菅野沖彦
最新ステレオ・プラン ’78(スイングジャーナル増刊・1978年7月発行)
「タイプ別本誌特選スピーカー42機種紹介・スーパースピーカー特選7機種」より
アルテックのA7Xというスピーカー・システムは、アメリカのアルテック・ランシングというたいへんに歴史のあるオーディオ・メーカーの代表的なスピーカー・システム、〝ザ・ボイス・オブ・ザ・シアター〟と呼ばれるシリーズの最新型である。アルテック・ランシングというのは、よくご存じだと思うけれども、ウェスタン・エレクトリックのスピーカー・ディビジョンが分かれててきた会社で、現在アルテックと双壁といわれているジェームズ・B・ランシングという会社のランシングという人が中心になってスピーカーをつくり出した会社だ。その後ランシングは独立してJBLという会社をつくったという歴史をもっている。
アルテックの劇場用スピーカーに対する技術の積み重ねは世界一で、そこから発展して当然、レコーディングのモニター用としてのスピーカーのあり方、そして、レコーディングのいろいろな周辺機器、ミキシンク・コンソールとか、アンプリファイアーなどを全部手がけているが、中でもA7というシリーズはその代表的な製品で、非常に独特な設計のショート・ホーンをもったウーファーと、その上にホーン・ドライバーを組み合わせて2ウェイの構成をとっていることが、この製品の特徴だ。
劇場用スピーカーにもかかわらず、日本においては多くの音楽ファンがアルテックのA7の音のよさを評価して、あえて趣味の対象として使っているのは承知の通り。こういうスピーカーを現時点のテクノロジーでもう一回洗い直そうということを、アルテック社はやったわけで、A7Xは何十年来のA7シリーズを現代のスピーカー・エンジニアリンクによって、基本的な設計をそのままにしてこれを洗練させたものである。
アメリカにおいては、これが家庭に入って趣味の対象として使われているというケースは、非常にまれだが、このことは、日本人の耳の洗練さと、それから、ものの本質を見極めるマニアの高い眼力と情熱を物語っているのかもしれない。
スピーカーの代表として、世界で五本の指の中に入るスピーカーといえば、A7は落とすことができないだろう。その最新版がA7Xである。
このスピーカーは、50Wクラスのプリメインアンプで鳴らしても相当な成果が得られると思う。たとえば、国産のアンプの50Wから100Wぐらいのプリメインアンプの優秀なものなら、このスピーカーの可能性を十分引き出すことができるだろう。ただ、ここで全体的にバランスのいい、高級なシステムだと思えるようなものを組み上げるということからすれば、私はマッキントッシュのアンプをA7Xに組み合わせてみたい。
プリアンプにはC32、パワーアンプにはMC2205、この2つの最新型のマッキントッシュのアンプの組合せにより、A7Xのもっている質のよさと風格がさらに生きてくると思われる。
ターンテーブルはデンオンのDP7000、トーンアームは新しいオーディオクラフトのAC3000MCを組み合わせてみたいと思う。カートリッジはオルトフォンのSPU−Aをつけよう。ただ、SPU−Aは最近の振幅の大きなレコードに、ときとして問題が出るかもしれないので、ハイコンプライアンスのエラックのSTS555Eをもう一つ加えよう。
プレイヤー・ベースはこうなったら、各人の好みによって既成のものから選ぶか、あるいは、自分でデザインしてつくらせるか、このラインアップにふさわしい重量級のデザインのすばらしいものをつくり上げてみるということで、いかがだろう。
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