Category Archives: ピカリング

ピカリング 625E-S2, 625DJ, 150DJ

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ピカリングは、1946年にニューヨークでノーマン・ピカリング氏が創立したカートリッジメーカーで、独自のマグネティック型発電方式で注目された。’58年にはそのステレオ版を発表し、その後、ダスタマティック・ブラシとアース付スタイラスアッセンブリーを開発。そしてMM型、MI型(可動鉄芯・マグネティック型)を加え、’73年には超高域再生特性が要求されるCD4用4チャンネルカートリッジを海外ではじめて発売するだけの、高度な針先形状と振動系などの技術を備えていたことで注目集めた。
 この成果により、針先形状の研究と振動系の軽量化、発電方式の新構造化が一段と図られ、以後の広帯域型への発展のベースとなった。
 注目したいことは、ターンテーブルの軸受部にドーナッツ型磁石を設け、この反発作用でターンテーブルをフローティングするジャイロポイズ方式の開発だ。これが’76年発売のプレーヤーシステムFA145Jに採用された。この発展型が国産のマグネフロートである。
 トーンアーム関係では、アーム支持部に水平回転軸のみを設け、先端部に上下方向にスイングするカートリッジ取付け部をもつユニークなタイプを開発。これはピカリング型と呼ばれ、LP時代にはオイルダンプ型と人気を二分する存在であったことを懐かしく思い出されるファンも少なくないだろう。独自のMI型ともども、国内にコピー・ピカリングが出現したことを考えても、同社技術の影響力は大きい。
 625E−S2は、同社の伝統を最も色濃く継承するMI型で、S2はヘッドシェル付。滑らかでウォームなサウンドはアメリカンポップスなどに最適。
 625DJは、デリケートな扱いが要求されるカートリッジを、強く逞しく、ノンブレーカブルに変身させた個性派。重針圧、耐逆回転性、蛍光ポイント付針先、針先保護Vガードと装備は抜群。
 150DJは出力8mV、円錐針、2〜4gの重針圧、信頼性と経済性の両面から、DJから最も信頼されている定番モデル。ジュークボックスでの成果の反映か。

ピカリング XLZ7500S

菅野沖彦

ステレオサウンド 70号(1984年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 ピカリングといえば、シュアーと並んでアメリカの力−トリッジメーカーの名門として有名だ。数多くの優れたMM型カートリッジを世に送り出してきたが、このXLZ7500Sという新しいMM型は中でもひときわユニークな製品といってよい。
 MM型カートリッジのMC型のそれに対する一つの大きなメリットは、出力電圧が高く、ヘッドアンプやトランスを使う必要がない点にあるが、この製品は、あえてそのメリットを犠牲にしてまで、音質の品位を追求したものと解釈できるのである。0・3mVという低い出力電圧はMC型並みである。
 なぜ、こういう製品が生れたのかという疑問が当然おきて不思議ではないが、筆者も、この音を聴く前には納得できなかった。ピカリング社の主張は、MM型の振動系のほうが、容易に精度を高めることが可能であるから、コイルのターン数を減らして、SN比の向上と歪みの低減を実現すれば、従来のMM型を超える製品ができるはずだというものである。MM型とMC型との優劣については、物理特性的には容易に優劣がつきにくいが、現状では高級カートリッジはMC型が常識のようになっている。したがって、このMM型がただ単に既成のMM型を凌駕するだけでは存在の必然性が危ぶまれてもしかたがないだろう。多くのMC型に比較して、性能面はもちろん、音の品位やセンスに明確な存在理由を感じさせるだけの成果があらねばならないのである。
 メーカーは、この製品の使用条件に、100Ω以上のインピーダンスで受けるように指定しているが、これは、ヘッドアンプの使用を標準として考えていることと理解できそうだ。つまりトランスは、一次インピーダンスは3〜40Ωのものが多く、筆者の知る限り、100Ω以上の入力インピーダンスをもつものはほとんどない。手許にあったトランスも、ハイインピーダンスのもので40Ωだったが、一応ヘッドアンプと平行して使ってみた。
 試聴結果は、これがMM型であろうと、MC型であろうと、そんな事を忘れさせるにたる高品位の音質であった。とにかく、音の透明度が高いのが新鮮な印象で、いかにも純度の高い、歪みの少ないトランスデューサーらしい音がする。変換器としての特性は相当に高い次元まで追求された高級カートリッジだということが感じられる。標準針圧1gでトレースは完全に安定している。このメーカーの開発テーマの一つに振動系の立上り時間の速さが上げられているが、たしかにこのクリアーでフリーな音の浮遊感は、振動系の機械歪みが少ないためであろう。最近のコントロールアンプやプリメインアンプにはMC用ヘッドアンプ内蔵のものが多いから、この小出力MM型は、なんのハンディもなしに、その美しく透明な音の魅力を評価されるであろう。

ピカリング XSV/5000

井上卓也

ステレオサウンド 64号(1982年9月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 米国のカートリッジメーカーとして、かつてのLP時代に高出力MI型カートリッジ、いわゆるピカリング型で一世を風靡した米ピカリング社から、同社のトップモデルに位置づけされるXSV/5000が新製品として発売されることになった。このモデルには二種類が用意され、XSV/5000がカートリッジ単体の製品、XSV/5000Sがヘッドシェル付の製品である。なお、このモデルと同時に従来の625Eに代表される音楽ファンのためのシリーズの新製品としてXEV/3001とXEV/3001Sが発売された。
 XSV/5000は、ピカリング製品を分類すると二シリーズあるうちの、いわばラボラトリー・リファレンス的な意味あいの強い高性能シリーズの新製品で、従来の3000や4000の性能を、PCM録音やダイレクトカッティングなどのプログラムソース側のハイレベルカッティングに対応するために、特にトレーシング能力を重点に性能を向上したモデルである。
 白とゴールドの対比がシャープな現代的なイメージを抱かせるボディと、特徴的なブラシが付属するボディの内側には、立上がり時間10μsecというトランジュント特性と、10〜50000Hzの広帯域レスポンスをもつ軽量振動系が組み込まれている。
 カンチレバー材料などの詳細は公表されていないが、振動系質量に直接関係があるスタイラスには従来のステレオヒドロン針をベースに、一段と軽質量かつ密着性を高めたヌード・ステレオヒドロン針が新採用され、音溝に対する機械的インピーダンスを低減し、ディスクからのエネルギー伝達効率を向上させているとのことだ。
 XSV/5000は、シャープで鋭角的に音をクッキリと浮き立たせる特徴と、洗練された雰囲気を備える、ピカリング独特のサウンドキャラクターを受け継ぎながら、一段とローレベルの分解能が向上した抜けのよい、ワイドレンジの音が際立つ製品だ。聴感上のSN比が高いため、ステレオフォニックな音場感は見通しよく拡がり、音像定位も非常にクリアーな新しい魅力が従来にない特長だ。表現力は豊かで、ソリッドで力のある低域をベースに華麗なサウンドを聴かせる。この質感の見事な低域がこのモデルの最大の美点で、柔らかなスピーカーやアンプをキリッと引き締めてくれる。

ピカリング XSV/4000

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 3000をベースに振動子の軽量化、高コンプライアンス化をはかり、針先にステレオヒドロン型、稀土類磁石採用の注目の新製品だ。

ピカリング XSV/4000

ピカリングのカートリッジXSV/4000の広告(輸入元:東志)
(モダン・ジャズ読本 ’80掲載)

XSV4000

ピカリング XSV/3000, PST-2, モニター・オーディオ STYLIFT

ピカリングのカートリッジXSV/3000、針圧計PST2、モニター・オーディオのアームリフターSTYLIFTの広告(輸入元:東志)
(ステレオ 1979年2月号掲載)

XSV3000

ピカリング XUV/4500Q

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

シャープでヴァイタリティに富んだみずみずしい解像力の良さが魅力。

ピカリング XV15/625E

菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

美しいバランスで音の姿を忠実に再現する実用性の高いカートリッジ。

ピカリング XSV/3000

菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

繊細緻密な美しさと重厚なたくましさを両立させた高級機。

ピカリング OA-3

瀬川冬樹

Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より

 コスHV/1Aのところで書いたことのくりかえしになるが、アメリカ東海岸側で作られるスピーカーは、一般的にいってハイエンド(高音の倍音領域)での強調感を嫌って、むしろハイエンドを丸め込んだバランスに作る傾向が強い。HV/1Aはむしろ例外的といえるが、このピカリングOA3は右の意味でまさしく東海岸的といえるハイエンドをおさえこんだナロウレインジ型だ。したがって、たとえばオーケストラの弦合奏部分で、チェロのオーバートーンが一瞬浮き上るというような(ベイヤーのところで書いたような)繊細な味わいは聴かせてくれないが、反面、思い切ってパワーを放り込んで鳴らしても、高音に金属的な線の細さがなく、全く危なげのないソフトなしかし腰の強い音を聴かせる点が特徴だ。しかしイヤパッドのビニールレザーの質感とヘッドバンドの圧力の強さは、いかにも耳たぶを圧迫する感じで、少なくとも私の耳にはきつすぎる。

ピカリング XUV/4500Q

ピカリングのカートリッジXUV/4500Qの広告
(オーディオアクセサリー 8号掲載)

XUV4500

ピカリング XSV/3000

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 アメリカ・ピカリング社は、カートリッジ専門メーカーとして、長い経験と、かなり大きなスケールのメーカーだ。発売機種もかなり多く、シュアーと並んで、アメリカの代表的カートリッジである。この製品は、ワイドレンジ・シリーズの2チャンネルヴァージョンで、CD−4用の高域特性のワイド化の技術を、一般ステレオレコードにフィードバックしたもので、さすがに再生音の美しさを感じる。一味魅力をもった優秀品。

ピカリング XSV/3000

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 モノーラル時代以来の古きカートリッジメーカーであるピカリングの製品は、CD−4方式対応型のXUV/4500Qで非常に高い評価を得たが、このXSV/3000は、レギュラーなステレオ用に開発されたトップモデルである。洗練され現代的になったとはいえ、腰が強くクッキリと粒立つピカリング伝統の音は、このモデルも充分に受け継いでおり、直線的に表現する独特の魅力は、他では求められない素晴らしさがある。

ピカリング XUV/4500Q

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 かつてモノ時代の名門だったピカリングは、永いこと、チェンジャー用のローコストモデルの生産に力を入れて高級品に見向きもしなかったが、久々に放った4500Qは、4ch用だがむしろふつうのステレオの再生に、尖鋭かつ鮮烈な音の魅力を聴かせるクリーンヒットで、ピカリング健在なりの認識を改めた。

ピカリング XUV/4500Q

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 エンパイア 4000D/IIIと双璧をなす米国系のトップランクの製品である。聴感上の帯域は、いかにもワイドレンジ型らしく伸び切っており、粒立ちが細かく、鋭角的に切れ込みのよい音を聴かせる。とくに低音が力強く、ソリッドな点では抜群である。音質上で、エンパイア 4000D/IIIと好対照を示す一流晶中の一流品である。

ピカリング XSV/3000

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 ピカリング最新の2チャンネルカートリッジのトップモデルである。音質はXUV/4500Qよりも伝統的なピカリングらしさがある。音のコントラストをクッキリとつけ、力強く、エネルギー感のあふれた男性的な魅力があり、質的にも充分に磨かれているために、音の重心が低く、安定感がある。反応は、かなり早く、いかにも新しいカートリッジらしさがある。

ピカリング V15 MICRO IV/AT, XV15/400E, XV15/1200E, UV15/2000Q, XUV/4500Q

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 ピカリングは、LP時期からカートリッジメーカーとして有名で、ステレオになってからは、普及モデルから徐々に高級モデルに発展し、現在では一連のシリーズ製品として製品が多い。音色は、伝統的に明快で力強く、やや乾いたストレートな音を守っているのが特長である。
 XUV/4500Qは、音の粒子は、この種のタイプとしては、あまり微粒子型でなく芯がカッチリとした特長がある。帯域バランスは、かなりワイドレンジ型だが、低域は引き締まりソリッドで力強い。中低域は豊かさがあり響きもあるが、中域以上は、やや硬調で明快でスッキリとした魅力をもつが、乾いた感じがあり、艶が不足する場合もあろう。組み合わせるスピーカーシステムやアンプは、聴感上で、いかにもワイドレンジを感じさせる両サイドが上昇する傾向のタイプは避けるべきで、古いタイプのフロアー型や、両サイドが、ゆるやかに下降するレスポンスをもつAR的なブックシェルフ型スピーカーがよい。
 XV15/1200Eは、粒立ちは、XUVよりも粗いが充分なSN比はある。音の傾向は、ウォームトーン系で、低域から中低域の量感が豊かで拡がりを感じさせる響きがある。音色は明るく伸びやかさはあるが、表情がマイルドで、スッキリとした爽やかさが必要と感じる場合がある。全体に線を太く表現するため、音の輪郭はあまりクッキリとせず、音像も大きくなるタイプである。マクロ型に音をまとめ、安心して聴けるところが、このカートリッジの特長である。
 UV15/2000Qは、XUV/4500Qと同様にCD−4システムに使用できるモデルである。粒立ちは細かいタイプで、帯域バランス上、やや中域が薄い感じがある。低域はソフトで甘く、中域はやや硬く乾き気味である。ヴォーカルは落着いた感じだが、やや子音を強調気味でハスキー調となるがあまり気にはならない。全体に耳あたりがよく、おだやかであり、やや硬質の中域以上が適度のコントラストをつける良さがあるが、XUV/4500Qほどの力感が伴わないために表現不足となり、表面的になる傾向があり、抑揚が乏しく感じられる。音場感は、ホールトーン的な響きが拡がりを感じさせるが、音像はさほど明瞭に立つタイプではない。
 XV15/400Eは、上級モデルよりも粒立ちが粗くなり、ときには聴感上のSN比が気になることもある。低域のダンプは標準型か、少し甘いタイプである。聴感上の帯域は、このクラスとしてはよく伸びていて、低域の腰が強く中高域は明快で、やや乾いたピカリングトーンである。ヴォーカルは、子音を強調気味だがスッキリとした感じであり、ピアノは適度にスケール感があり響きもキレイである。低域に少し重い感じがあり、反応のテンポが遅く感じられる場合がある。
 V15MICROIV/ATは、粒立ちはラフで聴感上のSN比が気になるタイプである。線が太く、帯域が狭いバランスであるが、まとまりはよく安定感がある。価格からすれば力もあり、耳あたりがよく商品性は高い。

ピカリング V15 MICRO IV/AT, XV15/400E, XV15/1200E, UV15/2000Q, XUV/4500Q

岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 全米一のキャリアを誇るピカリングは、もっとも知れわたったカートリッジの量産メーカーだ。
 製品は充実し、その品種は多い。しかし、はっきりとその品種はランク分けしてあるので、製品をいかに選ぶかはユーザーの志向さえ定まっていれば容易だ。丸針つきのローコスト機はオートチェンジャーやイージープレイ用として有効で高出力かつ音量が十分に感じられるスペクトラムバランスをもち、高級品ほど広帯域で、最高級品種はCD−4対応の高性能品だ。
 V15マイクロIV/ATは、オートチェンジャー用とされる高出力型で、価格的にも国内にある海外製品中でも最低価格品だ。中域のガッツある力強いサウンドと弾力的で量感のある低音がリズムをよく再現してくれる。高出力かつ安定なトレース性能は大変ゆとりがあり、針圧の範囲もごく大きい。ステレオ感は広く音像が大きくなりがちだが間近に迫る感じだ。
 XV15/400Eは、新シリーズ中の普及価格の実用機種になるが、これはピカリングらしくないウォームトーンの広帯域型だ。といってもハイエンドは高級品なみとはいかないが、ピカリングとしては珍しくおとなしい処理で、しかもきびきびした高域から中域の表情ゆえに甘さはない。低域での弾むような腰の強いエネルギー感は、ここでも幾分かひかえ目なバランスを保つ。
 XV15/1200Eは、ピカリングの中で、手頃な高級品をひとつ選ぶとしたら、この広帯域型だ。それはいかにも力のある音の粒立ちをもち、甘くはならないが、そうかといって鮮明に過ぎるということもないピカリングの良識をはっきりと感じさせる。低音は量的には多いが決して音像がふやけるということもない。やや華やかな中域から高域にかけてのきらめきも潤いがあるので、音像を乱すことはなく、雰囲気のある音場を再現する。音像の定位は、きわめて良く、ちょっと聴いた感じではそれほど高域が伸びているとは思えないのに、ステレオの広がりから判断するハイエンドは、バランスよく保たれている。ヴォーカルが比較的間近かに、確かな音像をつくるのも、若いファンには向いているといえよう。
 UV15/2000Qは、1200のジュニア版ともいえるモデルだが、この種のカートリッジにありがちな音の薄くなるようなことがそれほど感じられず、ピカリングの特徴は充分にもっている。ピカリングからのCD−4対応型の中では比較的安価なモデルだが、4チャンネル再生に、アメリカンサウンドを得ようとした場合には、充分期待にこたえてくれよう。
 XUV/4500Qは、このカートリッジが出た当時、ピカリングの製品ということがとても信じられなかったくらいで、今までになくおとなしい、ひかえめな音だ。一聴してハイエンド、ローエンドを充分に伸ばした超広帯域型だということを知らされるが、聴き込むにつれてそのハイクォリティな音を感じとることができる。
 CD−4対応型として出されたのは無論だが、それ以上にピカリングの製品の中でも、最高クラスに位置するという、いわば技術的レベルを示すイメージ製品としての価値も大きい。

ピカリング XUV/4500Q, OA3, ミルティ Pixall, ゼロスタット ZEROSTAT

ピカリングのカートリッジXUV/4500Q、ヘッドフォンOA3、ピクソールのレコードクリーナーPixall、ゼロスタットのレコードクリーナーZEROSTATの広告(輸入元:東志)
(オーディオアクセサリー 1号掲載)

TOSY

ピカリング XV15/1200E

岩崎千明

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 ピカリングの最高級品種は、広帯域の中にクリアな高域と力強い低域を加えたともいえる再生ぶりに、ピカリング中最軽針圧動作で高級品らしい製品だ。特にハードロック向き。

ピカリング XV15/400E

岩崎千明

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 ピカリングとしてはかなり平坦な周波数特性を音からも感じられごく安定したその響きは、やや繊細感がものたりないとはいえあらゆる音楽にも応じ、迫力と豊かさが得られよう。

ピカリング V15 MICRO IV/AM

岩崎千明

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 きっすいの米国伝統的カートリッジ、ピカリングの製品中、鮮麗な音の高出力を特長とする使いやすい一般用。やや針圧を増すのが安定したトレースと再生音を得るコツだ。

ピカリング XV15

ピカリングのカートリッジXV15の広告(輸入元:東志)
(オーディオ専科 1975年4月号掲載)

XV15

ピカリング V15/AM-3

瀬川冬樹

ステレオサウンド 12号(1969年9月発行)
特集・「最新カートリッジ40機種のブラインド試聴」より

 ワイドレンジという感じの音ではなく、中~高音域の上の方に多少張りを持たせてハイ・エンドをカットしたような、おそらく中級品らしい音づくりだが、腰の強い明るい音が身上のようである。音の拡がりがよく出て奥行きもあり、分離も切れ込みも一応よく、低域にも適度の厚さがある。ピアノ・ソロでは、一種ふてぶてしいような張りがあって、引き締った腰の強い音を再生する。弦合奏のユニゾンでは何となく安っぽさが感じられる一方、妙につやのある音が印象に残るが、ヴェルディあたりになると、バランスの悪さや歪みっぽさが出てきて、さすがに欠点を露呈してしまう。華やかさ、明るさ、独特の拡がりに特徴がある。

オーケストラ:☆☆☆☆★
ピアノ:☆☆☆☆★
弦楽器:☆☆☆☆
声楽:☆☆☆☆
コーラス:☆☆☆★
ジャズ:☆☆☆☆
ムード:☆☆☆☆★
打楽器:☆☆☆★
総合評価:80
コストパフォーマンス:95