Category Archives: コッター/ベリオン

コッター Mark2/TypeL

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 低インピーダンス専用で、同社の他のモデルとはトランスが異なった仕様だ。
 聴感上では、トランスとしてはワイドレンジ型で、豊かな低域をベースに、適度に緻密で安定したトランス独特の魅力がある。全体に従来より幾らか穏やかになった印象のタイプP/PP/Sに比較して、クォリティの高さは格段に優れる。
 MC20IIは、暖色系の柔らかく豊かな低域をベースとした美しい音を聴かせる。この音は、ハイファイというよりは音楽を長時間聴くに相応しいタイプで、独特の抑えた光沢はコッターならではの魅力だろう。
 FR7fにすると帯域も一段と広く、力強く伸びやかな分解能が優れた音になる。音源は少し遠いが、カートリッジの性能差をかなり明瞭に聴かせるのは見事。

コッター Mark2/TypeP, Mark2/TypePP, Mark2/TypeS

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 タイプPがオルトフォンなどの低インピーダンス用、タイプPPがEMT用、それにタイプSがデンオンなどの高インピーダンス用となっている。基本トランスは完全に同じもので、トランスの多重巻線の接続を変更して使用を変えているために、3タイプ間の変換は後からでも可能である。
 タイプPにはMC20IIを使う。聴感上のf特は高域と低域をわずかに抑えた、トランスとしては標準的なタイプだ。柔らかに低域は安定感があり、中高域に独特のわずかのキラメキがある。音の分離は優れるが、ソーによれば今一歩の印象もある。音色はほぼニュートラルで、各プログラムを平均してそれなりのクォリティで聴かせる。
 タイプPPにはTSD15を使う。スケールが大きく、暖色系の豊かな音で、適度にスムーズさをもつが、TSDの本来の音を少し滑らかに角をとって聴かせるタイプである。
 タイプSにはDL305を組み合わせる。ナチュラルに伸びたf特と、耳あたりがよく抑えた光沢を感じさせる音は、大変にキレイであるが、峰純子は少しマイルドになりすぎ、カシオペアもムード音楽的になる。試みにMC20IIを使ったが、総合的にこれがベストである。