瀬川冬樹
Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より
まず全体の感じでは、中音域──おそらく1kHz前後の音域──にエネルギーを集中させたバランスのように聴きとれる。その意味ではパイオニアのSE300と一脈通じる音色で、相対的に低音と高音はおさえ気味のところもよく似ている。したがって、ややハードな傾向の音質で、感度が割合に良い方であることとあいまって、ポップス系のパーカッシヴな音など、頭の芯まで叩き込まれるような力がある。しかし低音の量感や、高音の繊細な、あるいは柔らかな表情を求めるのは少々無理のようで、こころみにトーンコントロールで低・高両端を強調してみたが、本質的にレインジが広くないのだろう、高級機のようなひろがりを聴くのはむずかしい。価格的にやむをえないのだろうか。デザインはちょっと国産らしからぬ洒落た部分もあって、見た目には楽しい。スピーカー端子にダイレクトに接続した方が、音が引締って、クリアーになる。
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