菅野沖彦
最新ステレオ・プラン ’78(スイングジャーナル増刊・1978年7月発行)
「タイプ別本誌特選スピーカー42機種紹介・スーパースピーカー特選7機種」より
UREIのModel813というスピーカー・システムは非常に変わったスピーカー・システムだ。UREIというのはユナイテッド・レコーディング・エレクトロニック・インダストリーの略で会社はアメリカのロスアンゼルスにある、プロ機器専門の小さなメーカーだ。現在までスタジオ用のエレクトロニクス・エクイプメントをつくっていて、かなり有名なメーカーだが、そこでつくったModel813が最近日本に輸入された。実際には全部このメーカーがつくったわけではなく、いわばスピーカーに関してはアッセンフリー・メーカー、そして、システム・デザインをこのメーカーがやったというふうに解釈していいと思う。
つまり、使われているユニットは自社製ではなく、アルテックの604−8Gが使われている。ただ、そのまま使ってるという形ではなく、604−8Gのセクトラル・ホーンを取払い、見かけは非常にちゃちだが、プラスチック成形によるUREI製のストレート・ホーンにつけ替えたというものである。加えることに、もう一つ38cmのウーファーを併用しているのである。
こういう構成はアメリカで最近はやってきた構成だが、非常にユニークな構成だと思う。そしてまた、このUREIのスピーカー・システムのもう一つの大きな特徴は、タイム・アラインド・クロスオーバー・ネットワークという、位相時間補正をエレクトロニカルにやった新しいデザインのネットワークを使っているということだ。このネットワークそのものはこの会社の設計ではなくて、TMという所のライセンスで使ってるもの。
こういうふうにUREIというスタジオ・プロフェショナルのキャリアのある会社が、現在いいと思われるテクノロジーをユニットやネットワークに取り入れて、さらに全体的に総合的なモニター・スピーカーとしての音の質とバランスをいいものにするために、もう一つ38cmウーファーを使うという発想に、非常にユニークな点があると言えるだろう。
また、タイム・アラインド・ネットワークの効果だと思われるが、モニター・スピーカーとして重要なフェイズ感が非常によく整っている。そのためにステレオの定位とか奥行き、あるいは立体空間の再現性、こういったものが非常によくなっている。したがって、モニター・スピーカーとして録音の調整をするのが非常に楽であるし、家庭用の再生用のスピーカーとレては、そのプログラム・ソースのもっているこまかい特徴を非常にはっきりと明確によく出してくれるよさにつながるという点で、最近の新しくあらわれたスピーカー・システムの中で、特に強く印象づけられたすばらしいシステムである。
ところで、このUREIというスピーカーは未だ新しいスピーカーで、私もたいへん強い印象をもって気にいってるスピーカーだが、実際に輸入元からサンプル用として出回った程度だから、まだ、いろんなアンプで鳴らしたという体験がない。したがって、たまたまその時に私が鳴らしたものが、かなりいい音がしていたことは事実なので、その組合せを推薦するほか責任がもてない。だから、それ以上の組合せがあり得るかもしれないし、ここで当てずっぽうにほかのアンプで鳴らして、とんでもない音になっても無責任なことになるので、実際私が鳴らした組み合わせを推薦しておくことにする。
プリアンプはマッキントッシュのC32、パワーアンプがアキュフェーズのM60だ。ターンテーブルはその時のものでなくていいと思うが、私としてはこのぐらいのシステムを鳴らすならばかなりの高性能のものがいいと思うし、デザイン的にもこのスピーカーが相当ラボラトリー・イメージなので、必らずしもきれいなデザインのプレイヤー・システムを使う必要もなかろう。テクニクスのSP10とフィデリティ・リサーチのFR64Sというトーンアームと、カートリッジとしてはいつも私の標準機として使用するエラックのSTS455E、それにMC型としてオルトフォンの新しいMC20、この辺をラインアップとしてそろえれば、UREIが生きてくるシステムになり得ると思う。
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