Category Archives: シャープ/オプトニカ/ガウス・オプトニカ

オプトニカ SM-D7

瀬川冬樹

ステレオサウンド 57号(1980年12月発行)
特集・「いまいちばんいいアンプを選ぶ 最新34機種のプリメインアンプ・テスト」より

●総合的な音質 かなり独特の個性的な音を聴かせるアンプである。ひと言でいうと、鳴ってくる音がやや遠い感じ、いい換えれば音全体に一種独特の響きがつきながら、中高域以上の音源が遠のくという印象を与える。したがって音源がスピーカーのかなり奥にあるような、あるいはすべての音楽をホールで聴く感じに鳴らすという点がいささか独特。シェフィールドの「ニュー・ベイビィ」のような眼前で鳴る感じのスタジオ録音をも前述のような感じで聴かせるのが実に不思議だ。
●カートリッジへの適応性 オルトフォンVMS30/IIの場合は、カートリッジ自体の音がソフトかつヨーロッパのカートリッジ独特のやや音源を奥に感じさせる性格との相乗効果で、かなり音源が遠のく。エムパイア4000DIIIの場合にも、このカートリッジの得意とする新しいポップミュージックの、乾いた前に出る音が、総じて奥行きを伴った響きがついてしまうため、必ずしも十分楽しめるとはいいにくい。エラック794Eのように高域がしゃくれ上ったカートリッジでは、高域の強調感およびレコードの傷んで歪んだ部分をひろい上げる性質を強調する傾向があるため、録音の古いレコード、傷んだレコードを楽しむには不向き。
 MCポジションでの音質は、オルトフォンMC30の場合、アンプの基本的な音質を相乗効果的に重ねた印象で、ひと言でいえば荘重な音。いいかえれば、重々しく、ラウドネススイッチを入れたままのような、一種独特の音がし、高域にかけては甘く、音源を遠ざける感じがして、独特な音に仕上る。外附のトランスにした場合は、中~高域に関しては音の鮮明さが増す反面、ラウドネスを入れたままのような感じはそのまま変らず、全体的な印象が大幅に変わるとはいいにくい。デンオンDL303の場合には、カートリッジの低域の細い感じをやや補うのはメリットだろう。総合的なバランスは整うものの、DL303独特のベールをはいだような繊細感は柔らげられてしまう。あらゆるカートリッジを、このアンプ独特の音色で一色に聴かせる傾向がある。
●スピーカーへの適応性 本質的にかなり異色の音質なため、620Bカスタムがアルテックらしからぬ音で鳴るのが面白い。スピーカーとマッチングはやや難しいタイプといえそうだ。
●ファンクションおよび操作性 オペレーションスイッチをゆっくり操作すると音が途切れるので、す速く操作する必要がある。他のスイッチ類は、ボリュウムを上げたまま操作しても、ノイズはよく抑えられている。また、フォノ聴取時のチューナーから音洩れも全くなく、優秀。なお、サブソニックフィルターはオペレーションスイッチをストレートDCの位置にすると利かないので、注意が必要。
●総合的に この価格帯の中では、やや異色の存在ということができる。このクラス唯一の100Wの大パワーは、メリットになるだろう。

チェックリスト
1. MMポジションでのノイズ:小
2. MCポジションでのノイズ:中
3. MCポジションでのノイズでの音質(DL-303の場合):2-
4. MCポジションでのノイズでの音質(MC30の場合):1-
5. TUNERの音洩れ:なし
6. ヘッドフォン端子での音質:1
7. スピーカーの特性を生かすか:1
8. ファンクションスイッチのフィーリング:2
9. ACプラグの極性による音の差:大

オプトニカ SO-9, SX-9

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 SO9は、昨年秋のオーディオフェアで発表された、全増幅段をすべてFET構成にしたコントロールアンプだ。
 薄型のプロポーションにまとめられたパネルフェイスは、コントロールアンプというイメージよりは、最近のFMチューナーのようにカラフルにデザインされ、このところヨーロッパで一つの傾向として受入れられている各種のカラーで照明された、華やかで軽快なデザイン傾向と共通点が感じられる。
 構成は、MCヘッドアンプ、イコライザー、トーンコントロールアンプの3段構成で、全段FET使用のDC構成が目立つ。機能は、表示ランプ付のPHONO2カートリッジ負荷抵抗切替、モード切替、テープモニター、高・低フィルター、ラウドネスなどの他、一般のゴム脚部分がプレーヤーシステムのインシュレーターと同様に、高さ調整可能であるのがユニークだ。
 SX9はSO9とペアとなる全段FET構成の100W+100Wのステレオパワーアンプである。出力段のパワーMOS型FETは高域特性が優れスイッチング歪が無視できる特長があり、放熱器にはフレオンガス流体放熱器を使う。なお、電源部は左右独立型トロイダルトランスだ。パネルフェイスには、デジトロンパワーメーターと信号をグラフィックに見せるオーディオスペクトロアナライザーを備える。

オプトニカ CP-3

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 CP3は、この価格帯としては珍しい160ℓの大型エンクロージュアに、38cmウーファーを採用した3ウェイ構成のバスレフ型スピーカーシステムだ。
 38cmウーファーは、アルカライズド・プリヒート・ロウテンパレーチュア・プレス(APL)方式による高ヤング率、軽量コーンと、直径156mm磁石とポールに銅キャップ低歪処理をした磁気回路の組合せ。16cmフリーエッジ・コーン型スコーカーは2・8ℓのバックキャビティ付で、ウーファー同様のコルゲーション入りコーンと銅クラッド・アルミ線(CCAW)ボイスコイル、同じくメタルボイスコイルボビンを採用している。トゥイーターは、前面にスランド型音響レンズ付の口径5cmフリーエッジ・コーン型で、クロスオーバー周波数4kHzで使用。
 エンクロージュアはバスレフ型で、内容積160ℓ、システム重量41kgのスタジオモニターを連想させる大型4面仕上げである。ネットワークは音質対策をした部品による低損失設計で、各定数はヒアリングテストにより決定されたとのことだ。
 CP3は事実上はフロアー型サイズのシステムだが、4面仕上げのスタジオモニター的設計であるため、標準としている60cm角のアングルに乗せて使った。帯域バランスはスケールの大きい低域ベースの安定型で高域もスムーズ、音色も明るい。

ガウス・オプトニカ CP-3820

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 個々のサウンドのクォリティはかなり高いと思う。音のエネルギーの提示も、無理がなく、このましい。低い方の音も、適度にふくらむようなことなく、くっきりしまって、力を充分に感じさせる。❸のレコードでのバルツァのはった声が硬くならないあたりに、このスピーカーの実力のほどがしのばれるというべきかもしれない。ただ、音像は、いくぶん大きめだ。もし、音の風格というようなことでいうと、もう一歩みがきあげが必要のようだ。このスピーカーシステムの魅力ともいうべき独特の迫力を殺さず、全体としてのまとまりのよさを獲得するためには、使い手のそれなりの努力が必要だろう。また、その努力のかいがあるスピーカーシステムでもある。中域のはった、エネルギー感にみちた、このスピーカーシステムのきかせる音は、ちょっとほかではあじわえない、その意味では独自のものだ。

総合採点:7

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(ほどほど)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(好ましい)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(好ましい)

ガウス・オプトニカ CP-3820

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 ウーファーに関しては、JBLよりもガウスのほうがずっといい、という説が一部に流れている。たとえばベースのピッチカートで、音のこもる感じが少ない。歯切れがよくしかも量感がある。しかしその量感は、ガッツとか力という感じの、わかりやすい量感だ。それはおそらく、最近の、スタジオで創られるポップミュージックの低音を快く再生する音色なのだろう。反面、ポップス系でも、ウッドベースのナチュラルな胴のうなり、あるいはクラシックの、オーケストラの中でベース群の唱う感じ、を求めてみると、ここにはエレガントでしなやかな反応を望みたくなる。少なくとも私にはガウスの音からは、クラシックの音が想像しにくい。トゥイーターの領域ではいっそうそう。ハイエンドが伸びていないせいばかりでなく、トゥイーター自体の音色がやや個性が強く、弦のユニゾンのあのエレガントに漂う音を鳴らせない。ポピュラーの金管やパーカッションにはけっこう効果的であることはわかる。

総合採点:8

●9項目採点表
音域の広さ:8
バランス:8
質感:8
スケール感:9
ステレオエフェクト:8
耐入力・ダイナミックレンジ:9
音の魅力度:7
組合せ:普通
設置・調整:普通

ガウス・オプトニカ CP-3820

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 アメリカ・ガウスのユニットをオプトニカがまとめあげた日米合作製品。ヘビーデューティのウーファーとコンプレッション・ドライバーの2ウェイ2ユニット構成で、4面仕上げのバスレフ型エンクロージュアでの大型重量級システムだ。ガウスの強力なユニットで2ウェイとなると、先入観としては少々ナローレンジでガンガン迫ってくるような、押しつけがましい音を想像されるかもしれないが、実際は全く違う。確かに、いかようにも迫力ある再生は可能という力強さと、大音量再生の安定性はもっているが、その音は決して荒々しくもないし大味でもないのである。このスピーカーが最も苦手と思われるヴァイオリン・ソロにおいてすら、自然で美しい弦の魅力が聴かれたし、ピアノの細かいタッチの妙もよく再現された。周波数レンジの点では、比較すればともかくも、決してこれで高域の不満が出ることはないし、ジャズやロックの再生は他の追従を許さないといってよい鮮烈さと力感がある。欲をいえば高音と低音の柔軟さだ。

総合採点:9

オプトニカ SM-3510

菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 やる気十分の力作であることは一目でわかるし、コントロールした限りでは、技術的に攻め込んでいることもよくわかる。残留ノイズの少なさ、各種スイッチ類のショックもなく、トーン回路のオン・オフ時の音の変化もほとんどない。3トランスフォーマー・トロイダルと銘打つように、左右パワー電源、プリ電源を独立させるなど、大変な努力の跡はうかがえる。しかし、音質は、高域に浅薄な品の悪さがあってけばけばしい。パネルデザインのイメージもきらびやかなもので、心なしか、音のイメージと共通したものを感じさせる。これが、このメーカーの持つ個性的感性なのかしれないが、そうだとしたら、音楽の魅力の把み方の次元が少々低すぎはしないか。プリメインアンプとしては、かなりの高級品にランクされる製品だけに、もっと格調ある音の再現ができなければ不満である。表面的な繊細華麗さに止っている音であった。

オプトニカ SM-3510

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 とても派手やかに、にぎにぎしく鳴る音だ。それはパーカッションなど場合に、一種鮮烈な音で聴き手を驚かせる。そうしたいわばブライトな音の魅力というものがありうるが、しかしそれをひとつの武器としながら、弦や声のように潤いや緻密さや全域に亘る音色の統一やバランスを要求される音を鳴らすには、この音はややけばけばしすぎて違和感をおぼえる。輝きのある音をひとつの特徴あるいは個性として売るアンプがあっていい。またそういうアンプが、たとえばスピーカーやカートリッジの音の表情のやや乏しい場合に、うまい味つけをすることもある。が、いま鳴っている音は、それを特徴あるいは武器とするには、もうひとつリファインされていない。全体の構成や作り方には、メーカーの意欲と熱意が強く感じられるのだから、作り方の方向づけにピントが合いさえすればこれはかなりのアンプになる素質を持っていると思う。

シャープ ST-503J

瀬川冬樹

ステレオサウンド 18号(1971年3月発行)
特集・「FMチューナー最新33機種のテストリポート」より

 STT31の一段うえの製品で、AM/FMのバンドを上下に分けて、必要な帯域だけ照らし出すというデザインのポリシーは同様だが、31の方はAM/FMとも1コの同調ツマミで操作しているのに、こちらは高価なだけにFM、AMの同調ツマミがそれぞれ独立しているので、スイッチ切換えだけであらかじめ選局しておいたFM、AM各局を瞬間に選択できる点は、ビクターのMCT105と同様に機能上のひとつの特徴である。
 ダイアルスケールはSTT31とほぼ同じ10センチ強。文字の書体や大きさ、その配列はスッキリして明瞭である。赤い小さなスポットライトが、指針として黒バックの中に明快に浮かび上るが、ダイアル目盛とスポットがちょっと寄りすぎているようだ。
 メーターはチューニングとシグナルの二個。AMの場合は一方が消える。総じて、デザインの意図と仕上げとがうまくバランスして、破綻なくよくまとまっている。

シャープ STT-31

瀬川冬樹

ステレオサウンド 18号(1971年3月発行)
特集・「FMチューナー最新33機種のテストリポート」より

 シャープ製のチューナーは、今回二機種テストしたが、このSTT31ともうひとつのST503Jとは、型番のつけかたもデザインも別もののように違えてあるが、これは意識的にそうしたものだろうか。一方はオール・ブラックであり、こちらはアルミの地色を生かした白っぽいパネルである。ダイアル窓の位置やあり方には共通点がみられるが、STT31では、窓の四隅に丸みを持たせたやわらかいパターンに特徴がある。
 FMは上にAMは下に目盛られて、切換によって必要なバンドだけが照明されるので誤操作が避けられるのはうまい設計である。スケールの実効長は約9・5センチ。FMバンドは等間隔ではない。周波数を表わす数字が小さいことと、その下の明るい帯の中の目盛の刻みが細かすぎるために、読みとりに多少わずらわしさが感じられる。
 ダイアル指針はちょっと変っていて、小型計算尺のカーソルのような凸レンズが目盛の上を走るので、細かく刻まれた周波数目盛が大きく拡大されるわけだが、そういう構造を採用するにしては、目盛の精度がちょっとつり合わないのではないかと思う。しかし総体的にユニークな意匠だと云える。

シャープ RP-41, GS-5711

シャープのアナログプレーヤーRP41、システムコンポーネントGS5711の広告
(スイングジャーナル 1970年11月号掲載)

Sharp

シャープ CP-21, CP-31, CP-501J, SM-503J, STM-31, SA-604J, STT-31, ST-503J, RP-31

シャープのスピーカーシステムCP21、CP31、CP501J、プリメインアンプSM503J、STM31、レシーバーSA604J、チューナーSTT31、ST503J、アナログプレーヤーRP31の広告
(スイングジャーナル 1970年11月号掲載)

Sharp1

シャープ CP-31

瀬川冬樹

ステレオサウンド 16号(1970年9月発行)
特集・「スピーカーシステム最新53機種の試聴テスト」より

 まず外観だが、山水の格子のデザインをへたにモディファイしたような、まるでそっくり頂きのようなデザインを、こういうい大メーカーが平気で売るという神経は断じて納得できない。なるほど、細かくみれば格子のパターンも違うしキャビネットのディテールも違うのだから、意匠登録には牴触しないかもしれないが、こういう商売のセンスは、わたくしは嫌いだ。
 そういうことで印象を悪くしたが、そういう先入観で音を判断するような態度は、できるだけ避けたつもりだ。けれど、少なくとも各音域間の音のつながりのよくないこと、音域によって音の性格が変るところは、やはり具合がよくない。抑制が利かず、音が野放しに鳴るのに、低音が不足していて、バランスのとりかたにも再検討の要がありそうだ。

採点表
大編成:★★
小編成:★★
独奏:★★
声楽:★★★
音の品位:★★
音のバランス:★★
音域の広さ:★★★
能率:★★★
デザイン:★★
コストパフォーマンス:★★

シャープ GS-5711, RP-41

シャープのシステムコンポーネントGS5711、アナログプレーヤーRP41の広告
(スイングジャーナル 1970年7月号掲載)

Sharp

シャープ GS-5711, RP-41

シャープのシステムコンポーネントGS5711、アナログプレーヤーRP41の広告
(スイングジャーナル 1970年5月号掲載)

Sharp

シャープ STT-31

シャープのチューナーSTT31の広告
(ステレオ 1970年1月号掲載)

STT31

シャープ CP-21, CP-31, STM-31, STT-31, RP-31

シャープのスピーカーシステムCP21、CP31、プリメインアンプSTM31、チューナーSTT31、アナログプレーヤーRP31の広告
(スイングジャーナル 1969年11月号掲載)

Sharp

モジュラー・ステレオのすべて

菅野沖彦

スイングジャーナル 8月号(1968年7月発行)
「モジュラー・ステレオのすべて」より

 ステレオ装置はこりだしたらきりがない。入りこんだが最後、泥沼の世界だともいわれる。そして、このことはとりもなおさず、楽しく深い趣味の世界と、その醍醐味を暗示している。しかし、ここにもう一つ泥沼にめりこむことを好まないレコード愛好家にとって、便利で、高性能の本格的再生装置をという希望にかなったシステムがある。その名はモジュラー・ステレオ。小さな身体に秘めた底力、場所もとらないし、出費も10万円ていどで、ハイファイが楽しめるというわけだ。モジュラー・ステレオとはなにか? 現在店頭をにぎわしているこの新しいタイプのステレオ装置にスポットをあててみよう。
 このところメーカー製ステレオ装置の中でめだって多くなったのがモジュラー・タイプといわれる小型装置である。小型装置というと、17cmそこそこのターンテーブルにプラスティック製の短いアームのついた安価な装置と一緒にされる危険がある、が、これはそれとはちがう。アンプ、プレイヤー部を一つのキャビネットに収めてコンパクトにまとめてあって、しかも本格的なステレオ装置としての機能を犠牲にしてはいない。ターンテーブルの大きさも25cm以上、30cmのものが中心で、トーンアームはほとんどパイプアームの本格派、そしてムービング・マグネット・タイプのカートリッジ(もちろんダイヤ針)を備えている。クリスタルや半導体タイプも一部ある。
 アンプ部はFMマルチプレックス・チューナー付の総合アンプで、トランジスタライズドで小型になってはいるものの、パワーは片チャンネルで10ワット以上、中には30ワット+30ワットという大出カのものもある
 スピーカーは小型ボックスに16cmか20cmクラスのウーハー(低音用)を基礎に高音用トゥイーターを加えた2ウェイが圧倒的。
 これがモジュラー・タイプといわれる装置の特徴ということになるのだが、他のタイプとのはっきりした区別となると、決定的な条件が見つからない。ほぼ同じタイプのものの中にも、アンプとプレイヤー部を独立させたものがあるが、これはどうもモジュラーとは呼ばないらしいのである。
 もともとモジュラー・タイプというのは、これといった厳格な規格があるわけではなく、タイプという表現のようにきわめて大ざっばなスタイルの表現語にすぎないようだ。だからメーカーによってはモジュラーという言葉を使わず、ハイイコンパクトステレオとかブックシェルフ・ステレオそして、マイクロセバレート等々……その表現は各社各様である。

モジュラー・タイプの条件
 このようなわけで、モジュラー・タイプというのは技術的規格ではなく、デザイン上の問題として考えるべきであろう。そこで、一応、ここに扱うモジュラー・タイプの条件をあげると次のようになる。
①プレイヤーとアンプは一つのケースに組み込まれていること。
②ターンテーブルの直径が小さくても25cmあって、トーン・アームやカートリッジが3グラム以下の針圧で安定にトレースするようなものを備えていること。
③アンプは小型化に有利なトランジスタ式で、やや能率の低いスピーカーを駆動するのに十分なパワー(片チャンネル10ワット以上)のものであること。
④独立した1組のハイ・ファイ・スピーカー・システムを備えていること。
 ①の条件がモジュラーの最大条件であるが、この条件にはかなってももっと安価な、あまりにも普及型で性能の低いものもあるため②以下の条件を付加しておいた。もともとこのモジュラーという言葉は、単位、基準という意味の単語モジュラールをひねって作ったものだと思うからサイズや性能が同じようでもプレイヤーとアンプが一つにまとまっていないものはこの範ちゅうからはずれるわけだろう。
 さて、それでは、実際にこのモジュラー・タイプのステレオはどんな使用目的に適し、再生音はどうで、使い勝手はどうか、ということになるのだが、個々のメーカーの製品によってあまりにも差があって一概にはいえない。具体的にはそれぞれの製品の紹介にゆずるが、中でも共通していえることは、あまりうるさいことをいわなければ、現代人の生活のアクセサリーとしては実に手頃なもので、適度に、メカニカルな興味の対象としても満足させてくれる要素があるし、アクセサリーとしてもデザイン的にハンディにまとまっている。大がかりでとりとめのない化物のような再生装置とちがって、リヴィング・ルームの調和をくずさないし、「これから鳴ってやるから真正面に座って静聴すべし!」といった威嚇的なところがないのもいい。
 室内での置き方にもヴァラエティを作りやすいので、小さな部屋でもなんとか収めることもできるという利点はたしかにあるのだが、現実にかなり困ることが一つある。それは、プレイヤーとアンプの一体となった、装置の心臓部の奥行である。これは小さいもので37.4cm、大きいものでは50cmちかいものまである。これは本格的な大型ターンテーブルをそなえ、長いトーン・アームをつけさらにアンプが組込まれているところからくる必要寸法で、これを小さくしては本来の機能面で性能が低下する。そこで、実際に一般の家で幅はともかく、これだけの奥行をもった手頃な棚があるだろうか? 蓋を開けると後方へさらに5cmぐらい出るから棚の奥行は42〜55cmを必要とする。また、本体はフラットで背丈が低いから別に脚が用意されているものでなければ床へジカに置くわけにはいかない。そうかといって上蓋を開けてレコードを演奏するものだから高い整理ダンスなどの上に置いては使えない。机の上などが最適だが、大抵の机は、これを置いてしまうとスペースは残り少く机としての機能は死ぬ。このへんが実際の住宅事情にもう一つぴったりこないところのようで、買ったはいいが意外に置き場所に苦労するということになりかねない。前もってこのことを念頭に入れて置き場所をよく考えてから購入する必要がある。
 肝心の音は、良い装置、悪い装置がいろいろ入り乱れて店頭にあるから、よく聴いて判断しなければならない。大きさから想像する音よりはかなり良いのに驚ろかされるだろう。これがモジュラーの特長である。

各メーカーのモジュラー・ステレオ製品
●サンヨー
オットー1 DC-434カスタム 125,000円
オットー2 DC-534デラックス 84,900円
 サンヨーの意欲的製品で、モジュラーのブームをつくった代表製品といってよい。オットー1より2のほうがスピーカーも小さく、アンプも小型、価格も安い。しかし音のバランスは2が、スケールの大きな音では1のほうが上のようである。
●ナショナル
メカニシア1 SC-120 110,000円
メカニシア2 SC-130 85,000円
メカニシア3 SC-125R 120,000円
 ナショナルのモジュラーの3機種は、いずれも音のまとまりのいいもので、どちらかというと派手な音。
 2、1、3の順に価格が高くなる。メカニシア3は話題のソリッドステイト・カートリッジを採用している。回転速度自動切替方式というレコードをのせるだけで33と45の回転が変るというアイディア豊富な新機構もあるが、45RPM盤などの演奏にはかえって不便。キャビネット、メカの仕上など三機種ともに美しい
●ビクター MSL-8 88,500円
 初の半導体カートリッジ採用のモジュラー。大変聴きよい、快よい音で、音づくりのうまさはさすがである。デザイン、仕上もこのタイプ中最高のものだと思う。
●コロムビア CMS-100 129,800円
 モジュラーの高級品。大変ぜいたくな設計で、マニア向けの製品だといえる。しかし、ここまでくると、いっそ大型装置のほうに気が傾く。各部の仕様はプロ級である。
●シャープ
白馬 GS-5500 64,800円
白馬 デラックスGS-5600 84,500円
 GS-5500はモジュラーの中では普及型で、カートリッジがセラミック。それなりにうまくまとめられた音で、音楽を聴き流すのにはまったく不満がない。GS-5600はモジュラーとしては標準品。つまり本格派だ。軽いタッチの美しい音色はやや人工的に過ぎるのが惜しい。
●トリオ MT-35 81,00円
     MT-55 89,900円
 この二機種はスピーカー・システムが共通である。歯切れのよいシャープな音はやや刺戟的。しかしプレイヤー、アンプの本体は、さすがに専門メーカーらしい手馴れた仕上げでまとめられている。ホワイト・ブロンズ仕上の丈夫な脚が別売りされている。
●パイオニア C-600 104,900円
 デザイン、仕上が大変よく、もっともユニークな製品。プレイヤー部は優秀で信頼性が十分。ソフトな音はやや迫力に欠ける。音に厚味がたりないのが人によっては物足りないだろう。
●コーラル VS-3000 73,800円
 唯一のオートチェンジャーつきモジュラーで、音楽をBGM的に聴き流すのがねらいだろう。音はやや鈍重だが、それだけに難がない。耳障りな音ではないので楽しめる。

 以上寸評は、各社のショールームで製品をみた印象をメモしたのだが大きく分けて二つの行き方があるのが感じられた。一つは小型装置としての音づくりを意識的にまとめたもの、他はオーソドックスに各パーツの性能に頼って全体のまとめということを意識的にはしていない傾向の製品である。前者を一般的とすれば、後者はマニア向きということになるだろう。前者の代表としてサンヨー、ビクターの製品が特に印象に残ったし、後者に属するものではトリオ、パイオニアの製品がよかった。

シャープ GS-5500, GS-5800

シャープのシステムコンポーネントGS5500、GS5800の広告
(モダン・ジャズ読本 ’68 1967年10月増刊号掲載)

Sharp

シャープ GS-5500, GS-5800

シャープのシステムコンポーネントGS5500、GS5800の広告
(スイングジャーナル 1967年11月号掲載)

GS5550

シャープ GS-5600

シャープのシステムコンポーネントGS5600の広告
(ステレオ 1967年9月号掲載)

Sharp1

シャープ RD-708

シャープのオープンリールデッキRD708の広告
(スイングジャーナル 1967年8月号掲載)

sharp

シャープ GS-5600

シャープのシステムコンポーネントGS5600の広告
(スイングジャーナル 1967年5号掲載)

Sharp