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RCF MYTHO 3

井上卓也

ステレオサウンド 100号(1991年9月発行)
「注目の新製品を聴く」より

 イタリアのスピーカーシステムがこのところ注目を集めエポックメイキングな存在となっているが、今回、成川商会により輸入されることになったRCF社のコンシュマーモデルMYTHO(ミッソ)3は、業務用音響機器メーカーで開発されたシステムという意味で注目したい製品である。
 RCF SpA社は、イタリア中部ReggigoOEmiliaで1984年に設立された業務用音響機器メーカーで、本社は、6000㎡の敷地内に工場をもち、ホーン型を含む業務用スピーカー、PA/SRスピーカー、HiFiスピーカー、カーオーディオ、およびスクリーンとプロジェクターを生産する計5セクションの部門をもち、英、仏にもプラントをもつヨーロッパ最大規模のメーカーである、とのことだ。
 MYTHO3は、繊維の粗いカーボン織りの楕円型ウーファーとチタンドーム型トゥイーターを組み合せた、スリムなプロポーションの2ウェイフロアー型だ。
 エンクロージュアは、バッフル面の横幅を限界に抑え、奥行きを十分にとった独自の設計に特徴がある。楕円形のウーファー採用もこの目的のためであり、同社の主任技師G・ジャンカーロ氏の構想に基づいたヴァーチカル・オリエンテッド方式である。外観からはわからないが、エンクロージュア内部は、ウーファー下側でキャビティが2分割されており、この隔壁部分にウーファー同様の振動系をもつ楕円型ドロンコーンユニットが取り付けてあり、下側キャビティには、さらに2本のバスレフ用パイプダクトをもつユニークな構成が、このシステムの最大の特徴である。これはバンドパス・ノンシンメトリック方式と名付けられたエンクロージュアである。2つの共鳴系をもつため、チューンにもよるが、2個所にインピーダンス上のディップがあるため、アンプからのパワーを受けると低域の再生能力が通常より向上する。このようにドロンコーンとパイプダクトという異なった共鳴系のチューンをスタガーした意味が、この方式の名称の由来である。
 この種の構想は、ドロンコーンを一般的なアクティヴ型ユニットとしたものや、隔壁部分にさらにパイプダクトを付けたものなど各種のヴァリエーションが考えられている。この種のパテントも出ているが、要するにダクト部分からの不要輻射が少なく、バンドパス特性が実現でき、超低域をカットし、聴感上での豊かな低音感が得られる点がメリットと思われる。
 エンクロージュア材料は、最近よく使われるメダイト製で、脚部は金属製スパイクが付属し、高域には保護回路を備えている。
 MYTHO3は、間接音成分がタップリとした、濃やかで、柔らかく、しなやかな表情の音だ。低域は少し軟調傾向があるが、高レベルから低レベルにかけてのグラデーションは豊かで、そのしなやかな音はかなり魅力的といえる。