Category Archives: アドヴェント

アドヴェント ADVENT2

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 明るくよく弾む音。以前のアドヴェントのような変に乾いた音色でなく、適度にツヤの乗った、輪郭の鮮明な音がフレッシュな印象を与える。とても楽しい音質で、ポピュラー、クラシックの別なくクリアーで分離のよい音を聴かせる。デザインはどことなくブラウン、ヘコーばりだが、白いキャビネットの外装はプラスチック製とユニークだが、むろん共振は注意ぶかくおさえられ、箱鳴り的なクセはほとんど感じられない。小音量から大音量まで、音色がよく統一されている点もよい。たたじ極端なパワーは入れられない。いわゆるパワーに強いというタイプではないようだ。レベルコントロールがないので、置き方のくふうで良いバランスを探すことが必要。シュアーV15/IIIの品のない音を露骨に鳴らしてしまう。オルトフォンVMS20にすると、格段に品位の良い音質を聴かせる。したがってアンプもグレイドの高いものが必要。構成の割には高価という輸入品のハンディを考えても、一聴に値する注目製品、といってよいだろう。

アドヴェント ADVENT2

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 ブラウン、ヘコーばりのデザインで、音質も一新した。中~高音域に適度のツヤが乗ってきて、クラシックからポピュラーまで、弾みのある新鮮な音色で聴かせる。

アドヴェント ADVENT2

岩崎千明

スイングジャーナル 10月号(1974年9月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 白い小さな現代的な姿のシステムが、広いけれど数多いパーツがその空間の多くを占めるSJ試聴室の正面にちょこんと据えられると、ひどくスッキリと目立つ。ただ、左右に2本置かれているだけでたいへんしゃれたたたずまいである。
 白いシステムの、後側に嫌み上げられたたくさんのシステムが、やたらに大きく感じられ、ぶっきらぼうなくらいに実用むきだしの体裁にみえる。
 アドヴェントIIの四隅をほんの少々丸みを持たせた小さな箱がこの上なくまっ白であるのは、それが塗装ではなくプラスチックのためだ。プラスチックの箱というと、これはまたただプラスチックというだけで価値も見映えもおそまつな感じを受けてしまいがちなものだが、このアドヴェントIIにおいては、プラスチックといわなければそう気がつかないほどに品のある仕上げだ。まっ白なので、塗装でないとすれば素材の色だろうし、その素材としては常識的に塩化ビニール・プラスチックにきまっているのに、そう見えないのは、その表面がきめ細かい艶消し仕上げだからだ。もっともそれだけではなく、板との2重張りの箱は工作上も現代工芸的イメージだ。さらにそれを決定的にするのは、この小さな箱に収められた20cmウーファーとドーム型の2ウェイ・システムのサウンドであろう。
 とてもこの大きさが信じられない程の太くゆったりした低音の響き、それとバランスよく釣合って鮮かに輝くような高音のタッチだ。
 この快く豊かなエネルギーが、聴き手をつつむとき、それは姿態通りの現代的なセンスに満ちたシステム。単にスマートなデザインというのではなく、しゃれた雰囲気がぴったりの小型システムなのだ。
 この一見、いかにも現代ヨーロッパ調のイキなシステムは、かくのごとく、サウンドの上でも、西独製の新進ブランドのスピーカー・システムを思わせるにもかかわらず、なんと米国製のスピーカーなのである。
 アドヴェントは、すでにこの4年間米国の新しいブックシェルフ・システムの名として、コンシュマー・レポート誌において絶賛され、BestBuy(最高のお買い物)に選ばれて以来先輩格のARやKLHに並ぶロング・ベストセラーを続けているシステムだ。このアドヴェントはARやKLH同様、米国スピーカーの中にあって、生粋のイースト・コースト派で、いわゆる品がよくて万人向けの優等生的サウンドのシステムだが、その中でもアドヴェントは高音に鮮かさを加えている点と、価格的にもっとも安い点で、いかにも現代的だ。
 アドヴェントには「レギュラー・アドヴェント」と「スモーラー・アドヴェント」のただ2機種のみしかなかったが、この新しいシステムが「アドヴェントII(ジュニア)」として登場してからはまだ間もない。つまり、アドヴェント・システム中の新顔なのだ。
 この数少ない製品から「品種をやたら増やすことのないメーカーの姿勢」が感じられるが、アドヴェントIIは、それなりの理由があって加えられた新製品だ。
 それなりの理由とはなにか。それをこの現代的デザインの白く小さな姿が物語り、コンチネンタル・サウンドを思わすこの響きがそれを示そう。
 アドヴェントIIは、明らかに従来のアドヴェントの、今までの米国製スピーカーから突き抜けた企画で創られた「新しいシステム」なのである。
 このシステムが、西独でもなければ、英国でもないし、北欧でもなくアメリカから生れた、という点に、大きな意義があるというのである。
 アドヴェントはすでに、米国市場において大成功を収めているが、アドヴェントIIのデビューによって、アドヴェントの新たなるファンが大いに増えることは間違いなかろう。アドヴェントが狙うファンは、ヨーロッパ製システムを予定していた、センスフルな若者なのだから。それはちょうど、クルマでいえば、ワーゲンを買おうとしていた若者ともいえるし、ありきたりのアメリカの良識にあき足らない感覚を満たすに違いない。そして、日本市場でもまったく同じ意味でアドヴェントIIは、大いにファンを獲得するに違いない。アメリカと違うのは、このアドヴェントIIによって日本市場で初めてアドヴェントが本格的に腰を据えるだろうという点である。

アドヴェント Smaller ADVENT

岩崎千明

スイングジャーナル 8月号(1974年7月発行)
「ベスト・バイ・コンポーネントとステレオ・システム紹介」より

 ブックシェルフ型という形式のスピーカー・システムが登場したのは、AR1のデビューした57年以来、18年になるが、今ではスピーカー・システムといえはそれはブックシェルフ型を意味するようにまでなってしまった。つまりひとつの歴史がARによって始まったと言ってもよかろう。57年に特許を獲得したエドガー・ビルチャーのこのアコースティック・サスペンジョン方式は、しかし、商品として完成されたのはこの30センチと20センチの2ウェイというAR1によってではなく、25センチと2コの10センチの2ウェイのAR2によってなのだった。AR1の12”ウーファーを独立させて、当時評判の高かったジェンセンの中高音用コンデンサー・スピーカーと組合せるべく作ったAR1Wのみが、ARの初期の商売上の成功のすべてであった。
 その時期におけるアコースティック・サスペンジョン方式のスピーカー・システムとして実質的に市場において成功していたのはARではなくて、その特許を買ってシステムを作り出したKLH社のモデル4だったという事実は注目に価する。しかもこのモデル4以後6、7と、長い期間ARと互角に製品を送り出し、今日の総合メーカーに拡大したKLH社の基礎を固めることになったのがKLHのスピーカー・システムであり、その優れた評価なのである。そのスピーカーを創りあげるのに大きな役割を果たしてきた技術者は、AR社社長ビルチャーのもとに片腕としてスピーカー作りに重責を握っていたヘンリー・E・クロス氏だった。その彼がKLHを飛び出して、今度は自分自身で会社を興し、ブックシェルフ型スピーカー・システムを作り始めたときけば、これはもう品物が出来上る前に高い評価を得るだろうことに疑問を持つ者はいまい。その通り、アドヴェントのスピーカーは市場に送り出されるや早々に米誌コンシュマー・レポートにおいて並びいる無数の他のブックシェルフ型を押えて「A Best Buy」に選ばれてそのデビューを飾り、一躍市場のベスト・セラーに踊り出たのが4年前。以来アドヴェントはスピーカー・システムとしては、ただこの1種のみを作り続けてきた。なお、申し添えると、このアドヴェントのもう一つの有名製品はドルビー付きの「高級カセット」があり、昨年やっと一回り小型のスピーカー・システム、スモーラー・アドヴェントを送り出したのだ。日本市場でも海外製品が最近は珍らしくなくなった。特にスピーカーに関しては、人気商品の半分が海外スピーカー・システムで占められるこの頃だ。
 米国の製品は、その中でもっとも数が多くあらゆる価格レベルにおいて充実している。だから、その中にあって、たった2種しか出していない新参アドヴェント、目立つわけがない。形もオーソドックスで、何の変哲もなく、目を惹くいかなるものもないのだから、当然なのだ。米国におけるアドヴェントのようにすでに高い価値をコンシューマー・レポート誌によって認められたという無形の、しかし確かなる背景も、日本ではほとんど通用しない。
 だが、ひとたびその真骨頂であるサウンドに接すれば、たとえきわめて高いレベルのオーデオ・ファンでも、ジャズ・ファンでも、納得させられるに違いない。いや、ハイレベルのファンほど、サウンドの確かさを知らされるだろう。それは米国切っての強固なる支持を持つコンシューマー・レポートによって代表される米国のユーザーの良識によって認められたベスト・システムとしての真価なのだ。
『すべての音楽ファン、オーディオ・ファイル(マニア)の期待に応え、しかも可能な限り価格をおさえる』というこの点にアドヴェントの製品の他にみない特長がある。これは2ウェイによって最高級システムが作り得るという確信が開発・製作者にあったからこそ成し得たのだが、その自信は、すでにAR2により、またKLH4、KLH6というかつての空前のロングセラー、ベストセラーから生じた自信以外のなにものでもなかろう。
 その自信を裏づけするようにこの小型のシステム、スモーラー・アドヴェントは実にふかぶかとした、ゆとりある低域と歪感の極度に少ない中低域から中高域、ハイエンドをややおさえて得た刺激が少なく、しかも立上りよさに新鮮なサウンドを感じさせる。あらゆる虚飾を配した、ということばはまるでこのアドヴェントのスピーカーにとっておいたようなことばだが、そっけないそのスタイルには、実はもっともハイ・クォリティーのサウンドが求められているのだ。それは「羊の皮を着た狼」のスピーカー版とでもいったらわかっていただけようか。
 ジャズを聴いても、バロックにも、はたまたロックによし、ポピュラーも抜群、つまり当るに敵なしとはこのアドヴェントのシステムのことだろう。
 本来、イースト直系のシステムとしての筋金が、このアドヴェントの音作りの基盤となっているのだからバロックやオーケストラが一番得意なはずであるのだが、イイモノハイイという言葉通り、ジャズでも生々しい楽器のサウンドをいかんなく発揮してくれるし、ヴォーカルの自然なプレゼンスも見事だ。普通聴きこんでくるに従っていろいろと物足りなく思えてくるのが安物の安物たるウィークポイントなのだがアドヴェントにはそうした安物らしさがいくら聴いても出てはこない。価格の3万何千円は何びとたりとも音を聴いてる限り決して意識されることがない。
 だから、平均的リスナ一に対してアドヴェントを推める理由の最大なものは、そのリスナーの向上によってスピーカーをよりハイレベルのものに移向することを望めない場合に、もっとも発揮されることになる。
 逆にいえば聴き手がどんなに向上してもアドヴェントひとつで間に合うのである。そうなれば、もっとも平均的なジャズ・リスナーの選ぶにふさわしいコンポの一翼を担って登場させるべきであろう。だからといってそれは決して平均的という言葉から想像されるような甘いものでは決してない。もっとも現代的なハイ・クォリティー・レシーバーの代表としてサンスイ771をここに選んだが、それはトリオのKR7400であってもいいし、パイオニアのSX737であってもいい。ただひとつパワーの大きいことがアドヴェントをよく鳴らすコツであることを知っておこう。
 プレイヤーは使いやすさという点でレシーバーと共通的な気易さで接しられるオートチンジャーの高級品を選んだ。その代表的ブランド、英国の伝統に生きるBSRの高級機種はマニュアル操作でも第一級のプレイヤーで使いやすい。
 このBSRのもうひとつの大きな魅力は日本市場における特典でもあるがシュアのカートリッジが着装されている点だ。シュアもアドヴェントと同じようにジャズ、オーケストラ、歌と何でもこなすという点が高く買われているわけでその点アドヴェントとの組合せは普遍性を高めている組合せとなるわけだ。
 もし、キミがすでに大がかりなコンポーネント・システムを持っていたとしても、リスニングルーム以外でのジャズの場を持とうとするときに、あるいは持ちたいと思うときに、このスモーラー・アドヴェントを基としたシステムはハイ・クォリティー、ローコストの上、万全の信頼をもって支えてくれるに違いない。

アドヴェント ADVENT

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 スモーラー・アドヴェント(前号)のところでも同じようなことを書いたつもりだが、開放的──というよりや手放しで開けひろげの鳴り方をするスピーカーで、こだわりがないというのか、苦労を知らないというのか、よくもこうあっけらかんとした鳴り方ができるものだとおもう。人工光線で一様に照らしたような、あるいは正面からフラッシュを浴びせたような、陰影のない鳴り方ともいえる。しかも質感が乾いている。ウエットな感じが全然ない。ヨーロッパ系のウエットな鳴り方を嫌う人には長所と聴こえるのかもしれないが、私はこういう乾いた音では音楽を楽しめない。レベルコントロールは3点切替で、ノーマルでは高域のレインジが少々狭く聴こえたので一段上げてみた(extended と表示してある)が、こうすると高域でシャープな切れこみが出てくる反面、トゥイーターとウーファーが不連続の感じになる。ノーマル位置でトーンで補整する方が効果的のようだ。ハイパワーに強く音が気持よく伸びる点はさすがと思わせるが、総体に、同形のARやKLHよりもやや熟成の足りない若い酒のような鋭さが残っているように聴きとれた。細かな点は前号264ページを参照して頂きたい。

周波数レンジ:☆☆☆
質感:☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆☆
解像力:☆☆☆
余韻:☆☆
プレゼンス:☆☆☆
魅力:☆☆

総合評価:☆☆☆