Category Archives: カウンターポイント

カウンターポイント SA-5000

井上卓也

オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド別冊・1994年春発行)
「世界の一流品 アンプリファイアー篇」より

 管球アンプの高級モデルを作り、アメリカのハイエンドオーディオの分野で高い評価が与えられているカウンターポイントの、管球とソリッドステートデバイスをハイブリッド構成としたステレオアンプである。現代の管球アンプは古典的な管球アンプとは異なり、電源系を中心としたソリッドステート技術のバックアップが不可欠な設計が基本であり、電源の整流回路に整流管を採用する設計は、異例中の異例といってよい。
 真空管は、素子として優れた基本特性をもちながら単純な構成でアンプが設計できるメリットがある。その一方で、真空管自体がメカニズムをもつだけに、高SN比が要求されるMCカートリッジやマイクロフォン用ヘッドアンプには、マイクロフォニックノイズに代表されるノイズが高く不向きである。そこで真空管とソリッドステート素子を組み合せることで入力インピーダンスを高くでき、ハイスピードという特徴が積極的に活かせる優れたアンプが実現する。
 このように、管球とソリッドステートの長所を併せ持たせることは考えとしては素晴らしいが、往々にして両者の短所を併せもつことにもなりやすく、そのため優れたハイブリッドアンプは少ない。そんな中にあって、本機は見事というか巧みにというか、両者の特徴を両立させた開発者の感性により実に素晴らしい成果を上げている。
 筐体構造はかつては弱点であったが、自社内生産となり精度が向上。振動対策も向上し銅メッキ処理のシャーシの採用という、海外製品として異例の配慮が見られるのは、よりよきものを積極的に採り入れるメーカーの誠意として受け取りたい。
 ナチュラルにのびたレスポンスと、音の粒子が滑らかに磨かれ、スムーズでしなやかにレスポンスするソフィステイケイトされたカウンターポイントの音は、これならではの独特の音の世界を展開するようだ。
使いこなしポイント
 組み合せるパワーアンプは同社の管球式OTLアンプ、SA4をおいてない。

カウンターポイント SA-5000 + Natural Progression Monaural Power Amplifier(JBL S9500との組合せ)

井上卓也

ステレオサウンド別冊「JBLのすべて」(1993年3月発行)
「ハイエンドアンプでProject K2 S9500を堪能する」より

 この組合せは、ふところの深い、格調が高く、雰囲気のよい、サロン風の音を求めての選択である。
 プリアンプのSA5000は、ハイブリッドタイプならではの、ソリッドステートと管球方式の魅力を併せもたせる、という至難な技を実現した稀有の存在ともいうべき見事なモデルである。
 ペアとしたパワーアンプNPAは、ナチュラル・プログレッション・モノーラル・パワーアンプの頭文字をモデルナンバーとした新製品で、入力段に真空管、出力段にバイポーラトランジスターとMOS−FETの両方の特徴を備えるという、IGBTを採用したモノーラルパワーアンプだ。
 結線は、不平衡である。
 標準的なプリアンプ出力(ダイレクト出力)からの結線では外乱によるノイズ発生があり、バッファーアンプ出力からパワーアンプに送るが、許容限度のノイズは残っており、高域のディフィニッションが低下した音になるだろう。
 最初の音は柔らかく、モヤッとした音だ。
 ウォームアップは、NPAではかなりな時間はさして大きな変化を示さず、その後比較的短い時間で、音質、喜色の変化がステップ的に変る傾向があるようである。
 初期段階の20〜30分間あたりのウォームアップで聴けば、柔らかさの内側にかなり硬質なコントラストの強い部分があり、そのどちらを重視するかで、音の印象度は大きく変る。
 しかし、2時間ほど鳴らし込めば、雰囲気がよく上品で耽美的ともいわれるカウンターポイントの音に、反応の速さ、鮮食感、ソリッドな表現、といった新しい魅力が加わった音が聴かれるようになる。
 かなりの音を整理し、音楽の聴かせどころを巧みに摘んで聴かせるような、スケールはやや小さいが、ほどよく音楽に反応をし、サラッと雰囲気よく空間の拡がりを感じさせる鳴り方は、これならではの魅力がある、ひとつの世界だ。
 予想よりも、細部のディテールの描き方や表情のみずみずしさが音として出しきれていないが、起強力なTV電波が7波もある立地条件下での高周波妨害にょるマスキングと、CDプレーヤー系の長時間使用での、ある種の音のニジミ、ベール感が相乗効果的に働いているようで、ここでの結果は、かなりハンディキャップを背負ったものではあるが、それなりにカウンターポイントらしさのある音でS9500を鳴らしたあたりは、カウンターポイントのポリシーの根強さを知る、ひとつの尺度のように
思われる。

JBL S5500(組合せ)

井上卓也

ステレオサウンド別冊「JBLのすべて」(1993年3月発行)
「Project K2 S5500 ベストアンプセレクション」より

 旧来のJBLを象徴する製品が43、44のモニターシリーズならば、現代の同社を象徴するのは、コンシューマーモデルであるプロジェクトK2シリーズだ。S5500は、このプロジェクトK2シリーズの最新作で、4ピース構造の上級機S9500の設計思想を受け継ぎワンピース構造とした製品である。この結果、セッティングやハンドリングがよりしやすくなったのは当然だが、使用機器の特徴をあかちさまに出すという点では、本機も決して扱いやすい製品ではない。エンクロージュアや使用ユニットこそ小型化されたものの、S9500の魅力を継承しながらも、より音楽に寄り添った、音楽を楽しむ方向で開発された本機の魅力は大きい。
     *
 JBLが’92年の末に発表したプロジェクトK2シリーズの最新作が、S5500である。プロジェクトK2とは、’89年にセンセーショナルなデビューを飾ったS9500 (7500)に始まる同社のコンシューマー向けの最高峰シリーズで、本機は、上級機S9500の設計思想を受け継いだワンピース構造のシステムである。S9500が35cmウーファーと4インチダイアフラム・ドライバーを搭載していたのに対し、本機は30cmウーファーと1・75インチドライバーを搭載しているのが特徴である。また、S9500で同一だったウーファーボックスの内容積が、本機では、下部のそれの内容積がやや大きい。ここに、IETと呼ばれる新方式を採用することで、反応の速い位相特性の優れた低域再生を実現している。また、チャージドカップルド・リニア・デフィニションと呼ばれる新開発のネットワークの採用にも注目したい。ネットワークのコンデンサーには、9Vバッテリーでバイアス電圧を与え、過渡特性の改善を図っている。
 本機は、S9500譲りの姿形はしているものの、実際に聴かせる音の傾向はかなり異なり、アンプによって送りこまれたエネルギーをすべて音に変換するのではなく、どちらかというと気持ち良く鳴らすという方向のスピーカーである。
 こうした音質傾向を踏まえたうえで、ここでは、ホーン型スピーカーならではのダイナミックな表現と仮想同軸型ならではの解像度の高い音場再現をスポイルせずに最大限引き出すためのアンプを3ペア選択した。

マッキントッシュ C40+MC7300
 まず最初に聴いたのは、マッキントッシュのC40+MC7300の組合せである。C40は、C34Vの後継機として発売されたマッキントッシュの最新プリアンプで、C34VのAV対応機能を廃したピュアオーディオ機である。サイズもフルサイズとなり、同社のプリアンプとしては初のバランス端子を装備している。これとMC7300といういわばスタンダードな組合せで、S5500のキャラクターを探りながら、可能性を見出すのが狙いだ。
 可能性を見出すというのは、C40に付属する5バンド・イコライザーやラウドネス、エキスパンダー、コンプレッサー機能などを使用して、スピーカーのパワーハンドリングの力量を知ることである(現在、マッキントッシュのプリアンプほどコントロール機能を装備したモデルはきわめて少ない)。また、マッキントッシュの音は、いわゆるハイファイサウンドとは異なる次元で、音楽を楽しく聴かせようという傾向があるが、この傾向はS5500と共通のものに感じられたためこのアンプを選択した。
 S5500+マッキントッシュの音は、安定感のある、非常に明るく伸びやかなものである。古い録音はあまり古く感じさせず、最新録音に多い無機的な響きをそれなりに再現するのは、マッキントッシュならではの魅力だ。これは、ピュアオーディオ路線からは若干ずれるが、多彩なコントロール機能を自分なりに使いこなせば、その世界はさらに広がる。
 その意味で、このアンプが聴かせてくれた音は、ユーザーがいかようにもコントロール可能な中庸を得たものである。ウォームアップには比較的左右されずに、いつでも安心して音楽が楽しめ、オーディオをオーディオ・オーディオしないで楽しませてくれる点では、私自身も非常に好きなアンプである。

カウンターポイント SA5000+SA220
 S5500のみならずJBLのスピーカーが本来目指しているのは、重厚な音ではなく一種のさわやかな響きと軽くて反応の速い音だと思う。この線をS5500から引き出すのが、このカウンターポイントSA5000+SA220である。
 結果は、音楽に対して非常にフレキシビリティのある、小気味よい再生音だった。カウンターポイントの良さは、それらの良さをあからさまに出さずに、品良く聴かせてくれることで、音場感的には、先のマッキントッシュに比べて、やや引きを伴った佇まいである。美化された音楽でありながら、機敏さもあり、非常に魅力的である。たとえるなら、マッキントッシュの濃厚な響きは、秋向きで、このカウンターポイントのさわやかな響きは、春から夏にかけて付き合いたい。

ゴールドムンド ミメイシス2a+ミメイシス8・2
 次は、S5500をオーディオ的に突きつめて、そのポテンシャルを最大限引き出すためには、このあたりのアンプが最低限必要であるという考えの基に選択したのが、ゴールドムンドのミメイシス2a+ミメイシス8・2である。
 結果は、ゴールドムンドならではの品位の高い響きのなかで、ある種の硬質な音の魅力を聴かせる見事なものであった。
 モノーラルアンプならではの拡がりあるプレゼンス感も、圧倒的である。オーディオ的快感の味わえるきわめて心地の良い音ではあるが、反面、アンプなどのセッティングで、音は千変万化するため使いこなしの高度なテクニックを要するであろう。ここをつめていく過程は、まさにオーディオの醍醐味だろう。

 S5500がバッシヴで穏やかな性格をもった、音楽を気持ちよく鳴らそうという方向の製品であることは、前記した通りである。しかし、これは、本機が決して〝取り組みがい〟のない製品であることを示すものではない。一言〝取り組みがい〟といってもランクがあり、手に負えないほどのものと、比較的扱いやすい程度のものと2タイプあるのだ。本機は、後者のタイプで、そのポテンシャルをどう引き出すかは、使い手の腕次第であることを意味している

カウンターポイント SA-20

井上卓也

ステレオサウンド 84号(1987年9月発行)
特集・「50万円以上100万円未満の価格帯のパワーアンプ15機種のパーソナルテスト」より

豊かな中低域と、明快な中高域がバランスした帯域バランスと、海外製品としては数少ない、正確に音を聴かせようとする印象のアンプだ。音色は、低域は柔らかく滑らかで、少し暗さがあり、中域から中高域は、硬く、明るいタイプである。音像は大きいが明快であり、音場感は標準より少し狭く、見通し不足気味だ。ウォームアップは、ソフトフォーカス気味の粗い硬さのある音から、余裕のある安定した音に変わるタイプ。堅実な手堅い音のアンプである。

音質:83
魅力度:88

カウンターポイント SA-12

井上卓也

ステレオサウンド 84号(1987年9月発行)
特集・「50万円未満の価格帯のパワーアンプ26機種のパーソナルテスト」より

厚みのある安定した音と強調感のないスムーズなレスポンスが特徴。音の粒子は基本的に粗いタイプだが、程よく磨かれており、細部を引き出しはしないが、これが一種の安定感につながり、安心して音が聴けるメリットにつながる。音像定位は少し大きなタイプで、音場感は標準的にとどまる。中域に少し硬質のキャラクターが聴かれるが、アッテネーターの特徴が加わったようで、低域も少しタイトに感じられる。

音質:80
魅力度:84

カウンターポイント SA-4

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「最新パワーアンプはスピーカーの魅力をどう抽きだしたか 推奨パワーアンプ39×代表スピーカー16 80通りのサウンドリポート」より

(マッキントッシュ XRT18での試聴)
 一度鳴らしてみたかった組合せである。当たった。実に魅力的なコンビネーションである。クレーメルのヴァイオリンはやや美化され過ぎるが、輝きと粘りのある質感で、ボーイングの力感が感じられるようにリアルであった。ピアノの音色の透明感と冴えは見事なものだ。弦合奏のなんとも魅力的な動きの実感と音色の美しさ。ふっくらとした弦の弓の弾力性が感じられるかの如きであった。アンプがスピーカーによって魅力を引き出された感じであった。

カウンターポイント SA-4

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 全体に肌ざわりの滑らかで、抜けのよい立体的なふくらみを感じる音の感触を持ち、しかも、ディテールの再現に優れ、細かい音の粒子が明解に豊かに聴きとれる。つまり、優れた物理特性に基づけられた高品位な音である。また、情緒的にも、このアンプのもっている鮮やかでいて、これみよがしな派手な演出のない豊かな音楽表現は満足感の高いものだ。肌ざわりの滑らかさに加え、この暖かさと、彫琢の深い音の陰影は、ブライトな華麗さと相俟って圧倒的な表現力をもっている。

音質:9.8
価格を考慮した魅力度:9.5

カウンターポイント SA-4

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 最初の試聴時には、しなやかで、素直な音ではあるが、本来の鮮度感が薄れ、聴きやすさが目立つだけの音であったが、真空管を交換してからの試聴では、音もリフレッシュされ、適度のプレゼンスをもつクォリティの高い音が聴かれた。聴感上のレスポンスは広帯域型で、低域は柔らかく、しなやかであり、高域はスムーズに伸びるが、中域は少し薄い。音場感はナチュラルに拡がり、音像定位は小さくまとまる。使いこなしは、中域を充実させ、リアリティを重視したセッティングが要点。

音質:9.3
価格を考慮した魅力度:9.0

カウンターポイント SA-12

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 ひろびろとしたレンジ感をもち、屈託なく鳴りきる快い再生音である。きめの細かい繊細な高音域が瑞々しい雰囲気と、鮮度の高い音の印象を与え弦合奏の美しさは特筆に値する。歌も自然で、細かい唱法の機微もよく聴きとれる分解能のよさを持っている。大編成のオーケストラの音色の分離識別、全体の溶け合いもよくバランスし、空間再現性も優れている。俗にいう抜けのよい音で、ジャズのリズミカルな動き、ピアノの絶妙なタッチの変化による音色の鳴らし分けも優秀だ。冴えている。

音質:9.0
価格を考慮した魅力度:8.5

カウンターポイント SA-12

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 ナチュラルな帯域バランスと、滑らかさとクッキリさが両立したプレゼンスの良さが特徴である。全体に音のまとまりは小さく、箱庭的であるが、むしろ良い意味でのカセット的といった性質が面白い。農民カンタータは、少しナローレンジ的なまとまりで、全体に演奏のテンポが速く感じられ、やや狭い場所の演奏となる。幻想は一見スッキリ型でまとまり良く聴かせるが、スケールが小さい。サイド・バイ・サイドは曇り空の雰囲気だ。聴かせどころをおさえたアンプ。

音質:8.1
価格を考慮した魅力度:8.5

カウンターポイント SA-5

菅野沖彦

ステレオサウンド 76号(1985年9月発行)
特集・「CD/AD 104通りの試聴テストで探る最新プリアンプの実力」より

 質感の上でも、バランスの上でも、非常に高品位なプリアンプだと思う。弦楽器の質感は特に素晴らしく、ヴァイオリン群のリアリティと滑らかな音の美しさは大変魅力的である。中低域も深々と鳴って、音の立体感が充実している。欲をいえば、もう少しエッジの鋭いシャープなダイナミズムの面への対応であろう。音の勢いといったエネルギッシュな面がやや物足りない。また細かいところの完成度にもやや不満が残る。
[AD試聴]マーラーの第6交響曲は、明晰な解像力で各楽器を克明に聴かせながら、かつ、ふっくらとした自然な質感が気持ちよく、豊かな雰囲気で全体が統一される。B&Wで聴く弦の音は美しく、ヴァイオリンのプルトがひとかたまりにならず、ちゃんと分かれ、しかも整って聴こえる。人声の質も自然で、ドライになることがないし、ステージのライヴネスも繊細な間接音の陰影までよく再現してくれた。ジャズにもう一つ、強さ、輝き、艶っぽさが欲しい気もした。
[CD試聴]CDでは、ADより強靭な音の質感があって、音の実在感がより生きてくる。それでいて、このアンプ特有のふくよかな雰囲気はなくならない。ADより一段とクォリティの高い音が楽しめるアンプである。ショルティのワーグナーが、力強さに豊かで柔らかい響きの感触が加わって、一段、品位が上がった印象であった。しかもJBLでもギスギスしないのである。音にコクがあるという感じの味わいが何とも魅力的であった。

カウンターポイント SA-3

菅野沖彦

ステレオサウンド 76号(1985年9月発行)
特集・「CD/AD 104通りの試聴テストで探る最新プリアンプの実力」より

 ソースの魅力を、あるがままに……という言葉を使いたくなるほどストレートに再生してくれる。だから、音楽がもつ、明るさや暗さ、硬さや柔軟さ、繊細さと力強さといった対照的な情緒のいずれにも偏ることがなく表現の複雑さや幅が生きるのである。それでいてこのアンプらしいアイデンティティともいえる質感はちゃんとあって、暖かく透明である。ソリッドな実体感もある。基本的には安定した優れた物理特性に裏付けられた高品位な音。
[AD試聴]粒立ちのよさと、透明な空間感、そしてマッシヴなハーモニーの融合で、オーケストラは大変効果的で、B&Wで聴いたマーラーの第6交響曲の響きは素晴らしかった。擦弦のリアリティが生き生き再現され、演奏の動きが生々しい。木管はまろやかで透明、金管は輝かしく力強い。人の声も暖かくボディがあって、唇のぬれている質感が濃やかに聴ける。ジャズでもよくスイング感が出てベースが快く弾む。JBLだとやや硬質になり、ドライに響く。
[CD試聴]CDではAD以上の魅力を発揮する。B&W、JBL共に、ショルティのワーグナーで、緻密かつ力強いパフォーマンスに圧倒的な印象を受ける。コントラバス群の弓の動きの実感は他のアンプとは一味も二味も違う。高弦のしなやかさと肉付きもよく、決して冷徹にならない。アメリンクのステージの空間にくっきりと浮彫りになる実在感と、艶と輝きに満ちて毅然とした歌唱の姿勢が手にとるようにわかる。ジャズでも音色の響き分けが見事だ。

カウンターポイント SA-1 + マークレビンソン ML-3L

菅野沖彦

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
特集・「高級コントロールアンプVSパワーアンプ72通りの相性テスト」より

 不思議なもので、この組合せでは、パワーアンプの個性で鳴ってくれるようだ。つまり、KSA100のときより、これはML3の音だなと感じる音になる。聴感上のナローレンジ感もそれほど感じられず、むしろ現代的ですっきりした音になる。ヴォーカルを聴いても、特に魅力が生きるとはいえないが、中低域のこもりはML3をクレルのプリと組み合わせたときより少ない。しかし、ML3の能力が十分発揮されているとはいえない。

カウンターポイント SA-1 + クレル KSA-100

菅野沖彦

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
特集・「高級コントロールアンプVSパワーアンプ72通りの相性テスト」より

 この優れたパワーアンプとの組合せは、正直にいって、どちらの良さも十分発揮されないもので、KSA100の高域の美しさも出てこないし、かといって、SA1らしい暖かい自然音の魅力ともいえない音になる。したがって、マーラーでは、オーケストラの帯域レンジに不満があるし、かといって、ロマンティックな表現に合った質感も不十分。ヴォーカルも、どこか把みどころのないもので、ジャズにはレンジの狭さがそのまま出てくる。

カウンターポイント SA-1 + オーディオリサーチ Model D-90B

菅野沖彦

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
特集・「高級コントロールアンプVSパワーアンプ72通りの相性テスト」より

 TVA1と比較すると、少し油気の抜けた、さっぱりした傾向で、熱っぽさも、ここではややさめる。しかし、感覚的には自然な、有機的な質感で、音:が区を心情的にリラックスして楽しめるよさがある。フィッシャー=ディスカウの声も、すっきりとした響きのよいもので、柔軟な声の質感をよく伝える。ピアノも中低域がこもらず、重くならない。ジャズの質感はよく、力ではもう一つ炸裂するようなスリルはないが、シズル音は聴こえる。

カウンターポイント SA-1 + マイケルソン&オースチン TVA-1

菅野沖彦

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
特集・「高級コントロールアンプVSパワーアンプ72通りの相性テスト」より

 決してワイドレンジではないが、それだけに、充実したマーラーの響きが聴けたようだ。暖かく血の通った音である。しかし、ノイズは気になる。プリアンプのSN比が悪すぎる。スピーカーの能率が低いと、この残留雑音は気にならないかもしれないが、その代り、ゲインを上げるとまた悩まされることになるだろう。ヴォーカルなど、古いタイプの音だが、それだけに余計な音が出ない安心感がある。ジャズではシズルの音が充分再現されない。