井上卓也
ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より
セパレート型アンプのジャンルは、プリメインアンプにくらべれば、制限や制約がない、いわば無差別級の分野であり、最近では、ことに多様化、多角化した製品が数多く登場している。
AGI#511は、セパレート型アンプとしては、業務用アンプに採用されることが多い、いわゆるユニットアンプ形式のプリアンプで、多機能を誇る高級コントロールアンプから、最少必要限度の機能を残して単純化した、シンプルな構成が特長である。
デザインは、現在のこの種のモデルの流行である薄型ではなく、標準的なコントロールアンプのパネルサイズの左右を短縮したタイプであり、コントローラーは、ボリュウム、バランス以外は、2系統のプッシュボタンスイッチだけというシンプルなものだ。構造は、増幅部分、電源部分を一枚の基板上に構成するタイプであるが、使用部品、材料は厳選された高度なものが採用され、外側の金属製ケースの板金加工の精度は、海外製品としては異例に高いものである。
この#511は、米国系の最近のアンプの傾向であるスルーレイトを高める基本設計を採用しているが、音質は大変にクリアーで、力強く、音づくりというような虚飾がまったく感じられない。反応は非常に早く、思い切りの良い音を出すために、ディスク的な意味での良い音というよりは、テープでの38センチ・2トラックデッキの音に似た鮮度の高さが、他のアンプにない独得の魅力である。
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