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EMT 930st

瀬川冬樹

月刊PLAYBOY 7月号(1975年6月発行)
「私は音の《美食家(グルマン)》だ」より

いたれりつくせりの機構と、精密なメカニズムを誇る西ドイツ製プレイヤーEMT930st。98万円。ダイレクトドライブでもなければ、ベルトドライブでもない。むかしながらのリムドライブだが、厚さ10センチ、重さ4キログラムに及ぶターンテーブルを、静かに、しかも安定した力強さで回転させる。
EMTのカートリッジも、この本体につけてこそ、その真価を発揮する。

アルテック X7 Belair

菅野沖彦

スイングジャーナル 7月号(1975年6月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 アルテックのスピーカーは常に強い魅力を聴く人に感じさせる。その音は決して優等生的な欠点のないものとはいえない。むしろ、立場を変えれば欠点だらけといってもよいものが多い。例えば、あの有名な〝ボイス・オブ・シアター〟A7システムがそうだ。ご承知のようにA7は大きな劇場用のシステムであって、アルテックはその持てる技術と歴史のほとんどをこの系統のシステムに注入してきた。つまり大ホールにおけるハイ・エフィシェンシーなエネルギーの伝送を、いかに人の感覚に快よい、音楽的効果と結びつけるかという方向である。そのために強力なコンプレッション・ドライバーと有効なホーン、それに見合ったウーハーの2ウェイを主軸とし、少々の低域特性の不満や、高域の減衰(10kHz以上の高域は大きなホーンでは余程のエネルギーでない限り空間で減衰するし、10kHz以上のエネルギーを放射すると往々にして歪の放射につながり、種々様々なプログラム・ソースを再生しなければならない劇場用としては、アラが目立つチャンスのほうが大きい)を承知の上で、主要なファクターに的をしぼるという達観を数10年前から持っていた。しかし、これが、モノのわかる人には家庭用としても音楽の有効成分の伝達──つまり、余計をものを切りすてて重要な音楽的情報を伝えるという大人の感覚に連り、A7を家庭用としても持ち込むという傾向を生み出したといえる。もちろん、プログラム・ソースの質的向上に伴って、A7シリーズのドライバーも高域低域のレンジ拡大がおこなわれ、現在の8シリーズの最新型ドライバー・ユニットはかなりレンジが拡がったが、2ウェイというシステムのままのレンジ拡大という基本思想は変っていない。ところで、そうしたアルテックも最近の家庭用ハイ・ファイ・システムの需要の大きさを無視しているわけにはいかなくなった。特に宿敵JBLが、この分野における活発な成果を上げ、それをプロ用にも生かしてくるようになっては、本家としてだまっていられなくなったのも無理からぬ話である。最近のアルテックはそうした、いわゆるハイ・ファイの分野にも意欲を持ち始め、2ウェイはもちろん、3ウェイのブックシェルフ・システムの開発にも積極的になってきたのである。近々、アナハイムから発売されるであろう一連のブックシェルフ・システムがそれだが、この〝ベルエア〟システムは、その動きを敏感に把えてエレクトリが完成した家庭用ハイ・ファイ・システムである。機会があってアルテック本社で一連の新製品と本機の比較試聴を行なったが、決してそれらにひけをとらないまとまりをもったシステムであった。使用ユニットはアルテックの新しい製品で、ウーハーが30cmの411−8A、トゥイーターが427−8A、それをN1501−8Aネットワークで1・5kHzでクロスさせた2ウェイ・システムだ。エンクロージャーは、ダンプド・バスレフである。エレクトリは既にベスト・セラー〝デイグ〟を世に送り出しているがその経験を生かしてつくられたこの〝ベルエア〟はアルテックのサウンドの魅力をよく生かし、しかも全体のバランスを周到に練った成果が聞かれるのである。明るく屈託のない音。がっしりとした音像再現による明解なディフィニジョンはまさにアルテック・サウンドそのものである。印刷の世界でよく使われる言葉に発色という言葉があるが、アルテックのスピーカーは、それになぞらえれば〝発音〟の鮮やかなサウンドであって、全ての音が大らかに発音されるのである。この〝ベルエア〟は価格的にも7万円台ということだが、ユニットやネットワークの本格派として、これは安い。先に書Vいたようにスピーカーは土台、目的をしぼってまとめられなければならないという現実の制約があるものだが、このシステムの目的はハイ・ファイ用としてレンジを拡大しながらも、決してひ弱繊細で神経質な音になることを避け、たくましくジャズを鳴らしてくれるところにあるとみる。それだけに、たしかな響き、心のひだのすみずみを微妙なニュアンスでデリケートに鳴らしてくれるというシステムではない。同価格クラスの他製品と比較して立派に存在価値を主張できるシステムというのがこの製品を試聴して持った印象であった。

KEF B200

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 小型のエンクロージュアを使って2ウェイシステムを作るときに使いたいウーファーである。音質は、やわらかく、滑らかなタイプで、高音は、やはりドーム型を使いたい。

マークレビンソン LNP-2

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 きめ細かなゲイン調整と、トーンコントロール、それにピーク指示のできる精密音量レベル計など、JC2より音質はやや甘いが機能的にずっと充実している。しかし高価だ。

アルテック 515B

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 使いやすい強力型ウーファーとして定評のあるユニットだ。エンクロージュアは、壁バッフルやバスレフ型がよく、中音や高音ユニットとの適応性が広く万能型といえよう。

マッキントッシュ MC2105

菅野沖彦

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 出力トランスをもった同社のパワーアンプはインピーダンスに無関係に定格出力が得られ、かつ耐久性が保証される。重厚な音、美しいデザインと仕上げは満足感を与えられる。

JBL LE10A

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 比較的に小型のバスレフ型が使えるのがメリットである。高音ユニットはJBLがよいが、国産のコーン型から選び足出しても、かなりの好結果が得られた実績がある。

KEF Model 5/1AC

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 BBCモニターLS5/1Aをベースに、マルチアンプ組み込みで設計し直した最新型スタジオモニタースピーカー。この優れた音は、こんなスペースでは説明したくない。

JBL L45-S1

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 L45のエンクロージュアにバリエイションが出揃った。L101の製造中止を惜しむ声が多いが、LE14Aと175DLHの組合せは、L45/S1に残されている。

B&W DM70

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 音質は二の次。インテリア重視型として、モダンなリビングルームの引立て役に生かすべきスピーカーだろう。当然、ウォルナット仕上げよりも白色塗装の方にメリットがある。

SAE Mark IIICM

菅野沖彦

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 片チャンネル200Wを越えるパワーアンプとなると、アメリカ製にキャリアがある。この製品はその中でも特筆してよい音のよいアンプ。あくまで明解で力強い。

モーダウント・ショート MS737

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 本質的に弦楽器やヴォーカルの自然さ、しっとりした情感を聴かせる点、やはりイギリスの音だ。ウーファーがKEF、トゥイーターがデッカという独特の混血アセンブリー。

オルトフォン type 445

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 かなりスケールの大きな、表情豊かな音を聴かせる。335の方が中域のよく張った感じに対して、音像がスピーカーの向うにきれいに並ぶ傾向で、本質的にクラシック向き。

JBL L88PA

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 ウーファーにくらべるとトゥイーターの質が少しもの足りないが、L26よりも音の角がとれて、弦楽器系も一応十分に聴ける。が、それよりもこのデザインの斬新さこそ魅力だ。

ジョーダン・ワッツ Jupiter TLS

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 有名なモジュールユニット2台をベースにした2ウェイの中型フロアータイプ。中低域が豊かで緻密。すばらしく安定な響きが実に心地よい。意外にパワーも入れられる。

JBL Aquarius4

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 これはハイファイ用と範疇の違う、いわば「音響家具」と呼びたいスピーカー。明るい近代的なリビングルームで本領を発揮する。非常にぜいたくなイージーリスニング用。

マークレビンソン JC-2

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 ひとつひとつの音が実にかっきりと鮮明で、入ってきたあらゆる信号を細大漏らさず忠実に増幅しているという印象。SNも優秀。ばかげて高価だがほかにこういう音質はない。

オルトフォン type 335

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 新しい企画された3機種のうち、♯335は中域のよく張った、やや硬質の光沢を感じさせる音色。よく弾む表情の豊かさに特長がある。445とは対照的な音質である。

ブラウン L500/1

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 全体の音のバランスも悪くないが、ウーファーの質の良さには敬服する。低音楽器の音階の動きや音色感を、実に生き生きと滑らかに表現。むろんそれはブラウンの音色でだが。

QUAD 33

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 性能もデザインも実にユニークで洒落ていてこういう製品が存在することがうれしくなる。とうぜん、パワーアンプの♯303、チューナーのFM3と組み合わせるべきである。

ブラウン L420/1

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 ドイツ系のスピーカーは、小型のキャビネットの割には、びっくりするほど低音がよく出る。この製品も小型とあなどれない実力を持っている。ただしあくまでもセカンド用。

B&W D5

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 小型だから適当に色づけするというのではなく、ごくオーソドックスに、特性本位に作られた本格的な製品。たいそう品位の高い、艶のある繊細・緻密な音色は非常に魅力がある。

ルボックス A77MKIV

菅野沖彦

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 マイナーチェンジを何回も受けて高い完成度を持つに至った。小型で持ちやすく、しかも基本特性をがっちり押えた精密機。2トラ・ヴァージョンのHSと共に名器といえる。

ローテルドーマス Model 175

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 小型の割には音がよく弾み、バランスもよく適度の魅力もあって、聴感上の音域もそうせまくない。音の品位はそう高級とはいいかねるが、サブスピーカーとしてはおもしろい。

KEF Cantor

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 サラウンドステレオのリア用に企画したということで、スケール感は出にくいが、新型の104と一脈通じるクールな、品位の高い、光沢のある瑞々しい音を聴かせる。