Category Archives: アルテック

アルテック Milestone 604

井上卓也

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 英タンノイのデュアルコンセントリックと並ぶ、米国の名門アルテックの同軸型604で、新システム化を図った新製品。想像を超える長期間にわたり細部の改良が積み重ねられたユニットだけに、本格派スタジオモニターとして非常に魅力的な存在。とくに、管球アンプファンにとって高能率ぶりは絶対の買いである。

アルテック 620J Monitor

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「最新パワーアンプはスピーカーの魅力をどう抽きだしたか 推奨パワーアンプ39×代表スピーカー16 80通りのサウンドリポート」より

 同軸型2ウェイ・モニターシステム用ユニットとして、アルテックを代表する604系ユニット604−8KSを620エンクロージュアと組み合わせたモニターシステムだ。
 604−8KSは、604−8G以前の伝統的な6セル・マルチセルラ型ハイフレケンシー用ホーンをマンタレーホーンに替え、サービスエリアを拡げるとともに、フェイジングブラグを、伝統的な同軸スリットタイプからタンジェリンタイプにして、高域のレスポンスを伸ばしたタイプである。ネットワークも、ハイフレケンシーのレベル調整をおこなうスタンダードな方式と、3ウェイ的に、中域のレスポンスをも調整可能な方式とを、スイッチ切替で選択できる。
 最初は、ややナローレンジ型だが、同軸2ウェイモニターの原点ともいうべき604−8G的なサウンドで現代のパワーアンプを聴いてみようという方向で試みてみたが、基本設計は、もはや完全に3ウェイ的で、より広帯域志向になっており、総合的にも、こちらの使用方法のほうが、はるかに完成度の高い音を聴かせてくれた。
 基本的な低域と高域ユニットのエネルギ一には変化はなく、広帯域型化されたため、滑らかで、しなやかさ、フラットレスポンス化など、トランスデューサーとしての改善は著しいが、力感、密度感、アルテックらしい独特の個性的な魅力は薄らぎ、現代的なサウンドに発展している。

アルテック Model 6

黒田恭一

サウンドボーイ 10月号(1981年9月発行)
特集・「世界一周スピーカー・サウンドの旅」より

 JBLのL112をきいた後でこのスピーカーをきいて、そうか、そうであったな、これもまたウェストコースト出身のスピーカーであったなと思わないではいられなかった。それほど、JBLのL112とこのアルテックのMODEL6とでは、ちがう。したがって、そういことがあるので、出身地別でスピーカーに安易にレッテルをはることはつつしまなければならない。ことはまことに微妙である。よほど用心してかかる必要がある。さもないと、とんでもない誤解をしてしまいかねない。
 しかし、このアルテックのMODEL6もまた、まきれもなく、アメリカのウェストコースト出身のスピーカーの特性をそなえている。それがなにかといえば、ひびきのおおらかさである。ひびきのおおらかさはJBLのL112でも充分に感じられたものであるが、それとこれとのいずれでよりきわだっているかというと、このMODEL6においてである。ただ、すぎたるはおよばざるがごとし──ともいう。このスピーカーの音は、たしかにおおらかではあるが、おおらかにすぎたといえなくもない。
 たとえば、マーティ・バリンのレコードで、例の「ハート悲しく」をきくと、JBLのL112できいたときより、陽気な歌に感じられる。ひびきが、おおらかで、率直な分だけ、この歌の影の部分が薄くなったというべきであろうか。バリンの声には独自のかすれがあるが、それを充分に感じとれるとはいいがたい。その辺にこのスピーカーの多少の問題がある。
 しかし、JBLのL112とこアルテックのMODEL6では、価格の面でわずかとはいいがたい差があるから、同列において四の五のいったら、アルテックのMODEL6に対してフェアでない。判断する場合には、その価格の面での差を割引いて考える必要があるものの、スピーカーの音の性格として、鋭角的なひびきより丸みのあるひびきの表現にひいでているということはいえるにちがいない。
 たとえば、ランディ・マイズナーの『ワン・モア・ソング』をかけたときのサウンドなどは、ききてをのせる。中域の音が充実しているからであろう。そのストレートなサウンドは、爽快である。ただ、これは、このランディ・マイズナーのレコードでも、マーティ・バリンのレコードでも、そして大滝詠一のレコードでもいえることであるが、総じて、声より楽器の音の方がきわだちぎみで、声、ないしはうたわれている言葉は、ともすると楽器のひびきの中にうめられる傾向がある。
 ハーブ・アルバートのレコードもわるくない。アルバートによって吹かれたトランペットの音が、その特徴をきわだてているとはいいがたいが、音楽の力感をよく伝える。そのようなことから、このスピーカーの音のもちあじを、こだわりのない率直さということもできるであろう。
 音楽の力強さをすとんと示すが、ひびきの微妙なところにこだわる人は、そこにものたりなさを感じるのかもしれない。しかし、このスピーカーのきかせる音には、俗にウェストコースト・サウンドといわれる独調のひとつである解放感があることはまちがいない。

アルテック Model 6041

アルテックのスピーカーシステムModel 6041の広告(輸入元:エレクトリ)
(スイングジャーナル 1981年9月号掲載)

アルテック

アルテック Model 9861

アルテックのスピーカーシステムModel 9861の広告(輸入元:バエス)
(スイングジャーナル 1981年2月号掲載)

9861

アルテック A7-X, Model 19, Mini 7

アルテックのスピーカーシステムA7-X、Model 19、Mini 7の広告(輸入元:エレクトリ)
(スイングジャーナル 1980年7月号掲載)

A7X

アルテック A5

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 A7の上級モデルでユニット別もの。クロスオーバーがA7の1・2kHzに対しこれは500Hzで、ドライバー、ホーンはより大型、ウーファーも一層ヘビーデューティである。その大らかな再生音は他では味わえないもので、悠揚迫らぬ音の世界の魅力は、この劇場用システムを、あえて家庭で味わうという熱心なファンを生んできた。至近距離で聴いても音は必ずしも粗くない。

アルテック Model 6041

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 同軸ユニット604−8Hにスーパートゥイーターとスーパーウーファーを加えた大型フロアー型。アルテックらしい明るく、たくましい音のハイエンドとローエンドを拡げ、一層表現力を増している。変形4ウェイといえるものだが、ジャズによしクラシックによし、能力的に優れているだけではなく、音楽の味わいを風格をもって伝える魅力的製品。

アルテック 620B Monitor

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 世界的に普及している同社の604シリーズの最新モデル604−8Hを組み込んだスタジオモニターシステム。38cmの同軸型2ウェイで、タイプHは高域ユニットが改善され、歪の少ないマンタレーホーンをもつ。妥当なバランスだが、低域・高域ともマルチユニットのような伸びはない。しかし、その高い再生能力は使い手次第で大きな可能性をもっている。

アルテック A7-X

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 その名のごとく本来は劇場PA用。しかし、その2ウェイ・ホーンによる独特の大らかな鳴り方と有効な響き方は、家庭用としても雰囲気の豊かな格調すら感じさせる魅力を発揮する。決してワイドレンジではないが、音楽に必要な帯域を美しく響かせ、小音量にもかなり緻密な解像力を聴かせるし、大音量には全く危なげのないのは陶然だ。高能率スピーカーらしいよさを十分に発揮する。

アルテック Model 6041

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 この開放的な音は、なんともいえず魅力的だ。ききての心をはればれとさせる。のびのびと音がでてくる。ききてを神経質にさせるようなところがまるでない。とりわけ❶のレコードの示すひろびろとした音場感は、まことにチャーミングだ。ただ、まるで問題がないということではない。総じて音像が大きくなること、それと、それと、レコードのノイズが比較的低くでてくるのでいくぶん耳ざわりなことだ。そういう欠点はあるものの、このスピーカーできいていると、不思議なもので、そんなこまかいことはいいっこなしにしようよというような気持になる。もっとも、このスピーカーシステムのきかせる音は、たしかに開放的だし、ききてをのびのびさせはするが、決して野放図ではない。新しい時代のアルテックの音といった印象が強い。この魅力を失わず、もう少しみがきあげることは不可能だろうか。

総合採点:9

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(好ましい)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(好ましい)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(好ましい)

アルテック Model 6041

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 アルテックとしては初めてスーパートゥイーターまで加えて、高域のレインジを伸ばしているし、中域の張り出しも十分にコントロールされて、全体にワイドレンジのフラット型に生まれ変っている。それでいて、音全体に何となく暖かみを感じさせ、しかもどことなく脂こい、アルテック固有の古くからの音色の良さは受け継がれていて、JBL4343とはまた違った魅力を持った新しいスピーカーが誕生したと言ってよい。ことに、クラシック、ポップスを問わず、歌の好きな人には、このスピーカーの音の世界は魅力だろう。声にふくらみがあって、あたたかく、つい聴き惚れさせる。こまかいことをいえば、低音域にいまひとつ、弾んだ鳴り方、そして重低音域の量感が欲しい。また、ハイエンドがもうひと息さわやかに繊細に切れ込むとなおよいと思う。しかしJBLも、4341から始まって4343Bまできたのだから、これから時間と共に、少しずつ完成度が高められるだろうし、そう期待したい。

総合採点:9

●9項目採点表
音域の広さ:10
バランス:9
質感:9
スケール感:10
ステレオエフェクト:9
耐入力・ダイナミックレンジ:10
音の魅力度:10
組合せ:やや選ぶ
設置・調整:調整要

アルテック Model 6041

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 コアキシャルのモニタースピーカー604−8Hを中心に、バスとトレブルにそれぞれユニットを追加して、エクステンデッドレンジを図ったユニークなシステムで、日米共同開発の製品である。604−8Hだけでも十分ワイドレンジなユニットだし、世界中、第一級のモニタースピーカーとして認められているが、そのよさを保って超高域と低域が補強されているのだから、悪かろうはずがない。しかし、これは決して容易なことではなく、システムとして全体の音質改善を実現したことは立派だ。音の密度の点では、♯4343Bに譲るが、透明度や定位の明解さではこの方が勝る。ワイドレンジなので、従来のアルテックとは違ったイメージに感じられるかもしれないが、明るく大らかな歌い方は、アルテックそのものである。欲をいうと、低域の柔軟さと弾みが、やや強引で生硬なこと、最高域がやや遊離して聴こえることだが、それは相当厳しい要求で、全体としてみればやはり第一級のスピーカーシステムである。

総合採点:9

アルテック Model 6041

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

伝統的な同軸2ウェイユニット604−8Hを中心に、重低音用と超高音用ユニットを加え、4ウェイ化した大型モニターシステム。余裕たっぷりに、エネルギー感をもって鳴るのは流石にアルテック。

アルテック Model 6041

瀬川冬樹

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「第2回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント17機種の紹介」より

 アルテックが長いあいだ基本を変えずに作り続けてきたフルレンジ・スピーカーユニットの名作604シリーズは、高音用ホーンに、新たに開発したマンタレイ・ホーンをとりつけた上に、ネットワークに大幅の手を加えて、604−8Hとして全く新しく生まれ変った。これを収めた620Bシステムも、非常に優秀なスピーカーシステムだが、アルテックはさらに今回、これに低音および超高音を補強した4ウェイシステム♯6041を発表した。これは、604−8Hを350Hz以上で働かせ、それ以下は416ウーファーを超低音用として手を加えた416−8BSW。そして8kHz以上には、新開発のホーントゥイーターがついている。ウーファーを除く各帯域にレベルコントロールの入ったLCネットワークを内蔵しているが、背面の端子板で切り替えると、マルチアンプ・ドライヴも可能になる。エンクロージュアのデザインにJBLの♯4343WXを意識したのではないかと思えるふしもあるが、その音質は♯4343とはずいぶん傾向が違う。というより、いくら音域を広げてもマルチ化しても、やはり、アルテックの昔からの特徴である音の暖かさ、味の濃さ、音の芯の強さ、などは少しも失われていない。
 ただ、604−8Hの低音と高音を補強した、という先入観を持って聴くと、620Bとかなり傾向の違う音にびっくりさせられるかもしれない。620Bよりもかなりクールな、とり澄ました肌ざわりをもっている。ところが♯4343と聴きくらべると、♯6041は、JBLよりもずっと味が濃く、暖かく、華麗な色合いを持っていて、ああ、やっぱりこれはアルテックの音なのだ、と納得させられる。
 使いこなしはJBL♯4343よりよほど厳しい。とくに3つのレベルコントロールの調整。ノーマルまたは標準の指示がない。私の試聴したかぎりでは、MHF(中高音)は相当に、SHF(超高音)は極度に、絞り込まなくてはバランスがとりにくい。MF(中音)の調整は比較的ブロードだが、それも中央近くまで絞ったほうが良いように思った。ひとつの疑問は、604−8Hのオリジナルのネットワーク(改良されて、2ウェイにもかかわらず中音および高音を分けて調整できるようになった)が、なぜ、♯6041では使われなかったのだろうということ。604−8H(およびそれを収めた620Bシステム)の良さは、このネットワークに負うところが大きいと、私は思っていたが、それが♯6041には採用されていない。もしあのネットワークが使われていれば、♯6041はもっとバランスのよい使い易いシステムになったのではないか。
 またもうひとつ、アルテックというメーカーは、昔から、超高音域をそんなに重要視しない傾向があって、それが長いこと3ウェイをほとんど作らなかったひとつの原因らしいが、♯6041用の新開発といわれるスーパートゥイーターも、たとえばJBL♯2405などと比較すると、多少聴き劣りするように、私には思える。これのかわりに♯2405をつけてみたらどうなるか。これもひとつの興味である。
 ……などと本題を外れているのも結局はこの♯6041というスピーカーが、そうしたことを考えさせるほど、相当にグレイドの高い製品であることの証明になる。少なくとも、こんにち、ほんとうに手のかかった大がかりな製品が、おもにアンプの分野に限られて、スピーカーがJBL♯4343の独走体勢、みたいな状況になりかけていたところへ、アルテックのように力のあるメーカーが、新風を吹き込む姿勢を見せてくれたことは、オーディオ界への大きな刺激になる。

アルテック 6041

アルテックのスピーカーシステム6041の広告(輸入元;エレクトリ)
(モダン・ジャズ読本 ’80掲載)

6041

アルテック A7-X

瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第23項・アルテック アメリカでしか作ることのできない華麗な音の饗宴」より

 ロードショー専門の大型映画劇場で、私たちを堪能させるような音の饗宴──それはたいていの場合、アルテックの大型スピーカーの再生するサウンドだと思って間違いない。アルテックを象徴する〝ザ・ヴォイス・オブ・ザ・シアター〟のシールを横腹に貼ったA5およびA7Xシステムの鳴らす堂々とそして朗々たる華麗な音。アルテックをのぞいてほかに思いあたらないスペクタクルなサウンド。これもまた、スピーカーだけが創りうる音の魅力のひとつの極だろう。
 ハリウッドに象徴されるアメリカの映画産業の大型化とともに発達してきたトーキー用スピーカーをその基本にしているだけに、アルテックの能力を生かすことのできるのは、できるだけ広い空間だ。というよりも、たとえばホールや大会議室や講演会場といわれるような広い空間で、音楽を楽しむことのできるスピーカーを選べといわれたら、アルテックを措いて他には、私には考えられない。そういう広い空間を音で満たしながら、どこまでもクリアーで、少しもいじけたところのない伸び伸びとした、そうして、ときに思わず手に汗を握るほどのスペクタクルな、またショッキングな迫力。そういう音を再生してびくともしないタフネスなパワー。
 アルテックのヴォイス・オブ・ザ・シアターのシリーズは、このように、ほんらい、広い空間でおおぜいの聴衆のために練り上げられてきたスピーカーであることを十分に認めた上で、しかしあえて、それをごくふつうの家庭のリスニングルームに収めて、レコードやFMの再生に、アルテックならではの、ことに人の声の音域に中心を置いた暖かい、充実感のある、それでいてクリアーな音の魅力を何とか抽き出してみよう……。こんなことを考えるのは、しかすると日本のオーディオファンだけなのだろうか。いや、アメリカにも、アルテックのサウンドにしびれているファンはおおぜいいる。けれど、たとえばA7Xを、八畳や十畳というような狭い空間(アルテック本来の望ましい空間からみれば)に押し込めてなお、クラシックの室内楽をさえ、びっくりするほどおとなしい音で鳴らしているファンを、私もまた何人か知っている。
 とはいうものの、アルテックならではの音の肉づきの良さ、たっぷりと中味の詰った印象の充実感、は、たとえば50年代のモダンジャズにも、またそれとは全く別の世界だがたとえば艶歌の再生にも、また独特の魅力を発揮させうる。私個人は、アルテックの鳴らす音の世界には、音の微妙な陰影の表現が欠けていて少しばかり楽天的に聴きとれるが、それでも、アルテックが極上のコンディションで鳴っているときの音の良さには思わず聴き惚れることがある。
 A5は、低音・高音のユニットをA7Xより強力にしたモデル。そしてマグニフィセントIIは、A7Xを家具調のエンクロージュアに収めたモデル。この三機種とも、最近になって改良が加えられて、以前の同型にくらべると、とくに高音域での音域が拡張されて音の鮮度が増している。

スピーカーシステム:アルテック A7-X ¥325,000×2
コントロールアンプ:マッキントッシュ C27 ¥346,000
パワーアンプ:マッキントッシュMC2205 ¥668,000
ターンテーブル:デンオン DP-80 ¥95.000
トーンアーム:デンオン DA-401 ¥35,000
キャビネット:デンオン DK-300 ¥55,000
カートリッジ:スタントン 881S ¥62,000
計¥1,911,000

アルテック Mantaray Horn + 817A System

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 大容積のホールなどで鳴らすべきシステムである。いかにもアルテックらしい本当の意味でのパブリックアドレスシステムといえよう。

アルテック A7-X

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 本来は劇場用の2ウェイシステムだが、難なく苦なくスケールの大きな、立派な音が得られる製品である。

アルテック Model 19

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 同社の本格的ホーンシステムはプロフェッショナルユースとして開発され、実際に多くの劇場やPA用として使われているが、それを家庭用システムとした製品が本機だ。やはりホーン型ならではのトランジェントのよい、スケールの大きな音だ。

アルテック 620A Monitor

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 決して生の音に近い音を再生するわけではないが、使い手次第で可能性の広がるスピーカーといえる。いかなるプログラムソースのファクターも忠実に伝えてくれることは確かだ。

アルテック 3000H

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 アルテック製品のなかでは唯一のトゥイーターユニットであり、かつての矩形断面のホーンをもつ3000Bの改良モデルである。ドライバーユニットは、トゥイーターとしてはかなり小型で、マイクロフォンユニットをベースとして開発されたとのことで、シンプルな構造で優れた性能を得ているのは素晴らしいことだ。それだけに、国内製品のトゥイーターに多くの影響を与え、これを範とした製品がかなり多い。音色的にはフルレンジユニットの高音用に2ウェイで使いたい。

アルテック A7-X, スレッショルド NS10 Custom, 400A Custom, CAS1 Custom, m1 Custom

アルテックのスピーカーシステムA7XスレッショルドのコントロールアンプNS10 Custom、パワーアンプ400A CustomCAS1 Custom、ヘッドアンプm1 Customの広告(輸入元:エレクトリ)
(スイングジャーナル 1978年8月号掲載)

ALTEC-A7

アルテック A7-X

菅野沖彦

最新ステレオ・プラン ’78(スイングジャーナル増刊・1978年7月発行)
「タイプ別本誌特選スピーカー42機種紹介・スーパースピーカー特選7機種」より

 アルテックのA7Xというスピーカー・システムは、アメリカのアルテック・ランシングというたいへんに歴史のあるオーディオ・メーカーの代表的なスピーカー・システム、〝ザ・ボイス・オブ・ザ・シアター〟と呼ばれるシリーズの最新型である。アルテック・ランシングというのは、よくご存じだと思うけれども、ウェスタン・エレクトリックのスピーカー・ディビジョンが分かれててきた会社で、現在アルテックと双壁といわれているジェームズ・B・ランシングという会社のランシングという人が中心になってスピーカーをつくり出した会社だ。その後ランシングは独立してJBLという会社をつくったという歴史をもっている。
 アルテックの劇場用スピーカーに対する技術の積み重ねは世界一で、そこから発展して当然、レコーディングのモニター用としてのスピーカーのあり方、そして、レコーディングのいろいろな周辺機器、ミキシンク・コンソールとか、アンプリファイアーなどを全部手がけているが、中でもA7というシリーズはその代表的な製品で、非常に独特な設計のショート・ホーンをもったウーファーと、その上にホーン・ドライバーを組み合わせて2ウェイの構成をとっていることが、この製品の特徴だ。
 劇場用スピーカーにもかかわらず、日本においては多くの音楽ファンがアルテックのA7の音のよさを評価して、あえて趣味の対象として使っているのは承知の通り。こういうスピーカーを現時点のテクノロジーでもう一回洗い直そうということを、アルテック社はやったわけで、A7Xは何十年来のA7シリーズを現代のスピーカー・エンジニアリンクによって、基本的な設計をそのままにしてこれを洗練させたものである。
 アメリカにおいては、これが家庭に入って趣味の対象として使われているというケースは、非常にまれだが、このことは、日本人の耳の洗練さと、それから、ものの本質を見極めるマニアの高い眼力と情熱を物語っているのかもしれない。
 スピーカーの代表として、世界で五本の指の中に入るスピーカーといえば、A7は落とすことができないだろう。その最新版がA7Xである。
 このスピーカーは、50Wクラスのプリメインアンプで鳴らしても相当な成果が得られると思う。たとえば、国産のアンプの50Wから100Wぐらいのプリメインアンプの優秀なものなら、このスピーカーの可能性を十分引き出すことができるだろう。ただ、ここで全体的にバランスのいい、高級なシステムだと思えるようなものを組み上げるということからすれば、私はマッキントッシュのアンプをA7Xに組み合わせてみたい。
 プリアンプにはC32、パワーアンプにはMC2205、この2つの最新型のマッキントッシュのアンプの組合せにより、A7Xのもっている質のよさと風格がさらに生きてくると思われる。
 ターンテーブルはデンオンのDP7000、トーンアームは新しいオーディオクラフトのAC3000MCを組み合わせてみたいと思う。カートリッジはオルトフォンのSPU−Aをつけよう。ただ、SPU−Aは最近の振幅の大きなレコードに、ときとして問題が出るかもしれないので、ハイコンプライアンスのエラックのSTS555Eをもう一つ加えよう。
 プレイヤー・ベースはこうなったら、各人の好みによって既成のものから選ぶか、あるいは、自分でデザインしてつくらせるか、このラインアップにふさわしい重量級のデザインのすばらしいものをつくり上げてみるということで、いかがだろう。

アルテック A7-X

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

家庭での鑑賞用よりはむしろPA用としてエネルギーの豊かさが貴重。