井上卓也
ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
特集・「ジャンル別価格別ベストバイ・435選コンポーネント」より
2万円未満のカートリッジは、キャリアの充分なユーザーが、限定した条件下で選択し、使うべき製品であると考えるため、選択の対象外として除外した。
2万〜4万円は、カートリッジを買ったという実感のある音の変化が確実に得られるだけの内容をもった製品があるゾーンだ。MM型を積極的に選びたい価格帯で、オーディオテクニカAT150E/Gは定評のある、明るく、音楽性が豊かな伝統的な音が聴ける製品であり、AT160MLは、滑らかで、解像力が優れた新世代のテクニカサウンドが魅力。優れた性能が素直に音に出るテクニクス250CMK4、表現力豊かなMC型ヤマハMC505も一聴に値する音だ。
4万〜8万円では、MC型の魅力と海外製品独自な音が楽しめるゾーンだ。定評の高いデンオンDL305、DL303の後継モデルDL304は、リファレンス的意味を含め、信頼性、安定度は抜群であり、オーディオテクニカAT36EMC、37EMCの実感的な音の魅力は見事である。MM型の超高性能型テクニクス100CMK4、海外製品シュアーV15タイプVMR、オルトフォンMC20MKII、SPU−AEなどは、これぞカートリッジ的存在。
8万円以上は、スペシャリティの世界だ。針先とコイルを直結したMC型第1号機ビクターMC−L1000。少なくとも異次元の世界の窓が開いた印象である。これと対照的存在が、軽量振動系MC型の代表作デンオンDL1000Aだ。これに続くのが、ハイフォニックMC−D15、ヤマハMC2000であり、聴感上のSN比が優れ、情報量の多さは、近代型MCならではの新しいアナログの世界を展開する。
昇圧トランス/ヘッドアンプは、低インピーダンスMCには昇圧トランス、高インピーダンスMCにはヘッドアンプという組合せが選択の基準だ。
10万円未満のトランスでは、トランス独特のエネルギー感と緻密な豊かさを聴かせるオーディオニクスTH7559、安定感があるオーディオテクニカAT700Tがベストバイ。ヤマハHA3のMC型用イコライザーという構成と音にも注目したい。
10万円以上では、高インピーダンスMC型に見事な対応を示した昇庄トランス、デンオンAU1000がベストバイである。
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