Category Archives: ブラウン

ブラウン L100

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 西独ブラウンのスピーカーは、あくまで家庭内での音楽再生ということを基本に開発され、その範囲内での巧みな音のまとめ方がなされている。このL100もそういう意味で、相当主張の強い音だが音楽が説得力をもって生き生きと鳴るスピーカーシステムである。

ブラウン L300

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 先のL100のところでも述べたように、同じ技術的なコンセプトによって作られており、共通な音づくりがなされている。ミニスピーカーながら3ウェイ構成だが、L100より一段とブライトな音色をもち、温覚の表現力が生きるスピーカーである。仕上げは黒と白の二種類。

ブラウン LV720

菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

輝かしく風格のある充実したサウンドと緻密な製品仕上げ。

ブラウン L300

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

大口径ソフトドームユニットの魅力を生かした3ウェイらしさが魅力。

ブラウン L715

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 たとえばリークの音に艶があるという印象が、ブラウンと並べて聴くとリークがどこか湿っぽく聴こえる。そのくらい独特の艶があって当然これはドイツのスピーカーが昔から持っている特徴だが、そのドイツの音という枠の中では、従来の製品より全音域でのバランスがより自然に、音域ごとの強調感や欠落感が少なく、たいへんみごとにコントロールされた製品であることを感じる。ステレオの音像の定位やひろがりや奥行きも、明確に再現する。この独特の艶は、弦合奏にもピアノにも、われわれの耳にはときとして過剰気味に思える場合があるが、そこに一種の透明な──といっても空気の透明というより上等の硬質なクリスタルガラスの光沢のような──感覚が生じ、鳴っている音楽の鮮度を上げるような働きをする。むろんそれはこの製品に限った話ではないが、エンクロージュアの大きさからいっても、本もののスケール感を望むのは無理で、あくまでも虚構の枠の中での話だが、高め(50センチ)の台、左右に広げる方がよかった。

採点:94点

ブラウン L500/1

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 全体の音のバランスも悪くないが、ウーファーの質の良さには敬服する。低音楽器の音階の動きや音色感を、実に生き生きと滑らかに表現。むろんそれはブラウンの音色でだが。

ブラウン L420/1

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 ドイツ系のスピーカーは、小型のキャビネットの割には、びっくりするほど低音がよく出る。この製品も小型とあなどれない実力を持っている。ただしあくまでもセカンド用。

ブラウン L810/1

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 この上にもうひとつ、マルチアンプ内蔵の♯1210があるが、内蔵アンプの質が少々ものたりないので、ブラウン最高を求めるには、このL810の方をすすめる。

ブラウン L710/1

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 L500はさすがにキャビネットの小ささでスケール感がやや損なわれるが、L710になってその辺のバランスが十分に改善される。輪郭鮮明なブラウントーンの中核。

ブラウン L810/1

菅野沖彦

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 西独ブラウン社のシリーズ中、最もバランスのいいシステムであるばかりでなく、品位の高い音質は、外観にマッチした現代感覚に溢れ明解さと柔軟さを合わせもつ優れた製品。

ブラウン L620/1

菅野沖彦

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 西独ブラウンの中級システムだが、外観寸法はブックシェルフとしても小さい。さりけなく品位の高い音を楽しむにはもってこいのハイ・センスなシステムだと思うのだ。

ブラウン L710

菅野沖彦

ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)
特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より

 ブラウンには同じようなユニットを組み合わせた一連のシステムのヴァリエーションがあるが、私は620、710が好きだ。この上の810はウーファーが二つで、やや低音が重く中域の明瞭度をマスクする。ブラウンの滑らかな音は、充分解像力にも優れるし、音楽が瑞々しく、ハーモニーがよく溶け合う。白とウォールナットがあるが、断然ウォールナットがいい。仕上げも美しく虚飾のないすっきりしたデザインは極めて高いセンスだ。

ブラウン L710

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 ヘコー4001の直後に聴くとはるかに甘口の音に聴こえるが、それはヘコーの音とくらべるからで、参考のためにヤマハ690その他二~三のスピーカーとくらべてみると、やはり辛口の部類、ひき緊った硬質のやや冷たい肌ざわりを持った音であることがわかる。とはういものの、ヘコー4001の徹底した鳴り方にくらべると、ブラウンの方がそうした固有の色あいは薄くなり、言いかえればもっと万人向けの味に仕上げてある。中低域にややふくらみを持たせた作り方のせいかそれともヘコーより箱が大きいせいか、鳴り方がゆったりしているので、ローレベルでの、あるいは弦合奏などでのニュアンスがやわらかく出てくる。ピアノのタッチも、したがってヘコーよりも甘いが、しかし音像をくっきり浮き彫りさせるだけの切れこみの良さは失っていない。中~高域にかけての艶めいて滑らかなよく延びた音質の中に、ときとしてわずかにプラスティック的な安手の響きが混じることのある点はわずかな弱点か。しかしヘコーと好対照をなす製品で、ヘコーのように徹底した方が試聴後の印象は強いが、比較しても優劣のつけにくいスピーカーであった。

周波数レンジ:☆☆☆☆
質感:☆☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆☆
解像力:☆☆☆☆
余韻:☆☆☆☆
プレゼンス:☆☆☆☆
魅力:☆☆☆☆

総合評価:☆☆☆☆★

ブラウン L810

菅野沖彦

スイングジャーナル 7月号(1973年6月発行)
「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より

 L810はブラウンのスピーカー・システム群の中では高級機種である。ブラウンのスピーカーが日本へ輸入されてまだ日が浅いし、実際の商品の供給も軌道にのっていないようだ。生産能力のある会社だから日本でのサプライが早く順調になってほしいものである。選定新製品としてはマルチ・アンプの組込まれたL1020を取上げたのだが、代表的なものとなるとこのL810を選ぶのが妥当であろう。20cm(正確には21cm)ウーハーを2つベースにしてその上に5cm径のドーム・スコ−カーと2・5cm径のドーム・トゥイーターを組み合わせた3ウェイのユニット構成。内容積41ℓのブックシェルフ型密閉エンクロージュアーで別売のスティール脚を取付けて据置型としても使えるものにまとめた中型システムである。ブラウンではこのシステムをスタジオ用といっているところからみても、そのクォリティへの自信のほどが伺える。外装はウォールナットとホワイトの2つの仕上げが選べるが、どちらもフレッシュでシャープなデザイン感覚をもった美しいものだ。ユニットのクロスオーバーは550Hz、4kHzで12db/octの特性。9種類に及ぶスピーカー・システム群は共通のトーンとデザイン・ポリシーに貫ぬかれていて、6・4ℓ容積の2ウェイであるL420や7ℓ容積のL310といったコンパクト・タイプから、このL810に至るまでの様々なバリエーションは広くユーザーのニーズに合わせた製品構成である。これだけの種類の名システムが共通した音のイメージをもっていることは感心させられるし、メーカーの主張、性格が明確に表われているのはさすがである。ドーム・トゥイーターとドーム・スコーカーは共通のユニットを使い、2ウェイの場合はトゥイーターを1・8kHzから上で使うという方法をとっている。ウーハーはこの810に使われている21cm径のほか17cm、18cm、30cmの三種類を使いわけているが、いずれもコーンの材質、エッジやサスペンションなど振動系の設計は共通のものだ。一つのメーカーで、いろいろなスピーカーをつくり、これが同じメーカーの製品かと驚ろくような異質なものを発売しているメーカーが少くないが、それに対して、こういう行き方は、いかにもメーカーとしての自信、信念が感じられて好ましい。同じメーカーがソフト・ドーム、ハード・ドームやホーンなどといろいろなスピーカーを出すというのは、本来おかしい事で、日本のメーカーの多くに見られる例だが、マルチ化したユーザーへのサービスといえば聞えがいいが、本当は自信のなさと試行錯誤の中で、とにかく売ろうという考え方の現われとしか思えない。あまりにも無節操ではないか。
 それはとも角このL810はそうした共通のポリシーに貫ぬかれたいづれもそのサイズと価格内では最高のスピーカー・システムといってもよい製品群の中で、最高の位置づけにふさわしい優れたシステムである。周波数帯域はきわめて広く、素直にのびきった高音のさわやかさ、透明感は類がない。そして、豊かな低音は、楽器の低音域の充実した響きを鳴らし、全体の音楽的なまとまりほケチのつけようがないほどだ。今やオーディオは、スピーカーの音そのもので音楽的実体験が得られるといってもよいところまできていると思うが、このスピーカー・システムなどはまさにそれに価いするものだといってよかろう。録音のよいプログラム・ソースを優れたアンプを使って、このL810で再生すれば、その演奏から受ける感銘度は、生の演奏から受ける感銘度に匹敵するものだと思う。こう書くと、気のはやい人は生の音とそっくりという意味にとられるかもしれないが、そんな馬鹿げたことをいっているのではない。音楽体験としての質の高さ、次元の問題としての話しである。私は今、このL810をマッキントッシュのC28とMC2105のアンプで自宅で聞いているが、その再生音にはかなりの程度満足している。かなりの程度といったのは他にも勿論よいスピーカーがあり、それらはそれらの魅力をもっているからだ。111、000円という価格は、このシステムの質として、輸入品として決して高くない。
 すばらしいシステムだ。

ブラウン LV1020

菅野沖彦

スイングジャーナル 3月号(1973年2月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 ブラウン社といえば、日本ではオーディオのイメージは全くなかった。もっとも強いイメージが電気カミソリ、ファンやラジオ程度がせいぜいというところだったろう。しかし、昨年のオーディオ・フェアに行かれた人なら、そこに展示された同社の数々のコンポーネント・システムに一朝一夕にはできない質の高さと風格を認められたにちがいない。私自身も不勉強ながら、ブラウンがこれほどオーディオ製品に力をもっている会社だとは知らなかったのである。聞くところによるとブラウン社は1921年にマックス・ブラウンというエンジニアによって創立されたそうだから、すでに過半世紀の歴史をもつ会社であり、ラジオ、オーディオ製品にも1923年から手をつけているという本格派なのである。今まで私が知っていたのは、日本でいえばアンサンブル型という装置であって、アメリカのゼニスやウェスティングハウスのような広く家庭用の電蓄にしか興味をもたない会社だと思っていたのである。
 総合家電メーカーとしてのブラウン社の現在の規模は国際的であるから、その製品にマニア・ライクな要素を求められるとは思っていなかった。しかし、偶然の機会に同社のスピーカー・システム一連の製品を聴き、テレコやアンプをいじることができた時から、私のそうしたイメージはすっかり改められてしまったのである。アンプはステレオ・レシーバーと、チューナー・プリで、日本の実状には合わないが、スピーカーの音を聞いて、すっかりほれこんでしまった。
 ブラウンのスピーカーは、コンパクトなL420/1、L500/1や薄型のL310,L480/1、L550、そして、中型のL620、L710、やや大型のL810、そして今回選定新製品としたLV1020などとヴァリエーションが豊富だが、いずれも共通のデザイン・ポリシーとサウンド・ポリシーに貫かれている点が特に印象的である。仕上げはすべてウォルナットとホワイトの二種類が用意され、前面グリルはエロクサイド処理アルミニュームのパンチング・メタルである。きわめて精緻な密閉型エンクロージュアに優れたユニットが巧みに組み合わされているが、基本的には最近のヨーロッパ系のスピーカー・システムが多く採用しているドーム・スコーカー(トゥイーター)とコーン・ウーハーのマルチ・ウェイを採用している。スキャン・ダイナ、フェログラフ、ヘコー、などヨーロッパ系のスピーカーのもつサウンドは日本でも好評で、明解な音像のたたずまいと広い帯域特性のもつ豊かなソノリティにどこか共通した魅力を感じるが、中でもこのブラウンの製品は強い印象を受けた。ソフト・ドームとしてはやや荒目のシャープな音像再現がぴりっと引締りながら、朗々とした音場を再現するのである。
 LV1020は中でも最高級の特殊なシステムであって30cmウーハー、5cmスコーカー、2・5cmトゥイーターの3ウェイを3台のパワー・アンプでドライブするマルチ・チャンネル・システムなのである。ウーハー用40W、スコーカー用20W、トゥイーター用15Wのアンプがエレクトロニクス・デバイダーを通して帯域分割されたシグナルで各ユニットをダイレクト・ドライブしている。K+Hがスタジオ用モニターとしてこの方式を採用していたが、ブラウン社でもこれはプロフェッショナル・システムとうたっている。このスピーカーを使うには本来は同社のCE1020というチューナー・プリが用意されている。しかし勿論、ディン(DIN)・ピン・プラグの変換コードと電源の特殊コンセントの対策さえおこなえば、どんなプリ・アンプと組み合わせても使えるわけで入力感度は0・25〜1・5Vという一般的なライン・レベルに設計されている。
 とかく苦手ときれているソフト・ドームのパルシヴな波形への応答、物性からくるハードな切れ味もそれほど不満はなくシンバルのアタックも実感が出る。グラマスで締切った低音はブラウンの一連のシステムに共通で、このシステム以外はほとんど2個のウーハーを使っていることをみても低音の充実感に同社のサウンド・ポリシーがあることがわかる。音楽的な充実感はここからくる。音楽の美しさの基盤は低音にある。難をいえば、マグネット装着のアルミのグリルの汚れが目立ったり、凹凸が目立つのと、大振幅時にびりつきを起す場合があったことだ。グリルはともかくエンタロージュア面との接触部分はダンプしたソフトな材料を使うべきであろう。