菅野沖彦
ステレオサウンド 131号(1999年6月発行)
「TESTREPORT ’99 話題の新製品を聴く」より
ステラヴォックスというブランドはかつてスイスの精密メカニズム技術を活かして作られたプロ用のアナログ・テープレコーダーで有名であることは、本誌の読者なら知っておられるであろう。デジタル時代になってからはDATレコーダーが99%完成した時点で経営が頓挫して、残念ながらついに陽の目をみることができなかった。
じつは、このブランドはゴールドムンドを主宰するミッシェル・レヴァション氏が所有するもので、ゴールドムンドの日本代理店であるステラヴォックス・ジャパン社の社名の由来ともなっている。したがって、ここ数年は、商品のないまま、この日本の輸入代理店の社名としてわが国のオーディオファイルには広く知られていたという面白い存在のブランドだ。
このD/Aコンバーターは、そのステラヴォックス・ブランドの復活第1弾である。プロ機のメーカーが作ったのだからプロ用なのだが、この製品、幅15cm、奥行き24cm、高さ5・4cm、重量は1・5kgで、拍子抜けするほど、小さく、さりげない筐体にまとめられ、価格もけっして高くはない。
しかし、その音を聴くと、どうしてどうして、なかなかなものである。アキュラシーだけではなく独特のみずみずしい魅力にさえ溢れた音なのだ。
なぜ大方の単体D/Aコンバーターがあれほどの大型で重量級の筐体なのか? と思わせるほど、その音質の品位の高さに驚かされた。小型であることのメリットを活かしたD/Aコンバーターといっていいだろう。つまり、小型だから剛性も高いしシグナルパスも短く、表面積も小さいので外部の影響は少ない。中身はハイテクのチップだからこれでじゅうぶんともいえるのではないか?
デジタル入力は同軸2系統、バランス1系統。アナログ出力はアンバランスとバランスがそれぞれ1系統と、シンプルきわまりない。回路はゴールドムンドのDA4モジュールによるものである。
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