ゼンハイザーのヘッドフォンHD580、HE60、HEV70(専用アダプター)、HD320、HD330。HD340の広告(輸入元:ゼネラル通商)
(サウンドレコパル 1994年夏号掲載)
Category Archives: ゼンハイザー
ゼンハイザー HD-400
瀬川冬樹
Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より
とりあげたとき、あっと驚くほど軽く、全く何気ない作りなのに、この音の良さはどうだろう。第一に、音楽の土台となる中域から低音域にかけて、音がとても豊かでみずみずしい弾力があって聴き手を楽しませる。中域以上高域にかけては、なだらかな下降特性のように聴こえるが、弦にも声にも独特の艶と張りがあって、しかも音量を上げても少しもやかましくない。ヘッドバンドとユニットの結合部分など、見たり触ったりしているかぎりは、まるで手抜きの作り方のように思えるのに、耳にかけてみると、当りは強すぎも弱すぎもせず、とても快く耳にフィットして、これなら長時間かけていても少しも疲れない。ヘッドフォンをかけた耳に外部から漏れてくる音も、少しも変形せずごく自然なのでいっそう快適だ。そして音楽が鳴りはじめると音が空間にひろがって消えてゆくその余韻までが何とも繊細に美しく展開される。これは良いヘッドフォンだ。
ゼンハイザー HD-224X
瀬川冬樹
Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より
今回テストに加わったゼンハイザーは全部で4機種だが、この224Xだけは完全密閉型という点で、他の3機種とは使用目的が違うと思う。その理由はパイオニアのモニター10やKOSSのPROその他のところで書いたとおりだが、ゼンハイザーがオープンタイプとは別に密閉型を用意しているのもそのためだと思う。ところでこの音質は、たしかにオープンのシリーズとは違うとは言うものの、KOSSなどとくらべるとこれは明らかにアメリカ対ヨーロッパの音のちがいが感じられて、KOSSの音には中低域の充実した力があるのに対して、ゼンハイザーには中〜高域に独特の艶としなやかさがあり、ことにステレオの音場のひろがりを、アメリカ系のヘッドフォンよりも爽やかに展開する。ただ、聴取時にトーンコントロール等で低音をわずかに補う方がバランスが良くなると感じた。
ゼンハイザー HD-424X
瀬川冬樹
Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より
ゼンハイザーの4機種をみて驚くことは、ローコストから高級機まで細部のデザインは異なるのに、ヘッドバンドは全く共通のあっけないほどシンプルなプラスチックでありながら、どの機種も耳にかけたときの圧迫感のない気持の良いかけ心地で、こんなに簡単な構造でこれほどみごとにフィットするのに、なぜほかのヘッドフォンがあんなに仰々しい凝ったしかけをしているのかと思いたくなる。422Xは高価であることを意識してか、頭の当たる部分にパッドを巻いたりユニット背面にピカピカのネームプレートをつけたりしているが、むしろそれさえ装飾過剰に思われる。しかし音質はさすがに、オープンタイプ三機種の中で最も繊細で自然だ。中〜高域に固有の艶があるがそれも音色を生かす助けになり、広い帯域とあいまってステレオのひろがりも実に爽やかだ。低域に豊かな弾みのあるところも、聴き手の心をなごませて、音楽を聴く楽しさに没頭できる。
ゼンハイザー HD-414X
瀬川冬樹
Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より
ゼンハイザーのヘッドフォンの中では、いちばん早くから知られていた美しい製品だが、今回同じメーカーの4機種の中で聴きくらべるとこれが最も能率が高い。またそのこととおそらく関連があると思うがこの414Xが最も中域が張り出して音像がくっきりとややコントラストの強い鳴り方をする。ただ、それは国産の多くにありがちだったようなクラシックのオーケストラの斉奏(トゥッティ)でのバランスをくずすような張り出し方とは明らかに違って、単にゼンハイザーの中でのわずかの個性の差という範囲にとどまる。たとえばHD400と瞬時に聴き比べると、400の方がおとなしく自然にきこえるが、411を単独に聴き込んでゆくにつれて、ことに豚量をやや絞って鳴らしたときでも緻密さを失わず繊細かつ艶やかな独特の音色は、いつまでも頭から外したくなくなるほどの魅力を持っている。このシンプルな構造で耳にピタリとフィットするのも心にくい。
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