Category Archives: KLH

KLH Model 6

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 アメリカのスピーカーメーカーとしてKLHは地味ながら一貫した方針で、イーストコーストサウンドを代表する、ずっしりと重みのある、コントロールのよくきいたサウンドのスピーカーを作り続けている。中でもこのモデル6は代表格のもので、2ウェイ・2スピーカーのすこぶるバランスのよいシステムだ。

アコースティックリサーチ AR-2aX, KLH Model 4

岩崎千明

サウンド No.6(1976年5月発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(スピーカー編)」より

 8つのスピーカー・システムということで、それを考えると、いざ名前を挙げるに従って8銘柄では少々物足りないのに悩んでしまう。
 8番目は、英国の名器とうわさ高い「ヴァイタボックス」の大型システムか、あるいは米国のかつてのビッグ・ネーム「クリプシュ」の現在の大型システムか、この2つのうちのひとつを挙げるのが、まず妥当なとこだろう。次点として、英国のローサの、これもコーナー型のホーンシステム。どれをとっても、低音はコーナーホーンで折返し形の長いホーンをそなえている。どれかひとつ、といういい方で、この中のひとつを絞るのは実は不可能なのだが、あえていうならヴァイタボックス。
 但し、これらは手元において聴いてみたいと思っても、それを確かめたことは一度もない。だから、人に勧めるなどとは、とてもおこがましくてできないというのが本音だ。そこで、よく知りつくしたのを最後に挙げよう。
 AR2aXまたはKLHモデル4だ。
 ARは今や2aXとなったが、その原形のAR2を今も手元で時折鳴らすこともあるくらいに気に入った唯一の本格的ブックシェルフ型。ARの低音はしばしば重すぎるといわれるが、それはAR3以後の低音で、AR2においては決して重ったるい響きはない。あくまでスッキリ、ゆったりで豊かさの中にゆとりさえあって、しかも引き緊った冴えも感じられる。高音ユニットは旧型がユニークだが、今日の新型2aXの方が、より自然な響きといえよう。
 KLHのモデル4は、同じ2ウェイでもブックシェルフとしてARよりひと足さきに完成した製品で、ブックシェルフ型の今日の普及の引き金となった名器だ。今でも初期の形と少しも変わらずに作り続けられているのが嬉しい。AR2よりも、ずっとおとなしく、クラシックや歌物を品よく鳴らす点で、今も立派に通用するシステムだ。持っていたい、たったひとつのブックシェルフといってよいだろう。

KLH Classic Four

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 AR・MSTのところでも、アメリカ東海岸の製品がハイを落して作ることを書いたが、同じボストン生まれのKLHのこの新型が、偶然そのことを説明してくれる。というのは、端子板のところにトゥイーターのレベル切換スイッチがついているがこの製品ではそれが二点切換えで、一方にNORMALの表示がある。問題はもう一方のポジションで、そこには何と、FLATと書いてあるではないか! つまり彼らの耳には、フラット即ノーマルではなく、ボストンの彼らの耳、ないしは東海岸のかなり多くの人たちの耳には、フラットよりもやや高音を落しかげんにセットした音が「ノーマル」に聴こえるという事情を、この製品が物語ってくれる。私はFLATのポジションで聴いた。モデル5や6のやや乾いたしかし暖かい音色をこの新型も受け継いでいるが、どういうわけか、音のバランスでは6型が、総体的な響きの良さでは5型の方が、それぞれ完成度が高いように、私には思えた。カートリッジでは、シュアーやエンパイアが良さを引き出す。

KLH Model 6

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 ブックシェルフ型システムとしては、発表されてから、かなりの年月が経過しているが滑らかで、陰影の深い音は、相当な実力を物語るものだ。やや、ベテラン好みの音か?

KLH Model 5

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 モデル6の方が有名だが、音のスケールの大きさや、鳴り方のゆったりした感じでこのモデル5の方が私は好きだ。中~高域の緻密さはもう少し欲しい気はするが。

KLH Model 32

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 ハイパワーを必要とするジャズ・ロック系にも、小型にかかわらず十分にこたえ、中域の充実した力強い、バランスのよい音を聴かせる。ただし、小出力での繊細さには劣る。

KLH Model 6

岩崎千明

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 米国のアコースティックサスペンション型システムの尖兵としてARより一歩先に大ヒットしたのがこのKLH6と4だ。ウェルバランスのソフトな品のよい音は永久の傑作だ。

KLH Model 5

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 まとまりがよく、品位の高い音をもっている。東海岸のボストンに生まれただけにハイファイ的な華やかさはないが、落着いた大人っぽい魅力がある。市場評価が低いのは残念。

KLH Model 6

菅野沖彦

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 ブックシェルフ型の典型として、オーソドックスなバランスをもったシステム。音色はやや暗く重いが、パワーを入れた時の充実感にはたしかな手応えがあって重厚だ。

KLH Model 6

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 ややソフトフォーカス気味ながらたいそうバランスの良い、暖かく快い音を聴かせるスピーカーで、さすがに永いことモデルチェンジをしない製品の安定した良さがわかる。男声の音域あたりの音の充実感が音楽をしっかり支える土台となって、坐りの良いウォームな音質が独特だ。KLHといえばARの流れを汲み、ここからさらに新しいアドヴェントを生んだいわゆるボストンの御三家だが、ARの新しいモデルやアドヴェントが本質的には乾いた傾向の、音の響きや余韻をむしろ拒否した鳴り方をするのに対して、KLHはヨーロッパのスピーカーほどではないにしても適度にウエットなほの暗い鳴り方をしてそこのところが私にはなかなか魅力的だ。この上のモデル5がさらに色濃くそういう長所を持っているが、ボストンのシンフォニー・ホールでポップスの音が鳴り出したとたんに、あ、これはまさしくKLHの音だ、と私は感じた。高域のレインジが広いという音ではないから、イギリス系のあの繊細に切れこみ漂うプレゼンスや艶は出ないが、いわば艶消しの美しさ。聴き疲れしない穏やかさと、それでいてハイパワーにぐんぐんと延びるダイナミックさが快い。

周波数レンジ:☆☆☆☆
質感:☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆☆
解像力:☆☆☆
余韻:☆☆☆
プレゼンス:☆☆☆
魅力:☆☆☆☆

総合評価:☆☆☆★

KLH Model 6, Model 32

KLHのスピーカーシステムModel 6、Model 32の広告(輸入元:ミドリヤ・オーリヤマ)
(ステレオ 1972年11月号掲載)

KLH