Category Archives: オーディオリサーチ

オーディオリサーチ D-70

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「最新パワーアンプはスピーカーの魅力をどう抽きだしたか 推奨パワーアンプ39×代表スピーカー16 80通りのサウンドリポート」より

(アルテック 620J Monitorでの試聴)
 豊かさがあり、適度な油っこさもあり、落ち着いて楽しめる音だ。低域は豊かで、安定感があり、程よく力感もあり、ゆったりと音を聴かせる基盤となっている。音場感は、ややスピーカーの奥に拡がるが、音像の輪郭はシャープで、リアリティも水準以上だ。プログラムソースとの対応は、少し適、不適があり、全体に線を太く、マクロ的にまとめ、アンチCDファンには一聴に値する魅力があるだろう。線が細く、積極性が抑えられたスピーカーに好適。

オーディオリサーチ D-250MKII

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 力感のある音は重厚な雰囲気で、厚味のあるリアリティを感じさせる。しかも、音が、一種、くすんだ陰影を感じさせるもので、屈託のない明るさ一辺倒ではない。こういう表情のアンプは少なく、クラシック音楽の重厚な雰囲気や、品位にとって貴重な再現性といえるだろう。毅然と歌う歌手の姿勢がよく再現され格調がある響きである。ただ、高域がやや滑らかさに欠け、音が角張った印象になるのが惜しい。ベースの押し出しが力感に溢れるが、やや柔軟な弾力性に欠けるようだ。

音質:8.7
価格を考慮した魅力度:8.0

オーディオリサーチ D-250MKII

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 異例にともいえるゆったりとした低域をベースに、安定したスケールの大きな音を聴かせるアンプだ。聴感上の低域はおおらかで、バックローディングホーン的なイメージがあり、中域は少し粗いが、すっきりとし、適度な硬質さがある。音場感はフワッと柔らかく拡がり、音像は少し大きく、輪郭はソフトだ。農民カンタータは豊かさがあり、おおらかで土の臭いが感じられ、幻想はゆったりと響きをタップリと伴ったピラミッド状の安定した音で聴かせる。非常に個性的な音だ。

音質:8.8
価格を考慮した魅力度:9.0

オーディオリサーチ D-70

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 ソフトな肌ざわりを感じさせる音は快い。決して力強い響きではないが、きめの細かさが音楽表現の機微をよく伝える。バッハのカンタータでのドゥエットや弦合奏、そしてチェンバロの細やかなニュアンスが小じんまりとした雰囲気で伝わる。大方のアンプではもっと明るくスケールが大きく再現されるのであるが……。ベルリオーズの「幻想」ではこの点でややインパクトが弱い。ジャズでも、個々の楽各の質感のデリカシーはよいのだが、もう一つ力強い表現が欲しかった。

音質:8.0
価格を考慮した魅力度:7.5

オーディオリサーチ D-70

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 基本的には、ゆったりとした安定感のある、良い意味での油っこさを適度にもつ音が特徴のアンプである。帯域バランスはナチュラルで、音色は少し暗い面があるが、本来はもっと明るいはずだ。プログラムソースとの対応はかなりナチュラルで、今回の試聴のように、音質対策をしたピンコードやSPコードを使わなければ、よりこのアンプの魅力が引き出せたはずだ。このクラスの管球アンプとしては、UTY5、TVA1との対比が非常に興味深く、それぞれに使い込みたい製品である。

音質:8.5
価格を考慮した魅力度:9.3

カウンターポイント SA-1 + オーディオリサーチ Model D-90B

菅野沖彦

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
特集・「高級コントロールアンプVSパワーアンプ72通りの相性テスト」より

 TVA1と比較すると、少し油気の抜けた、さっぱりした傾向で、熱っぽさも、ここではややさめる。しかし、感覚的には自然な、有機的な質感で、音:が区を心情的にリラックスして楽しめるよさがある。フィッシャー=ディスカウの声も、すっきりとした響きのよいもので、柔軟な声の質感をよく伝える。ピアノも中低域がこもらず、重くならない。ジャズの質感はよく、力ではもう一つ炸裂するようなスリルはないが、シズル音は聴こえる。

オーディオリサーチ SP-8 + D-90B

黒田恭一

ステレオサウンド 64号(1982年9月発行)
特集・「スピーカーとの相性テストで探る最新セパレートアンプ44機種の実力」より

ヤマハ・NS1000Mへの対応度:★★
 いくぶん硬質な音でひびきの輪郭をはっきり示す。低い方の音の提示にものたりなさをおぼえる。②のレコードでのバス・ドラムの音などはいくぶんききとりにくい。③のレコードでの提示はまとまりはいいものの、小ぶりな提示でとどまる。もう少したっぷりしたひびきがほしい。
タンノイ・Arden MKIIへの対応度:★★★
 このスピーカーでは低い方の音がふくれぎみになることがままあるが、その辺をうまくおさえているので、まとまりがいい。③のレコードでは、本来の迫力は示しえてはいないが、雰囲気ゆたかな提示はこのましい。⑤のレコードではチェロがいくぶん細めにひびく傾向がある。
JBL・4343Bへの対応度:★★★
 ③のレコードでのきこえ方が力感不足でものたりないのはいかなる理由でか。②のレコードでは充分に迫力が感じとれる。⑤のレコードでは三つの楽器のいずれもが多少太めに提示される。もっともこのましかったのは④のレコードで、6人の声の色あいのちがいをよく示していた。

試聴レコード
①「マーラー/交響曲第6番」
レーグナー/ベルリン放送管弦楽団[ドイツ・シャルプラッテンET4017-18]
第1楽章を使用
②「ザ・ダイアローグ」
猪俣猛 (ds)、荒川康男(b)[オーディオラボALJ3359]
「ザ・ダイアローグ・ウィズ・ベース」を使用
③ジミー・ロウルズ/オン・ツアー」
ジミー・ロウルズ(P)、ウォルター・パーキンス(ds)、ジョージ・デュビビエ(b)[ポリドール28MJ3116]
A面1曲目「愛さずにはいられぬこの思い」を使用
④「キングズ・シンガーズ/フレンチ・コレクション」
キングズ・シンガーズ[ビクターVIC2164]
A面2曲目使用
⑤「ハイドン/6つの三重奏曲Op.38」
B.クイケン(fl)、S.クイケン(vn)、W.クイケン(vc)[コロムビア-アクサンOX1213]
第1番二長調の第1楽章を使用

オーディオリサーチ SP-6A, D-79

菅野沖彦

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか(下)最新セパレートアンプ25機種のテストリポート」より

 独特の粘りのある音で、モーツァルトのソナタが艶っぽく肉体的な響きで鳴る。シェリングがこんな脂の乗った音で聴こえたことはかつてない。往年のフーベルマンの音のようだ。ジャズのベースも重々しく図太い響きで、これはこれで個性的な音の魅力がある。

オーディオリサーチ D-150

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカのオーディオリサーチ社は現在も管球式アンプだけを作るメーカーである。このD150は同社の最高級パワーアンプで150W/チャンネルの出力をもっている。6550真空管を10本、冷却ファン3個をもつ巨大なアンプでAC電圧計中央に、左右にパワー・メーターを配したパネルはいかにも重量級の風格だ。グリッド・バイアス電源の調整も可能という。管球式アンプのファンには魅力たっぷりのもの。

オーディオリサーチ D-76A

岩崎千明

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 米国にきら星の如く数多く出てきた新進アンプメーカー中、もっともユニークな存在がこのオーディオリサーチだ。その作るアンプはすべて管球式。注目すべきなのはすでにソリッド・ステート万能の時期である数年前からのスタートでありながら、管球式アンプにこだわるといえる姿勢だ。たしかに真空管アンプの音の良さはオールドファンを中心にベテラン達の堅く永く口にする点だ。ソリッドステートに技術的性能では遠く及ばずとも、音の良さは明らかな差を感じさせる。オーディオリサーチ社のアンプが高級ファンに愛される理由は、高水準のマニアほど十分に納得できるだろう。プリアンプに対する評価よりもパワーアンプに対する評価が高いのは「スピーカー・ドライブの点での管球アンプの有利性」のためではなかろうか。デュアル75でスタートして、トランスを含むパーツや機構を大幅に変えて76年にデュアル76となっている。

オーディオリサーチ Dual76

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 米国うまれの珍しい管球式パワーンアプである。いわゆる、豊かで、やわらかい管球アンプの音ではなく、男っぽい豪放さを感じさせるようなサウンドは小気味がよい。

オーディオリサーチ SP3

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 ブラックとゴールドに染めわけたパネルフェイスも個性的なら、ソリッドステート全盛の現在、米国で使われた管球タイプであるのも面白い。日本的管球アンプでない音が特長。

オーディオリサーチ Dual76

岩崎千明

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 今や稀少なる管球アンプによるハイパワーアンプ。回路設計に今日の技術が活かされているためか音にも現代的な広帯域感が強く、しかも低域、高域の力強さなど管球らしさ十分。

オーディオリサーチ Dual75

岩崎千明

ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)
特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より

 オーディオリサーチははたして新進メーカーなのか、音を聴いていつもそう思う。このサウンドは技術のみで到達できるものではないし、音楽のキャリアの裏づけがおそらくこのアンプの優秀高質を支えていよう。実効出力はマッキントッシュ275とほとんど同じはずだが、サウンドの力強さと充実感において上回り、技術上の新しさを感じさせるのはさすがだ。個性的で米国系らしいプリとともに特異な存在が魅力なのか。

ハイパワー・アンプの魅力

岩崎千明

スイングジャーナル 5月号(1974年4月発行)
「AUDIO IN ACTION」より

●アンプはパワーが大きいほど立上り特性がよくなるのだ! だからジャズには……
 アンプの出力は大きいほど良いか? はたまた、必要性のないただただぜいたくなのか?
 そうした論争や、論説はいいたいやつにいわせておけ。オレは今日も午前中いっぱい200ワット出力のアンプをレベル計がピクンピクンといっぱいに振り切れるほどの、ドラムの響きに身をまかせ切っていた。
 一度でもいい。キミも、大出力論争をやっているひまに、ほんのひとときを100ワット級のアンプで鳴らす空間にその身をさらされてみろ。一度でもハイ・パワー・アンプの洗礼を受けたが最後、ジャズを愛し、断ち切れないほどのファンなら、だれだって必ずやその虜になるぞ。必要ない、なんてうそぶいていたのは、実は、望んでも達せられないための、やっかみ半分のやつ当りだっていのうを、ひそかに思い当るに違いない。
 ハイ・パワー・アンプから繰り出されるこの上なく衝撃的なパルスは、現代に息吹く若者にとってあるいは麻薬の世界にも例えられるのかも知れない。一度覚えたそのアタックの切れ込みのすざまじさは、絶対に忘れられっこない経験として耳を通してキミの大脳にガキッと刻み込まれてしまうのだ。もうそれを消そうと思ったって薄れることすらできやしない。それどころか、口でけなし、あんなのはだめな音と、どんなに思い込ませようと努力したところで、逆にますます強く求めたくなってくるあこがれにも近い感情を内側でたぎらせてしまうだけだろう。
 恋の対象を初めて見かけたとき、それは少しも変りやしない。だから、ジャズ喫茶でスピーカーの前には、すべての環境から遮断されたマニアックなファンが少なからず、首をうなだれてサウンドにひたり切っているのだ。
 スピーカーは、例え小さくても良い、そのすぐ前で座ろう。プレイヤーは今までのでもいい、カートリッジの質さえある水準以上なら。
 ステレオの心臓はアンプだ。電気信号に変えてエネルギー増幅する、それがアンプの真髄。だから、アンプはきのうのより大きくしてみよう。2倍じゃなまぬるい。4倍も6倍も、いや10倍の出力のアンプなら一層結構、大きければ大きいほどいいのだ。それがたとえ借り物であっても、仮の姿でも、いつかはキミの所有になるはずだ。
 大出力のよさを身をもって知ったならば、もう逃れられっこないのだから。良さが判ればキミのステレオの次の標的として、大出力アンプは、大きくキミの前にほかの目標を圧して立ちふさがるだろう。キミはそれに向かって猛進するだけだ。100ワット/100ワットのジャンボ・アンプに向かって。

ソニー TEA-8250
 後から鳴らしたFETアンプのおかげでソニーのハイパワー・アンプはスッカリ形が薄れてしまった。けれど、1120のデビューのときの音そのものの感激がこのハイパワー・アンプ8250でもう一度思い出された。「あくまで透明」なサウンド。それは非情といわれるほどで、アタックの鋭さは正宗の一光にも似る。以前より低域の豊かさが一段と加わっているのは、単なもハイパワーのなせる所だけではないかも。

ソニー TA-8650
 20種にあまもハイパワー・アンプを並べたこの夜のSJ試聴室。編集F氏Sくんを含め、むろんこのオレも一番期待したのがソニーのこのFETアンプだ。球の良さをそのまま石で実現したといういい方は、気に喰わないというより本当にして良いのかという半信半疑からだ。
 その不安も、まったくふっとんでしまつたのだ。なるほど確かにハイパワー管球アンプの音だ。このFETアンプ8650に最も近いのは、なんと米国オーディオリサーチ社管球アンプだったから。
 低域の迫力の力強い響き、プリアンプのような超低域までフラットだが力強さがもうちょっと、なんていうのがFETアンプではうそみたいに直ってしまう。中声域から高域の力に満ちた立ち上りの良さプラス華麗さも、石のアンプのソッ気なさとは全然違う。
 こうしてまたしてもソニーは、アンプにおいて1120以来の伝統よろしくオーディオ界のトップに出た、といい切ってよかろう。製品が出たら、まっさきにオレ買おう。

オンキョー Integra A-711
 711はなんと20万を越す名実ともに一番高価なインテグレイテッド・アンプだ。しかし、音を聴けばそれが当然だと納得もいこう。ローレベルでの繊細さと、ハイパワー・アンプ独特の限りない迫力とを見事に融合させて合わせ持っている数少ないアンプだ。音の特長は、……ないといってよい。ない、つまり無色、これこそアンプメーカーの最終目標だろう。オンキョーのアンプがずっと追いつづけた目標は、このアンプではっきりと捉えられていよう。

オーディオリサーチ SP-3 + Dual75
 かつてマランツ社で真空管アンプを設計してたっていう技術スタッフが集まって興したのがこのメーカー。だからトランジスタ・アンプ万能の今日、その栄光と誇りはますます燃えさかり、このどでかいアンプを作らなければならなくなったのだろうか。なにしろ75/75ワットという実効出力にも拘らず、200ワットクラスの石のアンプとくらべても一歩もひけをとらず、それどころかサウンドの密度の濃さは、どうやら石のアンプでは比すべくもない、と溜息をつかせる。

SAE Mark 1M + IV C
 ロス周辺の新興エレクトロニクス・メーカーと初め軽く受けとっていたが、どうしてどうしてこの4年の中に、オーディオ界ではもっとも成功を収めたアンプ・メーカーだ。それだけに製品の完成度の高さと漉さは、抜群だ。プリIMと接続した状態で端正で品のよいサウンド。数あるトランジスタ製品中ベストの音色をはっきりと知らせたあたり、実力のほどをもう一度思い知らされろ。個性的でスッキリしたデザインはサウンドにも感じられる。

Lo-D HMA-2000
 やっぱり日本産業界切っての大物「日立」、やることが違う。というのがこのアンプのすべてだ。果しなくパワーを上げていくと、遂に突如、ひどくなまってくるのに慣らされた耳に、このアンプは不思議なくらい底知れずのパワー感がある。つまり音が冴えなくなる、という限界がないのだ。それはテクニクスに似てもっと耳あたりのよいサウンドの質そのもののせいといえる。日立のオーディオ界における新らたる実力だ。

フェイズリニア 700B
 そっけないくらいの実用的ハイパワー・アンプ。350/350ワットで700ドル台、日本でも40万円台と類のないハイCPのスーパー・アンプだ。今度バネルレイアウトを一新して、マランツ500そっくりのレベルメーターを配し、左右の把手のゴージャスな巨大さは、700ワットという巨人ぶりを外観にのぞかせたグッドデザイン。音はそっけないはどさっぱり、すっきりしているが、底ぬけのハイパワーぶりは低音の迫力にいやおうなしに感じられる。

マランツ Model 500
 今日マランツ社には創始者のMr.ソウル・マランツはいない。しかし、マランツのソウルは今もなおマランツの全製品に息吹いている。それをはっきりしたサウンドだけで聴くものに説得してくれるのが、モデル500だ。250/250ワットのアンプながら、それはもっと底知れぬ力を感じさせるし、モデル15直系の、音楽的な中声域の充実された華麗なサウンドはちょっと例がない。しかも現代のアンプにふさわしい豪華さを具え、この上なく超広帯域だ。

ダイナコ Stereo400
 なにしろ安い。アチラで600ドル、日本でも30万円で200/200ワットのジャンボぶり。すでに普及価格の高級アンプで定評あるダイナコの製品だけに前評判も高く、それらの期待に充分応じてくれる性能とサウンド。高音域のおとなしい感じもいわゆるウォーム・トーン(暖かい音質)というダイナコ伝統のマニア好み。うるさいヒトほど惚れ込んでしまう、うまい音だ。ボリュームを上げて行くと、分厚い低音の確かさにも一度惚れ直す。

ダイヤトーン DA-P100 + DA-A100
 ダイヤトーンのプリアンプの端正なたたずまいは、なにかマランツをうんと品よくしたといいたくなるような優雅さをただよわす。管球アンプを思わすパワー・アンプのゴツイ形態は、いかにもパワー・アンプだ。それはひとつの目的、エネルギー増幅の実体をそのまま形に表わした、とでもいえようか。このコンビネーションのサウンドはまた実に品のよいサウンドで、いかなるスピーカーをもこの上なく朗々と鳴らす。まさに、アンプはスピーカーを鳴らすためにある、ということをもう一度教えてくれるアンプといえそうだ。
 100/100ワットと今や、やや小ぶりながらひとまわり上のパワーのアンプとくらべても聴き劣りしないのは充実した中声域にあるのか、あるいはその構成の無理なく単純化された回路にあるのか。あまりワイド・レンジを意識させないのに、深々と豊かな低域、すき透るように冴えた高域、なぜか手放せなくなるサウンドだ。

パイオニア Exclusive C3 + Exclusive M3
 ズラリ並んだ国産アンプ中、スッキリとした仕上げ、にじみ出てくる豪華な高級感、加えて優雅な品の良さ。やはりパイオニアの看板製品にふさわしく、もっとも優れたデザインといえる。
 このデザインは、サウンドにもはっきりと出て、品の良さと底知れぬ迫力とを同時に味わせてくれろ。やや繊細な音のひとつぷひとつぶながら全体にはゆったりとしたサウンドはこうした超高級アンプならではで、さらに加えて「パイオニア」らしいともいえようか。このM3にさらにAクラス動作50W+50WのアンプM4が加えられるという。A級アンプというところに期待と限りない魅力を感じさせる。待ち遠しい。

アムクロン DC-300A
 ギラギラした独特のヘアライン仕上げのパネルは、いかにも米国製高級趣味といえようか。でもこのアンプの実力は、その製品名の示す通り、ラボラトリ・ユースにあり、直流から数100万ヘルツという超広帯域ぶり。ガッチリと引き締って、この上なく冷徹なサウンドが、なまじっかの妥協を許さない性能を示していも。米国でのハイパワー化のトリガーともなったこのDC300、今日でもずばぬけた実力で、マニアならマニアほど欲しくなりそう。

マッキントッシュ MC2300
 ここでとやかくいうまい。SJ試聴室のスタンダード・アンプというより今やあらゆるアンプがハイパワー・アンプとしての最終目標とするのがこの2300なのだから。サウンドの管球的なのもつきつめれば、出力トランスにあり、このアンプのあらゆる特長となっているサウンドに対する賛否もここに集約されるが、誰もが説得させられてしまう性能とサウンドに正面切ってケチをつけるやつはいまい。

サンスイ AU-9500
 黒くてデッカクて、やけに重いアンプ。山水の9500は75・75ワットっていうけれど、どうしてどうして、100/100ワットのアンプと互角以上にその力強い馬力をいや応なしに確かめさせてくれる。,
 ECMのすざましいばかりのドラムは、このアンプの13万なんぼというのが信じられないはどに力いっぱい響いてくれる。SJオーディオ編集者のすべてが認めるこのジャズ向き実力はハイパワ一時代、まだまだ当分ゆるぎそうもない。

テクニクス SU-10000 + SE-10000
 以前、SJ試聴室での試聴では保護回路の敏感すぎから、実力を知るに到らなかった10000番シリーズ、今宵はガッチリとたんのうさせてもらった。さすが……である。
 なんとも高品質な迫力と、分解能の良さに改めて10000番の良さを確めた。一式95万と高価なのだからあたりまえといえなくもないが、金にあかして揃えられるマニアなら、やはり手元にぜひおきたくなるだろう。物足りないくらいの自然さは最終的なレベルといえるだろう。

スタックス
 A級150/150ワットというそのメリットよりもスタックスの製品というところにこのアンプの意義も意味も、また魅力も、すべてがある。世界でもっとも早くからスタテック・イクイプメントコンデンサー・カートリッジ、コンデンサー・・スピーカーをファンに提供し続けてきたスタックス。数々の幻の名器を生んできたメーカーの志向がアンプの特長の根底にずっしりとある。サウンドは、それこそまさにコンデンサースピーカーのそれだ。加えてローエンドの底なしの力強さに惹き込まれて時間の経つのも忘れさせるワンダフルな機器だ。(発売時期末定)

ラックス CL350 + M-150
 309のパワーアンプを独立させたのがM150。75/75ワットというパワーもそれを物語る。アンプの高級ファンをガッチリと把握している企画と音作りのうまさはM150でもっとも端的にはっきりと現われている。しぶいが落ちついた品のよいその外観と音。加えてソフトながらいかにも広帯域をと力強さにも感じさせるサウンド。物足りないといわれるかも知れないが、しかし飽きのこない親しさもまた大きな魅力なのだ。

ESS/BOSE
 日本にはこれから入ってくるだろうと予想される話題のスーパー・アンプ2種。ハイル・ドライバーで一躍注目されてるESSのモデル500。みるからどでかくゴツい力強さを外にまでみなぎらせて、早く聴きたいアンプだ。
 もうひとつはペンダゴン型ボックスのスピーカーで有名なボーズのアンプだ。これは品のよいスマートな個性で粧おいをされた豪華大型。インテグラル・システム100/100ワットで200ドルと安いのが早くも出てきおったぞ。

アキュフェーズ C-200 + P-300
 国内製品では実力ナンバーワンを目されているのが、ケンソニックのP300だ。このところ目白押しの国内ハイパワー・アンプ。なんてったって世界市場を意識して企画され、価格を設定されたというところにこのケンソニックのすべての製品の特長と意義がある。つまりケンソニックのアンプは実力を世界に問うた姿勢で作られているわけで、逆にいえば世界のマニアに誇れる高性能を内に秘めてもってことになる。
 事実、このアンプをマッキンと較べ、マランツと比べても、一長一短、ブラインドで聴かせれば、どちらに軍配が上がるか率は半々。透明度の高さ、中域の緻密さにおいて特にすぐれ、高域の明るさと、低域の豊かさにおいて聴く者を魅了してしまう。
 プリアンプC200のこの上なくナチュラルな音に、P300の良さはますます高められて国産ハイパワー・アンプの大いなる誇りを持つものにじっくりと味わしてくれる。
 かくいうこのオレも、P300、C200のスイッチを入れない日はなく、メイン・システム、ハークネスはP300のスピーカー端子にガッチリと固定され、ひんばんに変っていたアンプが変わる気配もない。