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ケンブリッジオーディオ CD3

井上卓也

ステレオサウンド 99号(1991年6月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 英国ケンブリッジ社は昨年、スピーカーメーカーであるワーフデール社の傘下となり、この度ハイファイジャパンの手により再びわが国で輸入販売されることとなった。
 CD3はモデルナンバーからもわかるようにケンブリッジのCDプレーヤーの第3号機である。同社のCDプレーヤーの技術的特徴は、各チャンネルあたり4個の16ビットDACを使う合計8DACシステムと、16倍オーバーサンプリングの採用であり、本機も従来のCD2同様にこの方式を受け継いでいる。
 また、CD3の最も大きな変更点は、ディスクドライブ機構にある。前作CD2では、フィリップス製高級CDプレーヤーのスタンダードとなったCDM1が採用されていたが、本機ではCDM1MKIIを採用している。このディスクドライブ機構は、CDM1に比べ外形寸法上の高さがアップしているため、これを受けて、筐体関係は大幅に設計変更され、本体の高さは前作より約2cm高くなっている。
 電源部はトロイダルトランスの採用で、計6系統の定電圧電源を備えており、2系統はディスクドライブ系とデジタルプロセッサー、残りの4系統が8個のDAC部、オーディオアンプ系に分配されている。
 パネルフェイスは、国内製品と比べ、ディスプレイがシンプルなため、スッキリとしたデザインにまとめられており、必要にして十分なものではある。しかし、トレイの開閉の動き、各プッシュボタンのフィーリングなどではフィニッシュの甘さが若干見受けられる。
 本機は、ACプラグの極性(正相/逆相)による影響が激しい特徴をもっているようだ。平均的には音場感情報が豊かで、ナチュラルな音をもつほうがオーディオ的にはACボラリティが正相といわれているが、本機の場合では正相で、ハイファイ的な広帯域指向のない、穏やかで素直な音とスムーズに広がるプレゼンスを聴かせる。各種のプログラムソースに対しても、かなりフレキシブルに反応を示すタイプであり、これはいわば長時間聴いていても疲れない音の好例であろう。置き場所やACプラグの極性などの基本的な使いこなしの後、RCAピンコードによる音質、音色などのコントロールをすれば、一段と聴感上でS/Nの優れた、素直で見通しの良い音にチューニングすることは容易であり、その意味ではこの素直な音が本機の魅力であろう。
 次にACプラグを反転すると、音質、音色は一変し、かなり古い時代のアナログプレーヤー的な、情報量は少ないがコントラストがクッキリとしたモノトーンの抑えた音となり、このひっそりとした印象はかなり個性的な音の世界である。
 総合的に音場感情報は比較的少ないタイプだが、小型スピーカーの点音源的特徴を活かして使えば、ひと味違った音の世界を楽しむことができよう。