Category Archives: ナカミチ/フィデラ

ナカミチ Dragon-CD + Dragon-DAC

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ナカミチでは、DRAGONのネーミングに特別な思い入れがあるようで、不可能なこと、無だなアプローチと片づけられるテーマに決定的解決法を手にし、世に送り出す製品に、この名称が与えられる。CD時代の現代にこの名機を復活させた製品が、DRAGON−CDとDRAGON−DACである。
 DRAGON−CDは、独自のミュージックバンクCD連装メカニズムを、エアータイト構造の筐体内部にフローティング懸架する振動遮断構造を実現したモデルで、独立した電源部に表示系が組み込まれている。この振動遮断方式は、空気振動、床振動、電磁誘導、高周波雑音など、すべての外乱をシャットオフする異例の構想を現実のものとした、まさにDRAGONの名称に値するものだ。
 DRAGON−DACは、DRAGON−CDの電源部を共用し、そのディジタル出力端子専用の唯一無二のパートナー、とナカミチが表現するDAC。
 7枚のディスクを収納するミュージックバンク機構は、隣接ディスクに交換するのに2・5秒のクイックアクセスを誇り、ナチュラルで誇張感がなく清澄で、活き活きとした表現力のある音は、聴き込むほどに魅力的になるようだ。

ナカミチ

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ナカミチは、1958年に東京都豊島区で創立者・中道悦郎氏により設立された中道研究所からスタート。官公庁から研究開発を受託し、電子、電磁、音響機器などの研究開発を開始したのが、その第一歩である。
 ナカミチ・ブランドでの製品は、磁気ヘッドの開発に始まる。創業者が旧海軍技術将校で音好きであったことが一段と高じて、テープレコーダーの開発を手がけ、オープンリール型の、国内では「フィデラ」というブランドのタテ置型の小さなモデルを完成。一方では海外向けOEM製品も手がけ、フィッシャーやハーマンカードンに、テープメカニズムや磁気ヘッドを供給していた。
 その後、オイルショックや日本の大手メーカーが本格的に米国進出を始めてOEMが低調化した頃、現社長の中道仁郎氏が、世界初の3ヘッド方式カセットデッキ♯1000を自らの手で開発。アメリカで当時1000ドルの超高級カセットデッキとして発売したのが、後に超高性能カセットデッキとしてカセットの王座に君臨した1000シリーズのスタートである。続いて同じ年に、手動アジマス調整機構付の、1000とはデザインを一新してヨーロッパ調にした700、’74年にポータブル型550、’75年に傾斜型のミキサーアンプ調2ヘッド型600が製品化された。そしてアメリカ市場でも高級カセットデッキが認められるようになり、国内でもその優れた性能と音質により、カセットデッキをハイファイ機器として定着させた原動力は、ナカミチの音の魅力だといってよい。
 基本的に、純粋な技術集団的なところがあり、創業の原点である人のマネをしないベンチャー精神が、会社組織になってからも根強くあるようだ。不可能を可能にするナカミチならではのユニークな発想と、それを実現するだけの技術能力の高さがあることは、国内メーカーのなかでも異例の存在である。
 ’76年ごろからアンプ関係も製品に加わり、2ヘッド型の580、105W+105Wのレシーバー730、’79年にはハーフスピードを加えた680が発表された。そして高級カセットデッキの頂点を極めた1000IIの改良型、1000ZXLをトップモデルに、次いで700ZXLがラインナップされ、’82年には再生ヘッド自動アジマス調整、再生オートリバース型のDRAGONが登場する。
 この頃の製品でユニークなのは、’81年発売のディスクの偏芯を自動調整するTX1000アームレスプレーヤーで、これは後にDRAGON−CTに受け継がれた。
 一方アンプ関係も、’86年のステイシス回路採用のステレオパワーアンプPA50/70、プリアンプCA50/70、CDプレーヤーOMS50II/70IIが登場した。

ナカミチ PA-50

井上卓也

ステレオサウンド 84号(1987年9月発行)
特集・「50万円未満の価格帯のパワーアンプ26機種のパーソナルテスト」より

スムーズでキレイな音を指向した音だがバランス的には低域が不足気味で、坐りのよい安定感のある印象に欠けるようだ。プログラムソースは、全体に小さく表現し、それぞれの録音のキャラクターは素直に聴かせるだけのクォリティをもっている。太鼓の連打での立ち上がりの甘さは、電源部に起因するもののようで、問題がクリアーされれば、中域以上の質が高いだけに、かなり優れたアンプになりそうな印象が強い。

音質:73
魅力度:78

ナカミチ PA-70

井上卓也

ステレオサウンド 84号(1987年9月発行)
特集・「50万円未満の価格帯のパワーアンプ26機種のパーソナルテスト」より

音の粒子が滑らかで細く、線を細くキレイに聴かせるアンプである。レスポンスはナチュラルで強調感は少ないが、注意は少し薄く、音像は少し奥に引込んで定位する傾向がある。ウォームアップは、6曲目あたりで安定し、低域の質感も標準的になるが、豊かさは少し不足気味だ。プログラムソースでは、木管合奏のハモリが美しく、雰囲気よく聴かせる。質的には充分に高いだけに、密度感、力感が少し欲しく思われる。

音質:85
魅力度:86

ナカミチ OMS-50

井上卓也

ステレオサウンド 74号(1985年3月発行)
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」より

 ナカミチのオーディオは、1973年に世界初の完全独立3ヘッド構成を採用した超弩級カセットデッキ・モデル1000と700の開発という成果に見られるように、カセットデッキの高性能、高音質化で傑出した独自の世界を展開し、オリジナリティという意味で、海外でも独自の評価を得ている。その他のジャンルでも、高級レシーバーやセパレート型アンプでの独自の開発や、アナログプレーヤーシステムで未知の分野に挑戦した、ディスクのオフセンターと音質の相関性を追求した結果として開発したアブソリュート・センター・サーチ機構採用のシステムなど、ナカミチならではのオリジナリティのあるアプローチは類例のないものだと思われる。
 一方、デジタル関係でも、光磁気ディスクで録音・再生を可能としたシステムの開発に見られるように、時代の最先端を行くテクノロジーを誇っているが、今回、昨年のCDプレーヤー第1弾製品OMS70に続き、機能を簡略化したいわばスタンダードモデルとも考えられるOMS50が登場することになった。
 開発の基本コンセプトは、OMS70と同様に、デジタルサウンドという名のもとに加えられやすい音の色付けを拒否し、原音を完璧にトランスデュースするというナカミチの理念を追求したものとのことで、具体的には、回路構成の単純化、4倍オーバーサンプリング方式のデジタルフィルターとダブルDAコンバーター方式、アナログ回路全体を独立パッケージ化し、入出力端子のあるリアパネルに直付けしたダイレクトカップルド・リニアフェイズ・アナログシグナルプロセッサー方式などが特徴となっている。その他、ディスクドライブ機構を亜鉛合金ダイキャストシャーシーにマウントし、メインシャーシーやディスクローディング機構からスプリングによりフローティングし、内部のドライブメカニズムや電源トランスなどからの共鳴や共振、外部的な振動やスピーカーからの音圧などの影響を受け難い構造の採用などだ。その、いずれをとっても今回の採用が業界初というものではないが、これらをベースとして総合的に優れた音質のCDプレーヤーとするかに、ナカミチの総合力がかかっていると考えられるわけだ。
 CD独自の使用上のチェックポイントを確認してから音を聴く。ウォームアップは比較的に早く、ディスクが回転をはじめて約1分10秒で音が立上がる。さして広帯域型を意識させないナチュラルな帯域感と穏やかな表情で、落着いて音を聴かせる雰囲気は、ナカミチの高級カセットに一脈通じる印象である。デジタルらしい音をサラッと聴かせるタイプと比較すれば、味わいの深い音、というのが、このシステムの音であり、市場での反応が興味深いと思う。

ナカミチ DRAGON

ナカミチのカセットデッキDRAGONの広告
(オーディオアクセサリー 27号掲載)

nakamichi

ナカミチ 1000ZXL Limited

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 ナカミチの1000ZXLは、並はずれた驚異的な音質とコンピューター制御の多機能さで、現時点でのカセットデッキの究極の姿を示す、スーパーカセットデッキとして、まさにカセットデッキの王者の位置づけに君臨する製品である。今回、この1000ZXLをベースとして、ゴールドパネルに代表される外観のみならず、内部機構及びエレクトロニクス系を厳しく追求しブラッシュアップした新製品、1000ZXLリミテッドが限定、受注生産で発売されることになった。
 主な改良点は、テープ走行系メカニズムでは、フライホイールを1000ZXLの鉄製からより比重の大きい黄銅棒材削り出しとし、フライホイール効果を増大させ走行性の安定化とフラッターの抑制を向上させるとともに、回転系支持アルミシャーシの表面にブラックアルマイト処理を施し振動吸収効果を高めている。また、ヘッドは独自のクリスタロイヘッドの特別選別品を採用し、シールドケースには外来雑音の除去と相互干渉をなくする目的で金メッキ処理が施されている。また、メインシャーシもブラッククロメイト処理で、耐蝕性を向上している点も見逃せない。
 エレクトロニクス系は、電源ブロックのヒートシンクが銅板金メッキ処理となり、接触抵抗、熟抵抗、電気抵抗を低減しリップルを抑えるとともに電源効率を高めている。また、回路接続用コネクター類はすべて金メッキ処理で、性能向上と長期間にわたる安定度を保証している。
 なお、本機にはドルピーCタイプノイズリダクションユニットNR100が標準付属だが、これはブラックパネルの一般モデルである。
 1000ZXLとの一対比較試聴での結果は、リミテッドのテープヒスの量が一段と少なく、質的にもピーク成分が抑えられているのが明瞭な両者の差だ。音の粒子は一段と細かく、滑らかに磨かれており、低域から中低域のまろやかで豊かな印象と中高域から高域のナチュラルでありながら分解能の高さは、1000ZXLの音がやや線が太く、硬質のメリハリ型のサウンドに感じられるほどである。このクラスの重量級デッキでは、設置する置き台を強固なものにしないと本来の緻密な高クォリティの特長が出ないため、注意が必要である。

ナカミチ Nakamichi 1000ZXL

菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 カセットデッキの最高峰といってよい、ナカミチらしい力作である。マイク/ライン録音にあらゆる面から対処し、テープへのバイアス、イクォライザー、レベルは、マイコンにより全自動化されている。マニュアルでは、イクォライザー2段、バイアス3段切換えだ。録音15曲のコーディング、再生30曲のメモリー選曲、タイマー、ピッチコントロールなど至れり尽くせりの高性能デッキで、まさにカセットのリファレンスにふさわしい。

ナカミチ 580M, 581, 582

ナカミチのカセットデッキ580M、581、582の広告
(スイングジャーナル 1981年2月号掲載)

Nakamichi

ナカミチ Nakamichi 1000ZXL

井上卓也

ステレオサウンド 57号(1980年12月発行)
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」より

 カセットデッキは、現在ではオーディオコンポーネントシステムに不可欠の存在となった。一部ではデッキ中心のコンポーネントシステムが愛用され、いわゆるカセット時代が到来し、その性能、音質ともにハイファイのプログラムソースとして充分に使えるだけに成長を遂げている。
 このカセットデッキが、オーディオのプログラムソースとして、あれほどの小型なカセットハーフと低速度ながら素晴らしい将来性を持つことを最初に印象づけたのは、昭和48年に発売されたナカミチ1000が登場したときであった。
 カセットデッキとしては異例に巨大な業務用ラックマウントサイズのパネルを採用した1000は、たしかに価格的にも異例なほど高価格な製品ではあったが、ダブルキャプスタン・スタガ一方式の走行系メカニズムとパーマロイ系のスーパーアロイを採用した独立3ヘッド構成をベースに、独自のヘッドアジマス調整機構、ユニークな3チャンネルマイクアンプ、リミッター機構などを備え、驚異的な性能と音質により聴く人を唖然とさせたことは、現在でも鮮烈な印象として残っている。
 当時、オープンリールを超した性能と音質といわれたが、確かに、3モーター・3ヘッド構成の2トラック19cm/secのデッキとの比較試聴でも、誰にも明瞭に聴き取れる優れた音質を1000は聴かせてくれた。
 それから4年後に発展、改良して登場した1000IIは、テープの多様化に対応してバイアスとイコライザー単独切替、アタックタイムを早くし、従来の−20〜+3dBから−40〜+10dBにレンジを拡大したピークレベルメーター、走行系の操作ボタンが機械的な押ボタン型から電気的なタッチセンサーに改良されるなどをはじめ、巻本的な走行系の中間プーリーの改良、耐久性を向上したスーパーアロイヘッド改良のステイブルレスポンスヘッド採用などかなり大幅な変更を受けた結果、聴感上でもよりナチュラルに伸びたワイドレンジ感と分解能の向上として聴きとれ、その内容が一段とリファインされた。
 しかし、時代背景として各社の開発競争の激化、とくに中級機から普及機ランクでの性能、音質が急激に発展し、高性能テープの登場とあいまって、1000が登場した当時ほどの格差は実感的に感じられなかった。世界最高のカセットデッキとしての座は不動のものではあったが、この第2世代の王者は完成度が高まった内容を持ちながら、印象度としてはさほど強烈なものではなく、いわば、安定政権とでもいった存在であったと思う。
 昭和53年になるとメタルテープの実用化が発表され、カセットデッキは激しい動乱の時代に突入し再スタートを強いられることになった。メタルテープの実用化に先だち、海外テープメーカーとも密接な関係をもつナカミチでは、早くからメタル対応モデルの開発が行なわれており、メタル対応デッキの技術開発は発表されていた。しかし、製品化はメーカーとしては比較的遅く、かつての1000の登場当時に似た、いかにもナカミチらしい凄さを感じさせた製品の登場は、1000IIのメタル対応機ではなくそれまでの500シリーズと700の中間を埋める位置づけにある680であった。
 この680の優れた性能とクリアーで抜けきった鮮明な音質は、またもやメタルテープ時代での新しいナカミチの独自の魅力を聴く人に印象づけた。680は、短期間のうちに自動アジマス調整機構を新採用した680ZXに発展し、670ZX、660ZXとでシリーズ製品を形成する。
 この時点から1000IIのメタル対応機の登場は時間の問題として噂され、すでに限界とも感じられる680ZXに、どれだけの格差をつけて登場するかが話題であった。
 今回、ベールを脱いで登場した1000ZXLは、第3世代のカセットデッキの王者の座に相応しい見事な製品である。
 フロントパネルのデザインは一新され、外形寸法的には、1000IIにくらべ高さが40mm低く、奥行きが103mm深くなり、重量は17kgから19kgとなった。ディスプレイ関係は大幅に充実し、相口径の操作ボタンがカラフルに照明され、全体に華やかな印象となったが、もっとも大きい変更点はカセットリッドで、テープが左から右に走行する標準型のタイプとなり、テープ残量が視覚的に確認できるようになったことだ。
 内容は完全に一新され、現時点での世界最高級機たるべく電子制御回路が多用されているのが特長である。代表的なABLE(アジマス・バイアス・レベル・イコライザー)機構は、8ビットのマイコンを使い、自動調整されたテープは−20dBの録音レベルで20Hz〜20kHz±0・75dB、18Hz〜25kHzで±3dBの特性となる超高精度の自動キャリブレーション機構である。また、最適MOLバランスにバイアスが調整される特長があり、手動でOVERとUNDERに切替可能だ。調整データはメモリー機構により、ノイズリダクションの情報を含みメモリー可能である。
 その他新しく5Hzの信号を使う30曲自動選曲、15ポイントコード化可能のRAMM、デジタルテープカウンターをはじめ、パラメトリック消去方式、共振拡散型走行系、クリスタロイ独立3ヘッドなどが特長である。
 1000ZXLは、異例に豊かで深々とした低域をベースとしたスケールの雄大な音である。これと比較すると、さしもの680ZXも大人と小人の対比にすぎず、またもナカミチはカセットの限界を一段と拡大した。

ナカミチ Nakamichi 680ZX

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 独立3ヘッド構成、クローズドループ2キャプスタン型の走行系に、世界初の自動アジマス調整機構をビルトインした半速を含めた2スピード型の高級機。ヘッドは半速で15kHzを保証可能な独自のタイプで、並のデッキの標準速度に匹敵する音を聴かせる。2速度型のキューイング、自動選曲など機能も充実し、現代デッキの頂点に立つデッキである。

ナカミチ Nakamichi 680ZX

井上卓也

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 昨年、480、580、600ZXシリーズと3シリーズの新製品群を一挙に発表し注目を集めたナカミチの事実上のトップモデルの製品が、この680ZXである。各シリーズともに、テープトランスポート系のメカニズムは新開発のデュアルキャプスタン方式で、テープのたるみ自動除去機構付。カセットハーフ側のテープパッドをメカニズムにより押し、テープパッドなしに使う独自の構想により設計されたタイプである。600ZXシリーズは、再生ヘッドの自動アジマス調整機構を備えるのが他のシリーズにない特長であり、なかでも680ZXは、テープ速度が半速を含む2段切替型であるのが目立つ点だ。
 600ZXシリーズは、他のナカミチのシリーズとは型番と機能の相関性が異なり、660ZXは録音・再生独立ヘッド採用で、アンプ系が録音・再生兼用型で、670ZXが独立3ヘッドの標準型である。
 型番末尾のZXは、自動アジマス調整付の意味で、内蔵発振器を使いキャリブレーション時には録音ヘッドアジマス(垂直角度)をモーター駆動で自動調整をし、20kHzをこす周波数特性をギャランティするユニークなメカニズムを装備している。この機構は、カセットハーフの機械的強度のバラツキによる特性劣化を補償できるメリットをもつ。とくに、半速で15kHzという高域特性を確保するために不可欠のものだ。
テープトランスポート系は、2モーター方式フルロジック型の操作系と周波数分散型ダブルキャプスタン方式に特長がある。ヘッドは、録音、再生独立型で、独自のクリスタロイを磁性材料に使い、再生ヘッドギャップは、標準速度で30kHzをクリアーさせるため0・6ミクロンと狭い。
 アンプ系はDC録音アンプ、ダブルNF回路を採用し、メタルテープのダイナミックレンジを十分にクリアーする性能を備える。機能面では、ピーク・VU、キャリブレーションなど多用途ワイドスケール蛍光ディスプレイ、18曲までの自動頭出し機構、2速度に切替わるキューイング機構、ピッチコントロール、REC・MUTE、マスターボリュウム、3種類のテープに対し、標準速度と半速にそれぞれ左右独立した感度調整機構を備えた性能と機能を両立させた特長があるが、マイクアンプは省略された。
 680ZXにメタル、コバルト、LHの各社のテープを組み合わせて使用してみる。走行系の安定度は抜群に優れ、ヘッドを含みアンプ系のマージンが十分にある。メタルテープ使用では、ドルビーレベルを0dBとしたレベルメーターのフルスケールまで録音レベルを上げても、さして破綻を示さない。デッキの性質は、粒立ちがクリアーで緻密さのあるやや寒色系の音で、帯域感は広くスッキリとしたクォリティの高い音である。ドルビー使用の半速でもコバルト系テープで必要にして十分なクォリティが得られ、並のデッキ標準速度に匹敵する。かなり厳しいディスクファンの耳にもこのデッキ音は、余裕をもって答えられるだけの見事なクォリティをもつ。

ナカミチ 680ZX, 670ZX, 660ZX

ナカミチのカセットデッキ680ZX、670ZX、660ZXの広告
(モダン・ジャズ読本 ’80掲載)

Nakamichi

ナカミチ Nakamichi 730

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

レシーバーのあり方に一石を投じたユニークな外観。性能もよい。

ナカミチ Nakamichi 600II

菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

キャリアの生きた充実した内容と独創的なデザインが魅力。

ナカミチ Nakamichi 730

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

全タッチコントロールを導入し見事にまとめ上げた実力の高さは抜群。

ナカミチ Nakamichi 700II

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 カセットデッキに情熱をかける専門メーカー、ナカミチの姿勢と実績は、実に立派だと思う。発売される製品の一つ一つが、この社ならではの独創性と、必然性をもったもので、他社の製品とは一見して異なるオリジナリティを持っている。そのナカミチのデッキの中でのトップモデルは1000II、それをよりコンベンショナルなものにした700IIだが、最高性能のカセットデッキにちがいない。カセットの性能向上に刺激にもなった。

ナカミチ Nakamichi 420

井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 410と同サイズにまとめられたパワーアンプでフロントパネルがヒートシンクを兼ねたコンストラクションをもっている。パワー段は、正と負の信号の対称性を重視して特殊なコンプリートミラー型プッシュプル方式と呼ばれる新回路が採用されている。パワーアンプは、小型のブロック化され、左右チャンネル独立しており、チャンネル間の干渉を防ぐ機構が見られる。パワーは、50W+50Wだが、パワーアップの要求のためには、別売のBA100が用意されており、ブリッジ接続で、120Wのモノアンプにできる。なお、この場合には2台の420が必要なことは当然である。

ナカミチ Nakamichi 410

井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 カセットの高級メーカーとして定評があるナカミチからは、すでに、カセットデッキを含めて、テープデッキの機能を活かすプランでまとめられた、ユニークな600シリーズのセパレート型アンプが発売されているが、今回は、この600シリーズにつづいて、400シリーズのコントロールアンプ Nakamichi 410とパワーアンプ Nakamichi 420が発売されることになった。新シリーズはアンプの物理的特性を極限まで追求するポリシーでつくられた600シリーズの設計思想を受継いだ、いわば、ジュニアシリーズとも考えられる製品である。
 600シリーズのコントロールアンプ610が、一般のコントロールアンプというよりは、ライン専用カセットデッキという思い切ったプランでつくられた、600のミキサーアンプにフォノイコライザーを加えたような、テープ志向が強く出た、ユニークなモデルであることにくらべれば、この410は、610からミキサー機能を取除いたと考えられる、いわゆるコントロールアンプらしいモデルである。
 薄型のプロポーションをもつフロントパネルには、ほぼ中央にプッシュボタン型の4系統の入力をセレクトする入力切替、1系統のテープ入出力切替、トーンディフィート、ステレオ・モノ切替、それに、サブソニックフィルターがあり、左側には、高音と低音のトーンコントロール、右側には同軸型の音量とバランス調整、連続可変のコンター、つまり、ラウドネスコントロールがあるが、機能的に、よく整理されているため、操作性がよく、視覚的にもスッキリとまとめられている。
 内容面は、イコライザー段に差動アンプを使用しない、トリプルトランジスターサーキットと呼ばれる特殊回路を採用し、入力換算雑音を−140dBまで下げてあるのが特長である。イコライザー段、トーンコントロール段、フラットアンプなどは、それぞれ独立したエポキシ系のプリント基板に分割してユニットアンプ的手法が採用されており、電源トランスは、磁束のリーケージを抑えるためトロイダル型オリエントコアを使っている。

ナカミチ Nakamichi 1000, Nakamichi 700

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 テープデッキ関係はいうに及ばず、ディスクを中心とする、いわゆるコンポーネントシステムでも、カセットデッキなしでは何事も語れないともいえるほど、カセットデッキは普及し、ラジオカセットやモノーラルの小型レコーダーまでを含めれば、もはやカセットは、オーディオではなく、日用品となったといってもよいであろう。
 この数多くのカセットデッキやテープレコーダーの頂点に立つものが、ナカミチ1000である。ことオーディオコンポーネントの分野に限っても、カセットデッキの極限に挑戦し、市販のオープンリール38センチ・2トラックデッキに迫り、追抜く、性能と音をもつといわれたこのモデルの存在は、それだけでも大変に素晴らしいことであるし、その性能の高さと音質の良さが、カセットデッキが、オーディオのプログラムソースとして使用可能であると、それまで不信感のあった無数のユーザーの信頼を得ることができ、数多くのメーカーを刺激して、今日のカセットデッキ全盛の時代を招いた原動力になっていると思う。
 録音モニター可能な3ヘッド構成、ワンタッチで軽快に作動するテープ走行系のコントロールボタン、センターチャンネルマイク、ドルビーをはじめとするノイズリダクションやリミッター類といった機能に加えて、ヘッドアジマス調整用の発信器と、LEDを使う調整チェック装置など、テープを使うユーザー心理を見抜いた卓越した設計が随所に見られる。やはり、世界の高級ファンにこの高価格をもちながら認められ、愛用されているのは、まさしくこのデッキの実力以外の何ものでもない。
 700は、基本型を1000に置き、デザインを変えて、コストダウンしたデッキである。ナカミチとしては第2位にランクされるモデルであるが、カセットデッキとしては、文字通り高級デッキであることに変わりはなく、価格を考えての実質的な魅力は、一般的には700のほうが、むしろ多いはずである。

ナカミチ Nakamichi 1000

菅野沖彦

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 最高級カセットデッキで、カセットの規格のもつ限界を、そのメカニズムとエレクトロニクスの追求で窮められた製品。プロ用としての内容と規格をもった魅力あるデッキ。

ナカミチ Nakamichi 700

菅野沖彦

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 ヴァーチカル・セットの高級デッキで、ユニークなデザイン、仕上げも美しい。独立の3ヘッド構成で、調整範囲も大きく、マニアが本格的デッキとして使いこなすべき製品。

ナカミチ Nakamichi 700

岩崎千明

ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)
特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より

 あとでローウィのデザインと聞いて、やっぱりそうかと思い、半面少々ガッカリもした。日本人ばなれしたデザインは日本人ではなかったのだ。カセットというイメージ、いやテープデッキというイメージをこのデザインからはとうてい感じられない斬新で現代的なセンスだ。
 サウンドは、カセットにありがちな、力不足の不安のないガッツのあるダイナミックなサウンドがなによりも魅力だ。

フィデラ 720, 780, 807, 860

フィデラのオープンリールデッキ720、780、807、860の広告
(モダン・ジャズ百科 1966年3月号掲載)

FIDELA