Category Archives: ヘッドフォン

ビクター HP-550

岩崎千明

週刊FM No.17(1976年発行)
「私の手にした新製品」より

 ヘッドフォンを愛用するファンも増し、誰もが使用するチャンスが頻繁になってきた。ヘッドフォンに対する要求も「軽く手使いよく」「音がはっきり聴こえる」。その上に「力強い迫力」までも、スピーカーなみに求められるこの頃のことだ。新型ヘッドフォンとなると、こうした時代の流れに応じた諸条件がアピールされることになる。ビクターのHP−550もこうした時代に敏感な新型ヘッドフォンだ。
 たいへん軽いうえに、頭に装着した感じは、帽子をかぶるよりも楽なほどだ。密閉型というけれど、耳をおさえつける圧迫感もなければ、うっとうしさもない。頭にちょんと乗せた、という感じぐらいで楽だ。それでいて、音だけは、かなりガンガンと力強く明快に鳴ってくれる。どちらかというと品の良さよりパワー感が、はっきりと感じられ、スッキりというよりガッチリと聴かせてくれる。こういう密閉型では一般に低音感が薄っぺらになるが、そうした欠点はなく、力強くロー・エンドまで伸びている。ただ、少しばかり鳴り過ぎという感じが残るけれど、メーカーのいう通り、打楽器のガッツ・サウンドは目ざましい。これで中域から高域までに品の良さが加われば、と望むのは価格から考えるとぜいたくというもの。感度も高く、使い方は自由。音もスッキリ、といいことずくめ。最近のヘッドフォンがカッコよさに気を使う新型が多い中で実用・実質主義実力型だ。

ソニー MDR-R10

菅野沖彦

ステレオサウンド 130号(1999年3月発行)
「いま聴きたい魅惑のコンポーネント特選70機種」より

 環境さえ許されるのならヘッドフォンを常用することは薦めない。ヘッドフォン・ステレオは、スピーカーによる空間を介在させて聴く自然さに欠けるからである。そのかわり、室内空間が持つ固有の音響現象による悪影響がない利点がある。私がヘッドフォンを使うのは、条件が限られた録音のモニターとしてか、スピーカーの置かれた室内の音響条件の影響を回避して、プログラムソースそのもののバランスをトータルにマクロ的に確認したい時である。そうは言っても、譬えスピーカーシステムよりヘッドフォンのほうがバランスのいいものが多いとしても、何でもいいわけではない。ある意味では、限られたサイズと、音源が鼓膜から至近距離にあるという特殊な条件のもとでバランスを取るということには、設計製造上、また別の難しさがある。肉体に直接密着させるものだけに、スピーカーとは違う配慮も必要である。スピーカーのコーンやダイアフラムと呼ばれる振動体には、材質の持つスティフネスやロス、そして比重といったような固有の物性が、音の質感にデリケートだが重要な影響として現われることがよく知られているが、ヘッドフォンについても例外ではない。いや、むしろ耳もとで振動するものであるだけに、より敏感に音のタッチ、風合いといった質感が感知されると言ってもいいだろう。
 こうしたことにこだわり抜いて作られたのが、このソニーのMDR-R10という高級かつ高価格のヘッドフォンである。バイオセルロースの振動膜、響きがよくて軽量な、樹齢200年以上の樫材のハウジングを使うという徹底ぶりだが、価格が3300種近くある同種製品中の最高のものであろうと思われる。発売以来10年以上経つと思うが、その音質の良さとバランスの良さは抜群であり、物としても作り手の気概が感じられるヘッドフォンの逸品である。

ゼンハイザー HD580, HE60, HEV70, HD320, HD330, HD340

ゼンハイザーのヘッドフォンHD580、HE60、HEV70(専用アダプター)、HD320、HD330。HD340の広告(輸入元:ゼネラル通商)
(サウンドレコパル 1994年夏号掲載)

ゼンハイザー

スタックス SR-ΛPro + SRM-1/MK2Pro、AKG K240DF

菅野沖彦

ステレオサウンド 75号(1985年6月発行)

特集・「実力派コンポーネントの一対比較テスト 2×14」より

 本誌72号で私は、スタックスのSRΛプロとSRM1MK2というエレクトロスタティックヘッドフォンを〝とっておきの音〟として紹介した。そこで私が述べたことは、リスニングルームの影響を受けやすいスピーカーシステムのセッティングやバランス調整において、感覚の逸脱のブレーキとして役立つこのヘッドフォンの効用についてであった。詳しくは、72号を御参照願いたいが、質のよいヘッドフォンが、一つのリファレンスとして有効であることを再度強調したいのである。いくら、シンプルな伝送系で音の鮮度を保つのがよいとはいえ、部屋の欠陥をそのままにしてピーク・ディップによりバランスのくずれた音を平然と聴いているようでは困るのである。その調整が、部屋の音響特性の改善であれ、イコライザーによるコントロールであれ、音響特性の測定だけでは、まず絶対といってよいほど、音のバランスを整えることは無理である。一つの目安・判断の材料として測定は有効だし必要だが、仕上げは耳によるしかないというのが私の持論である。しかし、ここには大きな落し穴があって、不安定な情緒に支配されやすい人間のこと、測定データ以外に、実際の音のリファレンスがあることはたいへん便利である。その点、ヘッドフォンは、部屋の影響は皆無であり、必要帯域のバランスを聴きとるにはたいへん都合がよいのである。もちろん、ヘッドフォンとスピーカーとでは、その伝送原理が根本的にちがうので、何から何まで同じにすることは不可能であるし間違いでもあるが、音楽のスペクトラムバランスのリファレンスとしては充分に活用出来るのである。
 SRΛプロは、そうした意味で、ここ一年あまり、私の調整の聴感上のリファレンスとして活躍しているのである。また同時に、ヘッドフォン特有の効用で、これで音楽を楽しむのも面白いし、このヘッドフォンのトランジュントのよい、自然な音色は、その圧迫感のないハーフオープンの快さと相侯って、質のよいサウンドを聴かせてくれている。
 そしてごく最近、オーストリアのAKGから出たK240DFスタジオモニターという、ダイナミック型のヘッドフォンに出合い大いに興味をそそられている。このヘッドフォンは、まさに、私がSRΛブロを活用してきた考え方と共通するコンセプトに立って開発されたものだからである。K240DFのカタログに書かれている内容は、基本的に私のSRΛプロの記事内容に共通するものであるといってよい。ただ、ここでは、これを使って調整するのは、部屋やスピーカーではなく、録音のバランスそのものなのである。つまり、よく整った調整室といえども、現実にその音響特性はまちまちで、同じモニタースピーカーが置かれていてさえ、出る音のバランスが違うことは日常茶飯である。私なども、馴れないスタジオやコントロールルームで録音をする時には、いつもこの問題に悩まされる。便法として、自分の標準とするに足るテープをもっていき、そこのモニターで鳴らして、耳馴らしをするということをすることさえある。さもないと、往々にしてモニタ一にごまかされ、それが極端にアンバランスな場合は、その逆特性のバランスをもった録音をとってしまう危険性もある。
 K240DFは、こうした問題に対処すべく、ヘッドフォンでしかなし得ない標準化に挑戦したもので、IRT(Institute of Radio Technology)の提案によるスタジオ標準モニターヘッドフォンとして、ルームアクースティックの中でのスピーカーの音をも考慮して具体化されたものである。そして、その特性は平均的な部屋の条件までを加味した聴感のパターンに近いカーヴによっているのである。つまり、ただフラットなカーヴをもっているヘッドフォンではない。ダイヤフラムのコントロールから、イアーキヤビティを含めて、IRTの規格に厳格に収ったものだそうだ。そのカーヴは、多くの被験者の耳の中に小型マイクを挿入して測定されたデータをもとに最大公約数的なものとして決定されたものらしい。AKGによれば、このヘッドフォンは〝世界最小の録音調整室〟と呼ばれている。部屋の影響を受けないヘッドフォンだからこそ出来るという点で、私のSRΛプロの使い方と同じコンセプトである。
 録音というものは、周波数やエネルギーのバランスだけで決るものではないから、これをもって万能のモニターとするわけにはいかないが、最も重要な部分を標準化する効用として認めてよいものだと思う。ステレオの定位や左右奥行きの立体スケール、距離感などは、スピーカーのコンセプトでまちまちであり、これをバイノーラル的なヘッドフォンで代表させることには問題があるが、この件に関しては、ここでは書き切れない複雑なことなのである。
 しかし、このK240DFのコンセプトは、スタジオモニターとしてのヘッドフォンの特質をよく生かしたもので、私が、ことさら興味を引かれた理由である。
 そこで、この二つのヘッドフォンを比較試聴したのであるが、コンデンサー型のSRΛプロと、ダイナミックのK240DFとでは当然、音の質感に相違がある。
 SRΛプロの高域の繊細な質感は特有のもので、ダイナミック型を基準にすれば、ある種の音色をもっているとも感じられる。これはコンデンサーマイクロフォンにも共通した問題で、私個人の意見では、生の楽音を基準にすれば、どちらも同程度の音色の固有現象をもつものだと思うのである。ハーモニックス領域の再生はSRΛプロのほうがはるかにのびているが、これは、通常、音楽を聴く条件では空間減衰聴こえない領域ともいえる。コンデンサーマイクロフォンによって近距離で拾ったハーモニックスの再生が、よく聴こえすぎるために、高域に独特の質感を感じるものともいえるのである。この点、K240DFのほうは、最高域がおだやかで、空間減衰を含めたわれわれの楽音の印象に近いので、より自然だという印象にもなるだろう。低域もちがう。K240DFはシミュレーションカーヴのためか、たしかにスピーカーの音の印象に近く実在感のある低音である。SRΛプロは、風のように吹き抜ける低音感で、これが、また、スピーカーでは得られない魅力ともいえるのだ。ただ、やや低音のライヴネスが豊かに聴こえる傾向で、これはキャビティ形状などの構造によるものと思われる。
 しかし、両者におけるバランスのちがいは、スピーカー同士の違いや、部屋の違いそして、置き場所や置き方の違いなどによる音の差と比較すると、はるかに差が少なく、いずれもがリファレンスたり得るものだと思って間違いない。そしてリファレンスとしてではなく、ヘッドフォンとして楽しむという角度からいえば、SRΛプロの、コンベンショナルなスピーカーシステムでは味わえないデリカシーとトランジェントのよさが光って魅力的である。重量は、K240DFが240g、SRΛプロが325gだが、耳への圧力感ではSRΛプロのほうが軽く感じられる。しかし、装着感のフィットネスはK240DFのほうがぴたっと決って心地よい。SRΛブロのほうは、やや不安定に感じられるが、これは、個人の頭蓋の形状やサイズにもよることだろう。価格の点ではSRΛプロはイヤースピーカー用のドライバーユニットを必要とするコンデンサー型であり、当然高価になるので、両者のトータルパフォーマンスを単純に比較するのは無謀というものであろう。
 ヘッドフォンは、つい簡易型あるいはスピーカーの代用品のように受けとられがちだが、決してそういう類いのものではなく、独自の音響変換器として認識すべきものである。いうまでもないことだが、耳の属性と心理作用と相俟って、全く異なった音像現象を生むもので、ヘッドフォンによるバイノーラル効果は、伝送理論としてもステレオフォニックとは独立した体系をもつものである。
 この二つの優れたヘッドフォンは、それぞれ異なるコンセプトと構造によるものであるが、いずれも、録音モニターとしても再生鑑貴用としても高度なマニア、あるいはプロの要求を十分満たすものであることが実感できた。

スタックス SR-Λ Pro

菅野沖彦

ステレオサウンド 72号(1984年9月発行)
特集・「いま、聴きたい、聴かせたい、とっておきの音」より

 スピーカーとリスニング・ルームとの関係は難しい。個々の部屋は固有の音響特性を持つ。スピーカーのセッティングや、家具類、カーテン、絨緞などの配置で、その癖を出来るだけ抑え込むことが必要だが、それで理想的になるとは限らない。音響設計をして部屋を整えるというのも大変なことだし、それも常に成功するとは限らない。第一、その費用は膨大なものになるし、失敗した時のやり直しは容易ではない。遮音と室内の整音とでは互いに相反する矛盾条件を抱えているので、やるからには大変な費用を覚悟しなければならないし、その上でスペースと自然な生活環境を兼ね備えようとなると気の遠くなるようなコスト・リスクを負わねばなるまい。もともと、レコード音楽の本質は、家庭で居ながらにして音楽を楽しむというのが大前提だから、まるで、スタジオのような費用と生活の雰囲気を犠牲にするというのは決して薦められることではない。部屋に無関心でいい音を聴くのは難しいが、すべてを部屋のせいにして諦める必要もないだろう。そこで現実は、与えられた条件の中であれこれ工夫して残響周波数特性を出来るだけ整え、しっかりとした機器の設置を工夫し、反射音や、定在波に対処する努力をするわけだ。さらに、それらの音響的処理でも不十分な場合には、イクォライザーを使って電気的に調生することも悪くない。イクォライザ一素子が介入することによって音の鮮度が若干おちることは仕方がないが、大きなピーク・ディップをそのままにして聴くことと、どちらがよいか? 昔とちがって、現在の優れたイクォライザーなら、SN比の点でも、歪の点でも、大きなピーク・ディップによりマスキングされた音からすれば問題にはならないといえるだろう。ただし、この調整にはかなりの熟練を要することは当然であるが……。
 もっとも難しいのが、マイクロフォンの測定ポジションの問題である。リスニングポジションに置いての測定、数ヵ所での測定の平均値の算出など、それぞれに一理はあるが、いずれも、非現実的で、目安程度の判断にしかならないと思う。かといって、測定データを無視して、ただ聴感だけでおこなうことはもっと難しいし、危険でもあろう。一応の目安は測定により知るべきだと思う。測定データだけを頼りに周波数特性だけをそろえても、まず聴感上では好ましい音にはならないのが普通である。より大がかりで精密な測定器があれば、周波特性と各周波数での残響時間を測定することにより、もう一歩、適確に状況判断がつくが、部屋の残響周波特性は、イクォライザーでは調整不可能である。かりに、理想に近い三次元測定と、その結果の調整が可能であるとしても、それには大変な費用がかかり、かつそれで最高の音が得られるとは限らないのがオーディオの面白さ、難しさなのである。ましてや、不備な測定データを丸ごと信じて、それでよしとしていては、機器の能力をフルに発揮させることは出来ないし、美しい音の実現には程遠いといってもよいだろう。
 録音から再生までのトータルでの仕掛けでもあるオーディオのメカニズムは、それが仕掛けであるがゆえに、必要悪も、ギミックも含まれることは当然で、いい音の達成のためには、科学的な技術知識と、それを補う感性が絶対に要求されるものである。そこで、本題のスタックスのコンデンサー型ヘッドフォンについてだが、私は、このSRΛプロとSRM1MK2プロを、もともと、自分の録音したレコードの制作プロセスで、カッティングのバランスなどのチェックに重宝してきたのである。私のスピーカーシステムは、バランス的に、ある客観的なレベルにあるつもりだが、決してフラットではないし、部屋を含めた私の嗜好の範囲で鳴らしている。つまり、マイ・サウンドである。したがって、商品としてレコードにする場合、最終確認を、部屋の要素が入り込まず、細部のデリカシーもよく聴きとれて、しかも、周波数的なバランスに優れているこのヘッドフォンでチェックするのは大変有効なのである。もちろんインピーダンス制御のヘッドフォンとスピーカーを一緒にすることは出来ないし、バイノーラルとステレオフォニックなイメージを混同するものでもない。
 こうした目的に使っているうちに、いつしか、例のスピーカーのバランス調整のチェックにも利用すると便利なことに気がついた。一応の測定データに基づいて、電気的に、音響的にチューニングをした後のつめは、私の耳によって、各種の音楽レコードを聴きながらおこなっているが、人間の悲しさ、疲れていたり、情緒不安定であったりすることもないとはいえない。だから、結果的には数日、数週間、あるいは数ヵ月を要して音をつめるのだが、そうした時の感覚の大きな逸脱のブレーキとして、このヘッドフォンが役立ってくれるのである。ステレオイメージや音場感は別として、先述の音楽バランスや、音色感などは、部屋の要素が入らず、耳への周波数的時間遅れのないヘッドフォンは大いに参考になる音を聴くことができるのだ。最近は、優れたヘッドフォンが多いようだが、私が人知れず、便利に使っている、とっておきの音を聴かせてくれるのが、このSRΛプロである。そして、ヘッドフォンとスピーカーの音の相違を通して、実に多くの音響的ファクターを類推することも面白くいろいろなことを学ぶことも可能である。同時に、この優れたヘッドフォンは、頭にかぶり、バイノーラル的サランドイメージを覚悟すれば、美しい音楽の鑑賞用としても抜群だ。

オーディオテクニカ AT160ML/G, AT150E/G, AT140E/G, AT130E/G, AT120E/G, AT37E, AT34EII, AT33E, AT32EII, AT31E/G, ATH-0.1, ATH-0.2, ATH-0.2F, ATH-0.4, ATH-0.6, AT666EX, etc…

オーディオテクニカのカートリッジAT160ML/G、AT150E/G、AT140E/G、AT130E/G、AT120E/G、AT37E、AT34EII、AT33E、AT32EII、AT31E/G、ヘッドフォンATH0.1、ATH0.2、ATH0.2F、ATH0.4、ATH0.6、アクセサリーAT666EXなどの広告
(オーディオアクセサリー 27号掲載)

AudioTechnica

ナガオカ SOUND PIERCE

ナガオカのヘッドフォンSOUND PIERCEの広告
(オーディオアクセサリー 27号掲載)

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コス KSP

コスのヘッドフォンKSPの広告(輸入元:山水電気)
(モダン・ジャズ読本 ’82掲載)

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ソニー TC-FX7, ST-JX5, MDR-FM7

ソニーのカセットデッキTC-FX7、チューナーST-JX5、ヘッドフォンMDR-FM7の広告
(別冊FM fan 30号掲載)

TC-FX7

デンオン AH-9

デンオンのヘッドフォンAH9の広告
(オーディオアクセサリー 21号掲載)

AH9

オーディオテクニカ ATH-0.5, ATH-0.3

オーディオテクニカのヘッドフォンATH0.5、ATH0.3の広告
(オーディオアクセサリー 21号掲載)

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AKG K140S, K141, K240, K241, K340

AKGのヘッドフォンK140S、K141、K240、K241、K340の広告(輸入元:AKGジャパンサービス)
(スイングジャーナル 1980年7月号掲載)

AKG

コス HV/XLC

コスのヘッドフォンHV/XLCの広告(輸入元:山水電気)
(スイングジャーナル 1980年7月号掲載)

KOSS

アツデン YM-130HS, YM-308II, DSR-12

アツデンのカートリッジYM130HS、YM308II、ヘッドフォンDSR12の広告
(モダン・ジャズ読本 ’80掲載)

AZDEN

コス TECH/2, Technician/VFR, DYNAMIC/10, PRO/4 AAA

コスのヘッドフォンTECH/2、Technician/VFR、DYNAMIC/10、PRO/4 AAAの広告(輸入元:山水電気)
(モダン・ジャズ読本 ’80掲載)

KOSS

ソニー DR-Z5, DR-Z6, DR-Z7

ソニーのヘッドフォンDR-Z5、DR-Z6、DR-Z7の広告
(ステレオ 1979年2月号掲載)

DR-Z7

スタックス SR-Σ, SRM-1

スタックスのヘッドフォンSR-Σ、アダプターSRM1の広告
(ステレオ 1979年2月号掲載)

STAX

アツデン DSR-12

アツデンのヘッドフォンDSR12の広告
(ステレオ 1979年2月号掲載)

AZDEN

ベイヤー ET1000, N1000

ベイヤーのヘッドフォンET1000、アダプターN1000の広告(輸入元:報映産業)
(ステレオ 1979年2月号掲載)

ET1000

オーレックス HR-X1

オーレックスのヘッドフォンHR-X1の広告
(スイングジャーナル 1978年8月号掲載)

HR-X1

ホシデン DH-90-S

瀬川冬樹

Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より

 まず全体の感じでは、中音域──おそらく1kHz前後の音域──にエネルギーを集中させたバランスのように聴きとれる。その意味ではパイオニアのSE300と一脈通じる音色で、相対的に低音と高音はおさえ気味のところもよく似ている。したがって、ややハードな傾向の音質で、感度が割合に良い方であることとあいまって、ポップス系のパーカッシヴな音など、頭の芯まで叩き込まれるような力がある。しかし低音の量感や、高音の繊細な、あるいは柔らかな表情を求めるのは少々無理のようで、こころみにトーンコントロールで低・高両端を強調してみたが、本質的にレインジが広くないのだろう、高級機のようなひろがりを聴くのはむずかしい。価格的にやむをえないのだろうか。デザインはちょっと国産らしからぬ洒落た部分もあって、見た目には楽しい。スピーカー端子にダイレクトに接続した方が、音が引締って、クリアーになる。

エレガ DR-196C

瀬川冬樹

Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より

 ちょっと類型のないユニークなデザインだが、ヘッドバンドをユニットの結合部など、何となくブリキ細工のようだし、ユニットのカバーの仕上げもオモチャふうで、せっかくのおもしろいデザインを材質や仕上げが生かしていないように思える。しかしかけ心地は意外に良好で、手にとっていじっているときは、バンドの金具とユニットのすり合わせの部分などカチャカチャと安っぽい音を出すが、頭におさまってしまうと、本体の軽いこともあるのだろうが耳によくフィットして、不快感はほとんど無く、よく考えられていることがわかる。音質は、中低域にほどよいふくらみを持たせたソフトな印象。ヴォーカルなども歌い手の声にあたたかみが感じられる。オーケストラのトゥッティでは、高域の倍音領域にもうひと息のひろがりがあるとなおよいが、しかしレインジはよく伸びているらしく、適度に色合いや艶も聴きとれ、かなり楽しめる音だと思った。

アツデン DSR-7

瀬川冬樹

Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より

 いわゆる輪郭鮮明な、コントラストの強い派手やかな音で鳴る。レインジはせまくはないが中〜高域全体をかなり強調したバランスなので、たとえばパーカッションを多用したようなポップス系の曲を圧倒的にデモンストレーションするには一種鮮烈な印象を与えておもしろいのだろうが、音楽をじっくり聴き込もうとするにはこの音は少々騒々しすぎ、たとえば管弦楽の斉奏では音がやや金属質にきこえてしまう。レコードのサーフェイスノイズあるいはヒス性のノイズにかなり固有の音色が聴きとれるところから、おそらくユニットの中〜高域に強いキャラクターがあるのだろうと思う。デザイン面では、ヘッドバンドにスウェードふうの質感をもたせたりなかなか凝っていて、かけ心地そのものは悪くない方だ。ただ、ユニット部分は、キャビティ部分の開孔の意匠や材質の使い分けなど、多少おもちゃふうになってしまっているのが残念だ。

オーディオテクニカ ATH-3

瀬川冬樹

Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より

 高域のレインジをあまり伸ばさずに、ハイエンドにかけて丸めこんで耳当りの良い音に仕上げてある。その意味でナロウレインジには違いないが、たとえばパイオニアのSE300の場合には、中音域に一種の強調感──というよりは圧迫感──があったためにその両端のレインジのせまさがいっそう目立ったが、ATH3の場合には、中域から低域にかけては、わりあい過不足なくしっかりおさえてあるので、トーンコントロールで高音をやや強調してやれば、高音域の伸びも一応は聴きとれるようになって、ステレオの空間的なひろがりもなかなかよく出てくる。ということはユニットに基本的な特性のかなり良いものが使われている、ということになりそうだ。高域を増強していないためか、音量をかなり上げてもやかましくない点がメリットといえそうだ。かけ心地は非常に良い部類だが、一見した外観が(細部は違うにしても)ヤマハのデザインによく似ている点は一考をうながしたい。

オーディオテクニカ ATH-7

瀬川冬樹

Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より

 今回試聴した国産のコンデンサータイプに共通していえることは、ダイナミックタイプにくらべると音域が広く、フラットによくコントロールされているところが総体に優れた点だが、その範囲でやはり各メーカーに少しずつ音への姿勢の違いが感じられて、オーディオテクニカの音は、中〜高域にいくぶん強調感を持たせた、華やかさ、あるいは明るさを感じさせるところが特徴といえそうだ。上級機種のATH8とくらべると、こちらの方が感度がいくらか高めで、中〜高域の強調感が強く、よく張り出す音に仕上げてある。またそのためか最高音域のレインジ、あるいは繊細な感じにはいま一歩というところがあるが、これはおそらくポップス系に焦点を合わせた作り方のように思われる。クラシックのオーケストラなどでは、少々華やぎすぎのところがあるかけ心地の面では、重量の軽いせいばかりでなく、重さをあまり意識させない点がなかなかよかった。