Category Archives: JMラボ

JMラボ Sub Utopia

井上卓也

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

第3世代のユートピア・シリーズのMezzoやMiniと同時に発売されたシステムらしく、例えば、Miniの特徴を損なうことなく、絶妙に低域の量感を加える見事な調和ぶりには本当に驚かされる。平均的にサブウーファーの調整は難しいが、本機は比較的に容易に操作可能で、かつ効果の見事さは、まさに脱帽。

JMラボ Mezzo Utopia

井上卓也

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

ユートピア・シリーズの第3世代としてMiniとともに登場した注目作。高/中/低域エンクロージュアの表面波による音の汚れを避けるための独自なスタック構造は、一面に問題点を残すが、結果の音は、サスガに第3世代ならではの革新的な魅力がある。価格の割に少々小柄だが、潜在能力の高さは計り知れない。

JMラボ Grande Utopia

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 フランスのJMラボの大作。ユニットメーカーの力を発揮した超弩級システムで、美しいエンクロージュアのセンスはさすがにお国柄である。タンノイのキングダムと音も雰囲気も対照的で興味深く、オーディオの特質を物語るかのようだ。優れた変換特性に支えられた広帯域で高品位な現代的サウンド。

JMラボ Utopia

井上卓也

ステレオサウンド 99号(1991年6月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 このところヨーロッパ系のスピーカーシステムで、フランスのフォーカル社のユニットを採用したモデルが数多く見受けられるようになっている。ゴールドムンドのスーパーダイアローグやアクースティックラボのボレロなどがその例である。フォーカル社は1980年にフランスのサンテチエンヌ市に、現在もオーナーであるジャック・マエール氏が2人のメンバーと創立した会社であり、現在は75名の人員を擁するフランス最大のユニットメーカーである。
 現在フォーカル社は、車載用や他社に供給するユニットを「フォーカル」のブランドで、また、1985年頃よりスタートしたスピーカーシステムを「JMラボ」のブランドとして生産をしているという。
 JMラボのスピーカーシステムは、現在15モデルがラインナップされており、フランス国内の市場専有率では、ボーズ、JMラボ、キャバスの順位でナンバー2の位置にある。今回輸入されたユートピアは、JMラボのトップレンジのモデルで、今年の初めにラスベガスのウィンターCES(コンシュマー・エレクトロニクス・ショウ)の会場で発表された最新作である。
 JMラボのシステムは、数年前に独特のダブルボイスコイルを採用したウーファーにトゥイーターを組み合せた小型システムがサンプルとして輸入されたことがあるが、正式に製品が発売されるのは今回が初めてのことである。
 ユートピアは、海外製品としては比較的に珍しい、いわゆるハイテク材料を振動板に全面的に採用したシステムである。
 低域と2個並列動作で使われている中低域ユニットは、振動板材料に、フォーカル社が世界的に特許をもつといわれている発泡樹脂の両面にケブラー(アラミッド)シートをサンドイッチ構造とした、3層構造のポリケブラー振動板を採用している。このポリケブラーコーンは軽く、剛性が高く、適度な内部損失をもつ理想的な振動板であり、実際にユートピアの低域ユニットに触れてみれば、実感としてこの特徴が理解できるだろう。
 基本的なシステムの構成は、高域ユニットの上下に2個の低域ユニットを振り分けた仮想同軸型のシステムに、サブウーファーを加えてフロアー型とした設計である。このモデルで重要なポイントは、サブウーファーユニットの特殊な発想であろう。磁気回路は、一般的なフェライト磁石を採用した外磁型であるが、その後側に独立したもう一つのボイスコイルを備えた磁気回路がリジッドに取り付けてある。この後部磁気回路に取り付けてあるボイスコイルは、前後2重ダンパーで支持されているが、振動板としてのコーンはなく、コーンと同様の質量のバランスウェイトをもっており、この振動系は、ボイスコイルの延長方向に丸孔が開けられたハウジング内に納まっている。この独特な機構は、一般のユニットではボイスコイルを駆動する反動がスピーカーフレームを通り、エンクロージュアを駆動することになるが、この反動を機械的に打ち消すために、アクティヴなボイスコルと等価的に等しい振動系をもつ後部磁気回路を使うという設計で、これはMVF(メカニカル・ヴァイブレーション・フリー)方式と名付けられている。
 これにより、フレームやエンクロージュアの不要共振は相殺され、混濁感のない純度の高い再生音が得られることになるというが、この部分でウーファー同様のエネルギーが消耗し能率は半減するので、かなり高能率なウーファーの採用がこの方式の大前提になるようだ。
 中域ユニットは準低域的動作で、特殊イコライザー付き。高域はチタン箔表面にダイアモンドコーティングを施した逆ドーム型。エンクロージュアは、非常に木組みが美しい家具的な精度、仕上げをもつ見事な出来であるが、遠くで見るとむしろ大人しく目立たない独特の雰囲気がある。
、ネットワークは裏板部分に高グレードの空芯コイルと大型ポリプロピレンコンデンサーを組み合せているが、カバー部分が透明であるため内部構造を見ることができる。
 本機の第一印象は、広帯域型のスッキリと伸びた帯域バランスと反応の速い軽快な音である。音の傾向は、原音再生というよりも、かなりハイファイな音ではあるが、このシステムで聴く再生音楽ならではの魅力的な音楽の実体感は、まさにオーディオの醍醐味である。反応の速い、軽くて明るい低音は、本機ならではの持ち味であり、とくに各種の楽器がいっせいに鳴るパートでも、まったく音崩れしない分解能の高い低音を保つあたりは、他のシステムでは望むことができない。このサウンドは、本機ならではのかけがえのない魅力である。