黒田恭一
サウンドボーイ 10月号(1981年9月発行)
特集・「世界一周スピーカー・サウンドの旅」より
青い音とでもいうべきであろうか、すっきりした、透明度の高い音である。ほかの国のスピーカーからは感じとれない、独自の、しかし耳に心地よい音である。
レコードは、いくぶんこじつけめくが、アバの『スーパー・トゥルーパー』とパット・メセニーの『アメリカン・ドリーム』をきいてみた。そしてここでもやはり、なるほどと納得する結果になった。アバの歌は、いずれも、巧みなサウンド設計に支えられていると思うが、そのことがよくわかるきこえ方をした。それに、アバの歌では、歌い手たちの声がいくぶん楽器的にあつかわれていて、声そのものが。情感を背負うことはあまりないことも、ここでは幸いしていたようである。
たとえばヴェロニク・サンソンの唱などをきくと、エリプソンの1303Xできいた場合とまるでちがって、肌ざわりのつめたいものになる。その辺にこのスピーカーの特徴があるといえよう。ハーブ・アルバートのトランペットの音は、本来のあじわいとはすくなからずちがうが、あたかも涼風が頬をなでていったように感じられ、これはこれでわるくないと思わせた。
パット・メセニーのレコードでは、キーボードによる低い音が過度にふくらむことなく、このましかった。サウンドのフィーリングが音楽のフィーリングとぴったりあっていたようである。
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