Category Archives: B&W

B&W NSCM1

井上卓也

ステレオサウンド 137号(2000年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング863選」より

基本的にはNautilus805に近似した構成ではあるが、ユニットはともに新設計で低歪化され、エンクロージュアも少し横幅が増し形状が変わったせいか、いかにも2ウェイ・バスレフ型を想わせる明るく豊かな音と、ラウンド型独自の音場感情報をタップリ響かせる独特の音は絶品。良く鳴り、良く響き合う音は時間を忘れる思い。

B&W Nautilus 801

菅野沖彦

ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より

クラシックの録音モニターとして広く使われている同社のMatrix801シリーズの後継機となる最新モデルだが、今回は大幅な変更を受けて801という型番が不自然なほどである。作りも音も充実した力作である。従来の801にあった甘さと繊細さは姿を変え、より精緻な解像力を持ちスケールもいちだんと大きくなった。

B&W Nautilus 805

井上卓也

ステレオサウンド 130号(1999年3月発行)
「いま聴きたい魅惑のコンポーネント特選70機種」より

 ご存じのように、小型2ウェイ機マトリク805Vをボトムとし、おもにクラシック系録音スタジオのリファレンスモニターシステムとして知られるマトリクス801S3を頂点に置く「マトリクス」シリーズが、B&Wを象徴するスピーカー・シリーズとして有名である。
 昨年、このシリーズが、これまでのスピーカーデザインの概念を超えた、音響的構造体そのものが、未来型のフォルムをもつ造形的作品になったとも受け取れる「ノーチラス」での成果とコンバインされ、「ノーチラス800」という新シリーズに置き換えられた。
 ノーチラス805は、従来のマトリクス805Vの後継モデルで、シリーズ中でもっとも小型なシステムである。
 ユニット構成が、16・5cmケブラーコーン型ウーファーと2・5cmハードドーム型トゥイーターの組合せというモデルは、B&Wには現在、CDM1SE、CDM2SE、DM601の3機種がある。さらにはウーファー口径を18cmにサイズアップしたDM602や、価格は大幅に異なるが同社25周年を記念したSS25も、同じカテゴリーに入れられるシステムである。
 以上のように、使用ユニットは同等もしくは近似してはいるが、価格的に、DM601のペア5万円からSS25のペア130万円まで、大きな格差がある製品造りは、ウーファー口径の大小やエンクロージュアの外形寸法/重量などの違いを基準として、性能・音質・価格などが決定される一般的なシリーズ展開とは完全に異なっている。外形寸法/重量/ユニット構成などの外観的要素は同等ではあるが、内容の違いによってグレード分けをするという、量的な差ではなく質的な差がグレードを決定する、いかにも趣味のオーディオにふさわしいラインナップと言えるだろう。
 マトリクス805Vは、キュービックなエンクロージュアの天板部分に独立したトゥイーターを取り付ける、SS25の設計であった。新しいノーチラス805は、新シリーズ共通の積層合板を馬蹄型に成形した、一般のエンクロージュアでは側板と裏板に相当する1ピースの材料の前に
バッフルを取り付け、上下を蓋でカバーする巨大なリア・ラウンド形状の低域エンクロージュアを採用する。さらに、高域ハウジングは、高域ユニットの背面を密閉構造とせず、逆テーパー状の開放管を介して空気中に導く「ノーテラス構造」とし、かつ、特殊な放射線処理で加工された、制振作用がありながら材料自体の固有の鳴きがない形状記憶性を備えたクッション材で、低域エンクロージュアとフローティングマウントしている。こうしたユニークなエンクロージュア構成が、従来のスピーカーシステムとは一線を画した本機の類稀な特徴であろう。
 低域ユニットには、センターポール上に、コーン各部から放射される音をコントロールして中高域〜高域の特性を改善するイコライザーが組み込まれている。これによるレスポンス特性の向上は、クロスオーバー特性のコントロールに余裕を生み、いちだんと好ましいクロスオーバー特性が得られる利点は大きな意義を持つ。
 機械的なフローティング構造と、バックプレッシャーを抜きながら巧みに減衰させる逆テーパー状パイプの相乗効果により、低域振動による変調がかかるために生じる高域の混濁感がなく、さらに、バックプレッシャーを除去し減衰させる構造は、伸びやかで反応が速く、固有音の少ないストレスフリーな高域が得られるようだ。メタルドーム的な硬質さが非常に少ないのは、この構造独自のメリットであろう。
 一方、独特なバック・ラウンド形状とでも言うべきエンクロージュア構造は、エンクロージュアのコーナー部分で生じる不要輻射が本質的に存在せず、エンクロージュア表面からの2次輻射が滑らかに均質にラジエーションをするために、ナチュラルな音場感と音像定位が得られるメリットがある。聴取位置に対するスピーカーシステムの水平面での角度を微調整すれば、かなり空間的な音場感再現性をコントロールできる、素晴らしい特徴を備えているのである。
 さらに、一般のキュービックなエンクロージュアと比較すれば、内部定在波のコントロールにも有利で、独自のマトリクス構造との相乗効果による音質向上は、予測を超えた成果があるように思われる。
 本機の音は、ノーチラス801をスタジオモニターとすれば、同系統のコンパクトモニター的性質があり、同802/803が持つコンシューマー的な音の姿・形とは完全に異なったキャラクターである。内容が充実し、完成度が高いだけに、簡単に使ってもそれらしくは鳴ってくれるが、本腰を入れて取り組まなければベストサウンドへの道は険しい。

B&W Matrix 801S3

菅野沖彦

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 今やクラシック録音界でのモニター・システムのスタンダードと言える存在になったB&Wの代表作。モニターとしてはアキュラシーが厳格とは言い難く、むしろ耳馴染みの良い音。高域は美化する傾向があるがバランスは最高にいい。したがって観賞用に薦めても間違いのないシステムだ。S3でより滑らかになった。

B&W Matrix 801S3

井上卓也

オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド別冊・1994年春発行)
「世界の一流品 スピーカーシステム篇」より

 B&Wはヨーロッパ系スピーカーメーカーの中にあって、熟成された独自のユニット開発技術をベースに、最新の振動板材料を充分にコントロールしている。また、エンクロージュアも補強材を兼ねて、内部構造に数多くの隔壁を設けて剛性を上げ、さらに定在波をコントロールするマトリックス方式に代表される技術を加えてシステムアップする技術そのものも、世界のトップランクに位置づけされる。
 コンシューマー用のシルバーシグネチェアに始まった新世紀のB&W路線は、論理に基づく形態的にも究極モデルともいえるノーチラスのように、従来のスピーカーシステムの概念を根本から覆す、ユニークかつユーモラスな独特な遊び心のあるシステムに発展するかもしれない。同社の今後の動向は、ヨーロッパ系スピーカーシステムの台風の眼となる可能性が大きい。
 801システムはS3となり、基本ユニット構成は変らないが中域と高域の内部配線が独立給電型となり、共通アースが廃されサーキットブレーカーが省かれたため、音のディテールの再生能力が向上した。同時に分解能が高まり、バランス的に低域の質感が改善され、システムとしてのトータルの性能、音質が一段とグレードアップした。よりフレキシビリティが高く、いわゆるモニター的なサウンドが皆無に等しいあたりが、素晴らしい成果の裏付けであるように思う。なお、この中・高音ユニットのブロックは802S3と同じものである。
使いこなしポイント
 モニター仕様のため、移動に便利なキャスターを取り付けたまま使用される例も多い。しかし、コンシューマー用に使うなら、脚部を含めて床面にどのように設置するかが、このモデルに限らずスピーカーを使う基本的手法であり、死命を決する重要ポイントだ。駆動用パワーアンプは電流供給能力の充分にある、色づけが少ない正統派のアンプが好ましく、ケーブルを含め充分な選択が必要

B&W Model 801F

黒田恭一

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「2つの試聴テストで探る’83 “NEW” スピーカーの魅力」より
4枚のレコードでの20のチェック・ポイント・試聴テスト

19世紀のウィーンのダンス名曲集II
ディトリッヒ/ウィン・ベラ・ムジカ合奏団
❶では総奏によるひびきのひろがりを示すより、総奏した音の力を示す。❷でのヴァイオリンにしても、その音色の美しさをきめこまかく示すというより、その輪郭をくっきり提示する。このヴァイオリンの音は人によってはきついという人もいなくはないであろう。❸ないしは❺のコントラバスはもう少したっぷりひびいてもいいように思う。コントラバス本来の大きさがわかりにくいここでのひびき方である。

ギルティ
バーブラ・ストライザンド/バリー・ギブ
❶ではエレクトリック・ピアノがくっきりと示される。しかも音像的にいくぶん大きめである。❷での声はこっちにかなりはりだしてくる。この辺にこのスピーカーの積極的な性格がうかがえるといえなくもないようである。❸ではギターが太く感じられる。それだけあいまいになっていないということであるが、もう少し微妙な音色への対応にすぐれているとこのギターの音も本来の美しさを示せたのであろう。

ショート・ストーリーズ
ヴァンゲリス/ジョン・アンダーソン
ひびきの鋭さより力強さをきわだてる傾向にある。したがってここできける音楽のうちの力は感じられるが、デリケートな音色の変化はいくぶんききとりにくい。したがって、❷でのティンパニのひびきの力はあきらかにされているものの、❸での左右の動きがあきらかにするはずのスピード感はかならずしも充分とはいいがたい。❺でのポコポコがいくぶん全体の中にうめこまれたような感じでしかきこえない。

第三の扉
エバーハルト・ウェーバー/ライル・メイズ
❶でのピアノの音に力感がある。その反面、ベースはいくぶんひかえめである。❷ではとりわけ高い方のピアノの音が美しい。左右のひろがりはほどほどにおさえられていてこのましい。❺では木管のひびきの特徴をよく示し、それまでの部分との音色的な対比を充分につけている。もう少し音色的にあかるいと、このスピーカーのもちあじのひとつである力強さへの対応力がいかされるのであろうかと思う。

B&W Model 801F

黒田恭一

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「2つの試聴テストで探る’83 “NEW” スピーカーの魅力」より

 口ごもるようなところのない、いうべきことはストレートにいうよさがこのスピーカーにはある。その意味では安心してきいていられる。力感にみちた音の提示のしかたなどはなかなかのものである。ただ、硬に対する軟の方で、さらに表現力をませばと思わなくもない。
 どのレコードも平均してきこえた。このレコードがよくて、あのレコードがよくないというようなことはなかった。その意味で平均点の高いスピーカーということになるであろう。ただ、ヴァイオリンのしなやかな音とか、声のなまなましさとかを求める人は、一工夫必要であろう。
 しかしながら強調感のないところはこのスピーカーのいいところで、使い手の側に積極性さえあれば、眠っている可能性をひきだすこともできそうである。なにより、ひびきがひっそりしてしまわないところがこのましいと思う。

B&W DM4/II

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 ピリッとどこかにからしのきいた、きちっとした輪郭をもちながら音楽を豊かに再生する。しかし、大型スピーカーのような大音量再生には不適当だ。

B&W DM7

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

トゥイーターの造形処理など外観も面白いが、音質も一聴に値する。

B&W DM4/II

菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

一味違う趣きと妥当なウェイバランスをもつ使いやすい製品。

B&W DM5

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

新しい英国の音を感じさせる、しなやかで爽やかな音が素晴らしい。

B&W DM4/II

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

小型ブックシェルフの中では際立って正統的な音を聴かせる製品。

B&W DM4/II

瀬川冬樹

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

 鳴りはじめた瞬間から、素性の良さは争われないものだと感じさせる。たまたま試聴の順序から、これの前に国産の5万円台の製品の3機種(しかもこの3機種はいずれも結果が悪かったので記事にはならない)が続いたせいも多少あるが、それにしてもやはりこのバランスの良さはみごとだ。以前別のところでテストしたときもこの良さには感心したが、細かいことをいえば今回のサンプルの方が、以前聴いた製品にくらべて、いわゆるモニター的というか、音をいっそう真面目に鳴らす方向に仕上っているように感じた。たとえば菅野録音の「SIDE BY SIDE 3」のレコードなど、ハイエンドをもう少し強調したいと思わせるほど音に誇張がない。中音域もイギリスのスピーカー一般の平均値からみるとあまり引っ込んだ感じがせず、たとえばシェフィールドのダイレクトカットのレコードでも、このあとに試聴したJRと比較でいえば、オーケストラ録音では各声部の細かな進行をJRよりよく浮き上らせ楽曲の構造をよくわからせる。反面、JRよりもい位相差成分が消えてしまうようなところがあって、音のひろがる感じはJRの方がおもしろく聴かせる。その意味で組合せも455E+KA7300Dの傾向の方が楽しめた。台は約40センチぐらい。背面を壁にやや近づける置き方がよかった。

B&W DM4/II

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶あかるい、すっきりしたピッチカート。ひびきに力がある。
❷くっきりと、力がある音をきかせて効果的だ。
❸各楽器の特徴あるひびきを鮮明に示す。
❹第1ヴァイオリンのひびきにもうひとつキメこまかさがほしい。
❺クライマックスへのもりあげ方にはあまり無理を感じさせない。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音に力は感じられるが、音像は大きめである。
❷音色的な対比、あるいはバランスといった点で好ましい。
❸いくぶん響きが、拡大しがちで、さわやかにかける。
❹きわだつが、わざとしらさがついてまわる。
❺はりだし気味であり、多少誇張感がある。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶表情を強調ぎみに示す傾向があるが、鮮明ではある。
❷接近感をよく示しはするが、オン・マイク的である。
❸クラリネットの音色の特徴は強調して示される。
❹はった声は、硬くならないが、声本来の艶がなくなる。
❺個々の響きを分解して示す傾向がある。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶凹凸はないが、響きがぼってりしがちである。
❷声量をおとしたことに呼応して、言葉のたち方が弱くなる。
❸残響の強調がマイナスに働いて、言葉の細部があいまいになりがちだ。
❹各声部のからみが鮮明に示せているとはいえない。
❺のびてはいるものの、いくぶん不自然なところがある。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的なへだたりを特にきわだたせる。
❷クレッシェンドのしかたが、多少わざとらしい。
❸響きは横にひろがるが、奥行きが不充分で、浮遊感もたりない。
❹前後のへだたりはかならずしも充分とはいえない。
❺階段を一段ずつあがるようにふくらむ。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶横に力をもってひろがったひびきには一種のたくましさがある。
❷ギターの音像は、さらに小さくすっきり、中央に定位するのが望ましい。
❸ひびきの輪郭があいまいになりがちなので、はえない。
❹かなりはりだす。このひびきの特徴を拡大して示す。
❺きこえることはきこえるが、めだつとはいえない。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶響きの重心が低い方にかたよっている。
❷必ずしも厚みを示すことにはならず、ばらばらになりがちだ。
❸べとつかないのはいいが、さわやかとはいえない。
❹響きに力が不足しているので、十全な効果をあげえない。
❺言葉のたち方が弱く、バック・コーラスの効果も不充分だ。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶大きな箱の中でひびいているかのようにきこえる。
❷必ずしも強調感があるとはいえないが、もう少しなまなましさがほしい。
❸消えていく音をきわだたせる傾向がある。
❹反応がシャープでないために、あいまいになる。
❺特に音像的なバランスに自然さがたりない。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶響きの切れが鈍いためか、もったりとする。
❷積極的ではあるが、響きに力がたりないので、刺激的になる。
❸かなり前の方にはりだすが、もう少しくっきりしてほしい。
❹奥行きが充分にはとれず、音の見通しがあまりよくない。
❺響きがぼやけ気味のためか、めりはりの点でもうひとつだ。

座鬼太鼓座
❶かなり前の方にはりだしていて、距離感があいまいになる。
❷脂っぽさはないが、尺八の音色を十全に示しているとはいいがたい。
❸きこえることはきこえるが、いくぶんあいまいだ。
❹響きに、かさかさしたところがあり、力強さがたりない。
❺音色的な対比の点で必ずしも充分とはいえない。

B&W DM6

黒田恭一

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイントの試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートは、遠くでひびき、木管のひびきはうす味だ。
❷低音弦のひびきに、力とはりがほしい。
❸ひびきはとけあうが、鮮明さがたりない。
❹低音弦のピッチカートがふくらんで、重くひびく。
❺クライマックスでひびきにのびやかさがたりない。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノは、音像が大きく、はりだしてきこえる。
❷一応の音色対比は示すが、ひびきにキメ細かさがない。
❸室内オーケストラのひびきの軽やかさがなく、くぐもる。
❹第1ヴァイオリンのフレーズの特徴は示される。
❺個々のひびきのくせをきわだたせてきかせる。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶音像は大きく、本来の声のしなやかさがない。
❷接近感を誇張ぎみに示す傾向がある。
❸声よりも楽器のひびきの方がきわだつ。
❹はった声がかたくならないのはいいが、くせのあるひびきになる。
❺声とオーケストラのバランスがいいとはいえない。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶横一列の並び方に少なからず問題がある。
❷声量をおとすとひびきの重みがきわだつ。
❸残響を強調ぎみのため、言葉はたちにくい。
❹バリトン、バスがかなり前にでているようにきこえる。
❺たっぷりとしたひびきが後まで残る。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶ピンもポンも、力をもったひびきで、示される。
❷後方からのひびきも、かなりの力を感じさせる。
❸ひびきそのものの重量がかなりのものなので、浮遊感はない。
❹総じてひびきがかげりがちのため、ひろがりはとれない。
❺力をもって、重々しくはりだしてくる。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶奥の方からひびいてくるものの、ひろがらない。
❷ギターの音像は大きく、当初からせりだしぎみだ。
❸かなりめだつようにひびき、積極的に前にでる。
❹めだってきこえるが、きらびやかなひびきとはいえない。
❺他のひびきの中にうめこまれてしまっている。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶12弦ギターのひびきが、さらに切れ味鋭くてもいいだろう。
❷サウンドの、厚みというより、重みが強調される。
❸ハットシンバルのひびきは、乾き方がたりない。
❹大きなドラムスが力をもってひびいてくる。
❺バックコーラスがもう少しひろがってひびいてほしい。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像はことさら大きいとはいえない。エネルギー感を示す。
❷オンでとったなまなましさを示す。
❸消えていく音を、くっきり、あいまいにならず示す。
❹こまかい音の動きにも、一応対応できている。
❺サム・ジョーンズとの音像対比はかなり好ましい。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶つっこみというより、押しだしぎみにひびく。
❷もう少しさわやかに、ぬけきってほしい。
❸積極的に前の方にせりだして、効果をあげる。
❹後方へのひきは一応とれているが、効果的とはいえない。
❺リズムは、重いためか、奥にひっこみがちだ。

座鬼太鼓座
❶尺八は、大きい。すぐ近くできこえる。
❷もう少し枯れたひびきできこえるべきだろう。
❸一応きこえてくるものの、ひびきとしてのまとまりがない。
❹力強さは充分に示すが、ひびきのひろがりは不足している。
❺ききとれる。和太鼓の特徴がさだかでない。

B&W DM6

瀬川冬樹

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より

 新着の製品を聴くたびに少しずつ改良のあとが聴きとれて、まだ改善途上のような印象も受けるが、今回のものは初期に聴いたものよりも弱点が少なく、かなりの水準に達していると思った。総体にやや細身の音、という感じはイギリス製のスピーカーによくある作り方だが、中域から高域にかけて音の定位や雰囲気がよく出る反面、中低域以下の密度や音を支える力がもう少し欲しくも思われる。たとえば、ブラームスのP協のような、音に充実感あるいは重量感の要求されるような曲では、中低域の厚みの少ないことがかなりマイナス点になる。F=ディスカウの声も(声自体の滑らかさや艶は十分に出るが)やや若くなる傾向。またバルバラはもともとやせて細い女性だが、それがいっそう細身になるし、伴奏のアコーディオンの一種独特の唸るようなうねりが出にくい。ただ、中~高域の繊細な表現はなかなか捨てがたいが良さでもあるので、高域に強調感の少なく中低域に厚みのある、たとえばSPUやVMS20Eのような系統のカートリッジ(ポップスならADCやピカリング系統)をうまく組み合わせれば、独特の味わいが生かせる。置き方の面では、付属のスタンド(脚)がついているので台は不要だ。背面に低域のコントロール(3段切換)がついているので、部屋の音響条件によって調整することができるのは便利。試聴の際は壁に近づけて-1にセットしてちょうどよかった。

B&W DM5

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 DM4/IIでその実力をみせたB&Wが、旧作D5に改良を加えた新型。D5とは見た目のイメージもやや変わっているが、おそらくDM4/IIで得たノウハウが投入されているのだろう。肉乗りの良いよく弾み鋭敏に反応するワイドレンジ型で、しかも聴感上のバランス良く、明るい品の良い音で楽しませる。

B&W DM5

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 B&Wが自社製ユニットを小型システムに採用した最新の製品である。このシステムは、英国的といわれるサウンドから、よりインターナショナルなサウンドに変わったのが、B&Wのシステムとして際立っており、活気にとんだ、伸びやかな音を聴かせることでは、最近の海外製品中でもとくに目立つ存在である。

B&W DM4/II

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 英国のスピーカーメーカーとしては、かなりユニークな存在であるB&Wの製品としては、いわば、中級機のランクに置かれたシステムである。構成は、20cmウーファーをベースとした、2ウェイ方式にスーパートゥイーターを加えたタイプであり、トゥイーターに、定評が高い、セレッション製のHF1300/IIを採用している点に注意したい。比較的に低い位置で聴いたときの、おだやかだがプレゼンスのある拡がりが好ましい。

B&W DM4/II

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 II型に改良されてからのDM4の良さはおどろくばかりだ。小型のキャビネットの割に音が豊かで、とても鮮度の高い、しかし上品さを失わない節度を保って鳴るところは、まさしくイギリスの製品の良さだ。価格の面から、UL6が比較の対象になるが、セレッションはくつろぎのための、というような感じだ。つまりDM4IIの方が、音楽の形をいっそう確かに聴き手に伝える。

B&W DM4/II

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 イギリスのB&W社の存在は地味だが、それは、その外観にも音にも滲み出している。つまり、渋味のある、じっくりと聴き込むほどに滋味の味わえるといった音である。DM70やDM6などの大型システムから、この4のようなコンパクトなものまで、一貫したポリシーをもっているが、他社製品との価格比較の上からすると、断然、生彩を放つのが、このシステムだ。クラシック・ファンにはとくに推めたい家庭用のさりげない優秀品。

B&W DM70

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 音質は二の次。インテリア重視型として、モダンなリビングルームの引立て役に生かすべきスピーカーだろう。当然、ウォルナット仕上げよりも白色塗装の方にメリットがある。

B&W D5

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 小型だから適当に色づけするというのではなく、ごくオーソドックスに、特性本位に作られた本格的な製品。たいそう品位の高い、艶のある繊細・緻密な音色は非常に魅力がある。

B&W DM2

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 中低域の厚みをむしろ抑えこみ、中高域で線の細い光沢を持たせるというイギリス系のひとつ前のゼネレイションの音色だが、クラシック系で独特のプレゼンスを聴かせる。

B&W DM4

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 タンバーグ2510の音をもう少し肉づき良くしたような音だが、共にオーソドックスに特性を追求して作られた製品で、音楽を生き生きと、瑞々しい美しさで聴き惚れさせる。