ピカリング V15 MICRO IV/AT, XV15/400E, XV15/1200E, UV15/2000Q, XUV/4500Q

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 ピカリングは、LP時期からカートリッジメーカーとして有名で、ステレオになってからは、普及モデルから徐々に高級モデルに発展し、現在では一連のシリーズ製品として製品が多い。音色は、伝統的に明快で力強く、やや乾いたストレートな音を守っているのが特長である。
 XUV/4500Qは、音の粒子は、この種のタイプとしては、あまり微粒子型でなく芯がカッチリとした特長がある。帯域バランスは、かなりワイドレンジ型だが、低域は引き締まりソリッドで力強い。中低域は豊かさがあり響きもあるが、中域以上は、やや硬調で明快でスッキリとした魅力をもつが、乾いた感じがあり、艶が不足する場合もあろう。組み合わせるスピーカーシステムやアンプは、聴感上で、いかにもワイドレンジを感じさせる両サイドが上昇する傾向のタイプは避けるべきで、古いタイプのフロアー型や、両サイドが、ゆるやかに下降するレスポンスをもつAR的なブックシェルフ型スピーカーがよい。
 XV15/1200Eは、粒立ちは、XUVよりも粗いが充分なSN比はある。音の傾向は、ウォームトーン系で、低域から中低域の量感が豊かで拡がりを感じさせる響きがある。音色は明るく伸びやかさはあるが、表情がマイルドで、スッキリとした爽やかさが必要と感じる場合がある。全体に線を太く表現するため、音の輪郭はあまりクッキリとせず、音像も大きくなるタイプである。マクロ型に音をまとめ、安心して聴けるところが、このカートリッジの特長である。
 UV15/2000Qは、XUV/4500Qと同様にCD−4システムに使用できるモデルである。粒立ちは細かいタイプで、帯域バランス上、やや中域が薄い感じがある。低域はソフトで甘く、中域はやや硬く乾き気味である。ヴォーカルは落着いた感じだが、やや子音を強調気味でハスキー調となるがあまり気にはならない。全体に耳あたりがよく、おだやかであり、やや硬質の中域以上が適度のコントラストをつける良さがあるが、XUV/4500Qほどの力感が伴わないために表現不足となり、表面的になる傾向があり、抑揚が乏しく感じられる。音場感は、ホールトーン的な響きが拡がりを感じさせるが、音像はさほど明瞭に立つタイプではない。
 XV15/400Eは、上級モデルよりも粒立ちが粗くなり、ときには聴感上のSN比が気になることもある。低域のダンプは標準型か、少し甘いタイプである。聴感上の帯域は、このクラスとしてはよく伸びていて、低域の腰が強く中高域は明快で、やや乾いたピカリングトーンである。ヴォーカルは、子音を強調気味だがスッキリとした感じであり、ピアノは適度にスケール感があり響きもキレイである。低域に少し重い感じがあり、反応のテンポが遅く感じられる場合がある。
 V15MICROIV/ATは、粒立ちはラフで聴感上のSN比が気になるタイプである。線が太く、帯域が狭いバランスであるが、まとまりはよく安定感がある。価格からすれば力もあり、耳あたりがよく商品性は高い。

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