Category Archives: ラウザー

ラウザー TPI Type D

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 スピーカーシステムが、ブックシェルフ型全盛になり、ウーファー、スコーカー、トゥイーターなどの専用ユニットを組合せるマルチウェイ方式が大勢を占めようが、LP時代から一貫して中口径のフルレンジユニットのみを作り続けている英国・ラウザー社は、現在では貴重な存在といえよう。
 数ある同社のスピーカーシステムのなかで、長い伝統を誇る機種は、独得なデザインをもったTP−Iであろう。このデザインは、TP−Iが珍しいエンクロージュア形式を採用しているためで、ドライブユニットの前面には比較的短かいフロントホーン、背面は折たたみ型で全長が長いバックローディングホーンをもつ、いわば複合型ホーンエンクロージュアを、さらにコーナー型とし、部屋のコーナーに設置したときに両側の壁面と床の三面を積極的に低音用のバックローディングホーンの延長として使うタイプだ。
 使用ユニットは、振動系にラウザー独得のサブコーンつきの白いコーン紙を使う数あるユニットのなかでは強力型のPM−3である。このユニットは、あたかもSP時代の英国・フェランティ社のユニットを思わせるような超大型磁気回路にスピーカーフレームがとまっているような珍しい製品で、同社のPM−6ユニットなどにくらべると、ひとまわり大きなディフューザーつきである。このシステムの独得な音は、まさしく他のシステムでは得られぬ、かけがえのないもので、いわば麻薬的な魅力といったらよいだろう。

ラウザー Auditorium Acousta

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 少し古い世代の製品で、独特の持ち味で聴かせるスピーカーだから、現代のモニター系を聴くような尺度とは正反対の聴き方をしないと、良さが理解しにくい。とくにこの製品は、正面と背面とに音を分散放射するタイプだから、部屋の音響条件や置き方の変化によって大幅に音色やステレオ効果が変化する。今回の試聴では必ずしも最適の配置ができたとはいいにくいが、それでも、ことにヴォーカルやコーラスの場合に、一種独特の温かみをともなって、多少の古めかしさはありながら品の良い響きで不思議に幸福感のようなものにひたることができる。オーケストラも、あまりパワーを上げずに、トーンコントロール等でうまく補整すると、端正な、音を分析するよりも全体にくるみこんでしまうような、滑らかで品の良い響きで聴き惚れさせる。古い録音、小編成の曲、渋い曲に向いている。反面、新録音のスケールやダイナミックス、或いは解像力の良さなどを鳴らすだけの力はない。アンプ、カートリッジもそういうカテゴリーから選ぶとよい。

ラウザー Acousta

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 いわゆるカラーレイションをなくす最近の方向とは正反対。音の色あいの濃さで聴かせる製品だから、万能型とはいえない。低音の弾み、中~高域のやや硬質のツヤが特長。

ラウザー PM6 MKI

岩崎千明

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 どぎついほど中域、高域の張りのある充実感。一昔前の音作りを感じながらも、その強い個性的なサウンドはあばれ馬的。それだけに使い馴らしてみたい魅力に惹かれる。

ラウザー Acousta

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 マルチウェイ全盛の現在では、大変にユニークなダブルコーン型ユニットを使ったシステムである。音も大変に個性的で、性格の強いものだが、異様な魅力は格別だ。

ラウザー PM4

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 磁気飽和点ギリギリの超強力な大型マグネットを使用。小口径のフルレインジユニットとしては異常にぜいたくな設計で、専用のホーンロードバッフルで特色を発揮する。

ラウザー PM6 MKI

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 太鼓状のマグネットと、位相補整用の卵型のイコライザーが得意な外観をみせる。フルレインジ用の中でも異色のユニット。モニター系とは正反対の、独特の音色で聴かせる製品。