瀬川冬樹
別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より
テクニクスのこの新しいSU-Vシリーズには6、8、10とある。V6が五万九千八百円というかなり安い価格であるにもかかわらず、この前後の価格帯の中でも際立った出来栄えを示していた。それだけにその後に発売され、なおかつパワーも110Wとほぼ倍近くまでグレードアップされたこのV8には、こちらが過大な期待をもって臨むのはこれは当然のことだと思う。
音質 さすがに110Wというパワーと、ほとんど十万円に手の届くの価格ということからか、音を支える力というのは、これは実に大したものだ。これ以前の十七台のアンプに比べて聴取レベルを一ランク上げ、相当大きな音量で聴いてみたが、音が崩れるようなところがなく、大太鼓、いろいろなパーカッションなど、どんな音にも全く危なげなく、本当の力を出してくれた。さすがにハイ・パワーアンプだ。そして音の一つひとつが大変くっきりと出てくる。裏返していえば少しコントラストがきついということがいえるかもしれないが、とにかく一つひとつの音をとてもわかりやすくきちんと出してくれる。半面、その音の質ということになると、例えば音透明度という面からみると、オンキョーのA817、ラックスL48Aあたりに比べると若干物足りない感じがする。
一言でいえば音の力強さというところにピントを合わせて作ったアンプではないかなと思う。
MCヘッドアンプ MCヘッドアンプはさすがにこのくらいの高価格帯になると、ゲイン、SN比とも大変練り上げられている。ゲインも十分、ノイズもかなり少なくなっている。しかし、この一つ前のパイオニアA700のMCヘッドアンプが大変よくできていて、オルトフォンのMC20MKIIでも実用的に全く問題なく使えたということからみると、V8のヘッドアンプはオルトフォンMC20MKIIでは少しノイズの点で聴き劣りする。A700を除けば、テストしたアンプの中でも別格のいいできだとは思う。デンオン103D、これはもちろんゲイン、SN比とも全く問題なく、十分に聴ける。音質の点ではMC20MKIIを付けたときの音はまあまあで、もう少しMC20MKII的なよさが出てほしい。一方、デンオンに関しては大変音質がいい。やはりこのアンプのMCヘッドアンプの基本設計目標がデンオン系に合わせているのだと思う。
トーン&ラウドネス トーン・コントロールには大きな特徴がある。普通の低音、高音のトーン・コントロールのほかに、スーパーバスというのがあり、ターンオーバー75Hzまたは150Hzから下を非常に急激なカーブでブーストできる。これらをつかうにはオペレーション・スイッチをストレートDCからビアトーンという方向に倒して使う。そしてスーパーバスのつまみをグッと上げていくと、普通のスピーカーではなかなか再生することのできにくい超低音を非常に確かな手ごたえで増強してくれる。音全体の厚み、あるいは深みといった感じが増してくるので、これはうまく使いこなすとなかなか面白い。
スピーカーが多少小さいものであっても、これをうまく使いこなすと大変広がりのある豊かな音が得られる。これはこのアンプがもっているほかのアンプにないファンクションだ。
スーパーバスを除いたトーン・コントロールの効き方はごく軽く、標準的。ラウドネス・スイッチを押したときも比較的抑え目の妥当な効き方をする。
ヘッドホン ヘッドホン端子での出力はスピーカーで聴く音よりも少し抑えかげんだが、これは一般的な水準からいって標準的。
ヘッドホン端子での音質はこのアンプ自体のもっている基本的な音に比べると少し力が減るような感じがした。
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