やかさはあるが、密度は少し薄いタイプである。
 音の表情はややパッシブで、ある範囲内でキレイに整理された音を聴かせるが表現力はかなりあるようだ。ステレオフォニックな音場感はスッキリと広がるメリットがあり、音源は少し距離感がある。低域軟調傾向は、4343とのマッチングがよくないせいのようだ。

ルボックス BX350

瀬川冬樹

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

 すばらしく音の質感のいいスピーカーだ。いわゆる歪っぽさや粗さが少しも感じられず、しっとりと潤いある美しい、とてもクリアーかつ滑らかな音がする。いわゆるリニアフェイズの考え方をとり入れているが、ブックシェルフ型よりももう少し小型なので、どういう置き方がよいのかといろいろ試みたが、結局、トゥイーターとウーファー(こウーファーは小口径のスピーカーを4本使った独特の構成だが)の中心あたりがほぼ耳の高さにくるように、高さ約50センチほど台に乗せるのが最もよかった。左右になるべくひらき、スピーカーの正面が耳の孔に向くように設置する。壁に近づけると低域の低いところで一ヵ所、少し音が重くなるところがあるので、背面は適度にあけて、むしろアンプの方で低域を補う方がいいように思った。まさにドイツ独特のクリアーサウンドだが、かつてのブラウンやヘコーのようなクセのある音ではなく、バランスはきわめていい。ただ、パワーを上げると中〜高域が硬くなるので、中程度迄の音量で楽しむスピーカーだ。オーケストラの中のチェロのユニゾンなど、時折ハッとするほどの美しさが出るし、ベーゼンドルファーの艶と丸みもかなり良い感じだ。カートリッジやアンプも乾いた音を避けたい。455Eや7300Dのような傾向が合う。意外に38FDIIもそれなりの良さで鳴った。

ルボックス BX350

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶からっとしたひびきで示されるピッチカート。あいまいさのないのがいい。
❷くまどりたしかな、力をもったスタッカートだ。音に力がある。
❸拡大して示しはするが、ひびきの特徴をよくとらえている。
❹腰のすわった第1ヴァイオリンのひびきはなかなか魅力的だ。
❺クライマックスは力にみちているが、弦にはもう少ししなやかさがほしい。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像はくっきりしている。たしかなひびきがいい。
❷必要充分に音色的対比を示してこのましい。
❸さわやかさが感じられる。ひびきのふくらみすぎないのがいい。
❹これみよがしにならず、きれいに示す。
❺フルートのひびきがさわやかでいい。あいまいにならないよさがある。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶舞台のひろがりを感じさせるひびきだ。声は少し硬めだが。
❷接近感を、無理なく、自然に、なまなましく示す。
❸声とオーケストラのバランスは折目正しく、すっきりさわやかだ。
❹うたう声も硬めだが、言葉のたちあがり方はいい。
❺声と楽器のひびきのとけあい方が自然だ。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶定位がいい。横一列に並んでいる感じがわかる。
❷余分なひびきをひきずっていないので、言葉は鮮明だ。
❸言葉の輪郭をくっきり示すが、几帳面にすぎるかもしれない。
❹ソット・ヴォーチェになった時に、もう少し声のまろやかさがほしい。
❺音の消え方が幾分段取り的になりがちだ。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的にも、音場的にも、充分にコントラストがついている。
❷奥へのひびきが充分で、シンセサイザー固有のひびきへの対応もいい。
❸浮遊感は必ずしも充分とはいえない。提示される空間は広い。
❹前後のへだたりがとれている。ひびきの明るさがいい。
❺ピークで示される力は充分だ。ひよわにならないよさか。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶奥の方で左右に、かすみがたなびくようにひろがる。
❷❶の中央から力をもったひびきで次第に前におしだしてくる。
❸ひびきの特徴を確実におさえたよさがある。
❹ひびきに充分な輝きがあり、効果的だ。
❺うめこまれてはいないが、ことさらきわだつわけではない。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶くっきり思いきりのいいひびきが、ここでいきる。
❷サウンドに厚みが感じられ、ここで求められる効果が感じとれる。
❸ひびきの特徴の示し方にあいまいさがなく、このましい。
❹ドラムスのつっこみは、力があり、みごとだ。
❺言葉は、いささかもあいまいにならず、すっきりたつ。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶中身がぎっしりつまった筋肉質なひびきのよさがいきる。
❷オンで録音したが故のなまなましさを示すが、誇張感はない。
❸必ずしも消える音の尻尾を充分に示すとはいえない。
❹細かい音の動きに対しての反応はシャープで、効果的だ。
❺不自然な音像差がなく、ひびきに力が感じられる。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶アタックの強さを充分に感じさせてこのましい。
❷ブラスのつっこみは、鋭く、前にでる。
❸前に力をもってはりだして、効果的である。
❹後方へのへだたりがとれ、音の見通しはきわめていい。
❺力感があり、くっきりとめりはりをつける。

座鬼太鼓座
❶自然な距離感を、無理なく示す。しかもすっきりとした提示だ。
❷尺八のひびきとしては、いくぶん異色ながら、まずまずだ。
❸ここでのひびきの輪郭を強調しすぎているかもしれない。
❹ひびきは力をもって特徴的だが、大太鼓らしさは稀薄だ。
❺くっきりと示して、充分に効果をあげる。

ルボックス HS77 MK4

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 何よりもハンディで小型、軽量であることが嬉しい。オプションのパワーアンプを組み込めばあとはスピーカーを加えるだけでオーディオシステムとしても使えるのはヨーロッパ製品ならではのことであり、いかにも38cm・2トラックらしい、ややアンペックス的な力強い音は38cmならではのスケール感である。

ルボックス HS77MKIV

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 スイスのルボックスは、高級テープレコーダーの専門メーカーとして高い評価を得ている。スチューダーのコンシュマーヴァージョンである。このHSシリーズは、基本的には4トラックデッキとしての長い洗練の期間を持って誕生した2トラック・2チャンネルデッキで、MK4はそのピークにある最新モデル。

ルボックス A700

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 同社のトップモデルとして作られたモデルで、業務用のスチューダーデッキなどに見られる、テープトランスポートにエレクトロニクスを多用する傾向を、このモデルも採用している。基本的な構想は、HS77MK4と同じであるが、キャプスタンモーターが水晶発振器の信号を基準とする速度制御方式となり、テープテンションにもサーボ方式が採用されている。トラック方式は、当然のことながら2トラック・2チャンネルで、最大使用リール10号、テープ速度は19cmと38cm、エレクトロニクス関係では、アンプ系がフォノイコライザーまでを内蔵した、いわばプリメインアンプといった構成であるのはHS77MK4と同様である。テープ走行系のコントロールは、大変にテープを使う側の立場を考えた、いわばテープファン好みの細かい配慮が見受けられるあたり、さすがに伝統のあるメーカーならではの素晴らしさである。このモデルは、業務用のスチューダーを思わせる、清澄で滑らかな音をもち、品位が大変に高く、この面ではHS77MK4と対照的である。

ルボックス HS77 MK4

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 テープデッキといえば、米アンペックス社とスイス・スチューダー社の製品が、テープデッキのファンにとっては東西を代表する名門ということができる。ルボックスは、スチューダーと兄弟関係にあるブランドで、古くは管球タイプのモデルG36や、ソリッドステート化されて以後、数度にわかたり改良の手が加えられたA77がよく知られている。
 HS77MK4は、A77MK4が4トラック・2チャンネル方式であるのに対し、2トラック・2チャンネル方式であり、テープ速度が19cmと38cmに変わったモデルである。このモデルは、型番からもわかるように、ソリッドステート化されて以来、基本型は変化せずマイナーチェンジが絶えずおこなわれて、つねに、いわゆる2トラック38cmデッキのスタンダードとして、時代に変わっても安定した性能と音質をもっていることは驚くべきことである。
 ヘッド構成は3ヘッド方式、それにACサーボ型のアウトロータータイプ・キャプスタンモーターに2個の6極アウトロータリー型リールモーターを組合せた、いわば標準型で、機能面でも国産デッキのような多彩さはなく、チューナーなどの入力をセレクトでき、パワーアンプを内蔵しているあたりは、テープレコーダーとして、このデッキ1台を中心としてコンポーネントシステムができる特長がある。
 この種のデッキとしては比較的に小型で軽量であり、運搬にもしいて車の使用がなくても運べるのは少なくとも国産デッキにない大きな魅力である。HS77MK4になって、従来のルボックスのサウンドとはやや変わっているように思われる。最近のヨーロッパのオーディオ製品の音がかなりアメリカ指向となっているように、このデッキもアンペックスを思わせるような、活気がある力強いダイナミックな傾向の音が感じられる。いわゆる2トラ38らしい爽快な音で、これが、さらにこのデッキの魅力をましていると思う。